三國志DS(KOEI)
(c)KOEI
発売:KOEI(2006) 機種:ニンテンドーDS ジャンル:シミュレーション
評価:★★★★☆
KOEIの三国志シリーズのニンテンドーDS版。シリーズでも評価の高いIIIをベースにしたオリジナルモードと、追加要素が加えられたDSモードを遊ぶことができるようになっています。単純に嬉しいのが200人を超える新武将たちの存在で、特に黄巾の乱前後と三国鼎立以降の武将が大幅に追加されているのでオリジナル版には存在しなかった黄巾討伐シナリオが登場したり、終盤のシナリオで武将が枯渇する恐れが少なくなった点は魅力。蜀軍びいきのステータスはこれはもう仕方のないところですが、より以上にひいきされている呂布のべらぼうな強さと合わせて三国志演義とはそういうものですね。
ゲームの基本は内政をして軍備を整えて戦争をしたらまた内政、というよくも悪くもKOEI歴史シミュレーションの定番もの。戦争よりも準備に時間がかかる面倒さがあり、困難なミッションを緻密な作戦で切り抜ける醍醐味には薄いですが、富国強兵を地でいくシステムは強国弱小国にかかわらず内政の重要さを意識させてくれます。かんたんに遊ぶことができるチャレンジシナリオが用意されているのもポイントで、主人公も難易度も異なるショートシナリオをチュートリアル的に攻略できる親切さはよいアイデアだと思います。中でも孟獲で三国と後漢の首都をすべて陥落させるシナリオ6チャレンジが歯ごたえがあっておすすめ。
新要素が多々ある一方で内容やマップはオリジナルに準じているため、戦場よりも都市攻めがメインだったり水戦の必要がほとんどないのは残念なところでしょうか。虎牢関や長坂橋、赤壁から五丈原まで演義の戦いの多くが戦場で行われていることを考えると、例えば蜀攻めのルートは並んで通るのが不可能なほど狭隘な地形にするなど戦場ごとの特徴と合わせて印象を強くすることもできたのではないでしょうか。その他IIIで通用した攻略はほぼそのまま使えるため、KOEI定番の焦土作戦や雑魚武将連戦による兵糧攻めなど、いくつかの裏技的な手は好みに応じて使うなり封印すればいいかと思います。
追加要素では武将の能力を強化できるアイテム群が、オリジナルに加えて各都市で入手できる特産品が登場し、呂布の方天画戟や張飛の蛇矛、銅雀までさまざまなものが用意されているのは魅力です。ゲームバランスを崩すほど強力ではありませんが、ボーナスの効果が累積するようになっているので武力150を超える将軍すら作れるのは愛嬌といったところでしょうか。他には寿命を延ばすアイテムの存在と、政治が100を超えた軍師も助言に誤りがない完全軍師化するのは地味にありがたい変更点だと思います。一方で孫子の兵法書が登場しないという微妙なバグがありますが、ボーナスが累積するシステムでこのアイテムはむしろ存在しないほうがよいかもしれません。
武将ごとに覚えることができる様々な戦技も戦場での行動を多彩にしており、単純に大軍で一斉攻撃をするよりも効果的な戦いができるようになった点も大きな特徴。オリジナル版と同様に序盤は一斉攻撃中心、余裕ができたら騎兵と弓兵の多用が定番になる事情は変わりませんが弓兵の戦技が更に強力になっています。水滸伝の妖術ほどキワモノでもなく、三国志演義でたびたび登場する単騎駆けや一騎打ちなども使えますので、工夫次第でいかにも三国志らしい戦いかたができるかもしれません。欲をいえば伏兵は森でなく茂みでもできるようにして欲しかった点と、船上と城内での火は雨が降らなければ消えないようにしてくれればより三国志の戦いを再現しやすかったでしょうか。
その他、いくつか気になる点を上げるならまずタッチペン操作が使いづらくほぼ無意味なこと。特に戦場では方向キーの操作がきわめつけに不親切なのでタッチペンを使わざるを得ず、にも関わらず戦場外縁部の移動はペン操作がメニューにぶつかってやりづらいのは明らかにユーザーインタフェースが失敗しています。追加要素を中心にバグやミスも散見され、実際には効果がない戦技や能力、アイテムがあるのはいただけません。孫子の兵法書のバグと合わせてゲームに影響を与えるほどではありませんが、だからといってデバッグが甘くてよい理由にはならないでしょう。戦争コマンドで出陣前にキャンセルすると一部の物資が消えることがあるのも、ごく普通のテストをしていれば発見できるバグなので正直何をやっていやがると言いたくなってしまいます。DSの二画面があるのに情報画面で表示される内容が物足りないのも微妙なところでしょうか。
とはいえこれらの微妙な欠点がある上で、オリジナルの完成度の高さもあって携帯機でできる三国志IIIとしては充分以上におすすめができる作品です。データベースの存在も非常にありがたい一方で、どうせなら武将とアイテムの情報はゲーム中に見えるようにしてくれれば文句がなかった、と色々なところで気がきいていないのはKOEIの開発力が低いのか単に手を抜いているだけかは分かりません。好きな人にはおすすめですが、KOEIのトホホぶりにも寛容(not簡雍)さを示すことができる心の広さは用意したほうがいいですね。
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