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1998/5/29


「穴」が動く


「紙にあけた穴が動く」というテーマのマジックがあります。即席でできるもの、ある程度準備が必要なもの、完全なネタモノと様々です。

「穴が動く」というプロットの原案は、今から30年ほど前、厚川昌男氏(現、推理作家の泡坂妻夫氏)が発表したものが最初ではないでしょうか。長方形の厚紙に穴をあけ、その穴を指で押さえて動かすと、穴が移動するというものでした。いかにも厚川さんらしい発想のマジックで、適当な紙さえあればいつでもできる即席マジックの傑作としてよく知られています。この原案をご存じでない方は、『即席マジック』(松田道弘著 ちくま文庫)に紹介されていますのでぜひお読みください。

厚川氏さんの「穴が動く」というプロットがいかに斬新であったかは、その後、海外の専門書などにも、様々なバリエーションが発表されていることからもわかります。

少し凝ったものでは、テーブルホッピングのプロマジシャン、マイケル・クロースが商品として売り出しているネタもあります。

これは、名刺の裏に、助手として手伝ってもらっている人の近所の地図を書いて、パンチで穴を空け、道の途中に穴があるというストーリーで展開します。大変巧妙な手段を用いて、地図の上に空けた穴が移動するのです。名刺の裏でできますから、いかにも即席マジックという印象が強いでしょう。
また、同じクロースの作品で、改案も発表されています。地図ではなく、紙に書いた靴下の穴がズボンや上着に移動します。これもよくできた演出です。(根本氏のところで販売されています)

また、ネタものでは、関西の奇才、益田克也氏の作品で、「ミステリーホール」という名前で商品化されているものもあります。これは左の画像のように、ワインボトルとグラスが写っている写真を使います。写っているものが、ワインボトルとグラスなので、ワインを飲んでいるときに出してきても違和感がありません。
このネタは数年間から販売されていましたが、当時、私はそれほどおもしろいとも思えなかったので、ずっと購入せずにいました。今回、これを買ったのは、たまたま梅田のキディランドにあるマジックコーナに行ったとき、実物を見せてもらった、きれいな写真であったのと、最近のワインブームで、しばしばワインの出てくる席につくことが多いので、使えると思ったからです。

現象は、丸い穴を開けるパンチで、黒い紙を打ち抜き、直径が5ミリ程度の丸い紙を作ります。これま前もって準備しておいても構いません。この丸い紙を写真の上に置き、黒いバックのところへもって行くと、写真に穴が空いているように見えます。「穴」を移動させると、架空の穴なのに、後ろの景色が見える本当の穴になっています。穴のところに指を持って行き、下から指を動かすと、確かに穴から指が見えます。ふたたびその穴を移動させ、黒い穴をつまみ上げると、穴はなくなって、完全な元の写真になっています。

これの便利なところは、消耗品ではないので、毎回作る手間が不要なところです。マイケル・クロースのも演出は大変おもしろく、客受けもするのですが、相当やりなれる必要があります。この「ミステリー・ホール」はその点、重宝します。

これは確か4,000円程度で販売されています。


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