さてさて、前回に続いて、再びDGM音源をレビューするとしましょう。
前回は'73年のLark's Crimsonがその産声をあげたZoom Club音源でした。
今回は、その二年前、Island CrimsonがCrimsonとしては二度目に行った米国ツアーの音源です。
Original
Crimsonが初の米国ツアー後に崩壊、PeterとFripp翁は旧知のミュージシャンを集め、セカンドアルバム'In The Wake Of Poseidon'を制作、続いて正式なバンド形態としてのCrimsonをセカンドアルバムからの付き合いのMel
Collins(Flute, Saxes)、Fripp翁のご学友Gordon Haskell (Bass
Guitar, Vocals)、そしてGreg Lakeの紹介によるAndy McCulloch(Drums)にて再編、アルバム'Lizard'を発表します。
しかし、バンドはGordonのご乱心(有名な'ファーストクラスのリズムセクション'事件ですな...この時の怒りは未だにFripp翁は解いていないようです...)から破綻、当初予定されていたツアーも中止となるなど、かなり追いつめられた状況となります。
バンドはボーカルのオーディションを繰り返し、EL&PのKeithが推薦したIan
Wallaceをドラムスとして採用、その結果Andyは一度もCrimsonとしてステージに立つ事なく解雇されてしまいます(まあ、同じ建物でIanとAndyは暮らしていたそうですけど、どんな気持ちだったのでしょう???)。
最終的にボーカルにBozを採用、一時はRick Kempをベースに迎えリハーサルに入りますが二日でおじゃん、そんななかBozがベースを手に取りお稽古を開始、そんなしてたら失業中のJohn
WettonがFripp翁に'仕事ない??'と電話して来ますが、Fripp翁のフラットで他のメンバーとも顔を合わせ、翁自身はJohnの参加を望んでいたようですけど、他のメンバーの反対であえなく、おじゃん。
結局、新しいラインナップはFripp翁、Peter、Mel、そして新メンバーのBoz(Bass,
Lead Vocals)、Ian(Drums, Vocals)に落ち着きます。
Crimsonはリハーサルの後、'71年4月にフランクフルトのZoom
Clubにてライブシーンに復帰、5月からは20ヶ月ぶりのUKツアーを行います。
このツアーは成功裏に終わり、夏からアルバム'Island'の制作に入りますけど、その間も精力的にツアーを続けます。
アルバムは秋に完成、その後も秋のツアーを行い、そしてアルバムの米国発売に合わせてUSツアーに突入します。
ツアー自体は11月から始まりましたがツアー中の12月に'Island'が発売され、ツアーの評判も良く、アルバムもそこそこ売れたそうです。
このハードスケジュールには裏があって、当時所属事務所EGマネージメントがT-RexやEL&Pとの契約問題で金銭的に行き詰まっていた為なんて話が伝わってきています。
それでも、久々にライブシーンに戻って来たCrimsonはそんなスケジュールもなんのその、ガンガン仕事をこなしていきます。
今回紹介するのは、そんなある種Highな状態だったCrimsonの二度目のUSツアー、'71年12月13日のDetroitでのライブを納めたものです。
ここに収録されたのは、'71年当時の典型的なセットリストで、ワンステージがほぼまんま(残念ながらオーラスの'Lady
Of The Dancing Water'が途中までの収録です...)納められています。
収録時間を見ると、この当時のCrimsonは一応トップビル扱いでブッキングされていたのでしょう、CD二枚組のボリュームです。
(残念ながら、例によって7月中旬に出る日本盤は一枚組に無理矢理押し込まれる模様....だから、DGM盤買ったんすけど....)
トップは米国では二度目のお目見えとなる'Picture Of A City'(最初のUSツアーでは'A
Man, A City'でしたね???)、やはりMelのテナーは強力にブローしています。
ところどころお遊びもはいっていますけど...
次は'Formentera Lady〜Sailor's Tale'のメドレー。
'Formentera Lady'ではMelはBass Fluteは使用していない模様ですが、それでもこの曲の一種異様な雰囲気は十分に伝わってきます。
続く'Sailor's Tale'はスタジオ盤に近いアレンジ、ただ中盤のFripp翁のソロはちとヒネって、'72年に近い感じ。
MelのMellotronとFripp翁のGuitarが最高潮に達したところでPeterの多分テープによるエフェクトが炸裂、曲はFripp翁のエレピに導かれ'Cirkus'に移ります。
残念ながらエフェクト音と演奏のクロスフェードがうまく行っていなくて冒頭は演奏が聞き取りづらいです。
しかし'Cirkus'はこの当時のCrimsonのライブナンバーでもかなり強烈なナンバーと言え、MelとFripp翁のMellotronによるオーケストレーション、演奏の引き渡し、そしてMelの強烈なソロ等々、ライブでは難しいと思われた'Lizard'のナンバーをステージアレンジで見事に聞かせてくれます。
曲はコミックソング'Ladies Of The Road'へと続きます。
この曲ではIanとBozがボーカルパートでかなり遊んでいます。
そしてCD一枚目の最後は徹底的にインストパートを引き延ばした'Groon'。
最初のテーマの後、Fripp翁が後の'Lark's Part I'や'Lament'に使用するジャズ的なリフを披露、そしてPeterの操作するVCS3の強烈なフィルター操作で彩られたIanのドラムソロに突入します。
ただ、この'Groon'、残念ながらテープチェンジが途中に入っている関係で曲が真ん中辺で切れちゃっています。
ラストは後の'EarthBound'のようなエキセントリックなFripp翁のソロではなく何となく'Peace--A
Theme'のようなギターのアルペジオで静かに終わります。
CDの二枚目は'21st...'でスタート、中間部のMelのソロが何故かありません。
演奏自体はこなれた演奏なんですけどね???ラストのパートではPeterのVCS3によるエフェクトも聞かれます。
メンバー紹介(多分Fripp翁の声でしょう、かなり色んな変なジョークが混じっています??)が行われ、曲はラストの'Mars'へ。
Ianのマーチングドラム、Fripp翁とMelのメロトロンの金属的な響きにPeterのVCS3による様々なエフェクトが聞かれます。
曲は多分テープを使用したと思われるスタジオ盤の'The
Devil's Triangle'と同じ渦巻くようなシーケンスサウンドで曲が終わります。
この後の収録はアンコール部分でしょうが、その一曲目の'In The Court Of The Crimson King'のアレンジというか、殆ど歌詞をブルースにのっけた演奏にはビックリ。
このネタ話は別のDGM盤のライナーにIanが既に書いていましたけど、それでもこの演奏は面白い。
殆どブルースなのだけど、一応Fripp翁はサビや間奏のコード進行はオリジナルを使っていたりして....
このUSツアー中、Fripp翁も含めてメンバー全員、夜遊びが盛んだったそうで、ブルースやソウルなんかを演奏しているクラブを渡り歩いていたそうです。
その深夜の修行の成果ではありまいな、これは....
まあ、Fripp翁はブルースを弾かない/弾けないと良く言われてましたけど、この演奏を聴くとそんな事もないのかもしれませんね??
よく、'EarthBound'で他の三人がブルースを演奏し始めるとFripp翁は全然対応出来なかったなんて書かれていますけど、実際は演奏したくなかったから不器用な演奏のふりして拒否の姿勢を三人に示していたのかも知れませんね???
最後はクールダウン用なのでしょう、'Lady Of The Dancing Water'。
残念ながら曲は完全収録ではありませんけど、ここでもMelはFluteではなくてSaxで押し通しています。
でもこの演奏を聴くと、'71年のCrimsonもホント、充実してたのだなーと感心してしまうのですね??
さて、大成功に終わったUSツアーの後、Crimsonは再び変容の時を迎えます。
そう、Fripp翁によるPeter首切り事件です。
まあ、当時のインタビュー、そして後日のインタビューでも明らかなようにPeter自身もCrimsonから急速に興味が薄れており、Fripp翁との仕事は終わったと思っていたようです。
'Island'のレコーディング中も殆どPeterは興味を示していなかったそうですし....
まあ、あんなアレンジで'In The Court Of The Crimson King'を演奏されちゃ、そりゃオリジネータのPeterだったら怒るよな.....