どもども、世間ではワールドカップの結果に一喜一憂している今日この頃、そういえば今日はその決勝の日、はやいとこ、こいつを仕上げてTVみなきゃ...
さて、今回はDGMで何とブート音源のマスターを公募するという前代未聞の試みが行われ、ついにその音源がリマスタされてCDとして世の中に出る事となりました、'72年のZoom
Club音源を中心にご紹介しませう。
Island
Crimsonが米国ツアーを経て解体され、Fripp翁はYesのBill、旧友でもあるFamilyのJohn、そしてCrimsonの所属事務所にいたデュオを組んでいた無名のミュージシャン、DavidとJamie(と言ってもJamieの方は既にフリージャズ/フリーミュージックの世界ではその名は知れ渡っていたわけですけど....)を誘い、Crimsonを再構築します。
最初にセッションを行ったのはJamieのフラットだったなどという話も伝わっていますが、Fripp翁はそれまでのPeterとの共作作品を全てお蔵入りにして新たな曲と即興を中心としたバンドへの変貌を計りました。
'21st Century Schizoid Man'がアンコール用にセットリストに加えられますが、この当たりからも、Fripp翁が新しい作品に力をいれようとしていたのが、よくわかります。
(すみません、正確には4人編成になった時の'73年のツアーでは'Peace--A Theme〜Cat
Food'が演奏され、加えて'Easy Money'のボーカルパートでメロディは'Easy Money'、歌詞は'In
The Court Of The Crimson King'が歌われるなんていうお遊びもありました。2002.07.01
加筆)
さて、そんなCrimsonは'72年7月そして9月のリハーサルを経て、新曲数曲を携えテストケースツアーに出ます。
今回発売されたのは、そのテストケースツアーの初日'72年10月13日の独国/フランクフルトのZoom Clubのステージの記録です。
CrimsonはIsland
Crimson時代もテストケースツアーのスタートは同じフランクフルトのZoom Clubで行っています。
多分、観客の反応やら何やら、テストケースのギグにはちょうどよい環境なのでしょう。
この音源は先にも紹介したようにブートの世界でも有名な音源で、まとまった演奏が収録され、しかもそれなりの演奏内容が確認出来る5人編成時代のCrimson音源としては、重宝されたものでした。
特にJamieが参加している時期の音源はかなり数が限られ、しかも音質的にかなり苦しいものが多いのです。
これも、'99年にDGMコレクターズクラブ音源として出た'The
Beat Club, Bremen 1972'により、かなり解消されたようにも思えますが、こちらはTVテーピング音源であって、やはりライブ音源ではありませんので、今回のZoom Club音源の発売は、リマスタによりライブでのJamieのプレイがどれだけ綺麗に聞こえるようになるのか、かなり期待出来るのでは??と思っていました。
ちなみに、ご存じのようにDGMも正直レーベル運営自体にかなり苦しくなったようで体制仕切り治しとなりました。
そのおかげなのでしょうか??これまでClubに登録すると勝手に送ってきたClub音源が、Clubのメンバーとならずとも通販で購入出来るようになりました。
今回、筆者もそれにあやかり、このCDをネット通販で購入した次第です。
まあ、もう一つの理由としてご存じのように日本盤として発売されるDGM音源、何故かClubリリース用と異なり何らかの編集がされたり、曲がカットされたりしているのです。
今回の音源の曲目はDGMのサイトで発表されていましたので、筆者の保有するブート音源と曲数等の照らし合わせをしたところ、Clubリリースはまったく同じ曲数と言うことが判りましたので、念のため購入したわけです。
さて、収録された各曲を確認すると、ブート音源と曲の並びも同じで、一応この日のフルステージを納めたように思われます。
(アンコールで'21st Century Schizoid Man'が演奏されたかどうかは、色んな話がありますので、その点を割愛してですが...)
オープニングの'Lark's Part I'は、Lark's
Crimsonにとってはもっとも早く曲の形になったものと言われていますが、確かに'The
Beat Club, Bremen 1972'同様、コーダ部分は付いていない事、それとイントロが異なる以外、曲としては後のスタジオ盤とほぼ同じ構成になっています。
その後、短めのインプロを挟み'Book Of Saturday'。
こちらのほうは面白い事にバイオリンでは無くDavidがフルートを吹いていますが、正直こちらはあまり頂けませんね???音外しちゃってるし。
そして三曲目以降が実はかなり興味深いもので、一応タイトルとして'Zoom'と付いていますが、ここでかなりの部分に後に'Lament'で使用されるフレーズが大量に使われています。
特に'Lament'のサビの部分はまんま登場します。
実際、'Lament'のリフはIsland Crimsonでもインプロのリフで登場していたのですが、この'Zoom'に登場するリフは完全にまんま'Lament'なのです。
そして後半ではボーカルも飛び出すファンキーなナンバー(多分、モチーフはJohnが持ち込んだものでしょう)に変化しますが、ここでは後の'Doctor
Diamond'で使用されるリフやらキメのフレーズが登場します。
かなり濃密な内容の20分間の演奏。
そして四曲目はなんと45分のインプロと来ました。
ブート盤ではこの曲は三つのパートに分割されていましたが、DGM盤では一曲として収録されています。
まあ、いずれにしても一時間近くのインプロを演奏する当時のLark's Crimson、どれだけパワフルだったかがよく判る一曲です。
さてJamieの演奏はというと、リズムのキープはBillに委ね、かなりダイナミックなパーカッションプレイが披露されています。
お得意のウッドブロック、そしてサンバホイッスル、数々のゴングや鉄板のプレイも十二分に聞き取る事が出来ます。
確かに全体のもやのかかったような音はマスターとなったテープが古い事もあって致し方ないところですが、ブート盤と比べれば細かい音が十分に再現されていますので、まさにマスターが見つかった事と丁寧なマスタリングが行われた事が良く判ります。
さて、ブートでは三つのパートに分けて二枚目のCDに一パートが食い込んだ形になりましたが、今回のDGM盤ではそれらは全て一枚目に納められました。
二枚目のCDは'Easy Money'からスタートします。
この時の'Easy Money'は何とコード進行が後のマイナーでは無くて、メジャー系のコードが使用されているので、曲の感じがかなり異なります。
そして次のトラックは、一枚目のCDでも'Lament'や'Doctor Diamond'の面影がありながら、特にクレジットはされなかったのに、何故かインプロと謳っておきながら'Fallen
Angel'のタイトルが付けられています。
実際には先の'Lament'のパーツよりもサビのリフレインを繰り返している事から曲としての印象が強いと判断したのかも知れませんが...
この後に収録された'Exiles'は'The
Beat Club, Bremen 1972'収録時と同様にイントロの'Mantra'はメロトロンでは無く、ギターでプレイされています。
この曲も仕上がりは早かったのでしょう。
曲の構成もほぼ出来上がっていると言って良いでしょう。
さて終盤の二曲はこの後も良く使われた構成で'The Talking Drum'と'Lark's Part
II'の流れでクライマックスに向かいます。
ただ、この二曲は未だリズムの構成が完全に出来ていないような印象を受けます。
'The Talking Drum'のリズムの跳ね方、'Lark's Part II'の重たいリズムがまだ出来上がっていません。
ただ、ここでもJamieのパーカッションが活躍してまして、改めてJamieの存在感を伺い知る事が出来ます。
でも、やはりJamieがオーディエンスを引きつけたのはそのプレイとステージでの動きだったわけで、'The Beat Club, Bremen 1972'が音だけではなく、フルレングスのDVDで発売されないかな??と思うのはチト贅沢でしょうか???