Crimsonの曲を3分にする男〜John Wetton(98.12.27)

 Monkey Business/John Wetton & Richard Palmer-James

 年の瀬も近づき、皆様いかがお過ごしでしょうか??
まったく、筆者も暮れのスケジュールに追いまくられております(^^)。
そんな中、多分本年('98年)最後のこのサイトのアップデートは、後期Crimson BaseVoice担当だった、John Wettonのレアトラック集で締めくくってみましょう。
このCD、一応11月末に輸入盤で入手したのだけど、VoicePrint-Japanから国内盤が出るみたいだから、これは急がねば!!!!
そんなこんなで、ここのところ四人囃子BOXセットMoonRidersに時間をかけていたところを久々にKingCrimsonネタ行ってみませう。
では!!


 今回発売されたこのCDJohn Wettonのソロのレアトラックでは無く、長年ソングライティングのチームとして活動しているRichard Palmer-Jamesとのソングライティング作業がどのように行われて来たかを提示するような形式がとられていて、よってこのCDのクレジットは'John Wetton & Richard Palmer-James'となっている。
多分、放送用のスタジオライブ音源と思われるChuck Berryの'Too Much Monkey Business'で幕を開ける、このCD、
内容的には、

  1. King Crimson向けのソングライティングとデモ
  2. John Wetton & Richard Palmer-Jamesによるソングライティング
  3. John Wetton & Richard Palmer-Jamesによる未発表トラック
  4. King CrimsonナンバーのJohn Wetton & Richard Palmer-Jamesによるリメイク
  5. John WettonのソロツアーでのKing Crimsonナンバーのトラック

の5種類に大別出来る。
この中でも、特に貴重な資料となるのは'1'のKing Crimson向けのソングライティングの課程がかいま見れるトラックだろう。
ここでは、'Easy Money'、'Book of Saturday'、'Starless'の3曲のソングライティングの模様が収録されている。
King Crimsonの場合、ファーストアルバムを除けばRobert(Bob) Frippという独裁者がいるので、曲は全てBobがコントロールしていると思われがちだけども、これを聞くと後期Crimsonの場合、ボーカルナンバーのメロディーラインの殆どは、Voice担当のJohn Wettonが担っていたことが良くわかる。
これは、例えば後年のインタビュー(MARQUEE別冊 'U.K.プログレッシブ・ロックの70年代')でも語っているように、'Starless'などはJohn Wetton自身がCrimsonに持ち込んだマテリアルで、実は最初に持ち込んだ時にはボツになったというオチまで付いていた。
ここでおもしろいのは、'Easy Money'や'Book of Saturday'等のメロディーラインはオフィシャルアルバムで公開された時とまったく変わっていないところだ。
しかし、そのアレンジ、特に間奏部分はかなり紆余曲折があったようで、後期Crimsonのラインアップがそろった最初のツアー(つまり'太陽と戦慄'の録音前のツアー)では、かなり違うアレンジで演奏されている。
特に'Easy Money'などは、ボーカル間のブリッジがメジャーでアレンジされたりもしていた。
 さて、Richard Palmer-Jamesというと、後期Crimsonのアルバムが日本で発売された当時は、かなり謎の人物視されていたのだけど、彼はJohn Wettonの旧友であり、ドイツに住むミュージシャンであることは、皆様ご存じのとおりである。
実際、Richard Palmer-James名義でソロアルバムも出しているし、そこにはJohn Wettonも参加している。
Pete Sinfieldの後任の専属作詞家として後期Crimsonの歌詞を全て担当したのだけど、Peteよりもどちらかというと現実的な詩が目立つのも、やは資質の違いだろう。
ちなみに、前述の3曲は歌詞を付ける為のサンプルトラックで、メロディラインをRichard Palmer-JamesJohn Wettonが教える為のものだという。


 このほかにも、二人のソングライティング作業をかいま見せるトラックや、デモトラックの他にほぼ完成されたトラックも収録されている。
そんな中、'Cologne'と'Rich Men Lie'、'The Laughing Lake'の3曲は、多分プライベートトラックだろうけど、ほぼ完成されたトラックも収録されている。
これらはいずれもKing Crimson後のナンバーだ。
おもしろいところでは、Richard Palmer-JamesJohn Wettonの共作なのだけど、DrumsBill Brufordにヘルプをして貰い仕上げたと見られるデモトラックの'The Good Ship Enterprise'も収録されているが、これは非常に出来の良いトラックで、若干のトリートメントが行われれば、このようなレアトラック集ではなく、正規アルバムに納められても十分通用する出来だ。


 こんな中、おもしろいのはKing Crimsonでは、結局後のオフィシャルブートレグにのみ収録された'Doctor Diamond'が、やはりプライベートトラックであろうけど、完全版として収録されているところだろう。
この曲は、色々なパイレーツ盤に収録され、一部では'Doctor D'とか'Train To Helth(Hell??)'等と呼ばれていたナンバーだ。
先のオフィシャルブートレグ'The Great Deceiver'の日本盤でも、懸命に歌詞が聞き取りで記載されていたのだけど、今回のこのCDで、初めて完全な歌詞が披露された事になる。
ただ、実際には後期Crimson時代のものに手直しもされているようだけど.....
後期Crimsonのライブは、色々なパイレーツ盤やオフィシャル盤で、かなり明らかになって来たのだけど、そんななか未公開のナンバーも存在していて、例えば'Doctor Diamond'も収録されている'74年3月19日のUdineでのライブでは、未公開のボーカルナンバーも披露されている。
(ただ、この曲は'74年の欧州ツアーのみで演奏されたようで、その後のUSツアーの音源では確認されていない)
このようなナンバーは他にもあるのじゃないだろうか??
その一端を見せているのが、後にJohn Wettonの'98年のソロアルバムに収録されることとなる'Magazines'だろう。
クレジットによれば、元々後期Crimson用に書かれたマテリアルであったのだけど、結局取り上げられる事がなかった曲の一つとある。
今後も、King Crimsonのライブはパイレーツであれ、オフィシャルであれ、ハーフオフィシャル(何と、DGM' Collector's Clubの会員向けにWEB経由で未発表ライブの発売が始まる!!!!)であれ、何らかの形でどんどん明らかになるだろう。
そんな中で、未発表曲に出会う事が出来るかどうか、楽しみでもある。
尚、John Wetton & Richard Palmer-Jamesによる'Starless'のリメイクも収録されているけど、こちらはちょっと頂けない感じもする。
やはり'RED'に収録されたあの重厚なオリジナルを聞いたあとだとね....
それに、シンセサイザーの音が完全に'TWIN PEAKS'の、あの音なんだもの....


 さて、先にも書いたようにJohn Wettonが後期Crimsonのボーカルラインの殆どを書いていた(一部例外もある....)のはほぼ間違いは無い。
そういえば、最初の日本でのソロツアーの時のインタビューで、'僕はCrimsonの曲を3分に出来る'と語っていたのを思い出す。
確かに、彼はあのツアーで'Easy Money'や'Staless'を3分間のナンバーにしてしまった。
このCDでもソロツアーでの'The Night Watch'や'Book of Saturday'が納められている。
(注:このCDの解説は、外盤でありながらかなり丁寧なのだけど誤りが多いのが玉に瑕^^)
正直、あのときには'ちょっとなー??'と思ったが、今回のCDで良く解った。
確かに彼には、ボーカルラインだけを取り出す権利を持っているのだ。

To Crimson