Bending Wine Glass
1999/1/8
★最初にこれはドイツ人のメンタリスト、テッド・レスリーの作品です。彼の著書、『パラミラクルズ』(Paramiracles, $30.00)に解説されていますが、それが単独で商品として販売されました。値段はなんと1,300ドルです。今なら14万円くらいでしょうか。本の中では"Mind Bender"というタイトルになっています。
マジックのネタは、アイディア料が大半を占めていますので、自分の本で解説したものをまた商品として売り出すことはあまりありません。よほど特殊な道具がないと自作できないか、作るのが面倒な場合に限り、商品として販売されます。このマジックも原理はすでに彼の本の中で公開していますので、それをあえて売り出すということは自作するのが難しく、作ったところで買うのとあまり変わらないくらいの費用がかかることを見越してのことでしょう。工作や機械関係のメカに自信があり、ある特殊な道具も手に入るなら定価の数分の一くらいの金額で作れないこともないでしょうが、相当面倒です。
★現象
上の写真はテッド・レスリーのグラスではありません。私が適当に持ってきたものです。そのため、ワイングラスの脚のところが角張って曲がっていますが、実際はもっとなめらかに曲がります。
彼がこれを演じるのは、いつもパーティ会場のようなところです。ある程度の広さがあり、ワインやシャンパンがテーブルに出ている席です。
まず、観客席からワインの入っているグラスを一つもらってきて、テーブルの上に置きます。マジシャンはグラスから少し離れて立ち、グラスには手を触れません。しばらくグラスを見つめていると、ワインの入ったグラスが、脚の部分から徐々に曲がり始めます。最後は上の写真に写っている程度まで曲がります。この間、観客もワイングラスをずっと注目していますから、あやしげなことは何もできません。
曲がったグラスはそのまま観客に手渡して、調べてもらいます。
★コメント
テッド・レスリーがこれを考えているとき、いくつかの条件を設定していました。
●使用するグラスは客席から借りたもので、途中ですり替えたりしない。
●徐々に曲がっていく様子が、大勢の観客に見えなくてはならない。そして、その間、マジシャンは何かを操作したりしない。
●曲がっている最中、マジシャンはグラスには近づかない。
●曲がったグラスは、疑い深い観客に手渡して、調べてもらうことができる。
どうです?結構おもしろいでしょう?ただ、これはどこでもできるというわけではありません。ある程度、場所の制約があります。クロースアップでは無理です。観客が数十名以上いるパーティ会場などがベストですが、少し広いリビングルームでも大丈夫でしょう。ごく少人数であれば、比較的近いところで演じても大丈夫です。しかし、これは基本的にはパーティ用のマジックです。
おそらく、これのもとになっているアイディアは、直径1センチくらいの鉄の棒を曲げるマジックでしょう。それをもとにして、ワイングラスを使い、マジシャンがグラスに手を触れていない状態で、グラスの脚が徐々に曲がって行くのを見せられるようにしたのが彼のアイディアです。