第十一回大会
西暦2002年10月。中本工業主催ストライク・バック第11回大会が大平洋上に浮かぶ「輝ける銀の競技場」で開催された。主催者挨拶と併せて、次回第12回大会は第二競技場として竣工予定の「斑の鳩競技場」で開催される事が発表、更に兵装の改変予定も発表される。
開発企業間の技術競争が機体性能に大幅な影響を与えるストライク・バックでは度々の兵装追加やそれに合わせたルール改変が行われるという事情は避けられないものであった。その中で少しでも理想に近い設計を行い、より完璧に近い技倆でそれを操るパイロット、そして補佐を行うオペレータ等スタッフの力によって勝敗は決定づけられるのである。特にセンサースコープや光学ジャマーの導入とスロット制限のある機体導入によるバランスの変化に関しては、新しい方程式を計算する為の用紙が必要となっているようであった。
トーナメント一回戦 ブルーエンストリネルvs夜明けのシューティングスター
今大会の登録機体は9機。抽選により一試合余分に戦う事になったのはテムウ・ガルナ騎乗のブルーエンストリネルとコルネリオ・スフォルツァ駆る夜明けのシューティングスター。両者スコープを装備して命中性能を重視、その中でブルーエンストリネルは機動性を、シューティングスターは攻撃性を主体とした戦法に出る。
双方の攻撃は遠距離から。ブルーエンストリネルの誘導熱線砲、セレストサンクションが炎の舌を吐き、初弾を直撃させて先制。続けて連続射出も直撃させてシューティングスターの損害率は一気に7割近くに達する。シューティングスター反撃のダイナマイトが150tは一発命中、名前に反してダメージは軽微。
開始早々にハンデを背負ったシューティングスターは接近、3式対空地雷を射出して命中させる。抜き撃ちになったエンストリネルの疾風龍突は命中せず、続けての射出も精度が甘く外れるが返しの対空地雷も回避。再び距離をとったエンストリネルがセレストサンクションを命中させ、追い討ちの再射出を直撃させてシューティングスターを機動停止。ダイナマイトが150tも命中していたが、やはり効果的なダメージを与える事はできなかった。
○ブルーエンストリネル(6分機動停止)夜明けのシューティングスター× 25vs-7
トーナメント二回戦 猫たーぼD5vsふわふわエターニア
前回トーナメント優勝の山本いそべ&猫たーぼと前々回トーナメント優勝の静志津香&エターニアとの一戦。基本コンセプトは変更せずに遠距離戦に設定し直した猫たーぼは機体バランスが恐ろしく重要とされる紫電で吉凶いずれと出るか、またエターニアもこれまでのヒット&アウェイスタイルから急襲攻撃スタイルに切り替えた、その方針を確かめる必要がある。
接近戦から開始、エターニアのロッドカッターの刃が弧を描いて猫たーぼに襲い掛かる。猫たーぼはこれを回避できず、薄い装甲を派手に削られて5割近い損害。慌てて距離を取った猫たーぼに硬質ニードルガンが追い討ち、開始2分でワンサイドの様相を呈する。
だが更に距離を離して待望の遠距離に持ち込んだ猫たーぼが満を辞して鮪ブレーカーを射出。肩に装備された某水中モーター(自粛)のようなポッドから大型ミサイルが発射、これが直撃して大ダメージを与える。危険を悟ったエターニアが接近、ニードルガンを抜き撃ちするがこれはかすったのみ。離れて猫たーぼが二発目の鮪ブレーカーを発射、これも命中させて僅か二発で損害率七割強。紫電系の高出力で打ち出される大型兵器ならあと一撃で充分機動停止できるだろう。しかしここで欲が出たか、狙撃体勢に入った猫たーぼの隙をついて加速、接近したエターニアがニードルガンを命中させて機動停止。最後はパイロットの判断が明暗を分ける形となった。
山本いそべ「すごく、激しく、馬鹿らしく(社是)」
○ふわふわエターニア(6分機動停止)猫たーぼD5× 11vs-1
トーナメント二回戦 赤いホウオウ−PENvsソニック・バイパー
制圧前進戦法の第一人者として秘かに恐れられている神代進はお馴染みのペンギン型ホウオウで出陣。誰かの専用で3倍らしい機体に外付けレーダーのエノレメスを配備、完全な攻撃主体スタイルである。一方ネス・フェザードは紫電の高速機動に可変型サーペント・ソード、戦術と相性次第で強烈な強さを発揮する反面、外れると怖いセッティングでの勝負。
両者中間距離から。赤いホウオウがビームライフルで狙撃。精密射撃である以上確実にかわさなければならないが、バイパーは一弾を回避したものの一弾が命中、先制を許してしまう。更にバイパーは加速して接近するが、この距離はホウオウも望むところ。ツインナギナタで容赦のない攻撃、高機動で初撃を回避するバイパーだが返しの二撃目は直撃!移動攻撃のサーペントソードは外れて極めて不利な状況に。
続けて双方の攻撃は回避、ツインナギナタの追い討ちを決めたホウオウはここまでくれば余裕の展開、最後は相打ち覚悟でツインナギナタの刃を深々と打ち込んで止め。バイパーのサーペントソードもホウオウの装甲を削ったが時既に遅く、相手の希望距離で削り合いの形になった事が装甲の薄い機体としては失敗だったか。
○赤いホウオウ−PEN(5分機動停止)ソニック・バイパー× 30vs-11
トーナメント二回戦 サルヴェ・レジーナvsポテンティアティス
この対戦で今大会の参加全機が揃う事になる。中距離の女王ことロストヴァ・トゥルビヨンは得意のドラグーン系サルヴェ・レジーナに騎乗。得意距離を維持する技倆とそこでの容赦のない攻撃が真骨頂だが、ここ暫く高い戦績を残している一方で優勝からは遠ざかっている。一方のシャル・マクニコルは試行錯誤が続いている状態、バランスがいい一方でそこから飛び出せずにいるのか、戦績が振るわない印象があるが実は勝率は安定している。
両者ともに機体バランスを安定させている、その勝敗に搭乗者の技倆が大きく関わるであろうことは想像に難くない。まずは近接戦闘からレジーナのキリエとポテンティアティスのヒートブレードが互いの装甲を削り合う。続けて双方の斬り合いは互いに回避、離れて中間距離はレジーナはディエス・イレ、ポテンティアティスはレーザーキャノンを抜き撃ち、互いにかすらせて状況は互角。
再び接近、互いの刃が斬り合うが僅かに出力の勝るポテンティアティスが僅かに優勢、中間距離に離したサルヴェ・レジーナに待ってましたとばかりに狙い撃ち、連装レーザーキャノンの砲撃を命中させて続けての追い討ちも命中、速攻に出る。
だが相対距離はあくまでロストヴァの希望する中間。一瞬操作の遅れたポテンティアティスを逃さずディエス・イレが直撃!鏡面装甲でレーザーを弾けると読んだレジーナが回避無視の攻撃でディエス・イレの圧縮熱線砲を続けて命中させると一気に逆転する。相手の累積ダメージを狙うポテンティアティスは乱反射する装甲にレーザーを連続で打ち込み、反射熱を利用して追撃。ディエス・イレの火閃がかすって機動停止寸前になるが諦めずにレーザーを打ち込み続け、レジーナの装甲も破壊寸前となっている。
一瞬の好機、それを狙ったポテンティアティスが速攻、接近してヒートブレードの一撃を命中させてレジーナの装甲を突き破る。だが冷静というより冷徹にこれを待ち構えていたレジーナは身を斬らせる覚悟で反撃のキリエの刃を深々と突き刺し両機機動停止、総合ダメージで勝負を制した。
ロストヴァ・トゥルビヨン「早いだけじゃ駄目なのよ、ボーヤ」
○サルヴェ・レジーナ(12分両機機動停止による判定)ポテンティアティス× 0vs-6
トーナメント二回戦 ブルーエンストリネルvsアークロイアル
一回戦を安定した実力で勝ち進んだテムウ・ガルナは二戦目、準決勝最後の一枠を賭けてレイモンド・オース騎乗のアークロイアルと対戦。双方が希望する遠距離からの打ち合いはブルーエンストリネルの高圧熱線、セレストサンクションとアークロイアルの90mmミサイルの交叉とで幕を開ける。だが精密射撃をしたセレストッサンクションの砲火は回避され、回避行動から抜き撃ちをしたミサイルは外れとなる。続けての砲撃、エンストリネルの砲撃も命中するがアークロイアルの大型ミサイルが直撃、一撃でダメージ率35%に達する。
強力すぎる砲火の打ち合いは更に両者が攻撃重視をしていた事もあって速攻勝負になり、更に双方の砲撃が直撃、エンストリネルのダメージ率65%、アークロイアル40%となる。
単純なダメージ差ならアークロイアル優位、とどめとばかりに発射された90mmミサイルがエンストリネルを直撃!だが同時に発射されたセレストサンクションの二連装の砲火もアークロイアルを直撃する。双方の機体が熱と煙に包まれ、それが去った時にようやくブルーエンストリネルの機動停止が確認された。僅か4分の試合時間で勝者も装甲破壊寸前、という実に派手な試合に。
○アークロイアル(4分機動停止)ブルーエンストリネル× 5vs0
トーナメント準決勝 赤いホウオウ−PENvsふわふわエターニア
ペンギンじみた丸みのあるフォルム、赤系で仕上げられた装甲、頭頂部にある角のような飾りの赤いホウオウ−PEN。対するふわふわエターニアはパイロット命名という呑気な機体名とは裏腹に正統派の人型汎用機動兵器タイプである。
中間距離。ホウオウ−PENが照準を合わせたビールライフルで射撃、これをきっちりシールドしたエターニアは損害軽微、右腕に内臓されたガトリングガンから射出された反撃の硬質ニードルガンが逆にダメージを与える。
挨拶代わりの撃ち合いから両機が勢いをつけて接近、ホウオウのビームナギナタとエターニアのロッドカッターが互いに容赦の無い連続攻撃。更に怯む様子も無く続けて防御を無視した斬り合い、双方の装甲が激しく弾け飛んだ。次の攻撃で決める、その戦術に選んだのはホウオウを駆る神代は捨て身の攻撃、エターニアコクピットの静は回避狙いのカウンター。だが回避行動が裏目に出たエターニアは精度の落ちたロッドカッターの攻撃を失敗、ホウオウに押し切られてしまう。エターニア陣営は先の初戦とは逆に、パイロットの最後の判断ミスで涙を飲む形となった。
静「新しい子でもがんばります〜」
○赤いホウオウ−PEN(4分両機機動停止による判定)ふわふわエターニア× -1vs-11
トーナメント準決勝 アークロイアルvsサルヴェ・レジーナ
決勝進出を賭けた一戦、もう一試合はアークロイアル&レイモンド・オースとサルヴェ・レジーナ&ロストヴァ・トゥルビヨン。全距離対応、火力重視設計のアークロイアルは相手の得意距離さえ外せば圧倒できるがそれをさせまいとするのが「中距離の女王」の戦い方。開始早々、その中間距離での撃ち合いはだがアークロイアルのGダムハンマーが命中してレジーナのディエス・イレのダメージを僅かに上回る。
ここで優位に立ちたいアークロイアルだが攻撃は外れ、サルヴェ・レジーナも距離の維持を優先してのディエス・イレ抜き撃ちは命中せず。続けてのGダムハンマーも外れるがディエス・イレの砲火は一撃が命中、回避し損ねたアークロイアルにダメージを与える。
これでペースと間合いの双方を掴んだレジーナ。「バーベキューにしてあげるよ!」とばかりにディエス・イレを連続射出、連装式の高圧熱線を確実に着弾させ、更に追い討ちの射出をこれも完全命中!完勝に近い形で相手を封殺した。
○サルヴェ・レジーナ(5分機動停止)アークロイアル× 32vs-5
インターバル
新庄=ゴステロ=ジュンペイは今回メンバー数の都合の為に欠場。
「俺は人殺しがだぁい好きなんだよお〜」
とのコメントが寄せられております(場内一部拍手)。
NAKAMOTOストライク・バック第十一回大会決勝戦
実は前大会の準優勝者と前々大会の準優勝者との対決となる決勝戦。ホウオウ騎乗の神代進は攻撃特化した制圧前進が最大の売りであり、サルヴェ・レジーナ騎乗のロストヴァは優位距離確保の技倆では他の追随を許さない。その意味では今大会は機体性能とコンセプト以上にパイロットの作戦と技倆が前面に出たトーナメント、と言えるかもしれないだろう。両者愛機のハッチを開けると耐衝撃措置が施されたフレーム内にあるコクピットに入り、レバーの寸法までが合わされたシートに跨がる。サブモニター、メインモニターの順に灯が点り、オペレータからの通信が入る中で機体がカタパルトへと移動される。カウントダウンが始まり、フィールド内を滑走した機体は同時に射出、そして決勝戦が始まる。
中間距離からの撃ち合い、両者慎重に防御姿勢から抜き撃ちを行うがレジーナはホウオウのビームライフルの光条を回避失敗、ホウオウはディエス・イレを一弾回避してやや優位に立つ。ホウオウは距離の取り合いを放棄して容赦の無い攻撃、ビームライフルで追撃してレジーナの装甲で光条が乱反射する。反撃のディエス・イレは外れ。
更に攻撃にくるホウオウのビームライフルの一弾をレジーナは上手く装甲で弾き、もう一弾は回避。ディエス・イレをなんとか命中させるが損害軽微。続けて撃ち合いはやはりホウオウのビームライフルが擦ったのみ。
止まる様子も無く攻めてくるホウオウはライフルを連射、これを命中させるがここで神代が読みを誤ったか、レジーナの放つ高圧熱線の砲火の前に飛び出す形で連弾の直撃を受けてしまう。一瞬で双方の損害率が逆転、僅かにレジーナ優位に。
一気に勝負に出たロストヴァは一転して攻勢に転じ、正面からホウオウと撃ち合う。ホウオウのビームライフルの直撃を受けるが反撃のディエス・イレも完全に直撃させ、これでホウオウは機動停止。一瞬の勝機を読んだ中距離の女王が隙を逃さず敵機を撃破、第一回大会以来二度目の優勝を手中に収めた。
○サルヴェ・レジーナ(6分機動停止)赤いホウオウ−PEN× 13vs-1
総合成績
ロストヴァ・トゥルビヨン サルヴェ・レジーナ 3戦3勝通算23戦16勝
神代進 赤いホウオウ−PEN 3戦2勝通算17戦10勝
レイモンド・オース アークロイアル 2戦1勝通算18戦 8勝
静志津香 ふわふわエターニア 2戦1勝通算16戦 9勝
テムウ・ガルナ ブルーエンストリネル 2戦1勝通算18戦10勝
シャル・マクニコル ポテンティアティス 1戦0勝通算19戦10勝
ネス・フェザード ソニック・バイパー 1戦0勝通算15戦 6勝
山本いそべ 猫たーぼD5 1戦0勝通算15戦11勝
コルネリオ・スフォルツァ 夜明けのシューティングスター 1戦0勝通算 7戦 2勝
アナイス・ランゲマルク ** 0戦0勝通算 2戦 0勝
中石譲 ** 0戦0勝通算 2戦 1勝
新庄=ゴステロ=ジュンペイ ** 0戦0勝通算 6戦 1勝
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