無理なものは無理??(2002.09.22)

 さてさて、ここのところめっきり涼しくなりました。
秋も深まる気配がしていますが、ハガクレレコードの'70年代再発なんかで、財布の方もめっきり涼しくなりそうな、そんな予感が....
ここのところ四人囃子関連で色々ありまして遅くなりましたが、Crimsonライブ三連発再発、先日の'USA'の次は、'72年のIsland Crimsonの最後を飾った、あのライブ盤を紹介しようと思います。
あの悪名高き、超低音質ライブ盤、ブートか??いやブートよりひどいかもしれない??と言われた、Fripp翁でさえ'金の為にOKした'とさえ言い放った、あれです。
さて、今回のリマスタリングは、このライブ盤を変える事が出来たのでしょうか??


Earthbound このアルバムがアナログ盤として発売された当初、手にした方々は多分、かなり困惑した事でしょう。
筆者もご多忙に洩れず、その一人でした。
何せ、あれだけ緻密なデレクションにより作成された初期四枚のスタジオ盤からは想像出来ないような音の固まりがスピーカから鳴り響いた瞬間は忘れる事は出来ません。
ご存じのように余りの音の悪さとCrimson的では無いとされた内容から、本国英国では廉価版扱い(所謂'HELP'シリーズ、と言いながらEL&Pの'Picture At An Exhibition'も元々廉価版だったか....)、ワールドワイドのリリース権利を保有するAtlanticはリリースを見送った訳です。
ですんで、当然、日本で入手する場合は(後に日本のみアナログ盤が出ましたが....)輸入盤だけとなりますが、当時の日本のファンはドキドキもので入手したのにターンテーブルに乗せて出てきた音が、あれですんでね....
内容のほうも'Islands'で聴かれた妖艶さ、やさしさのかけらもなく、所謂Crimson史上、もっとも暴力的な演奏が繰り広げられているのです。
Fripp翁は当時のインプロビゼーションを'単なるジャムだ'と後に言い放ちましたけど、確かにこのアルバムに納められているのは、ジャムと言っても良いかもしれません。
まあ、そう言いながらもIsland Crimsonも時には'Live at Summit Studios 1972'に納められたように素晴らしいインプロビゼーションを展開した事もあったのですが....
さて、今回、このアルバム、一応リマスター盤として(何と、HDCD盤でもあるのですが)発売されましたが、あの音の固まり、そして暴力的な音は変化を遂げたのでしょうか??
今回のリマスター盤はオリジナル盤と収録曲の変更はありません、つまり'USA'のようなボーナストラックは収録されていません。
元々'Earthbound'は'72年のIsland Crimsonとしての最後の米国ツアーの数カ所の会場で収録された曲を集めたものでした。
その辺も考えて、'USA'のような一公演分を納める(と言っても一曲だけ違うのですけど....)ようにボーナストラックを納める事をFripp翁は避けたのでしょうか??
収録曲の順番もオリジナルのまんまなのです。
一曲目は'21st Century Schizoid Man'、演奏自体は数多いCrimsonの'21st Century Schizoid Man'のライブ音源の中でも屈指の名演と筆者は思っていますが、今回のリマスタリングでどうなったかと言いますと、はっきり言って良く判りません(爆^^)。
確かに少しだけ音の分離がよくなったというかクリア感が出たかな??と思いますけど、後半のMelのサックスソロのエコーがちょっと不自然になった気も....
その後、曲はオリジナル盤と同じように'Peoria'、'The Sailers Tale'、'Earthbound'、そしてラストの'Groon'と続くのですけど、やっぱ音の感じは同じで、クリア感が少しだけついた事から音の分離が良くなった??って程度です。
何せ、元々既に脱退していたPeterに代わってサウンドオペレーションを行っていたHunter MacdonaldKelsey MorrisAmpexのステレオカセットで録った音ですんで、アナログマスター作成のミックスダウンも何もあった物ではない、つまり演奏のメモ用にとった音源です。
それを無理矢理音源にして作成されたアルバムですんで、こりゃ、どうにもならないってのがホントのところでしょう。
(ただ、いつも思うのは、これはホントに卓送りの収録だったのでしょうかね??それにステレオってのも....まあPAからのモノラル音源の卓送りの可能性も無きにしもあらず???)
先にも書きましたけど、Fripp翁自身も金の為に許可を出し、プロデュースも名前を貸しただけだってんですから、元々のマスターも大した音では無かったわけです。
当然、それをリマスターしたとしても、限界がありますよね???
結局、今回のリマスター作業でも完全に固まりになった音像を分離するなんざ、かなり無理な作業で、これはしょうもないんでしょうな....
あんまりあきらめ半分の話を書くのは気が引けますが、とはいえ、今回のCD化で何か良くなったかって言えば、手持ちのアナログ盤をカートで削る必要が無くなった事、そんでアナログ盤みたいに盤をひっくり返さなくって良くなった、そんなところなんでしょうかね??


 今回は、ようやくCD化された'Earthbound'を紹介しました。
まあ、リマスタリングと言っても先に書いたように、音の方は大した変化はありませんでした。
無理な物は無理なんでしょうか??
あ、でも考えてみると、アナログ音源を単にCD化すると、音が劇的に悪い方向に変化する事が多かったんですけど、少なくともそれを避けられたってのはリマスター作業のおかげなのかも知れませんね??
本家Crimsonのほうも、まもなくミニアルバムが、その後フルアルバムを作成するそうです。
Fripp翁の予定表には年明け春の日本公演も載っているそうな...
次のCrimsonの変化を楽しみにしながら待つとしましょうか....

To Crimson