第一回大会
西暦2000年。太平洋上に浮かぶストライク・バック競技場。中本重工業主催により今回から行われる人型汎用機械同士の激しい戦いが幕を開けようとしていた。いくつかの障害物が置かれた広大な滑走路を思わせる競技場には、周囲を囲む観客席への流れ弾を防ぐ為の、エネルギーフィールドが貼られている。今大会のエントリー機は6体。これを3機ずつAB両ブロックに分け、各ブロックで二連勝をした機体が決勝戦、一対一で争う事となった。
派手なカクテルライトが踊るセレモニーが終了し、アナウンサーによる各機体及びパイロットの紹介が済むといよいよ一回戦が始まる。どんなに派手なライトであろうと、様々な兵器が着弾した時に生じる火花の華やかさに比べれば色褪せて見える事は間違いがないのであるから…。
Aブロック予選第一試合
Aブロック、記念すべき最初の試合は元戦闘機パイロットのネス・フェザード駆る軽量機ソードフィッシュと、外見は幼い少年に見えるがその反応速度は折り紙付きのシャル・マクニコルが操縦する中量機ハーフリングPro、双方ともチェインソードでの近接格闘戦を得意とする両機の一戦。射出時の中距離戦こそレーザーキャノンの撃ち合いになったが、その後は近接戦で一進一退の斬り合いが続く。高速機動で確実にダメージを与えるソードフィッシュに比べ、ハーフリングProは手数こそ少ないが強化装甲に守られて被害を最小限に抑える。開始15分、ソードフィッシュがラッシュをかけるが耐えきったハーフリングProが反撃の一撃、遂に相手の装甲を破壊した。
○ハーフリングProvsソードフィッシュ×(16分機動停止)
Aブロック予選第二試合
巴戦方式で二連勝した機体が決勝への駒を進める事になる第二試合。ハーフリングProに対するは、やはり元艦載機乗りというレイモンド・オース搭乗の遠隔でのロックオンレーザーを主武器とするフレイア。やはり中間距離から互角の撃ち合いの後、近接してチェインソードを振り回すハーフリングProだが、フレイアも軽快な操縦でこれを回避。離れると四本の追尾レーザーを放つがダメージは軽微で決め手に欠ける。この試合で意外な有効打となったのが中間距離でハーフリングProが放つレーザーキャノンで的確に相手の装甲を削り続け、フレイアも反撃の追尾レーザーを直撃させるが時既に遅く、セラミックボウガンの矢が装甲を突き破り、勝敗を決した。
○ハーフリングProvsフレイア×(16分機動停止)
Bブロック予選第一試合
続いてBブロック第一試合。いずれも命中精度は低いが高い攻撃力を誇る武器を装備した両機。神代進が操縦する、炎の翼にミラーコーティングと派手さが目立つ中量機ホウオウに対するは、巻き毛の長髪をした女性、ロストヴァ・トゥルビヨン騎乗のシアトリカル。試合はホウオウの必殺科学忍法火の鳥とシアトリカルのヒートブレードが交錯する近接格闘の展開になるが、互いに相手の攻撃を交わしては時に大打撃を与え、気を緩める事が出来ない。互角の攻防が続き、だが度々離れた中間距離でチェインガンを牽制に使うシアトリカルが常時ホウオウにプレッシャーを与え続け、開始12分、近接格闘戦に持ち込んだ瞬間互いに斬り結ぶがシアトリカルの熱刃がホウオウの装甲の隙間を直撃!これで半壊状態のホウオウに続けて情け容赦の無い一撃で勝負を決めた。
○シアトリカルvsホウオウ×(13分機動停止)
Bブロック予選第二試合
続いてこれに勝てば決勝進出となるシアトリカルと、それを阻もうとするのは移動砲台を思わせる大型機メタルギアの一戦。45mm多弾頭ミサイルを中心に凶悪な攻撃力を誇るメタルギアは開始早々ミサイルの大量射出を行うが、シアトリカルはそのことごとくを回避する。自然、中間距離でのチェインガンの撃ち合いが中心となるが、シアトリカルの恐ろしい程的確な射撃で、メタルギアの薄い装甲が次々と削られていく。開始9分から再び反撃に転じたメタルギアがようやく相手を補足、ミサイルを命中させ始めるが計36発発射したミサイルが3発しか着弾しないようでは勝負にならない。最後は計ったように正確なボウガンの一撃でメタルギアが機動停止した。
○シアトリカルvsメタルギア×(22分機動停止)
NAKAMOTOストライク・バック第一回大会決勝戦
ストライク・バック第一回大会、決勝戦は中間距離のレーザーキャノンでの的確な砲撃を主武器とする、シャル・マクニコル搭乗のハーフリングProと、遠隔での精密射撃と近接して一撃離脱のバランスに優れるロストヴァ・トゥルビヨン騎乗シアトリカルの一戦となった。両者とも予選ブロックを連勝で勝ち上がり、パイロットの実力にも機体の性能にも不安は無いと思われる。
円形の競技フィールド、対角線を挟んで外周沿いに設置されたカタパルト上にスタンバイする両機。カウントダウンが始まると同時に、カタパルト自体が滑るように動き出す。重力制御された競技フィールド内で、慣性に乗る両機。3…2…1…
カウント0の合図に合わせてカタパルトより両機射出、フィールド内を旋回しつつ相手の位置を補足する。歓声の響く中、両機は近距離に対峙。ファーストアタックは姿勢制御の早かったハーフリングProがチェインソードを振り回して命中、シアトリカルもヒートブレードで反撃するが、やはりバランスが崩れていたか命中せず。それでもそのままの体勢からなぎはらうような返しの二撃目が命中、ダメージを与えたところで更に両者の攻撃が同時に命中して展開は全くの互角に見える。強化装甲の上げる火花が緊迫感と緊張感を煽る。
一旦間合いを取って中間距離、牽制のキャノン砲の撃ち合いは両者とも命中せず、得意の一撃離脱を狙って再び距離を詰めたシアトリカルのヒートブレードが擦るがハーフリングProも反撃してチェインソードの攻撃が連続で命中!一撃のダメージは軽微だったが、シアトリカルも相応の被害を受ける。ここで状況打開を図ったトゥルビヨンはハーフリングProの追い打ちのチェインソードをまともに喰らいながら、ヒートブレードの一閃を相手の機動部に直撃!
続く派手な斬り合いで更にヒートブレードの熱刃をめり込ませるシアトリカルに、手数で反撃するハーフリングPro。その後両者やや気負い過ぎたか、近接戦は連続して空振り、マクニコルが得意戦法を狙って距離を取ると、牽制のレーザーキャノンが命中する。これでペースを握るのがハーフリングProの戦術だが、それはシアトリカルの絶好の間合いでもあった。
一気に決着をつけるべく接近するハーフリングProだが、より以上の加速で真正面から突撃を図るシアトリカル。相手のレーザーキャノンを鏡面装甲で拡散させると、そのままスピードを落とさずに機体を交錯、狙いすましたヒートブレードの一撃!これでハーフリングProを完全に機動停止させた。
○シアトリカルvsハーフリングPro×(19分機動停止)
総合成績
ロストヴァ・トゥルビヨン シアトリカル ドラグーン 三戦三勝
シャル・マクニコル ハーフリングPro ドラグーン 三戦二勝
ネス・フェザード ソードフィッシュ ワルキューレ 一戦0勝
レイモンド・オース フレイア ワルキューレ 一戦0勝
神代進 ホウオウ ドラグーン 一戦0勝
アリサ・ブラングウェン メタルギア ティーゲル 一戦0勝
※ストライク・バック競技において使用される機体は強化フレームにより構成された本体に、センサー装甲を被せる構造を取っている。もともとは汎用性を持たせる事で状況に応じた装備を着脱させる事を可能とする為のシステムであるが、この装甲自体に制御システムと信号発生装置を備える事により、装甲が破壊されると同時に自動的にシステムダウンによる機動停止、更に信号途絶により相手機の攻撃操作が凍結される仕組みになっている。このセンサー装甲システムと弾頭の厚い兵器を使用する事により競技者の安全が確保されているが、無論それが100%万全であると言い切る事は出来ない。
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