something interesting

1998/9/22


お札の貫通

 


お札に鉛筆やペンを突き刺し、完全に貫通させた後、お札を調べてもどこにも穴があいていないというマジックがあります。

このタイプのマジックは昔からあることはありましたが、今から20数年前、プロマジシャンのジョニー・広瀬氏が大阪の阪神百貨店のマジックコーナーでディーラーをなさっていた頃考案した「お札の貫通」現象は画期的でした。左の写真のように、お札と同じくらいの大きさの紙を用意して、それでお札をカヴァーします。鉛筆を観客に渡して、お札と紙を一緒に突き破ってもらいます。鉛筆を抜いた後、紙を取り除くと、カヴァーの紙は破れているのに、中のお札はどこにも穴が開いていません。

初めてこれを見せてもらったときは不思議でした。それまで、広瀬氏は見せてくださったマジックは100%、タネも教えてくださっていたのに、これに関しては、「しばらく秘密にしておきたいから」ということで教えてもらえなかったのです。そのため、私は数年間、このタネを知らなかったのです。これは大変優秀な方法です。後年、広瀬氏がレクチャーなどでやり方を公表したら海外でも反響があり、外国のマジシャンもヴァリエーションを考案しています。

その後、関西の奇才、増田氏がカッターナイフを使う方法を考案しました。この方法では、突き刺した後、ナイフを抜く前に紙とお札を広げて、確かに刃がお札に刺さっている状態を見せることができます。

海外ではカヴァーの紙を使わず、お札にボールペンを突き刺すネタも売り出されました。 ペンに仕掛けのあるタイプとしては、数年前、ジョン・コーネリアスが売り出した"Pen through Anything"が決定版かもしれません。上の写真のように、観客から借りたお札にペンを突き刺し、完全に突き刺さっていることを裏、表、どこからでも見せることができます。最後にペンを引き抜くと、お札には穴が開いていません。Mr.マリックも何度かテレビでやっていましたからご覧になったかも大勢いらっしゃるはずです。テーブルホッピングのプロなども、いつでもどこでも見せられるので重宝しています。またお酒の席などでは、観客からお札を借りてこれを演じると、そのままチップとしてもらえることも多いので、一部の間では、「金の成るペン」とも呼ばれているそうです。(笑)

いずれにしても、このタイプのマジックは即席マジックとして優秀です。扱う素材がお札やペンといった、だれでも普段から見慣れているものばかりですから、観客も怪しいとは思いません。これはマジックではとても重要なことです。

これまでに発表されたものは、大きく分けるとペンに仕掛けがあるタイプとお札に仕掛けがあるタイプに分けられます。ところが、先日、UGMの会員用ビデオ(No.6)を見ていると、ヒロ・サカイ氏が観客から借りたお札で、しかもカヴァーなし、ペンなし、自分の指を使って、指をお札に突き刺すマジックを紹介していました。このページの最初にあった写真がそれです。終わった後は、観客にお札を手渡して調べてもらえます。名前は「カラテ・ビリュージョン」となっていました。これは売りネタではありません。お札にも、指にも(笑)仕掛けがないので、売りネタにはしにくいのでしょう。ヒロ・サカイ氏のレクチャーに出席すると以前からやっていたようです。私は今回、上記のビデオで初めて知りました。タイミングよく演じると、本当に破れたように見えます。

いくつかお札に何かを突き刺すタイプのマジックを紹介しましたが、一概にどれがベストとは言えません。まあ、ネタの値段から言っても、コーネリアスの「ペン・スルー・エニシング」が一番説得力がありそうですが、あれも、より一層破れた部分を強調しようと思えば多少の準備が必要です。手軽さという面から言えば、ヒロ・サカイ氏の方法がベストでしょう。広瀬氏のものも、適当な紙さえあればいつでもできますから、それほど面倒ではありません。いくつか試してみて、お好きな方法をひとつマスターしておくと、優秀な即席マジックがひとつレパートリーに入ると思います。


INDEXindexへ 魔法都市入り口魔法都市入口へ
k-miwa@nisiq.net:Send Mail