’97年 菊花賞 レース回顧


着 順 馬 番 馬 名 タイム 斤 量 指 数
1 4 マチカネフクキタル 3077 57 74
2 7 ダイワオーシュウ 3079 57 73
3 14 メジロブライト 3079 57 73
4 15 トキオエクセレント 3079 57 73
5 16 シルクジャスティス 3081 57 72
6 2 トウジントルネード 3081 57 72
7 3 テイエムトップダン 3082 57 72
8 1 ステイゴールド 3082 57 72
9 6 パルスビート 3084 57 70
10 9 エリモダンディー 3084 57 70
11 13 サードサンスリル 3085 57 70
12 17 シルクライトニング 3087 57 69
13 5 ノーザンウェー 3088 57 68
14 10 ルールファスト 3090 57 67
15 8 ヒダカブライアン 3092 57 66
16 18 シャコーテスコ 3097 57 64
17 11 ショウナンアクティ 3098 57 63
18 12 ニケスピリット 3104 57 60


馬場指数:−0.65

配当:枠連 2−4 ¥3,150, 馬連 4−7 ¥3,970


 私の読んでいるスポーツ紙”Sスポーツ”によると、パソコン通信などのネット上の会議室で、今回の菊花賞について、”史上最低の菊花賞”、”菊花賞の距離短縮を考えるべき”、”こんな血統構成の馬は菊花賞馬になるべきではない”などの辛辣な批判が多数出ている様だ。今回はこれらの意見について答える形でレース回顧をしたい。

 まず今回の菊花賞のレベルだが、残念なことにスピード指数上は”史上最低の菊花賞”は正しい様だ。勝ち馬でさえ74という指数は如何にも悪すぎる。馬場コンディションは−0.65で、やや速いタイムの出る馬場だったのが更にスピード指数を悪くした。
 レースは予想通りの超スローペースで、ほぼ上がりタイムが速い順に着順が決まった。1000m毎のラップは、61秒8−66秒5−59秒4で中間1000mが非常に遅いペース。ジョッキーは折り合いを付けるのに苦労したと思う。トータルタイムは3分7秒7、ここ5年は3分5秒前後で決まっている為、若い競馬ファンにはレベルの低いタイムに見えるかもしれないが、菊花賞が超スローペースになるのは以前は当たり前だったし、過去10年で3分7秒台で決まったのは3回目である。”史上最低の菊花賞”と吐き捨てた人はスピード指数を見て言ったかどうかは分からない(たぶん走破タイムだけを見て言ったのだと思う)が、走破タイム上は普通レベルの菊花賞であったのだ。むしろ3分5秒前後のレースが異常なのである。その証拠に3分5秒前後で決まった過去5年の菊花賞馬は古い順に、ライスシャワー、ビワハヤヒデ、ナリタブライアン、マヤノトップガン、ダンスインザダーク。長距離を速いタイムで走り抜けたこれらの馬は、最後は皆屈腱炎で競走生命を断たれている(ライスシャワーは故障により死亡)。

 さて今回の菊花賞、勝ち馬の上がり33秒9はメンバー中最速。後は12着までの全ての馬、及び15着になった8番が34秒台の上がりタイム。差し・追い込み型が多い今年のメンバーの中の、上がりタイム競走であったことは否定できない。前述の”菊花賞の距離短縮を考えるべき”といった意見は、こういった長距離血統でない馬が長距離レースに出ることによって起こる超スローペース症候群を無くすといった意味だと思う。
 近年(といっても一昨年当たりからだが)JRAは世界の競馬情勢に合わせて、多くのレースの距離短縮を行った。この明らかに無計画で、急激な改革(改悪)によって、一番迷惑だったのは種牡馬たちである。ステイヤーが軽んじられスピード馬が重宝されるようになったため、ステイヤー種牡馬は皆廃用の危機に瀕している。武豊とのコンビで菊花賞・天皇賞(春)と制覇したあのスーパークリークでさえもである。
 私はスタミナあってこそ強い馬だと思っているので、基本的にはJRAの方針自体に反対である。ただ世界的にスピード偏重なら、日本のレース体系もスピード重視型(短距離型)にするのは仕方がないと思う。それなら、クラシックレースも距離を短縮して行うべきだと考えるのは当然である。皐月賞1600m、ダービー2000m、菊花賞2400mといった具合にである。こうしなければ、クラシックレース勝ち馬は、短距離型種牡馬として通用しないことになるのではないか。

 最後に、”こういった血統構成の馬は菊花賞馬になるべきではない”といった人について。いったいこの人はどういったつもりでこの様な意見を出したのだろう。血統とは未だに解明されていない部分が多く、”この血統の馬は長距離に向いている”という様なことは単純には言えないのである。血統とは奥が深い物で、例えばオグリキャップの様な名馬が何故ダンシングキャップの子供から出来るのか解明できないのが血統の奥深さを物語っている。少々聞きかじった血統論で、全てが分かった様なことを言うのは余りにも軽薄な行為である。

 今年の4歳クラシックレースは、サニーブライアンの皐月賞から、”ペースに助けられた”、”フロック勝ち”など、勝ち馬に色々ケチが付けられた3冠レースだった。サニーブライアンもマチカネフクキタルも今後はその強さを、2冠馬、菊花賞馬の実力を見せつける様なレースを今後していって欲しい。


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