魔城伝説3シャロム(コナミ)

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(c)KONAMI

発売:コナミ(1987) 媒体:ROM ジャンル:アドベンチャー
評価:★★★★☆
 コナミのMSX名作シリーズ魔城伝説完結編はアドベンチャーゲーム。三部作すべてがまったく異なるタイプのゲームになっていて、どれも尋常ではない難易度を誇っているので果たしてすべてをクリアした人はどれだけいるのだろうかと思わせるシリーズです。
 主人公は高校生でパソコンクラブに所属しているという「あなた」。ある日、ヒロインが手にしていたシャロムというゲームを起動したところゲームの世界に吸い込まれてしまいます。目を覚ました主人公の前に立っていたのが言葉を話すブタの女の子である「ブタ子」。彼女を連れた主人公は魔城伝説の舞台であるグリーク王国を救うべく、魔王ゴグを倒す冒険の旅に出ることになります。

 前二作を知っていると何故主人公が高校生なのか、正直導入に違和感を感じてしまいますが物語が進むうちにこの作品がまぎれもなく魔城伝説であることが明かされていくことになります。全編に主人公とブタ子の漫才めいた掛け合いがちりばめられていて、関西風味のノリの軽さと後の恋愛ゲーム路線を思わせる演出も方々に効いていますが、ストーリー自体はけっこうシリアスで容赦がありません。世界に魔王が三度訪れる、その三度目の世界が主人公とヒロインが住む世界であり、魔王の存在を教えるためにポポロンが作ったメッセージがシャロムというゲームであるという設定はけっこうお気に入りです。
 とはいえ個人的にはこの設定はゲーム開始直後に教えてくれても良かったのではないかと思わなくもありません。グランドクロス後のBGMもそうですが、この世界が魔城伝説であること自体が見事な演出になっているので、それを最初に明言しても良かったのではないかと思います。

 肝心のゲームはフラグ式のコマンド選択型アドベンチャーゲームで、世界中を歩き回って話を聞いたり謎を解いたりしながら各地にいる8体の魔王を倒していきます。魔王との対戦がミニゲームになっていて、アクションからブロック崩しにパズルまで幅広いですが、魔城伝説最強のボスと呼ばれる「パズラ」を除けばどれも物足りないのは勿体ないところでしょうか。
 あとは当時のゲームとしては珍しいものではありませんが、フラグ立てが相当面倒なので慣れない人はすぐに匙を投げてしまうだろう難易度に仕上がっています。リセット地方で穴に落ちるとゲームが本当にリセットされてしまうとか、洒落にならない冗談もありますが謎解き自体は理不尽な点がほとんどなく、人魚たちが無くしてしまった手紙の行方や、四つのダイヤでどれを選ぶべきかなど、大抵どこかにヒントを置いているのがむしろタチが悪いと言いたくなります。ブタ子との冗談めいた掛け合いまで、エンディングに繋げている丁寧さは見事と言いたくなるでしょう。

 ただ、そうした不親切さまで含めてよくできているだけに、逆に意味のない人々の存在や不要なほどのマップの広さ、コマンドの煩雑さなどに無駄な冗長さを感じてしまうかもしれません。もっとマップを狭くして村人の数を減らしても、このゲームの難易度にはほとんど影響しないでしょうしコマンドも「話す・見る・道具・何かする」だけで事足りる筈です。いわゆる雑魚戦闘もないので目的地まで歩く長さがかえって退屈に感じたり、コマンドの表示切り替えを行うのが億劫だったりとゲーム性とは異なる遊び易さでストレスを感じやすい点は残念なところではないでしょうか。
 何よりこのゲームで最も残念な点はボス戦の出来の悪さで、プーヤン風のデビル兄戦にブロック崩しで戦うリザード戦、そしてパズラ戦の三つを除けばコナミのMSX作品とは思えないトホホ感が漂う出来映えとなっています。レーベンプロの青い宇宙の冒険のように、テープ版全盛期の作品であればそれでも評価はできますがメガロムを使ってこれではちょっと許容できません。

 ですがそうした不親切ではあっても理不尽ではない、シナリオや演出もしっかりした充分以上の良作アドベンチャーゲームであるのも事実だと思います。むしろ良く出来ているだけに細かいところに勿体なさを感じるというのが正直なところでしょうか。特に謎解きの自由度が高く、ある程度行動の順番が前後しても構わないようになっている点はゲームの難易度を上げる役にも立っていて歯ごたえがあります。
 パスワードセーブ時にアイテムが保存されない不具合と、先程の不親切さを除けば名作と呼べる作品ではないかと思いますが、むしろ細かい不親切さがあるにも関わらずこのゲームをMSX一押しに挙げるファンがけっこういるということがこの作品の魅力を現しているのかもしれません。

 セーブポイントに西武ライオンズの選手たちがいるのは個人的にたいへんツボでした。
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