第九回大会
西暦2002年5月。中本重工業主催ストライク・バックも第9回を迎え、今回は新規機体導入、一部の装備改変とデータの開示、またルールの修正など改変された新ルールによる大会となった。特に新しい競技においてルールが変更されること自体は珍しいことではなく、より戦略性に富んだ対応が求められるべく行われる変更は、パイロット以上にバックサポートの重要性が増すことになるだろう。最強の機体よりも寧ろ自分の機体と相手の機体とにあった最高の戦い方、を考えることがストライク・バック競技の神髄である。
特に装備の面に限定するならば、近接光学兵器としてレーザーメスとレイブレードの分化、携行散弾銃であるショットガンの導入、大幅な出力ダウンと大幅なトレス性能の向上を見たロックオンレーザーが新規兵器としてどれだけの影響を及ぼすか、という所であったろう。その効果のほどは、エネルギーフィールドに囲まれた競技場の中ですぐに明らかにされることになる。
トーナメント予選 モンキーマジックvsサルガタナス
久々に登場の新庄ジュンペイ、ストライク・バックの公式テストパイロットの一人である反面、リザーバとして毎回登場とはならないが一部のマニアには強い支持を受けている。今回は高速機動をコンセプトにしたモンキーマジックに騎乗。一方のテムウ・ガルナもやはりチームであるイハラ技研の方針なのか、毎回の機体乗り替えとデータの収集に余念がない。その中で「コクピットの狭さを改善して欲しい」とは未だ解決されないパイロットの意見であるそうだが。
中間距離の打ち合いから開始、高出力のソニックバーナーの光条がサルガタナスから吐き出され、いきなり一本が命中する。中間距離での反撃能力がない相手に続けて攻撃、モンキーマジックは機敏な動きでこれを回避するが続けての攻撃はやはり一発命中。だが俊敏な動作で接敵するとモンキーテイルを伸ばしてこれをサルガタナスに直撃させ、反撃こそ受けるものの状況を一撃で五分に引き戻す。
その後も人間の操縦限界を越えているかのような動きでソニックバーナーを連続回避しては、接近して確実に大ダメージを与えるモンキーマジック。意外な苦戦を強いられたサルガタナスだが、9分過ぎに捕らえたソニックバーナーの直撃で形勢逆転、追い撃ちも命中させて相手を巧みに捕捉すると、高出力レーザーで余裕を持ってとどめを刺した。
○サルガタナス(13分機動停止)モンキーマジック× 22vs-8
トーナメント予選 スレイヴ・バイパーvsブラック・オニキス
続いては初登場、流れの傭兵パイロットであるアナイス・ラングマルク。外見はおとなしげな妙齢の女性だが、寧ろスポンサー企業の名誉がかかっている傾向の強いストライク・バックでは実力さえあればパイロットの容姿も出自も問われない例が多い。対するスレイヴ・バイパー騎乗のネス・フェザードも優男の外見ながら過去に優勝経験のあるベテラン。小型機による高機動戦法では元祖に近い。
カタパルト射出から両者対峙、耐Gからの姿勢制御を終えた瞬間を狙ったスレイヴ・バイパーのショットガンが抜き打ちで命中、先制の大ダメージ。ここは経験の差か、一気に距離を詰めてサーペント・ソードを直撃、だがブラック・オニキスもレイブレードで反撃してかなりの被害を与える。先制で受けたダメージと鏡面装甲で拡散されてしまうレイブレードを不利に思ったか、距離を離してガトリングガンを直撃、だがここでまたもショットガンに捕捉されると被弾し、接近してサーペント・ソードで機動停止。初陣を飾れなかったブラック・オニキスは開始早々のダメージが最後まで尾を引く結果となった。
○スレイヴ・バイパー(6分機動停止)ブラック・オニキス× 7vs-6
トーナメント一回戦 アークロイアルvsポテンティアティス
戦績自体は安定しているものの優勝経験がないレイモンド・オースとアークロイアル、対するは連覇の経験があるが戦績が振るわないでいるシャル・マクニコルとポテンティアティス。復活を賭けて望みたい両者の一戦は新型機、白い悪魔の搭載量を利用したアークロイアルが大型兵器によってプレッシャーをかける展開となった。初弾のテイルパーツを直撃させ、ポテンティアティスのライトソードで堅実に削られるが中間距離のライトアローは回避して再度接近、ライトソードの攻撃を掠らせながらもテイルパーツの攻撃力で確実に追いつめていく。
だが中間距離に戻したポテンティアティスもライトアローの高出力レーザーを発射、これを直撃させてそれまでの不利を一気に逆転。大ダメージを受けたアークロイアルもそのまま加速して体当たりするかのように接近するとテイルパーツでポテンティアティスの装甲を貫く。双方の被害状況は全くの五分。更に互いにテイルパーツとライトソードで切り合い、離れてGダムハンマーとライトアローが交錯するが攻撃力でアークロイアルがわずかに勝る。最後まで粘ったポテンティアティスだがテイルパーツの攻撃をかわして反撃するも及ばず、返しの攻撃を受けて機動停止した。
○アークロイアル(11分機動停止)ポテンティアティス× 2vs-8
トーナメント一回戦 ファルコvsのんびりエターニア
対戦する機会の多い印象のある両機、重装甲高出力を売りにしているファルコを駆るコルネリオ・スフォルツァと、翼を思わせる背面ユニットに遠隔レーザーと近接レーザーメスを駆使した機動力で戦うのんびりエターニアと静志津香。初手はそののんびりエターニアが兵器実装をしていない中間距離から、ファルコのスプラッシュウェイブが炸裂する。一弾命中するがエターニアの鏡面装甲で光エネルギーが乱反射し、ダメージ軽微。
距離を離してファルコがギガンテックランチャーで狙撃するが、エターニアも今回から8連装となったロックオンレーザーを射出、一発の攻撃力こそ微小ながら高い命中率と累積ダメージで装甲を削る。更に追い打ち、ファルコの攻撃をかわしてのロックオンレーザーは一部が回避されながらも数発を命中させ、展開を優位に持ち込んだ。
こうなるとファルコにはやや分が悪く、ギガンテックランチャー直撃でかなりの損害を負わせたものの反撃のレーザーによる累積ダメージで返されてしまう。距離を詰めてスプラッシュウェイブは回避され、離れてギガンテックランチャーも外れると確実に複数弾を命中させてくるロックオンレーザーで装甲を削られてしまう。続けての狙撃をどうにか命中させるが展開を逆転するには及ばず、8本のターゲットから打ち出されてくるレーザーがファルコの厚い装甲の一点を突き破り、機能を停止させた。
○のんびりエターニア(9分機動停止)ファルコ× 17vs-3
トーナメント一回戦 サルガタナスvs海戦用ホウオウ−PEN
既に一戦を勝ち上がってきたサルガタナス。一方の鳥型メカであるホウオウは、今回は海上戦の研究のためと称してなんとペンギン型の機体で登場。だが一見色物と思わせておいて、機体性能とパイロットの技量、そして作戦が充分であれば外見と能力に何の相関性もないということはストライク・バックでは周知の事実でもある。
まずは挨拶代わりにサルガタナスがソニックバーナーを命中させる。対するホウオウPENのスプレーガンによる射撃は一発がかすったものの回避されて損害は軽微。だが接近しての切り合いではサルガタナスのペイントゥースがかすっただけなのに対して、ホウオウPENのハイパー出刃は装甲の隙間に直撃!更に続けての攻撃も深く命中して一気に損害率50%を越えさせた。
このダメージが尾を引いたか、慌てて距離を離したサルガタナスも高出力のソニックバーナーで反撃、命中させるが返しのスプレーガンを回避し損なって大ダメージを受けて機動停止寸前。続く捨て身の撃ち合いでホウオウPENにソニックバーナーを直撃させたものの、相手のスプレーガンも全弾命中。フィールド内の安全システムがアラームを感知する程のダメージを受けサルガタナスが機動停止した。
○海戦用ホウオウ−PEN(5分機動停止)サルガタナス× 11vs-19
トーナメント一回戦 スレイヴ・バイパーvsニジンスキー
更にベテランパイロット同士の一戦、ロストヴァ・トゥルビヨン駆るニジンスキーと一戦を勝ち上がったスレイヴ・バイパーの対戦。得意の中間距離からのスタートとなったニジンスキーだが、今回は珍しくチューニングを失敗したのかフレイムダンスの火線が虚しく空を切る。スレイヴ・バイパーのショットガンを確実に全弾回避する実力は流石だが続く攻撃は命中、返しの火線を命中させるがやはり精度が甘いのか、やや押され気味の展開となった。続けてバイパーがショットガンを三連で乱射、いずれも数発が命中するがニジンスキーのフレイムダンスは命中せず。思わぬ展開に戦況は完全にバイパーのペース。
6分過ぎ、相手の火線が衰えた隙をついてニジンスキーがようやく反撃開始。まずは精度の甘いままのフレイムダンスを辛うじて命中させ、そこから思い切った近接戦闘に移行する。バイパーのサーペント・ソードに捕らえられてかなりのダメージを受けるが奥の手、ミリオンミラーズを一気に懐で炸裂させてそれ以上のダメージを負わせる。累積ダメージが大きく、既に機動停止寸前となっていたニジンスキーだが脅威的な機動力で必殺のサーペント・ソードを回避すると逆転の炸裂弾を打ち込みまさかの大逆転、スレイヴ・バイパーを機動停止させた。
○ニジンスキー(8分機動停止)スレイヴ・バイパー× 7vs0
トーナメント準決勝 海戦用ホウオウ−PENvsアークロイアル
強力極まる攻撃力で一回戦を突破したホウオウPENと、やはり高い攻撃力で接戦を切り抜けたアークロイアル。だが開始早々にその攻撃力を活かしたのはホウオウPENで、中間距離から防御行動を全く無視したスプレーガンを命中させ、先制で大ダメージを与える事に成功する。
危険を悟ったアークロイアルも距離を取り、大型の90mmミサイルを命中させるがやはり攻撃特化したPEN砲の直撃を受けて劣勢を挽回するには到らない。相手を捕捉できないでいる間に続けてPEN砲で追い打ち、更にとどめの一撃を受けてわずか4分で機動停止。圧倒的な強さでホウオウPENが決勝進出を決めた。
○海戦用ホウオウ−PEN(4分機動停止)アークロイアル× 29vs0
トーナメント準決勝 のんびりエターニアvsニジンスキー
中間距離を得意とするニジンスキーと、その中間距離を捨てて遠距離からの狙撃を得意とするのんびりエターニア。双方のパイロットともに希望距離を確保する技術に非凡なものを持っているが、先の対戦で見えたチューニングの問題がニジンスキーにはハンデになると思われた。但し、鏡面処理により装甲が僅かに薄くなっているエターニアをフレイムダンスの火力が貫けば展開は読めないものとなるだろう。
カタパルト射出から双方同時に体勢を直し、得意の抜き打ちでフレイムダンスを発射するニジンスキー。一弾を命中させて先制するがやはり精度が甘いのか、続く攻撃は外れ。ここで距離をとったエターニアも必殺のロックオンレーザーをターゲットして発射、だがわずかに一弾がかすったのみでニジンスキーは他を全て回避に成功する。恐ろしいほどの機動力に場内から歓声。
だが距離を戻したニジンスキーのフレイムダンスはまたも外れ、ロックオンレーザーによる反撃は半分を回避に成功するが流石に捕らえられて形勢は互角。続けての連続攻撃、ニジンスキーはとにかく命中精度が低い点が大きすぎるハンデになり、三度の連続発射が全て外れた後にようやく一弾を命中。離れてロックオンレーザーもやはり半数は回避し、薄氷の上の優勢を維持する。
戦闘は長期戦となり、フレイムダンスの火線は外れ、ロックオンレーザーは回避される展開となるが、たまに命中させる火線によってニジンスキーが優勢を維持。だが開始16分、それまで懸命に回避を続けていたニジンスキーを遂にエターニアのターゲットが捕捉し、ロックオンレーザーが7発連続着弾!累積ダメージで一気に形勢を逆転した。続けてのレーザーは半数以上回避に成功したが、追いつめられたニジンスキーも再度の逆転勝利を狙って反撃、フレイムダンスを命中させる。だが捕捉されたターゲットを振り切ることができず、続けてのロックオンレーザー連続射出でジ・エンド。機体調整に涙を飲む形となった。
○のんびりエターニア(21分機動停止)ニジンスキー× 19vs-8
NAKAMOTOストライク・バック第九回大会決勝戦
改変された新ルールによる最初の大会。その一つである装甲選択はまだ完全に機能したとは言いがたいが、要所では勝敗に大きく貢献している。寧ろ一方の海戦用ホウオウ−PENの攻撃特化性能とそれを支える補助装備、そしてのんびりエターニアの改良版ロックオンレーザーの威力とが発揮されての決勝戦となった。
戦前評では全距離対応と高出力の攻撃力が余りに強すぎるホウオウPENが上。エターニアは機動力を最大限に活かしてロックオンレーザーの間合いを取り続けることが勝負の最低条件とされていた。もし中間距離、スプレーガンの間合いに入られればエターニアの勝ち目は殆どないだろう。
緊張の中、両機を載せたカタパルトがフィールド内を滑走。独特のペンギン型のフォルムをしたホウオウPENと、繊細な人型の機体に翼状の背面ユニットが天使か或いは悪魔を思わせるエターニアが射出される。新ルール最初の王者を決める戦いが開始された。
双方の間合いはエターニア希望の遠距離。だがこれは双方の条件がほぼ互角になるという条件に過ぎず、ホウオウのPEN砲が先制でエターニアを直撃!ロックオンレーザーは思わぬ機動性で回避され、初手から苦境に立たされる展開になった。
続けて遠距離を維持、PEN砲による狙撃は確実に命中し、しかも火力も高い。今度はエターニアも反撃のレーザーを連続命中させるがダメージでわずかに及ばない。先の対戦相手、ニジンスキーに比べて攻撃力に勝るが回避性能に劣るエターニアはホウオウの正確極まる射撃を避けることができず、更にPEN砲の直撃を受ける。だがターゲット捕捉に成功したロックオンレーザーも徐々に累積ダメージを上げ続け、攻撃力でPEN砲を上回った。
ここで展開はほぼ互角、双方が防御を無視した装甲の削り合いとなる。ごくわずかでも相手の攻撃をかわすか、相手に攻撃力が勝ればその場で勝負がつくと思われるが、最初に受けているダメージのハンデをエターニアが返せるかが鍵となる様相。4度目のPEN砲と、反撃のロックオンレーザーはまたも双方直撃し共に機動停止寸前。
そして互いに完璧に捕捉しあったPEN砲とロックオンレーザーが完璧に相打ちの形で双方に同時に着弾、直撃。ともにセンサー装甲を破壊されて機動停止するが、わずかなダメージ差の測定が行われて判定に、結果、のんびりエターニアが初優勝を果たした。
○のんびりエターニア(5分両者機動停止による判定)海戦用ホウオウーPEN× -4vs-5
総合成績
静志津香 のんびりエターニア 3戦3勝 通算13戦 8勝
神代進 海戦用ホウオウ−PEN 3戦2勝 通算13戦 8勝
ロストヴァ・トゥルビヨン ニジンスキー 2戦1勝 通算17戦11勝
レイモンド・オース アークロイアル 2戦1勝 通算15戦 7勝
ネス・フェザード スレイヴバイパー 2戦1勝 通算12戦 5勝
テムウ・ガルナ サルガタナス 2戦1勝 通算14戦 8勝
コルネリオ・スフォルツァ ファルコ 1戦0勝 通算 5戦 2勝
シャル・マクニコル ポテンティアティス 1戦0勝 通算16戦 9勝
アナイス・ランゲマルク ブラック・オニキス 1戦0勝 通算 1戦 0勝
新庄ジュンペイ? モンキーマジック 1戦0勝 通算 5戦 1勝
山本いそべ ** 0戦0勝 通算10戦 7勝
中石譲 ** 0戦0勝 通算 2戦 1勝
マクシミリアン ** 0戦0勝 通算 2戦 0勝
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