アークス(ウルフチーム)

arcus arcus
(c)WOLF TEAM

発売:ウルフチーム(1988) 媒体:FD ジャンル:ロールプレイング
評価:★★★★☆
 駄作を出すことで知られているウルフチームのゲームの中で、名作に値する貴重な作品。精霊を統べる金竜によって滅びを告げられたアルカサスの王国で、騎士の息子であるジェダ・チャフが父の死を機に旅に出るのが物語の始まりとなります。種族を越えた仲間と出会い、世界を滅ぼす黒竜がアルカサスを訪れる前に精霊と金竜を探さなければなりません。内容は正統派っぽい英雄伝説もの、FM−PACを活かしたものすごくきれいな音楽と、MSX2でも屈指の美しい画面が魅力です。

 基本システムはウィザードリィに近いですがレベルや経験値の表示は一切なし、各キャラクターごとに個別のモンスターや罠に対する経験値が存在するのが最大の特徴。例えばオーク相手に何度も戦っているとオークへの攻撃力が少しずつ上がっていきますし、先頭のキャラクターに何度も罠発見をさせていると少しずつ発見や回避の成功率が上がるようになっていきます。キャラクターごとのお気に入りの装備があるために、武器や防具の変更やそれによる強化が一切行われないのも、この手のゲームとしては画期的かと。
 他にもひろった薬草や鉱石を調合して薬をつくるシステムや、新しい場所に行くために地図やロープ、コンパスのような道具を揃えたり、よろず屋で値切り交渉をしたり酒場へ行けば無作為な会話がスクロールして画面に流れ続けるなど、数多くの新しい試みが行われています。戦闘では身を隠したり強引な突撃をはかったり、味方を守って反撃を狙ったり、疲労や恐慌に陥った仲間をはげましたりと多彩な行動が可能。精霊と出会うことで力を得る祭器とそれを用いて唱える魔法、複数の祭器を持つことで扱える複合魔法など、テーブルトークRPGを思わせる戦闘が楽しい意欲作です。

 一方、いろいろ試しているシステムが充分にはゲーム性に反映されていないところがあるのも事実で、経験値システムも新しいダンジョンで出会う新しいモンスターには意味がないので罠に対する経験値ほどにはありがたみが少なく、戦闘でも多彩な行動や煙幕のような道具まで使った攻撃ができるものの、回復が容易なために魔法が手に入ってしまうと、どうしてもそれに頼る戦闘になってしまいます。全体としては戦闘そのものを楽しむよりも、ストーリーや展開を楽しむことがメインになってしまうのは残念に思える一方で、驚愕のクライマックスにつながるお話を是非体験してもらいたい名作です。
 個人的には続編が出ない方がストーリーとしては良かったと思います。
>他の記事を見る