ども、数年前から噂だけが先行していた'70年代CrimsonのCD化されていなかった二つのライブアルバムが、ようやくリマスター盤として登場しました。
国内盤よりも数日早く輸入盤が出回りましたが、こちらのほうは話によるとアッという間に売れてしまったそうです。
そう言えば、国内盤のほうも新宿のDisk Unionならともかく、大手CDショップでも販促用のブースが出来ておりまして、このライブアルバムが大きな注目を集めている事が見て取れます。
さて、今回はその二枚のライブアルバムから、'70年代Crimson、そうLarks' Crimsonのラストツアーとなった'74年のUSツアーからコンパイルされリリースされた、こちらからご紹介するとしませう。
では(^^)/。
さて、こちらのアルバム'USA'は'75年にオリジナルアナログLPでリリースされました。
当時はシングルジャケットでしたが、今回のCD化に際しては二曲のボーナストラックを納め、ジャケットも紙ジャケ、しかも見開きバージョンとなりました。
オリジナルアナログLPのジャケットのイメージはそのままに、曲数が増えた事、クレジットの変更等でアナログLP時代の裏面に当たる部分のレイアウトは若干変わってはいますが、オリジナルの雰囲気を再現する事には成功しているようです。
今回のCD化では、これまでのCrimsonオリジナルアルバムのリマスター盤と同様、HDCDフォーマットが採用されています。
まあ、これのせいで普通のCDプレイヤーでは、ホントのリマスタリングの効果を完全に把握する事が出来ないのはつらいところではありますが....
中ジャケのほうは、当時ジャケットに使用する事が予定されていながら、結局シングルジャケットだったので使用されなかった当時のメンバーのキルリアン写真(裏ジャケの手はJohnの手のキルリアン写真だったそうな...)が配置されています。
そんなところを垣間見ると、もしかしたらオリジナルアナログLPも二枚組の可能性もあったのでしょうか??
さて、今回のこのライブ盤、実は色々と物議をかもしているのです。
まず、一つに'これはリマスターでは無くて、一部はリミックス??'とか....
で、筆者の意見としては、やはりこの盤はリマスター盤であろうかと思います。
理由は追々書いていくとしましょう。
さて、収録曲を見ていきましょう。
アルバム一曲目に収録されているのは'WALK ON ... NO PUSSYFOOTING'となっています。
発売元の販促資料、日本語のライナーなんかでは、これを新収録と書いていますけど、これは間違いで、実際はオリジナルアナログLPとまったく同じ音が収録されています。
まあ、CDなんでトラックナンバーが一つ増えた事にはなりますが....
この点、まあ憶測ではありますが、元々オープニングのBGMを一曲として独立させる事は当時は考えていなかったのか、それとも契約問題でクレジット出来なかったかのどちらかでありましょうけど、これを一曲として今回独立させたのは、まさかCrimsonお得意の印税対策ではないでしょうな??('70年当時、特に米国では曲数ではなく、曲のタイトル数が印税に大きく関係していたそーな....'宮殿'が一曲の中に複数の曲が入っているようなクレジットにしたのは、そんな理由だったとか....今はそんな手は通用しないのかな??)
さて、当然オリジナルLPと同じ流れで'Larks II'がスタートします。
音のほうは、某所で既に指摘されているとうり、デジリバっぽい感じで、オリジナルの重たいギターのカッティングとは違った雰囲気が感じられます。
それと、当時のCrimsonのステージはとにかくJohnのベースがバカでかい音だったのは有名な話で、オリジナルLPでもとにかくベースの音が大きく聞こえたのではありますが、今回のリマスタリング作業ではベースの音を何とか引っ込める事に成功したようです。
Sid Smith本でも明らかになっていますけど、このライブアルバム、ミックスの仕事はFripp翁ではなくてJohnが中心となって作業をしました。
バイオリンのダビングをEddieに依頼したのも、当時RoxyでJohnが一緒に仕事をしていたからでしょう。
ちなみに、'USA'はオリジナルLPの頃から何故かプロデューサのクレジットが無いんです。
そんなところは、そうゆう事情からなのでしょうか??
しかし、音の幕が取れた事は取れたのですけど、デジリバのせいかそれとも今回の作業のせいか判りませんが、バイオリンの音がダブルトラッキングのような感じに聞こえます。
まあ、もしかすると、Eddieのダビングで消えた事になっていたDavidのオリジナルプレイが実は少し残っていたのかな???なんて思わせてしまいます。
この一曲を聴いて思ったのは、とにかくベースがマスキングしていた他の音を前に出す作業を中心に行っているのだな??という点。
ただ、そのせいかどうかは判りませんけど、オリジナルLPより中域が落ちたのは残念...(ただ、HDCDプレイヤーで聴くと、そんな事は無い可能性もありますけど....)
さて、三曲目の'LAMENT'なんですけど、こちらは何となくイントロの音圧がオリジナルLPよりバランス的に落としてあるような気がしますが、それ以外は先に書いたようにベースでの他の音のマスキングを取った以外はオリジナルLPどうり。
当然、音のほうのクリア感は全然違いますけど....
'Exiles'のほうもクリア感以外は、オリジナルLPと同じ構成になっています。
ただ、中間部でテープのヒスノイズらしいものが目立つのはちと困りもの。
最初は盤起こしかと思ったりして(^^)。
で、オリジナルLPとはまったく違う手触りになったのはオリジナルLPのB面の一曲目と二曲目にあたる'ASBURY
PARK'と'EASY MONEY'。
前者のほうは、例のベースによる音のマスキングを取った事で、Davidの弾くエレピとメロトロンが非常にきちんと聞き分けられるようになりました。
ホント、オリジナルLPでは蚊が鳴くような音しか聞こえませんでしたもんね??
で、もっと劇的な変化を遂げたのは後者、特に一番変わったのはボーカル。
オリジナルLPではフェイジング処理がされたようなボーカルの音だったのですけど、今回は完全にそのフェイジング処理が消えちゃいました。
それと、フェードアウトになるラストパートが数秒長くなっています。
実は、この'EASY MONEY'の変わり様が、リミックスが行われたんじゃないか??という話に繋がっているのです。
確かにボーカルの処理がされていたならばオリジナルマスターから、その処理効果を取り消すのは、正直出来るのかな??って気になりますよね??
で、筆者の意見はどうかと言うと、正直判りません。
ただ、オリジナルのマルチテープが使用されたという話は出てきていませんし、あくまで今回の盤はリマスタ盤となっていますので、多分リミックスでは無いのではないかと思います。
で、どうしてこうなったかと言うのを考えると、
てところでしょうか??
アナログマスターのカッティングミスって意外と昔は良くあった話でして、それが原因で回収になったなんて事もありました。
ただ、それが原因だとすると米国盤やUK盤でも同じ事が起こったってのも信じられませんしね???
(アナログのマスターって何枚も作りますから、全部がそうだったって事も無いでしょうし....)
まあ、結局は憶測にしかすぎませんが、ただ音のバランスやら定位から見て、リミックスの線は無いんじゃないでしょうか??
あ、残念なのは'ASUBURY PARK'と'EASY MONEY'の曲間がオリジナルLPより空いちゃった事。
これってなんでなんでしょ??CDならオンタイムでくっつけても良かったんじゃないでしょうか??
さてオリジナルLPではラストを飾った'21st....'。
こちらのほうは処理の傾向は他と同じですけど、やはり元の音が他の曲が全てAsbury Park公演のものだったのが、この曲だけProvidence公演の音源って事で、逆に音の違いがはっきりしちゃったように思えます。
まあ、今回はオリジナルLPのリマスタって事で見送ったんでしょうが、思い切ってAsbury Park公演の音源に差し替えても良かったんじゃないでしょうかね??(ちと、荒技過ぎるかな??)
さて、この後同日に演奏された'FRACTURE'と'STARLESS'がボーナストラックとして続きます。
'FRACTURE'のほうは、ちとリズムが危ういです。
これまで発表された'FRACTURE'のライブトラックと比較しても、演奏的には落ちる出来です。
'STARLESS'のほうは、まあまあの出来。
で、この二曲があるって事はマルチのテープが???なんて事もささやかれていますけど、筆者はやっぱしそれについても否定派。
この二曲は当時、使うかどうかを決める時に使用された仮ミックスのテープが残っていたんじゃないか??と思います。
実際、ミックスの状況を見ても、それ程凝ったミックスはされていませんから、リミックスでは無く多分ミックス済みの音源でしょう。
まあ、この二曲をもし使用したとしたら、オリジナルLPは二枚組になった可能性もありますけど、ただそうするとLPの盤面構成もかなり難しくなりそうですよね??
それと経済的な問題もあったでしょうし....
(と言いながら、オリジナルLPは商業的には完全な失敗作だったんすけど....)
さて、この'USA'は数年前から色んな噂が飛んだのは有名な話です。
特に、CDシングル'21st...'五連発のクレジットの'USA
II'とか、CD二枚組でAsbury Park公演とProvidence公演の二枚組になるとか等々....
実際、Fripp翁も'USAは完成された作品では無い'発言もあり、様々な噂が飛んだのです。
今回、Fripp翁はオリジナルLPとやり残した部分を含んだ形という折半策を取ったのかも知れません。
その証拠って訳ではありませんけど、'STARLESS'のラストに長ーいアンコールの歓声を収録しています。
一部ではオリジナルLPの外盤がエンドレス仕様だったので、それを再現したのでは??という話もありますが、意外とそうではなくて'この拍手の後に'21st...'五連発のAsbury Park版を繋げるとほぼ完成形になるのだよ。あ、Providence版の'21st...'は外してな...'とFripp翁は言っているんじゃないかなと考えてしまいます。
なんか、ブート屋を刺激するような話ですよね???
でも、ホントにそんなバージョンのブートが出てきそうな気もしなくはなかったりして....(^^)