筆者が、KingCrimsonのレコードを購入したのは、ちょうど'Red'と'USA'を発表して2度目の(公式には最初か...)解散した直後のことで、確か'Music
Life'に特集が掲載されたのを見たのがきっかけであった。
この時、友人と二人で某レコード店に行き、友人は'In The Cort Of Crimson King'を購入し、何故か筆者は、のちにFripp翁はベスト盤に曲を入れないは、Tippet氏には'ムードだけの駄作'とまで言われてしまった'Lizard'を購入してしまうのである。
実は、筆者は兄が借りてきた'In The Cort Of Crimson King'を聞いた事もあったし、友人が先に手を出したこともあって、他のものを買おうとしたのだと、今となっては思うのだけど、それが何故に'Lizard'であったのかは正直、自分でも判らない。
だが、実はこの'Lizard'は筆者が思うにはアルバムとしては、Crimsonのアルバムの中でも、しっかりした出来のアルバムだと、今でも思っている。
さて、ところがFripp翁のこのアルバムに対する仕打ちは、すごいもので、ベスト盤の'Frame By
Frame'で、ようやく'Blero-The Peacock's Tale'を収録するも、Tony
Levinにベースパートを差し替えるという荒業を使う始末。
結局、これはFripp翁と'Lizard'期のベースプレイヤーであったGordon Haskellとの確執が今だに続いているからだが、これもすごい仕打ちである。
(同じ理由で、'Cadence And Cascade'のボーカルがAdrian Belewに差し替えられたのはご存知かと)
この話は結局、'Lizard'完成後のツアーリハーサル前に、Gordonが怒り狂って脱退、それに対して、Fripp翁は印税支払いを行わない事にしたのが、確執の原因のようだ。(しかも実際は、Gordonは脱退ではなくクビ!!と報じられたそーな)
こりゃ、どっちもどっちというやつで、アルバムプロモーションのツアーが出来なくなって、制作費が回収出来ないCrimson(というかFripp翁)側と、参加当初に黒人のリズムセクションを使う話は反故にされるは、ボーカルの声を操作されるはに怒り狂ったGordon側と言い、あんまし自慢の出来る逸話ではない。
で、じゃあアルバムの出来はと言えば、これが良い。
少なくとも、筆者には良い。
1曲めの'CIRKUS'からラストの'BIG TOP'まで、飽きない、飽きさせない作りである。
それと、一歩間違えば品が無くなる金色のジャケットが、また良い。
中開のマーブリグはSinfieldのデザインとの事だけど、これの効果の程は疑問であるが...
ただ、中開の歌詞のフォントは非常に品が良い。
しかも、あまり気づいていないかもしれないが、Fripp翁のGuiter-Soloが、'21st Century
Schizoid Man'以来、久々に収録された(THE BATTLE OF GLASS TEARS)点も重要なポイントのように思える。
Fripp翁が'Schizoid Man'以降、何故Guiter-Soloを収める事がなかったのかは、また別の機会にと思っているが、これは意外に翁の修行の成果みたいなもので、最初のUK及びUSツアーを経験した結果のように思える。
そう、最初のUK及びUSツアーの頃と違い、この時初めてあの有名な矩形波Guiterの音が姿を現したわけだ。
さて、トップの'CIRKUS'はその後のIslands Crimsonでもライブのトップにツインメロトロンでゴリゴリにおしまくった曲である。
アレンジも音の選びかた、特にTippet氏のピアノの使い方は抜群である。
(残念ながら、ライブではFripp翁が情けないエレピを弾くはめになるのだが...)
前作の'Posseidon'から続いて、翁のアコーステックギターの響きは独特のものだ。
それと、アルバム全体に言えるのは、リズムというかベースが重い。
とにかく重い。
昔、山内テツのベースは床が抜ける(ほんまか??)と言われたけど、多分、それより重い。
でも、JAZZの出目であるTippet Groupと合う。
ただ、これがGordon氏の好きなリズムであったかというと、それは違っていたのは明白な事実。
つまり制作側の意図と、Gordon氏の望みとは後のインタビューでも明らかなようにかなりの隔たりがあったわけだ。
でもこのアルバムを考えると筆者は、製作者側に旗を揚げる。
このアルバムでは、ブラックミュージックでは無く、British Jazzとクラシカルな要素が重要なキーなのだ。
ブラックミュージックについては、実はIslands発表直後のアメリカンツアーでも問題になった点で、一時Fripp翁も、ブラックミュージックのリズムに関心もった節がある。
(Islands Crimsonの最初のUSツアーでのR&Bクラブ通いなんていう話もある)
でも、Fripp翁は、結局そんなリズムに背を向けてしまうのだが....
ただ、このアルバムにも問題が無い訳では無い。
実際一番知りたいのが、'PRINCE RUPERT AWAKES'で何故JON ANDERSON氏を起用したのかである。
結果は、多分成功として良いのだろうけど、いつ何時、彼の起用を決めたのか、理由は何なのかは、非常に知りたい点である。
ちなみに、Fripp翁もこのアルバムのプロモーションツアーを行うのは、4人の正規メンバーでは無理だと思っていたようだし、実際次のIslandsツアー前にはTippet
GroupにCrimsonへの参加を依頼している。
当然、これは断られたわけだが....
実際、このアルバムからライブで演奏された曲は'CIRKUS'と'LADY OF THE DANCING
WATER'の2曲だけのようだし(後に、'Epitaph Volumes 3&4'にて'Happy
Family'のメインリフがIan McDonaldによって披露されていた事が明らかになるのだけど...)、このアルバムの曲をライブでプロモーションする気が、実はFirpp翁にあったのか、若干疑問が残るわけである(と言うか、出来なかったと言うのが本音か??)。
結局、言ってみれば、The Beatlesがライブでの再現が無理だからツアーを辞めたとの、Crimsonがツアーで出来ない曲があり、それはやらないと言うのは、根は同じだったのかも知れない。
(今時のバンドなら、サポートメンバーをずらっと連れてかコンピュータを使用して演奏するのだろうけど...)
しかし、Crimsonは、'Islands'(実はこのアルバムも一曲を除いて全ての曲のライブでの演奏が確認されている)以降、ライブで出来ない曲(やらない曲)はなくなった。
('Red'の曲は解散してしまったから、話が違うが)
これは、レコーディングバンドとライブバンドのバランスを均等に保ちたかったからのように思える。
そういう意味でも、レコーディングバンドとしての最良で最後の作品が'Lizard'だったのではないかと筆者は思う。
多分、Fripp翁も、レコーディングバンドとしてのCrimsonにここで決着を付けたかったのだろう。
翁は、トカゲが決して嫌いなのでは無いと思う。
ただ、経済的な問題とバンド上の問題があるなら、どちらかいずれを最優先させるしか無かったという事なのだ。