第七回大会


 西暦2001年12月。中本工業主催ストライク・バックも第7回大会を迎える。競技が進むに従って洗練が見え始め、機体と装備に合った戦法が確率され出すようになってきた。軽量機による近距離ブリッツ戦闘、そして前体会の中距離高出力兵器による優位性確保が戦法として確率されつつあるが、新技術の導入が革新をもたらす例もまた珍しいものではない。今回の大会ではチューンナップ用のオプション装備の導入が開始され、複合強化装甲や加速ブースター、オートセンサーや光学的ジャマーが戦局にどのような影響を与えるかが注目されていた。


トーナメント予選

 今大会のトーナメント登録者は9名。通常8名で実施されているトーナメントで、新規参加となるコルネルオ・スフォルツァ騎乗のファルコを常連シャル・マクニコル騎乗のポテンティアティスが迎え討つ事となった。連敗の続いたシャルは機体を乗り替え、再起を図っての番人役である。双方が前大会優勝の高出力収束レーザーを装備しており、高エネルギー同士の撃ち合いが予想された。
 試合は双方の希望通りの中間距離から開始。ファルコのライデンレーザー、ポテンティアティスのカスタマイズされたライトアローが交叉するが、命中数でポテンティアティスが勝るが反撃の撃ち合いではファルコがレーザーを一発着弾させて五分の展開。しかしすぐさまポテンティアティスがライトアローを連続着弾、ペースを握る。
 フィールド内に高エネルギーが充満する緊迫した展開、両者引く様子の全くない撃ち合いはファルコがライデンレーザーを直撃させて一気に優位に、ポテンティアティスの反撃も命中するが、厚い装甲に阻まれて効果は今一つ。展開は命中精度に勝るライトアローが確実にファルコの装甲を削り、反撃のライデンレーザーは単発で大ダメージを与える形で一進一退の攻防が続く。続けて双方の装甲を掠めた一撃で、両機ともに機動停止寸前に。
 とどめを狙った派手な撃ち合いは双方はずれ。これで双方の視界に僅かな差が出たか、ファルコのレーザーを寸前でかわしたポテンティアティスのライトアローが命中し、高出力での削り合いを制した。

○ポテンティアティス(8分機動停止)ファルコ× 2vs-1


トーナメント一回戦

 前体会優勝の中間距離の女王、ロストヴァ・トゥルビヨンはネイティブダンサーを装備変更して登場、対するはやはり優勝経験のあるネス・フェザード、攻撃性に特化したスレイヴバイパーに騎乗しての一戦。
 開始早々の遠距離戦はネイティブダンサー、フィッシャーキングの火線とスレイブバイパーの高精度ミサイル、サイドワインダーが交錯するがいずれも外れ。そこから接近して得意の中間距離に持ち込んだネイティブダンサーは連装式光学レーザー、バーチャーを射出する。初弾は回避されたが続けての攻撃は命中、更に続けて命中させて先制する。双方が接近してネイティブダンサーのセイバートゥース、スレイヴバイパーはサーペントソードで斬り合うがこれも命中せず。通常はここから距離の奪い合いになるが加速ブースターで一気に後退、間合いを取るとネイティブダンサーはバーチャーを射出。これは回避されるが反撃手段の無いスレイヴバイパーにとっては極めて不利な展開になった。更に続けて二撃目、三撃目と回避するが四回目の射出が装甲を掠り、続けて回避から六回目のバーチャー射出は命中。とにかく反撃に出ることのできないスレイヴバイパーに対して容赦の無いバーチャー射出が続けられる。回避、続けて命中せず、命中、回避、命中、命中と徐々に精度も上がってきた。
 ここまでネイティブダンサー優位の一方的な展開に、ようやく近接間合いを取ることに成功したスレイヴバイパーがサーペントソードをようやく命中、装甲を一気に削り取るが反撃もここまで。加速ブースターで距離を保ったネイティブダンサーがその後は一切の反撃を許さず、確実に相手に攻撃を着弾させて機動停止に追い込んだ。試合時間25分に達する長期戦となったが、内容的には完勝だったと言えるだろう。

○ネイティブダンサー(25分機動停止)スレイヴバイパー× 29vs-2


トーナメント一回戦

 毎回こまめに機体を乗り替えてくるテムウ・ガルナは今大会では全距離対応型の重量機ガラティーンに乗って登場。対する山本いそべは頑なに猫デザインの機体、猫たーぼV12RSで出場。
 両者中間距離から戦闘開始、ガラティーンのブレイズホイールと猫たーぼの猫つめ、高出力の熱線と光学レーザーの撃ち合いは相手の攻撃力を警戒したためか、回避優先の抜き撃ちは双方が外れ。続けて撃ち合い、今度は双方が命中させ猫たーぼの薄い装甲が削られるが極端な攻撃偏重の分だけ反撃の応射も強烈、ガラティーンに大きなダメージを与える。一気に接近、ベルティナクレインの一撃は外れて猫しっぽの可変式の刃がガラティーンに命中、追撃を与えてペースを握る。離れてブレイズホイールを確実に回避、猫つめが更に命中。ガラティーンの厚い装甲は連続攻撃を耐えてはいるが、展開では完全に押されている。更に猫つめの連射、派手な光学エネルギーにセンサー装甲が彩られ、観客を大いに沸きたたせる。
 とどめを狙った猫たーぼは接近して猫しっぽの一撃、これは装甲に阻まれダメージ軽微、離れて猫つめの射出は外れるが続けての撃ち合いで直撃させてガラティーンを機動停止。反撃のブレイズホイールも命中したが、及ばなかった。

○猫たーぼV12RS(8分機動停止)ガラティーン× 29vs-7


トーナメント一回戦

 参加回数が重なるに従って勝率も上がってきている静志津香騎乗ののんびりエターニア。対するは常連ながらメカニックの調整整備に苦労が続いているレイモンド・オースとアークロイアル。両機ともに近接格闘能力を持ち、のんびりエターニアは遠距離ロックオンレーザー、アークロイアルは中間距離ライデンレーザーを装備した機体コンセプトとなっている。
 まずは接近、レーザーメスとチェインソードでの斬り合いはのんびりエターニアが先制、続けての攻撃は双方外れたが更にレーザーメスがアークロイアルの薄い装甲に突き刺さる。展開が傾いたかと思われた一瞬、距離を取ったアークロイアルがライデンレーザーを射出!収束した高出力の光学レーザーが複数本のんびりエターニアに突き刺さり一気に形勢逆転。
 畳み掛けようと近接格闘戦に移行するアークロイアルだが、斬り合いの技術では意外にエターニアに分があり、チェインソードの攻撃を回避した後でレーザーメスを確実に命中させる。続けて双方相打ち、装甲で劣るアークロイアルは不利を悟って距離を離すと再びライデンレーザー射出、のんびりエターニアも懸命に回避するが一発直撃して機動停止寸前になった。
 が、ここで更に遠隔距離にまで移行したのんびりエターニアが連装式ロックオンレーザーを発射。軌道計算されて弧を描く反射レーザーがアークロイアルを貫き、のんびりエターニアが逆転勝利を収めた。

○のんびりエターニア(9分軌道停止)アークロイアル× 1vs-7


トーナメント一回戦

 第一試合を勝ち進んだポテンティアティス、対するは攻撃偏重型にしつつ装甲を可能な限り強化した重装甲ホウオウと神代進。開始早々ポテンティアティスがライトアローで先制、一発命中させるがダメージ軽微。高出力の筈の収束レーザーでもホウオウの分厚い装甲は弾き返し、重いハンマーウイングで反撃。だがこれを回避したポテンティアティスもライトアローを連続発射、戦法を着弾数で勝負する形に切り替える。ここで一旦遠距離まで離れたホウオウはレッドアイを発射、熱線が命中してポテンティアティスにダメージ、展開を互角に戻す事に成功した。更に中間距離に移行しての撃ち合いは双方外れ。
 続けて撃ち合い、ポテンティアティスのライトアローが複数弾ホウオウに命中するが、どうしても装甲を抜けて大きなダメージを与える事ができない。ホウオウの無骨なハンマーウイングの反撃が遂に命中し、一撃で大きなダメージを与える。それでもまだ展開は互角、続けての撃ち合いは双方外れたものの弾数勝負でライトアローを一撃、二撃、三撃、四撃と確実に当てていくポテンティアティスがペースを握る。開始10分までペースはポテンティアティス、ダメージは互角といった展開。
 10分を過ぎても状況は変化せず、双方が続けて攻撃を外した後でポテンティアティスがホウオウの装甲を地道に削り続けるが、14分遂にハンマーウイングに捕捉されて重い鉄塊が直撃!反撃のライトアローを無視するかのような一撃が更に命中、被害状況を完全に五分に戻される。綱渡りのような戦闘を続けるポテンティアティスはそれでも確実にホウオウの装甲を削り続けるが、更にハンマーウイングが命中。ホウオウも追いつめられているが一撃で相手を沈められる攻撃力を武器に制圧前進を続ける。
 最後の綱渡り、ポテンティアティスのライトアローが一撃、二撃、三撃と命中、とどめとばかりに両者攻撃に出ての撃ち合いはライトアローが四発完全命中、反撃のハンマーウイングも直撃して両機同時にセンサー装甲が破壊され機動停止。被害状況による判定が行われ、ホウオウが準決勝進出を決めた。

○重装甲ホウオウ(21分両機機動停止による判定)ポテンティアティス× -1vs-3


トーナメント準決勝

 一回戦を高出力レーザーで圧倒した山本いそべ&猫たーぼV12RSと、接戦をロックオンレーザーの一撃で制した静志津香&のんびりエターニア。
 近接格闘戦から中間距離での撃ち合いに特化した猫たーぼは開始早々、猫しっぽの可変ブレードでエターニアの装甲を派手に削る。だがのんびりエターニアも確実にレーザーメスを命中させ、装甲の薄い猫たーぼに大きなダメージ。
 離れて中間距離。四連装高出力の猫つめが同時発射、2本が直撃。ペースを握るかと思われたがウイングブースターで一気に加速したエターニアが猫つめの射程外に逃れると、ロックオンレーザーを連続射出!抜き撃ち状態で一発命中、更に狙って二発が命中しダメージ逆転。続いて加速、移動しながらの抜き撃ちは回避されたが更に一発、二発と連続命中。装甲の薄い猫たーぼを一気にしとめて初の決勝進出を決めた。

○のんびりエターニア(7分機動停止)猫たーぼV12RS× 17vs-11


トーナメント準決勝

 前回優勝、常に安定した戦績を見せるロストヴァ・トゥルビヨンとネイティブダンサー、そして大会ごとに機体特性の研究と微調整を進めている神代進と重装甲ホウオウ。
 間合いは遠距離、ネイティブダンサーのフィッシャーキング発射で戦闘開始。ホウオウのレッドアイを巧みに回避するがホウオウの厚すぎる装甲もかすり傷程度しか受けていない。距離を詰めてバーチャーをやはり正確に命中させるネイティブダンサー、しかしホウオウのハンマーウイングの回避に失敗し、思わぬ大ダメージを受ける。これでバランスを崩したか、続けてのハンマーウイングも命中、直撃こそ避けたもののペースはホウオウが握る。
 ネイティブダンサーの攻撃は確実に命中するが、とにかくホウオウの装甲を破るにはあたわない。一方でハンマーウイングの反撃を一撃、二撃と続けてかわすがトゥルビヨンには気の抜けない展開が続く。最初から防御を放棄して制圧前進を行う神代から受けるプレッシャーは尋常なものではないだろう。
 遂にかわしきれず、ハンマーウイングをが命中。更に続けて命中してネイティブダンサーはダメージ甚大。一方のホウオウは連続して攻撃を受け続けているが厚い装甲が被害を最小限に抑えている。一旦距離をとっての撃ち合いは双方外れ、仕切り直して中間距離に移るとネイティブダンサーがバーチャーを確実に命中させ逆転に望みを繋ごうとする。だがホウオウの前進は止まらず、ハンマーウイングが更に二発連続して直撃!相手を機動停止寸前に追い込む。ネイティブダンサーも粘り強く反撃を続けるが、とどめのハンマーウイング直撃で完全に機動停止。倍以上の攻撃を命中させながら、圧倒して相手を制圧したのは『重装甲』ホウオウだった。

○重装甲ホウオウ(13分機動停止)ネイティブダンサー× 26vs-5


NAKAMOTOストライク・バック第七回大会決勝戦

 互いに決勝進出は初。更に重装甲に任せて制圧前進をかけるホウオウと機動性を駆使してロックオンレーザーの射撃を狙うのんびりエターニア、ともにこれまでの優勝機とは異なる独自の機体コンセプトで勝ち上がってきている。タイプの異なる両機の性能を比較すれば、ホウオウはダメージの高い攻撃を如何に命中させる事ができるか、エターニアは装甲に勝る相手に如何に手数で勝る数量の攻撃を命中させる事ができるか。ともにその比べ合いになるのではと思われた。
 両機スタンバイ、球形フィールドの外周に沿って据え付けられたカタパルトを滑りつつ、同時に射出される。決勝戦の火蓋が切って落とされた。

 相対距離は中間。今大会猛威を振るったホウオウのハンマーウイングが先制の一撃を狙うが外れ。この距離では反撃能力を持たないエターニアはすぐにウイングブースターで距離を取るとロックオンレーザーを射出。挨拶代わりの一撃は掠ったのみで、ホウオウの厚い装甲にはダメージ軽微。続けてロックオンレーザーが命中。相応のダメージが通るがホウオウから反撃のレッドアイの熱線がエターニアを直撃!やはり攻撃力ではホウオウに分があるように見える。
 厚い装甲と高い攻撃力が相手の優位である限り、攻略するには相手に攻撃を当て続け、相手の攻撃を避け続けるしかない。のんびりエターニアはロックオンレーザーを確実に命中させ、更に続けて二撃、三撃とペースを取り戻し展開を互角に持ち込む。だが綱渡りを思わせる回避行動も虚しく、ホウオウのレッドアイの直撃を受けるとペースを引き離される。

 名前の通りのんびりした印象、この場合はホウオウの制圧前進のプレッシャーを感じさせないエターニアは離されたダメージ状況を五分に持ち込むべく反撃。相手の攻撃の隙をついてロックオンレーザーを確実に命中させる。更に武器の性能を最大限に活かし、回避行動を優先しながらの抜き撃ちでも精度の高いレーザーは相手の機体に吸い込まれるように命中。反対に一撃勝負のレッドアイの熱線はかわされ空を切る。
 続けてロックオンレーザーが命中、再びペースを握りかけたエターニアだがここでまたもホウオウのレッドアイが命中。ダメージは少なかったがバランスを崩した相手に畳み掛ける攻撃が今大会のホウオウの必勝パターンで、続けて高出力の熱線が二撃、三撃、四撃目までエターニアを貫く。わずか数分でそれまでの倍以上のダメージを受けたエターニアは機動停止寸前。
 逆転を狙いレーザーを命中させるのんびりエターニアだが、この状態になればホウオウは強引に押し切るだけとなる。自らのダメージを無視して発射したレッドアイの熱線がとどめとなってエターニアの装甲を貫き、ホウオウと神代進の優勝が決定した。

○重装甲ホウオウ(16分機動停止)のんびりエターニア× 15vs-4

cut


総合成績

神代進          重装甲ホウオウ     3戦3勝 通算10戦 6勝
静志津香         のんびりエターニア   3戦2勝 通算 8戦 4勝
ロストヴァ・トゥルビヨン ネイティブダンサー   2戦1勝 通算14戦10勝
山本いそべ        猫たーぼV12RS   2戦1勝 通算 7戦 4勝
シャル・マクニコル    ポテンティアティス   2戦1勝 通算14戦 9勝
レイモンド・オース    アークロイアル     1戦0勝 通算11戦 5勝
テムウ・ガルナ      ガラティーン      1戦0勝 通算11戦 7勝
ネス・フェザード     スレイヴバイパー    1戦0勝 通算 9戦 4勝
コルネリオ・スフォルツァ ファルコ        1戦0勝 通算 1戦 0勝
新庄ジュンペイ      奇怪王         1戦0勝 通算 4戦 1勝
中石譲          ねぷた祭り       0戦0勝 通算 2戦 1勝
マクシミリアン      アウグストゥス     0戦0勝 通算 2戦 0勝


ストライク・バック大会記録に戻る