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ミラクル・ボックス

 

ミラクルボックス

1998/11/9


最初に

1972年頃、トリックスが売り出した商品です。当時、加藤英夫氏と赤沼敏夫氏のお二人がテンヨーからが独立して、加藤氏は日本マジックアカデミーを設立し、赤沼敏夫氏はトリックスを始められました。(加藤氏は数年後、テンヨーに戻られました)このミラクル・ボックスは、そのころ赤沼氏が考案されたオリジナル商品です。

現象

写真のような金属製の筒があります。底はありますが上は開いています。それと筒にかぶせる黒いケースを使います。

現象は一口で言えないほど様々ことができます。最も一般的なものは、筒の中に何かを入れ、それに黒いケースをかぶせ、全体を持ち上げると、入れた品物だけが金属の底を貫通して出てきます。中に入れるものは、サイコロ、スポンジボール、シルク、コイン、お札と様々なものが利用できます。貫通した後、ただちに底を見せますが、底はちゃんとあります。

コメント

大変ビジュアルな貫通現象が起き、なかなか面白いネタでした。これが発売された直後、加藤氏が当時発刊しておられた月刊誌、『ふしぎなあーと』(1973年2月)で特集を組んだり、別冊で「ミラクル・ボックス」だけを解説した解説書も出しておられました。将来、クラシックになり得るトリックして、力の入れようもかなりのものであったのです。私は現物を見る前に、『ふしぎなあーと』で知り、それからしばらくして見せてもらいました

現在、これがトリックスで販売されているのかどうか知りませんが、少なくともここ20年くらい、ディーラーの人が実演しているのを見たことはありませんので、おそらく製造中止になっているのでしょう。途中で製造中止になるネタはいくらでもありますが、これはもう少しうまく作れば、加藤氏が仰っていたように、後々まで残る道具になったと思います。消えた理由はいくつかありますが、一番問題になるのは観客に手渡せないことでしょう。カタログや加藤氏の解説書には手渡して調べてもらえると書いてありましたが、実際には少し無理なのです。手渡せるくらいにロックを強くすると、演技が大変しにくくなります。ロックをゆるくしておくと、演技はし易いのですが、観客に手渡せません。この辺りのバランスが難しく、商品として販売しにくかったのかも知れません。最後に手渡すときだけロックできるような機構になっていれば、今でも残っている商品になったはずです。

余談ながら、当時、トリックの専門店はデパートなどにも数多く入っていました。関西では神戸大丸にあるマジックコーナーで扱っており、そのころ山田さんとおっしゃる方が売場担当で活躍されていました。大変人当たりのよい方で、多くのファンがいました。その頃、学生であった平田君(現、旭人氏)もバイトでここによく立っていました。

上の写真に写っている黒いケースは、私が山田さんから頂いたものです。商品に添付されているのは黒い紙でできていたのですが、山田さんは、ご自分の実演用に、黒い革で自作されたものを使っておられ、しばらく使った後、どういうわけか、それを私にくださったのです。その直後、病気になり、亡くなりました。今から思えば形見分けのような気分です。


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