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ピッグテイル

ピッグテイル

2000/8/31


最初に

今から40数年前、テレビで一度見ただけなのにその後もずっと印象に残っているマジックがあります。テンヨーの売り場で見たような記憶もかすかにあったため、問い合わせてみました。するとそれは当時、テンヨーから「ピッグテイル」という名前で出ていた商品であることがわかりました。

現象

縦が25センチで横が20センチくらいの額があります。この額には扉がついています。

この扉を開くと、ブタがバーのカウンターに座って、カクテルを飲んでいる絵が入っています。扉を閉じて、この額をいったん背中に回してから前に出し、再び扉を開けるとブタが酔っぱらって真っ赤な顔になっています。扉を閉めてからもう一度同じことをすると、今度は最初の状態になっています。

これを2,3回繰り返すと、たいていの観客は額の裏があやしいと言い始めます。裏にも扉がついているので、ただ裏側を見せていると思います。そこで裏側の扉を開けてみせると、そこには酔っぱらって真っ赤になったブタの「後ろ姿」が描かれています。

ブタ後ろ姿

とにかく古いマジックですので、細かいハンドリングは忘れていますが、大体以上のようなものであったはずです。

コメント

私がこれを初めて見たのは小学生の頃です。ひょっとしたら、これが”サッカートリック”を見た初めてのものかもしれません。それで余計に印象に残っているのでしょう。サッカートリックというのは、マジシャンが失敗したと思わせたり、観客にタネがわかったと思わせたりしておいてからどんでん返しがあり、二重に観客を引っかけるマジックです。うまく演じると大変効果のある演出になります。しかしヘタをすると嫌味で感じの悪いことにもなりますので乱用はしないほうがよいのですが、この「ピッグテイル」や、2匹のウサギに筒をかぶせると移動するものなどは、まず誰が演じても大丈夫です。特に子供には大変うけます。

今回これを紹介しようと思ったのは、『マスターズ・カード・テーブル』という私家本に、これとほぼ同じ現象のものが紹介されていたからです。『マスターズ・カード・テーブル』というのは今から1970年頃、伊藤正博氏が、ご自分がお読みになった本や、講習会等で覚えたカードマジックを整理するために記録された私家本です。740ページを越えるノートに、それまで日本で翻訳されたカードマジックのほとんどすべてが網羅されています。

これに「三匹の子豚」として、3枚のカードを使うものが紹介されていました。原案者はテンヨーの加藤英夫氏となっていましたので、先日加藤さんにおたずねした次第です。すると、確かにカードを3枚使うものは加藤さんの原案であり、額を使うものは当時、テンヨーから発売していた「ピッグ・テイル」であることを教えていただきました。ただしこの「ピッグテイル」はテンヨーの本社にも残っていないそうです。子供用のサッカーマジックとしてはとてもかわいいマジックですので、この際、復刻していただけないものかと期待しています。

なお、加藤さんの3枚のカードを使うものは、伊藤さんが加藤さんの了解を得て、仲間の方に配布するのに、ごく少数作られたことはあるそうです。そのカードがどういう経緯かは忘れましたが、20数年前から私の手元にも一部あります。

テレビで40年近く前に見たマジックがテンヨーから売り出されていたものであることや、カードを使うものが加藤さんの原案になるものであることなど、長い間、疑問に思っていたことがわかり、すっきりしました。

テンヨーならびに加藤さんにはあつくお礼を申し上げます。

追加:上にありました2枚のブタの絵は、デザイン関係の仕事をなさっているY.S.さんに、今回新たに描いていただいたものです。


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