今なら象の声〜Absent Lovers(98.06.03)

 absent Lovers

 ついこの間の5月22日、1980年代のCrimsonのライブアルバムが発売された。
今回は、このライブアルバム'Absent Lovers'と'80年代のCrimson、特にライブ関係について書いてみる事にしよう。
この当時のCrimsonは、現在のダブルトリオの中心メンバーである、Fripp(Guitar),Adrian Belew(Guitar,Vocal),Tony Levin(Bass,Stick,Synth,Vocal),Bill Bruford(Acoustic and Electronic Drums,Percussion)の4人編成。
1981年4月にこのメンバーが集まり、しかしこの時には未だCrimsonを名乗るのかは決まっていなかったと言う。
実際、1980年から始まったツアーでは'Discipline'を名乗っている。
 この時期のライブの模様は何枚かPirate盤が出ているが、例えば'King Crimson Discipline'〜1981年5月10日のLondon公演も、レーベルマークに当日のチケットのコピーが使われているが確かにCrimsonではなく'Discipline'と記載されている。
収録されている曲目も、アルバム'Discipline'に収録されたものと、'Red'、'Larks' Tongoues In Aspic(Part II)'等であるが、'Discipline'収録曲は曲名のアナウンスがなかったのか、はたまた未だ決まっていなかったのか、'Discipline'以外は全て仮題ばかりだ。
(どれがどの曲か、さて見ただけで判るかどうか???)
 この後、アルバム'Discipline'を発表、1981年12月には日本公演を北米ツアーの後に行った。
ちなみにこの時のライブは、何てったって東京公演が行われたのが今は無き浅草国際劇場、開演前はアイスクリーム売りが通路を歩いているは、ほんとスパンコールのおねーさんでも出てくるのかと思ったのだけど、さすがに出てこなかった。
でも、アンコールの'Elephant Talk'では象の着ぐるみが登場したのは爆笑(^^)もんだったけど。
ただ、この時のAdrianGuitarが奏でた象の声が、後々日本のファンにトラウマになってしまったようだ。
筆者は、Crimson参加以前のAdrianTalking Headsのバックメンバーで来日(これはまさに名演の一つだった...)した際に見ていたし、実際このメンバーのCrimsonを聞く気になったのは、Adrianが参加していたことが大きい。
(ところが、この日本公演でTony Levinの大ファンになってしまった...)
 この後、'Beat'、'Three Of A Perfect Pair'の2枚のアルバムを発売、その後1984年4月に日本公演を行い、その模様はビデオやLDで発売された。
(この時、五反田で筆者はTony Levinと握手をした。へへ)
ちなみに、この時の神奈川県民ホールのライブは観客も6分入り程度、途中でFrippアンプは壊れるはBrufordシモンズは崩れるは惨澹たるものだった。
このツアーの流れから北米ツアーを行い、結局この'Absent Lovers'に収められた1984年7月11日のMontreal The Spectrum公演を最後に活動を停止し、1994年に'Vrooom'のダブルトリオで再び現れるという次第であった。
 さて、このライブ'Absent Lovers'だが、多分この公演を最後に期間はわからないが活動停止は決まっていたのだろうから、まさに1980年代Crimsonのラストライブとなったわけで、演奏のほうもかなり力が入ったものになっている。
正直なところ先の日本公演のライブビデオはどうもリラックスし過ぎな感じがあり、緊迫感がどうも薄かったのだけど、'Absent Lovers'はライナーにも書いてあったが、ちょっと走りぎみのボーカルといい、めりはりの聞いたリズムセクションといい、非常に迫力のあるライブを展開していたことが判る。
特にこのライブでの'Thela Hun Ginjeet'や'Frame By Frame'、'Discipline'の演奏の充実ぶりは見事だし、何といっても素晴らしい出来の演奏は'Sleepless'だろう。
とにかく、TonyBass(多分Delayも使っているのだろうが)は秀逸で、'ドラムンの元祖(ただしマニュアル系??)はこいつだ!!!!!!'と言っても過言では無いだろう。
そして、'Elephant Talk'の象の声、少し悲しげな象の声で1980年代のCrimsonは幕を引いたのであった。
 確かに、この象の声が最初の日本公演でかなりのCrimsonファンを引かせてしまったのは悲しいかな事実だろう。
でも、今の時代ならそんなことはないんじゃなかろうか??
それは、ダブルトリオで演奏された'Elephant Talk'と、日本公演での観客の反応が示している。
このライブを聞くと、やはり早すぎたのかも知れないと思ってしまうのであった。

To Crimson