孵化するタマゴ
1999/7/16
ビデオ、"The Science of MAGIC"(UNAPIX)を見ていたら、ミスディレクションの解説として、ちょっと気持ちの悪いマジックをやっていました。
まず次の現象を読んでみてください。
★現象
マジシャンは、スーパーなどで販売されている、プラスチックの容器に入ったタマゴを容器ごと持ってきて、テーブルの上に置きます。6個とか10個単位でタマゴがケースに入って販売されている例のものです。
「これは昨日買ってきたばかりの新しいタマゴです。試しに、どれでも一つ選んでください」
こう説明してから、観客にひとつタマゴを選んでもらいます。それをガラスの器に割り、新鮮な卵であることを確認してもらいます。
「このタマゴは有精卵ですから、本当なら雌鳥が抱いていると、孵化します。ここであなたの体から出ているエネルギーをこのタマゴに注入してみましょう。何か変化が起きるかも知れません」
もう一つタマゴを選んでもらい、そのタマゴで、観客の腕や肩、額、背中などを撫でます。30秒間くらいこのようなことをやってから、タマゴをガラスの器に割ると、気持ちの悪いものが出てきます。途中まで孵化しているような黒くてドローとしたものが出てきます。
どうです?気持ち悪いでしょう?(笑)孵化しかかっているものなど気持ち悪ければ、完全に腐ったタマゴにすることもできます。余計気持ち悪いですか?(笑)
「あなたの毒気にあてられたようです」とでも説明しておけばよいでしょう。
両方とも気持ち悪ければ、ゆでタマゴになっていることを見せてもよいかも知れません。観客の体をこすって、熱をもらっている間に生タマゴがゆでタマゴ になっているという現象なら、別段、気持ち悪くないでしょう。どうせなら、固ゆでより、温泉タマゴくらいの柔らかさのほうが真実みがありそうです。
これはオンラインマジックで紹介しようかと思いましたが、ちょっと気持ちが悪いのでやめました。
はっきり言って、これはミスディレクションと呼べるような代物ではありませんが、100年ほど前、MEDIUM(職業霊媒師)が流行っていた頃、彼らがやっていたトリックはおおむねこの程度のことでした。
スレート(小さな黒板)を2枚使って、板の間にチョークを入れておくと、霊が来て、文字盤にメッセージを書いて行くという現象が好んで行われていました。これもタネを聞くと呆れるほど大胆な方法なのですが、アメリカでは何万人という人がこれに引っかかっているのです。タネを知っているものからすれば、そんなことでいくら一般の人でもだまされるはずがないと思うようなことでも、実際にはみんな引っかかってしまいます。
タマゴを使ったものは誰が考えたのか知りませんが、トリックとしては大胆すぎて、観客とマジシャンがマンツーマンのとき以外はできません。しかし、そのような状況で、相手を選んでやれば、この手のトリックはスプーン曲げ以上に効果があります。
ここまで書いてきたら、こんなのを紹介したら、またインチキ超能力者に利用されそうで心配になってきました。本当は、「ミスディレクションの教材」のつもりで解説するつもりだったのですが、今のようなわけで、種明かしはやめておきます。(笑)どうしても知りたい人は、先のビデオを買って見てください。