Digitalの宮殿、Analogの宮殿〜In The Court of The Crimson King(99.12.30 なんと2001.09.17に訂正)

 ども、このサイトの更新もついに千年紀最後の更新となりました(そんな大げさな^^)。
で、千年紀最後は、発売が延びていた'King Crimson 30th Anniversary Edition'シリーズの第一弾を紹介しましょう。
そう、あのファーストアルバムがついに24bit Digital re-master、しかも初回はアナログ盤と同様のエンボス仕様に加えてシースルーのピュアゴールドCDで発売されました。
そう、ついに'Digitalの宮殿'が誕生したのです。


In The Court of The Crimson King さてさて、最初にも書いたように今回のCD化では日本盤の初回プレス分のみエンボス仕様のジャケットが使用されています。
やはり、昔のアナログ盤程ではありませんが、それでもこのジャケット原画の作者であり、若くして亡くなったBarry Godberの異形をたたえた迫力は十分に伝わってきます。
内ジャケもアナログ盤を忠実に再現と、さすがにPony Canyonと日本を最大の市場と考えるFripp翁、力が入っております。
それと、シースルー仕様のピュアゴールドCDなんか、もうおまけ以外の何者でもありませんが、それなりにコレクター仕様を整えたと言ったところでしょうか??
ちなみに、個人的にはFripp翁の得意技である当時の新聞やチラシをあしらったブックレットが気に入っていたりして....
で、今回のCD化は、そんな外装面ではなくて実は24bit Digital re-masterで発売されたのが一番の目玉なのです。
その辺のところをちょっと考察してみませう。


 これまで、確か2回か3回(だったかな??)このアルバムはCD化された筈です。
特に、CDが発売されはじめた頃、当然カタログの不足から過去のアナログ盤がCD化されました。
でも、当時のCD化ってのは、はっきり言ってアナログのマスターをまんまCDに焼いたようなものばかりだったのです。
ほんと、ごく一部のカタログを除いてCD向けのリマスタリングが行われる事は、特にポピュラーミュージックの世界ではまれだったのです。
特に、先にも書いたようにカタログ不足を補うような廉価版なんかひどいものでした。
筆者が所有するYESの'Close To The Edge'なんか、ホント今思うと'これ盤起こし???'と思うぐらいのひどい音。
高域はつまりっぱなし、分離感は低く、とても満足のいくCDとは言えないしろものでした。
で、Crimsonの場合はと言えば、実は筆者、その当時から今回のCDが発売されるまで、怖くて手が出せませんでした。
確か、前回のCD化の際もそれなりにリマスタリングがされたらしいのですけど、Fripp翁はこのリマスタリングの出来に非常に不満だったらしく、それが今回の'King Crimson 30th Anniversary Edition'シリーズ発売を計画するきっかけだったようです。
そんな背景も考えて、アナログ盤と比較していくと、確かにアナログ盤に近い雰囲気というか、俗に言うアナログ盤をCD化した際の何となく音やせしたり逆に音が変に太くなったりという妙な変調のかかり方はなくて、非常に素直に聞ける出来だと言えましょう。
特に、音の分離感はアナログ盤より良いかも知れませんし、CDの特徴である音の切れの良さというのも逆にオリジナルのアナログ盤と違った味を加えたようにも思えます。
例えば、一曲目の'21st Century Schizoid Man'では、片チャンネルに低位したバスドラムのタイミングがアナログ盤(注:筆者の保有するアナログ盤は初期のプレスですが、残念ながら1st3rdプレスではありません)よりもより明確になっていますし、今回ようやく確認出来たのはあの有名な歪んだボーカルは、やはりファズを通したのではなくて、イコライジングを極端にかけ、ファズをかけたギターのカッティングを背景にしたことにより生じたミキシングと定位のマジックだった点でしょう(実際、ライブでの極端なイコライジングをPeterが行ったのがきっかけだったのだから....)。
これは、今回のCDを聞くと良く判ります。
また、'Epitaph'でのサウンドを構成するのにアコースティックピアノが非常に効果的に使われている点や、タイトルナンバーの'The Court of The Crimson King'のエレクトリックハープシコード(とIanはインタビューで語っているけど、ホントはクラビコードじゃないか???)が鮮明になっているところ、そして'Moonchild'の有名な時間埋めの為のインプロでの静寂感なんてのも、今回のCD化で顕わになった部分ではないでしょうか??
ただ、残念な部分というかアナログ盤と明らかに違う部分も多々見受けられるのです。


 一番'あれ??'と思ったのは、'21st Century Schizoid Man'の例のノイズからイントロへの突入部分です。
アナログ盤より、間が空いているような気が非常にするのですよ。
もしかしたら、アナログ盤の場合はヒスノイズが逆に間を繋いでいた可能性もあるのだけど、何か間が空き過ぎちゃったような感じを与えちゃうんですよね??
それと、今回のリマスタリングでは'I Talk To The Wind'と'Epitaph'のクロスフェードの部分はリマスタリングで付け加えたって発言があるのだけど、確かにそれがアナログ盤と違うんですよね??
これって、やっぱアナログ盤のテープ上でのクロストークが交じっていない事が大きな原因じゃーないでしょうか??
あと、メロトロンの音のザラツキがちょっと気になるんですよ。
確かに、事実オーバーレベル気味で録音されているわけなんだけど、そこで起きている歪みって非常にアナログ的な歪みなんですよ。
でも、今回のCDのメロトロンはワォームな歪みじゃなくて、ザラついた歪みなんですよ、これ。
そうそう、それと残念ながら今回のリマスタリング盤はオリジナルマスターが見つからず、結局複数のマスターのコピーから再現されたそうです。
これも、正直残念な話、事実そのマスターのコピー、片チャンネルのレベルが低かったそうで、イコライジングで補正しているそうです。
もしかしたら、アナログ盤より分離感が強いのはこのせいかもしれませんね??
まあ、オリジナルマスターやミックス前のマルチテープが無いなら、今回のリマスタリングで作成されたデジタルマスターが、今後アーガイブとされるのかも知れませんが....
でも、やっぱりアナログ盤こそ、オリジナルマスターからのオリジナルなんでしょーね??
あー、ピンクラベルのIsland原盤、聞いてみたい......
何せ、1969年に8トラックのレコーダを使用して作成された、しかも殆どのベーシックトラックはメンバー全員で演奏してトラック数を稼いでいたという状況で作成された作品です。
でも、こんだけ完成度が高いアルバムが出来たってのは、本当に奇跡としか言いようがありません。
まあ、今回のリマスタリングで、かなり近いものが出来たってのは評価出来るんじゃーないでしょうか??
ちなみに、'King Crimson 30th Anniversary Edition'シリーズ、来年には'Poseidon'、'Lizard'が発売されるそうです。
ただ、一つ心配なのは、まさかFripp翁、'Lizard'のリマスタリング盤をリミックス盤にしてGordonのプレイ、全部消すなんて事はないよね???


Schizoid Man 最後におまけとして、発売延期で多分日本では未だ出ていない(確か、今年の初夏に予定がありながら、延期された筈です)'King Crimson Collectors Edition No.2'として1996年に発売された、何と'21st Century Schizoid Man'五連発(^^)という強力サンプルCD、'Schizoid Man'を紹介しましょう。
このCDに収録されたのはもちろん'21st Century Schizoid Man'が五種類、つまりボーカルセクションを中心としたEditバージョン(カラオケ向き???)、そしてオリジナルバージョン、加えてライブアルバム'Epitaph'の1969Filmore Westバージョン、現在正規盤が存在しない1972年'Earthbound'バージョン、そして問題の1974年'Asbury Park'バージョンが収められているのです。
特に、1972年'Earthbound'バージョンは、'Earthbound'が多分今回の'King Crimson 30th Anniversary Edition'シリーズでも発売される可能性が薄いので貴重ですが、何といっても白眉は1974年'Asbury Park'バージョンでしょう。
何故かと言えば、これがようやく2000年に発売されそうな'USA U'に収録される筈の音源だからです。
事実、'Schizoid Man'のインナーにも1996年当時'USA U'の発売時期が1997年の春と記載されていました。
しかし、実際は2000年まで延びているという次第です。
ただ、2000年に発売される'USA U'は、あの'USA'ライブ(つまりProvidence公演音源+インプロのAsbury ParkEdie Jobsonがダビングを行ったもの)と1974624日のAsbury Park音源フルレングスライブのカップリングになる可能性が高いのです。
ちなみに、色んな雑誌が、この'Schizoid Man'の1974年音源を'USA'ライブ音源(つまりProvidence公演音源)と勘違いしている記述が見受けられますが、正真正銘1974年'Asbury Park'音源なのです。
(すんません、随分前に気づいてたんすけど、治すの忘れてました。正確にはくだんの'USA'は'21st Century Schizoid Man'のみProvidence公演音源、そのほかは全てAsbury Park音源でした。でも、Asbury Park音源の'21st Century Schizoid Man'は確かに、このとき初出だったんす。〜2001.09.17 加筆訂正)
今回、最後にこれを書きたかったのでこの'Schizoid Man'を紹介しました。


まあ、来年は21世紀まであと一年となるわけです。
Crimson21世紀は、やはり見えない糸で繋がっているようです。
来年一杯で'King Crimson 30th Anniversary Edition'シリーズはある程度ケリが着くでしょうし、例の四人編成Crimsonの活動も本格化し、夏頃には新作もしくは'VROOOM'のようなテストリリースがある筈です。
そういう意味では、ファンにはサイフに紐をゆるめっぱなしにしておく一年になることは確実でしょうね(^^)。
さて、このサイトの更新も、今年はこれで終了です。
今年も一年、ご愛顧ありがとうございました。
来年もおもしろいネタを拾って紹介していきたいと思っています。
これからもよろしく、そして良いお年を(^^)/。

PS: あ、ちなみに以前、今年末にCrimsonがツアーを行い、30周年記念で昔の曲を演奏するって企画があったのを紹介したの覚えてますか??
これって、本当に企画はあったんです。
何と、John Wettonがそれを認める発言、しちゃってるんですよー。
まあ、企画サイドのたくらみで終わった見たいですけどね......

To Crimson