第十三回大会


 西暦2003年3月、中本工業主催第13回ストライク・バック会場。斑の鳩第二競技場での注目は前大会より導入された新装備、及び新機体の競技への影響である。前大会からの新装備、新機体導入の特徴としては片寄りの大きかった機体性能を一部調整し、特に重装甲機ティーゲルを廃止して大出力機のセンチネルを導入した事、また兵装については基本傾向を変えずに種類を減らし、反面で特殊装備を追加した事にある。特に射出式浮遊機雷であるフロートマイン、また磁界放出弾であるハンターズウェブの導入が戦術にどのような影響を与えるかは未知の領域に属している。
 だが同時に機体性能に依らぬパイロットの技量もまた注目に値し、堂々たる一騎打ちの戦場を生き延びる剣闘士達に人々は喝采を惜しまない。企業利益、地域の活性化、観客の欲求、そして影でチームを支えるオペレータやメカニックの存在があり、それらを越えた所でパイロット達は腕を競い合っているのだ。


トーナメント一回戦 ソニック・バイパーvsU−HYOU

 今回のトーナメントは合計10機が登録となった。いわゆる予選的な性質を持つ一回戦は2試合、計4機が参加する事になるが、オープニングマッチである第一試合を飾ったのはネス・フェザードのバイパーとコルネリオ・スフォルツァのU−HYOU。常連同士の対戦である。
 開始は遠距離、双方の射程外から。両機が申し合わせたように距離を詰めるとバイパーは高速移動を行いつつチェインガンを抜き撃ち、これは命中しないがU−HYOUはうさちゃんデスビイィムで応射、これが一撃命中して先制に成功する。続けてのチェインガンは一撃を受けるがデスビイィムの一撃も命中、更に続けての斉射を命中させて一気に優位に立つ。
 だが不利な状況から今度はバイパーが反撃、チェインガンの初弾は掠っただけ、追い打ちは回避されるがデスビイィムをかいくぐりながらの射撃をようやく命中させる。チャンスと見て接近、浮遊機雷のトリックスターを射出して近接戦闘に持ち込む。U−HYOUは機雷を被弾して多少の損害を受けるが、サーペントソードは回避に成功。改めて距離を離すとうさちゃんデスビイィムを発射、一発を直撃させる。だがバイパーも抜き撃ちのチェインガンを二発命中させ、動きを止めて更に一撃、これで状況を殆ど五分にまで持ち込んだ。
 両者起動停止寸前、ここでU−HYOUがデスビイィムを一弾命中させる。これを辛くも耐えたソニック・バイパーが名に相応しい勢いでの捨て身の突進からサーペントソードでU−HYOUを貫く!反撃の玉砕剣もバイパーの装甲を破壊したが、トリックスターのダメージも合わせて判定によりバイパーが勝利した。

○ソニック・バイパー(12分両機機動停止による判定)U−HYOU× -2vs-6


トーナメント一回戦 アークロイアルvsアプラヴァ

 第一回大会からの参加ながら、今一歩勝率が安定しないレイモンド・オースとアークロイアル。対するは新規参入企業、「難波インダストリ」より試作機アプラヴァとパイロットはアルバイトのインド人だというナーム・シップヒータ。
 両機射出、先の試合と同様遠距離から始まるとアークロイアルがロングレンジキャノンを撃つがこれは外れ、そのまま双方が距離を詰める。中間距離での両者の撃ち合いはロイアルのライデンレーザーとアプラヴァのガトリングガンが全て外れ若しくは回避されるが、ロイアルが同時に射出していたフロートマインが相手の装甲を僅かに削る。
 ここで接近戦。近接戦闘での反撃能力を持たない相手に対してアプラヴァがサーペントソードの一撃、更に射出したフロートマインの宙域に押し込み追加のダメージを与える。莫迦にできない損害を受けたアークロイアルは距離を離すがライデンレーザーは命中せず、フロートマインでアプラヴァに僅かなダメージを与えるが、再び距離を詰めてのサーペントソードの一撃で再度浮遊機雷原に押し込まれる。誘爆し、ダメージは軽微だが累積すれば無論装甲が保たないだろう。何とかロイアルが距離を離すが、ライデンレーザーは命中せず、応射のガトリングガンを受けるがこれは装甲で弾き返すと続けてのレーザーをようやく着弾。未だペースはアプラヴァが握っているが、この距離ならロイアルの配備したフロートマインがアプラヴァの足を止める。ガトリングガンによる反撃も掠るだけで致命とはならず、少しずつダメージ差を狭めていた。
 だが相手のペースに乗る危険を悟ったアプラヴァがここで接近、加速しながらサーペントソードを命中させる。不充分な当たりだが近接戦闘を嫌って距離を取るロイアルをガトリングガンで牽制すると、またも一気に距離を詰めてサーペントソードで攻撃、今度は直撃させてこれで止めを刺す事に成功した。

○アプラヴァ(15分機動停止)アークロイアル× 17vs-4


トーナメント二回戦 ロード・オブ・ミスルールvs燃える男の赤い四脚

 ロストヴァ・トゥルビヨンは機体セッティングを攻勢系に修正した新型機ロード・オブ・ミスルールに騎乗、神代進は建設重機仕様の歩行型、燃える男の赤い四脚での参戦。
 まずはロストヴァ得意の中間距離から開始、ハンターズウェブで四脚を捕捉するとエレクトリカを発射して一発を直撃させる。流石というべき動きだが赤い四脚も燃える男の血潮を同時発射、高圧の熱線がやはりミスルールを直撃してかなりの被害を与える。派手な撃ち合いから脚を止めず、一気に距離を詰めた赤い四脚が命名「オレの熱き魂」、パイルバンカーで襲い掛かるがこれは外れ。ミスルールもアダマウスを突き刺そうとするが命中せず。
 離れて中間距離、再びハンターズウェブで赤い四脚を捕らえたミスルールはエレクトリカを連続射出、これを連弾で直撃させる!反撃の熱線もミスルールの装甲を焼くがダメージでは赤い四脚が不利な状況に。そのまま今度は脚を止めて撃ち合い、エレクトリカが赤い四脚に突き刺さって一気に起動停止。正面からの攻防を制したミスルールが準決勝進出を果たした。

○ロード・オブ・ミスルール(4分機動停止)燃える男の赤い四脚× 15vs-2


トーナメント二回戦 グウェンエヴィエルvsドミニオンMk1

 前回優勝賞金で社員旅行に下田温泉へ行ったというテムウ・ガルナは遠距離狙撃機のグウェンエヴェイルで、シャル・マクニコルは軽量一撃離脱機ドミニオンでの出撃。先手を取ったのはそのドミニオン、可変式の十字架剣がグウェンエヴィエルの装甲を削り、離れるとゴスペル・ガンの斉射。反撃のフレイムウィップは回避して先制する。
 だが相手の離脱に合わせて更に距離を取ったグウェンエヴィエルは「終わる世界」による広角熱線砲撃。多方向からドミニオンを追い込んで命中させると劣勢を挽回する。近づいてフレイムウィップとゴスペル・ガンは相打ち、ここまでは双方互角の展開。
 ここで距離を取ったグウェンエヴィエルが終わる世界を射出、初撃は完全回避したドミニオンだが、回避先を狙われて今度は狙撃されると別方向からの熱線を三発被弾、一気に追い込まれて焦ったか、接近を図った所を撃ち抜かれてジ・エンド。距離の取り合いに涙を飲む形となった。

○グウェンエヴィエル(7分機動停止)ドミニオンMk1× 21vs-5


トーナメント二回戦 ソニック・バイパーvsぷわぷわエターニア

 元祖サーペント・ソードの設計機であり一回戦を勝ち上がったバイパーと、そのサーペントソードをカスタマイズしたヒートロッドを扱う静志津香のぷわぷわエターニア。近接格闘戦能力では屈指の両機による斬り合いが予想される一戦。
 カタパルト射出後両者が申し合わせたように接近、更に両機が浮遊機雷、トリックスターと誘爆ちゃん1号を大量射出。パイロットの技量勝負を狙った最初の斬り合いは双方が可変の刃を直撃させ、激しい火花と機雷の炸裂光が鮮やかに機体を彩る。更にヒートロッドがバイパーに深くめり込み、サーペント・ソードもエターニアに突き刺さり状況は五分。
 だがここで一瞬の回避を狙ったバイパーがヒートロッドの軌跡に空を切らせ、体勢の崩れたエターニアに剣撃を加える。続けて両者の攻撃が相打ち!同時に機動停止したが、先の回避分で損害を抑えたバイパーが勝利を手中にした。

○ソニック・バイパー(4分両機機動停止による判定)ぷわぷわエターニア× -2vs-5


トーナメント二回戦 ホブゴブリンvsアプラヴァ

 重装型攻勢機であるホブゴブリンのパイロットは簑島吟。ファースト・ネームが変わっているのはどうやらペンネームらしい。対するは一回戦を確実に勝利したナーム・シップヒータとアプラヴァ。インド出身、片言の日本語と愛嬌だけはある笑顔が謎の留学生。
 近接戦闘から開始、アプラヴァがサーペントソードを名の如く蛇のように操りホブゴブリンに突き刺すと、そのまま射出した浮遊機雷で追い打ちを与える。容赦のない先制攻撃に機先を制されたホブゴブリンも棍棒を振り回して反撃するが、アプラヴァは構わず連続攻撃、分厚い装甲に派手な火花を飛び散らす。
 両者近接戦闘での斬り合いを承知の展開は先程の試合と同様となったが、火力と装甲がある反面で精度に劣るホブゴブリンは棍棒の一撃を外してしまう。対するアプラヴァは確実に剣と機雷で相手を追い込み、更に続けて攻撃を命中させる。
 ここまで展開は一方的にアプラヴァのもの。最後の意地を見せたホブゴブリンがサーペントソードをかわして棍棒をアプラヴァにめり込ませるが、フロートマインの被弾で装甲が破壊されて機動停止。奪われたペースを取り戻す事は叶わなかった。

○アプラヴァ(6分機動停止)ホブゴブリン× 29vs-1


トーナメント準決勝 ソニック・バイパーvsロード・オブ・ミスルール

 準決勝最初の試合は高い攻撃性能を誇る機体同士の対戦。近接格闘戦能力に優れるバイパーと中間距離での攻撃性能が高いミスルール、最初はバイパー希望の近距離で両者が対峙した。浮遊機雷トリックスターとサーペントソードの連携攻撃を仕掛けるが、ミスルールも近接戦用のアダマウスを突き刺して反撃。バイパーは装甲の薄さが仇となったがそれでも損害は互角というところ。更に斬り合い、これも相打ちとなり双方のダメージが極短時間で50%を越える。
 ここで距離を離したミスルール。ハンターズウェブでバイパーを捕らえてエレクトリカを命中!バイパーもチェインガンで装甲を削るが、ウェブで狙われる中間距離を嫌うと接近してサーペント・ソードで切りかかる。だがこの移動攻撃を外してしまった事が痛恨のミスとなり、待ちかまえたミスルールのアダマウスの直撃を逆に受けてしまい機動停止となった。これでロード・オブ・ミスルールが決勝進出、ロストヴァは実に四大会連続の決勝戦を迎える。

○ロード・オブ・ミスルール(4分機動停止)ソニック・バイパー× 11vs-3


トーナメント準決勝 グウェンエヴィエルvsアプラヴァ

 準決勝二試合目。グウェンエヴィエルの遠距離狙撃とアプラヴァの近接格闘戦闘、何れも自分の得意距離が相手の苦手距離となる両者の対戦である。確実な距離の取り合いが結果に大きな影響を及ぼすであろう事は疑いない。
 相対距離は中間から、挨拶代わりのフレイムウィップとガトリングガンの撃ち合いは双方が掠らせただけで損害軽微、まずは一日の長があるグウェンエヴィエルが距離を離して終わる世界を射出した。アプラヴァは数弾を回避しつつも、多方向から襲い掛かる熱線の全てを捌き切れずに被弾、続けて砲撃を受けて先制を許す。反撃能力の無いアプラヴァは接近してガトリングガンを命中させるが、グウェンエヴィエルは応じずに再度遠距離に離れる事を優先。遠距離から放たれた広角熱線砲がアプラヴァに命中、それでもナームは愛機を過酷に旋回させつつ数弾を確実に回避する。
 中間距離に移行、双方が攻撃を撃ち合うがこれは外れ。ようやく近接距離となり一転、攻勢に出たアプラヴァがサーペントソードを抜くが外れ、続けての攻撃も回避される。双方ともパイロットの技量の高さが窺えるが、アプラヴァのフロートマインがグウェンエヴィエルの装甲を僅かに削る。だが続けての攻撃は命中、これで戦況を逆転するがグウェンエヴィエルも距離を取ってフレイムウィップ、容易にペースを握らせない。
 ここでアプラヴァが接近、格闘戦に出ると移動攻撃のままサーペントソードを確実に命中させる。続けて攻撃、これも直撃させてようやくグウェンエヴィエルを機動停止に追い込んだ。

○アプラヴァ(12分機動停止)グウェンエヴィエル× 19vs-3


NAKAMOTOストライク・バック第十三回大会決勝戦

 大会決勝戦。優勝経験二回、四大会連続決勝出場のロストヴァ・トゥルビヨンに挑むのは初出場で決勝戦まで勝ち進んだナーム・シップヒータとアプラヴァ。中距離の女王の異名に相応しく、有効距離優先の戦術から捕捉攻勢戦法に切り替えてもその強さを発揮しているロード・オブ・ミスルール。対するアプラヴァは堅実だが高い近接格闘戦能力を持つ機体、先の準決勝では高い操縦技量も披露しており、結果については予測し難い。
 球形&軽重力フィールドが特徴である「輝ける銀の競技場」に対して、遠心力により外壁に多少の疑似重力が働くとされる「斑の鳩競技場」。だが舞台が変わっても戦いの激しさが変わる事は決して無く、激しい戦いの前の緊張した空気の質にも違いは無かった。観衆の期待の中、両機がカタパルトから射出されると決勝戦が開始された。

 両者近接戦闘から。早速の好機にフロートマインを射出するアプラヴァだが、構わず急襲を仕掛けたミスルールがアダマウスの一撃を命中!これを直撃させて逆に先制する。アプラヴァも体勢を立て直し、サーペントソードを抜き放つがミスルールはこれも構わずアダマウスの二撃目、反撃によるダメージも受けるが完全にペースを握る事に成功した。
 不利となる筈の近距離を優勢に保ったミスルールはここで後退、距離を取ると待望の中間距離に移行。ハンターズウェブを仕掛けてアプラヴァの回避コースを制限すると抜き撃ちでエレクトリカを射出。自己反射しながら収斂する光学レーザーの帯がアプラヴァに突き刺さる。反撃のガトリングガンも回避され、一方的な展開となりアプラヴァには後が無くなった。
 だが決勝進出の意地を見せたナームがここでアプラヴァを加速、射出機雷原に相手を追い込むとサーペントソードで切りかかる。初撃は掠っただけだが、続けての攻撃はミスルールを機雷原に追い込んで直撃!更にフロートマインを反応させてこれも命中させると戦況を五分近くにまで返す事に成功する。
 しかし反撃もここまで。戦況に慌てる事無く中間距離に戻したミスルールがガトリングガンを確実に回避すると、ハンターズウェブを利してエレクトリカを射出!これが直撃してアプラヴァを機動停止に追い込む。ロストヴァは通算三度目の優勝、高い実力を証明した。

○ロード・オブ・ミスルール(6分機動停止)アプラヴァ× 10vs-17

cut


総合成績

ロストヴァ・トゥルビヨン  ロードオブミスルール 3戦3勝通算29戦21勝
ナーム・シップヒータ    アプラヴァ      4戦3勝通算 4戦 3勝
ネス・フェザード      ソニック・バイパー  3戦2勝通算19戦 8勝
テムウ・ガルナ       グウェンエヴィエル  2戦1勝通算23戦14勝
シャル・マクニコル     ドミニオンMk1   1戦0勝通算22戦11勝
静志津香          ぷわぷわエターニア  1戦0勝通算19戦10勝
神代進           燃える男の赤い四脚  1戦0勝通算18戦10勝
レイモンド・オース     アークロイアル    1戦0勝通算20戦 8勝
コルネリオ・スフォルツァ  U−HYOU     1戦0勝通算 9戦 2勝
簑島吟           ホブゴブリン     1戦0勝通算 5戦 2勝
G・ブチャラティ・新庄   ジッパーを下ろす   0戦0勝通算 7戦 1勝
山本いそべ         **         0戦0勝通算15戦11勝
アナイス・ランゲマルク   **         0戦0勝通算 2戦 0勝


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