映画は良い音で聴こう

映画は映画館で観よう」では映画館の音響効果についてちょっと触れたが、実際にはどんな方式が使われているのだろうか。 同じ料金を払って見るのなら、少しでも音の良い映画館で、迫力のある映画を見たい。

新聞の映画広告を見ると、各上映館の名前の所にはDDDTSなどのマークが付いているが、一体何が違うのだろうか? マツモトキヨシや携帯電話のCMと、本編では明らかに音が違うのは分かるのだが。

過去には、シネラマ(光学8チャンネル)、シネマスコープ(磁気4チャンネル)、70mm(磁気6チャンネル)などの方式もあったが、現在使われている主なステレオ方式を以下にまとめた。

最初の2方式はアナログだが、後の4方式はデジタル。 デジタル方式ではサラウンドもステレオで、重低音と相まって音響効果を上げている。 スペクタクル映画を見る時には、新聞の映画広告で上映方式をよく確かめた方がよい。 劇場によっては本編の上映前に、使っている方式によるデモフィルムが上映されるので、劇場の音響効果がよく分かる。

基本的なスピーカの配置は左図のようになっている。

前方(スクリーン裏)に中央(C)・(L)・(R)・サブウーファ(SW)の各スピーカが配置されている。 中央は台詞、左・右は主に音楽、サブウーファは爆音・衝撃音など重低音に使われる。 中央・左・右はそれぞれ1チャンネルと数えるが、サブウーファは常には音が出ていないので「0.1」チャンネルと数えることもある。

客席の左右と後方にはサラウンド用の(SL)・(SR)・左後(SLR)・右後(SRR)の各スピーカが置かれ、効果音に使われる。 サラウンドは基本的に左・右の2チャンネルだが、再生方式によってはモノラル(全てが同じ音源)となる。 サラウンド用スピーカの数は劇場により異なる。
スピーカの配置
 

ドルビー・ステレオ Dolby Stereo
   カセットテープのノイズリダクションでも有名なドルビー研究上が開発した方式。

サウンドトラックに濃淡(波状模様)で記録されたアナログ2チャンネル音声から、マトリックス処理で前方(中央・左・右)+サラウンドの4チャンネルを再生する。

上映館のマークは DD 又は、

ドルビーSR Dolby-SR(Spectral Recording)
   ステレオの方式はドルビーと同じ4チャンネルだが、ドルビーより更にノイズ低減効果を上げたもので、高音・低音の音域も向上させている。 この方式の映画館が多いようだ。 87年の「ロボコップ」などで採用された。

上映館のマークは DDSRSRドルビー など

DTSステレオ DTS Stereo
   ドルビーSRと同じアナログ方式で、ほぼ互換性がある。 劇場設備はドルビー用がそのまま使える。 ドルビーよりライセンス料が安いためか、一部の邦画などで使われている。

上映館のマークは DTSステレオ など
 

ドルビー・デジタル Dolby Digital / Dolby SRD(Spectral Recording and Didital)
   パーフォレーション(フィルム送り穴)の間に、ドット画像で記録されたデジタル信号から、前方(中央・左・右)、サラウンド(左・右)、重低音の6チャンネル(5.1チャンネル)を再生する。

フィルムには、従来方式のサウンドトラック(Dolby-SR)もあり、デジタルが作動しない場合には自動的に切り替わる。 92年の「バットマン・リターン」で採用された。

上映館のマークは DDデジタルSRDデジタル など
ドルビーデジタル

ドルビー・デジタル・サラウンド EX Dolby Digital Surround-EX
   基本的にはドルビーデジタルと同じ方式で、上位互換性がある。 サラウンドの左・右2チャンネルに、後方を独立チャンネルとして追加している。 99年の「スター・ウォーズ/エピソード1」用に開発された。

上映館のマークは DDデジタル [EX] 又は、 ドルビーデジタル[EX]
 

DTS Digital Theater System
   フィルムとは別にデジタル記録したCD-ROMを使い、前方(中央・左・右)、サラウンド(左・右)、重低音の6チャンネル(5.1チャンネル)を再生する。

圧縮率がドルビーデジタル(SRD)より小さいため、SRDより音がよいと言われているが、日本ではSRDに比べて装備している劇場数が少ないような気がする。

フィルムには、CD-ROMを同期させる信号の他に、従来方式のサウンドトラック(Dolby-SR)もあり、CD-ROMが作動しない場合には自動的に切り替わる。 93年の「ジュラシック・パーク」で採用された。

上映館のマークは DTS
DTS
 

SDDS Sony Dynamic Digital Sound
   フィルムにデジタル記録するのはドルビー・デジタルと同じだが、SDDSは左右パーフォレーションの脇に4チャンネルずつ、最大8チャンネルまで記録でき、前方に左・右のスピーカが追加される。

片方にトラブルが起きた場合は、自動的に残りの4チャンネルで再生し、さらに両方とも正常に読み取れない場合はアナログ(Dolby-SR)に切り替わる。 93年の「ラスト・アクション・ヒーロー」で採用された。

この方式を採用している映画館は非常に少ないようだ。

上映館のマークは SDDS
SDDS

デジタルの各方式は全く互換性がない。 それぞれの方式で上映するためには、専用のリーダー・デコーダー・プロセッサなどが必要となるため、全ての方式を装備した映画館は少ない。 多くの映画館ではデジタルは1方式のみ採用している。 1本の上映フィルムに3方式を同時に焼き込むことは可能だが、作品によっては何れかの1方式のみで配給される場合がある。 上映される配給プリントのデジタル方式が、映画館の方式と一致しない時はアナログ(ドルビー又はドルビーSR)で上映される。

従って、同じ映画館でも上映作品により方式が異なることがあるので、映画を見に行く前には必ず新聞広告で方式を確認する必要がある。

上記の方式以外にTHXというマークを見かけるが、THXは再生方式の名称ではなく、劇場での音響・映写効果に関わる装置・設備の規格。 一部の映画館では上映中に外部のノイズが聞こえることがある。 できることなら、どの席に座っても映画を満喫できるTHXの映画館で見たい。

(99/06/20)



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