お金を生む茶碗
1998/9/10
最初に20年位前まで、東京に「天地奇術」というマジックのメーカーがありました。代表は天地創一氏です。東京のデパートには何カ所かマジックコーナーも出していました。東京以外には専属のディーラーがいる売場はなかったと思いますので、地方の方にはあまり馴染みがないかも知れません。私も20数年前、上京した折り、何度か立ち寄ったことはありますが、あまり詳しくは知りません。店頭では天地氏が創作したマジックを中心に、オリジナルマジックを販売していたようです。
この「お金を生む茶碗」は仕掛けのある茶碗ですが、何の仕掛けもないごく普通の茶碗を二つ使って演じる、宴会芸の代表的なマジックがあります。空の茶碗を二つよく見せ、二つの茶碗の口と口を重ねてから振ると、突然、茶碗の中から「ガチャガチャ」という音がします。茶碗を開けると、数枚のコインが現れます。これは、おそらく私が初めて見たマジックだと思うのです。父が誰かに教えてもらったのだと思いますが、私が4,5歳のころ見せてくれました。大変不思議でしたので、立て続けに何回かやってもらい、タネを見破ったのを覚えています。これを商品化したのが上の写真にある金属製の茶碗です。解説書を紛失したので正式な名前が何であったのか思い出せないのですが、「お金を生む茶碗」としておきます。
補足:この天地製の茶碗は「金福茶碗」という商品名であったようです。NIFTY経由でLILIPUT氏より教えていただきました。ありがとうございました。
現象
金色の茶碗がひとつあります。中も外もよく見せ、別に怪しくないことを確認してもらいます。観客に手渡して調べてもらうのはちょっと無理ですが、マジシャンが持っている限り、十分見せることはできます。。
茶碗の口を上にして、左手の上に置きます。右手が空であることをよく見せた後、右手で茶碗の口を覆います。数回、上下に茶碗を振ると、ガチャガチャという音がします。右手を取り除くと中に20枚くらいのコインが入っています。コインをテーブルの上に取り出し、終わります。
コメント
改案というのは難しいものです。これは昔からある、仕掛けのない二つの茶碗を使うものより大量にコインを出現させることができます。昔からの方法では10円玉は5,6枚しか出現させられなかったのですが、この茶碗を使うと20枚くらい取り出せます。しかし即席にはできません。また、観客に茶碗を十分に調べてもらえない点が弱いのです。こうなるとどちらが優秀か一概には判定できません。今なら、スライハンドとちょっとしたギミックを使って、レギュラーの茶碗からでもコインを20枚くらいの出現させる方法も考えられそうです。マニアでないとわからないと思いますが、例えば、D.ディングルがやっている沢浩氏の「スロットマーシン」のヴァリエーションで、最後にコインを20枚ほど取り出すためのちょっとしたギミックがあります。あれを使えばできるでしょうが、オリジナルと比べると相当ハンドリングが難しくなります。しかしこうなると、昔からある「宴会芸」としての気安さはなくなりますが、本格的なマジックにはなりそうです。
出現させるコインの数をどのくらいにするかで、ネタやハンドリングも全く変わってしまいますから、効果と難しさのバランスをどのあたりで折り合いをつけるかは、結局、演者の好みや、自己満足しだいかも知れません。
茶碗を2個使う宴会芸も、欧米での文献ではほとんど見たことはありませんので、これを知っているだけでも何かの折りに役に立つかも知れません。