2010年2月9日(火) |
茨城県茨城町・涸沼(ひぬま)
茨城県の中央近く、霞ヶ浦・北浦の北方にある涸沼で寒シジミを食べてきた。
涸沼のシジミは、利根川下流のシジミが堰の設置で駄目になってからは、関東では残された産地になった。 ヤマトシジミの出荷量では全国第4位の貴重な水域だ。 涸沼は海水が入り混じる汽水湖で、シジミの他、シラウオ、ハゼ、ワカサギ、手長エビ、ウナギなどが名産だ。 ボラも上がってくるし、昭和初期には涸沼ニシンが大漁に獲れたそうだ。 ヨシが茂り、川舟が多い風景はのどかで、何処かに忘れた光景を目の前にしたようだった。 |
川と湖と海の地形図。 涸沼は、那珂川に注ぐ。
|
|
この日、小幡城を探索してから涸沼に向かった。
涸沼川にかかる涸沼大橋のあたりは、一面にヨシ(=アシ)が生い茂ったヨシ原になっていた。
そのすぐ下流から湖になる。
湖岸に沿って走っていた。
公園看板のかかった駐車場(マップコード:239402053*41)があったので停めて、歩いて湖岸方向に向かった。
涸沼に突き出た小さな岬に出た。
青白っぽい湖が眼前に広がっている。対岸は高い丘や建造物も無く、一面に広い空だった。
この日は、頬に暖かい強風が吹いていた。
ここの岸辺は砂浜だった。 | |
涸沼は風に波立ち、砂浜には波が打ち寄せてる。
|
|
シジミ漁の小船が操業していた。
涸沼のシジミ漁は「手採りカッター漁」という。 動力に頼らない自然にやさしい漁法だ。 |
|
波打ち際に入って、数人の人が何かを網ですくっていた。
シラウオ漁だった。
ピンピンした半透明のシラウオを見せてもらったが、想像以上に大きかった。
遊漁券を買って楽しんでいるようだ。
まもなく禁漁になるとのことだった。
グローブの上のシラウオ 大きくて とても綺麗だ。
|
ここでオオワシを見た。
双眼鏡でしきりに上空を眺めている二人連れがいて、近づいていったら、オオワシが来ている、と、双眼鏡を手渡してくれた。
一羽のオオワシが、ピンと羽を張ったまま、羽ばたくことなく上空で留まり、 移動していた。 レンズを通して、黄色っぽい頭の先端と、白い尾先も見てとれた。 オオワシは羽先の間が2mほどもある大きな鳥だ。
毎年、今頃から現れるそうだ。
|
|
更に進み、涸沼自然公園に立寄ってから、「うなぎや」という店へ入った。
普通名詞をそのまま店名にした店で、田舎だから可能だな、と可笑しく思う。
ここが、涸沼でとれるシジミや川魚を出す店だ。 湖畔に建っており、客席からは湖が臨める。
<うなぎや メモ> |
|
平日の火曜日であったのでガラガラかと思って扉を開けたら、店内は満席で吃驚した。
湖畔の風景を見ながら空くのを待って、席に着いた。
気になる川魚料理の値段だが、 ・かばやき 1,500円 がメインであった。 |
ここで、シジミのぬた、手長エビのから揚げ、シラウオの天ぷら、シジミ汁、うな重を選んた。
最初に出てきた「シジミのぬた」は、珍しかったが味も良かった。お奨めだ。
涸沼産の「手長エビのから揚げ」は、四万十川のより小ぶりであったが、その分食べやすかった。
「シラウオの天ぷら」は、今が旬で、先ほど魚籠の中で跳ねていたのを見たばかしなので格別であった。
シジミのぬた 一箸つけたあとで写真を(シラウオが載っていた) | シラウオの天ぷら |
目的の「シジミ汁」は並でなく、躊躇せず大を注文した。
「ウナ重」も看板メニューだけあって、大きく、とても美味かった。
大椀のシジミ汁は紫色に輝いていた。 今までに食べた最高のシジミ汁の味であった。 |
|
窓からはのんびりした湖畔の景色が広がっている。
こういう辺鄙な場所で、その土地の美味しい魚介類を食べられるのは贅沢で幸せだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ところで、上のシジミ汁の写真を見て、気付いたであろう。
シジミがお椀の中で顔を出している、と。
そう、顔を出したシジミは氷山の一角で、その下にはシジミが一杯に詰っている、ということだ。
椀の中には、寒シジミが大量に入っていた。
これが二人分のシジミの貝殻だ。 箸先で身をほじくり出しているうちに、量があまりに多いため、 この殻の回数分だけ作業したのだから。 取り出しても取り出しても尽きない感覚であった。 地元の人が見たら笑ってしまうだろう。
|
|
宴のあと |
涸沼の寒シジミというと、3cm以上もの大玉が有名である。が、大玉は今や貴重で希少価値がある。
お店で食べたシジミ汁は普通サイズであった。そのかわり、入っているシジミの量は半端ではなかった。
湖に面した家々で、シジミの選別作業を見かけた。
貴重な大玉の寒シジミ。
|
|
岸辺の漁村の風景はなぜか心が和む。
特に、小舟のある光景はいい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
帰途、なるべく涸沼に沿って下ろうとして、堤防の上に出てしまい、県道から離れて迷った。
一面の枯れたヨシが対岸まで続く湿地帯の脇に入ってしまった。
ヨシ原の間に狭い水路が走っていて、小船が係留されていた。
今はウナギは活動していないが、活発な夏場には、この小船で天然の涸沼ウナギを沢山獲っているな、と感じた。
涸沼は、まだ豊かな自然が残っており、その環境は大切に残したいと感じた。
国産のヤマトシジミは、島根県の宍道湖、青森県の小川原湖、十三湖が有名だ。 私は、2月に雪景色の小川原湖で寒シジミとシラウオを食べたことがあるが、 やはり近場の関東の自然のなかにある涸沼での、今回の食事に軍配を上げる。
|
小幡城 (おばたじょう) | (入口のマップコード 239334514*33) |
今回の旅の目的地は、小幡城だった。
涸沼近くにある中世の城で、遺構が完全な姿で残っている。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
小幡城は、丘陵全体を、縦横に掘り崩し、土塁と空堀とで築いた驚異の土の城である。
複雑に入り組んだ曲輪と10m近い深さの堀底が迷路となっている。
小幡城は鎌倉、室町起源の二説がある。 現在の形に整備されたのは1570年代。 全体で12ヘクタールの規模だ。 三方を湿地にかこまれた舌状台地に築かれている。
|
|
城は、湿地を除いた西からの侵入に備えた構えになっている。
西からの侵入者は空堀を三つ越えなければ本丸にたどり着けない。
途中、本丸正面の、尾根のような土塁上に凹状の変形武者走りがあり、少人数で両側の敵を頭上から攻撃出来る。
一方、深い堀底の道はカーブして見通しが悪く、完全に方向感覚が失われ、位置が分からなくなる。
この堀底に沿って進むと、城外の湿地へ出てしまうような構造になっている。
現在の入り口から、香取神社の森を望む
|
小幡城の入り口から振り返る |
深い堀底の道 |
上から矢を射掛けられれば堀底沿いに逃げるしかない |
←本丸は広く、周囲を立派な土塁(正面奥)で囲まれている。 広場にはシラカシやサワラの大木が生えている。 写真左手の人物と比較すると、土塁の高さや木の大きさがわかる。 右手の柵で囲われた窪みは井戸の跡。
←写真をクリックすると拡大します。 |
|
雑草や竹薮が茂っていない冬枯れの今が、お城探訪のベストシーズンだ。
すぐ近くを、茨城空港北ICに向かう高速道が出来ており、まもなく供用開始とのことだった。
茨城県内では、小幡城の他には、猿島郡境町の近くの逆井城(マップコード45507470*11)が印象深い。
ここは、広大な沼地を防衛線にした最前線の城で、空堀や櫓などが良く復元されている。
< メ モ > マップコードは、ポイントの緯度経度を一列の数字で表現した位置情報。 (マップコードはデンソーの登録商標) カーナビの目的地設定で入力すれば、あとはカーナビの指示でポイントにラクラクたどり着ける。 パソコンでは、マピオン(http://www.mapion.co.jp/)の地図サービスで、検索条件「マップコード」を選択して、入力すれば表示される。 携帯では、マピオンモバイルの「その他の検索方法から」が、マップコードをサポートしている。 |
2010年2月12日了 |
宇田川 東 |