千里眼
1998/10/8
最初に昔、テンヨーで販売していた木製の箱です。40年近く前に購入しました。そのときの値段がいくらであったのか覚えていませんが、1,500円か3,000円のどちらかであったと思います。
現象
上の写真のような木製の箱とふたがあります。本当は、箱を縛る紅白の紐もついていました。
術者は観客に対して後ろを向きます。箱とふたを観客に手渡し、中に何か適当な大きさのものを入れてもらいます。観客自身の持ち物、例えば、タバコ、ライター、財布のようなものでも、テーブルの上にある適当なものでも構いません。
入れたらふたをして紐を掛けてもらい、ふたが開かないようにしっかり縛ってもらいます。
術者は観客の方を向き、箱を受け取ります。ふたを開けることなく、箱を額の辺りに持って行くか、テーブルの上に置いて中のものを透視します。ずばり、箱の中のものを当ててしまいます。
コメント
「千里眼」という名前からもわかるように、随分古典的な雰囲気のマジックです。 メンタルマジックの一つとして演じれば、それなりのマジックになると思うのですが、いまではすっかり消えてしまいました。現象自体は、見えないはずの箱の中を透視するだけのことですので、地味なのでしょう。しかし、某宗教団体の教祖が、これと同様のことをやって、信者からお布施を集めていました。それは信者に、悩み事を短冊のようなものに書かかせて、封筒に入れた後、しっかり糊付けし、開封できないようにして、教祖に提出させます。教祖は別室で「お祈り」をすることで、中に書かれた悩みを読みとり、その悩みに答えるというものです。これは、入門用のマジックの本にも載っているような簡単なものですが、それでも信者に、自分の「超能力」を見せつける格好のネタになっていたようです。どうもこの種のトリックというのは一歩間違うと、悪用されがちなので困ります。
話が少し逸れますが、昔、私の所属している大阪奇術愛好会で、「クロース・アップ・マジックを楽しむ集い」を開きました。そのとき、メンバーの赤松洋一氏が見せてくれたマジックでおもしろいものがありました。次のようなものです。
封筒を5つほど用意して、それをよく混ぜてもらいます。術者が後ろを向いている間に、5人に封筒を一つずつ取ってもらい、それぞれの封筒に、自分の持ち物を入れてもらいます。コイン、切手、お札、靴べら、ハンカチ、コンビニのレシート等、何でもよいのですが、名刺や定期券のように名前が書いてあるものや、容易に個人が特定できるものは避けます。封筒に入れたら、中身が出ないようにホチキスで封をしてもらいます。誰かに5つの封筒を集めてもらい、よく混ぜてもらいます。観客自身、自分の封筒がどれかわからないくらい混ぜてもらいます。
術者はテーブルの上にある封筒の一つを取り上げ、封を開けて中から品物を取り出します。そして、例えば「レシート」が出てきたとします。
「普通、このようなものはすぐに捨ててしまうものですが、このようなものまできちんと保管している人は、何かにつけて慎重で、貴重な面な人です。たぶん、この中で、そのようなことをするのは○○さん、あなたでしょう」と、ずばり持ち主を当ててしまいます。このようなことを5つの封筒全部でおこない、すべて、品物を見ただけで、誰の所有物か当ててしまうのです。
このマジック自体は赤松氏のオリジナルではなく、昔からあります。赤松氏の工夫は、封筒を選ばせるより前の段階で、目隠しをするなり、後ろを向いていてもよい点です。
結局、このタイプのマジックが、どれほど効果を上げるかは演出次第です。T.P.Oを考慮して、それなりの演出で見せたら、十分、不思議なマジックになると思います。