星は墜ちたか??〜イリジウム(99.08.18)

 ども、だいぶ前から噂になっていた話がついに本当になりましたね。
何がって衛星携帯電話のイリジウムさんが、事実上倒産してしまったのです。
一応、日本イリジウムやモトローラは、倒産ではなく経営再建の最中というようなコメントを流していますけど、まあ事実は事実として認めるしかないでしょう。
まあ、サービスが今すぐ止まる事はないでしょうし。
でも、衛星携帯電話ってのも出た時のコンセプトはおもしろかったのですけど、結局電話っていう呪縛(まあ、ページャもあったけどね....)に縛られた事がこの結果を招いたのかも知れないと思う今日このごろなのです。
今回は、こんなイリジウムさんと衛星携帯電話の未来についてちょいと考えてみませう。


 イリジウムがサービスを始めたのは一年程前でしょうか??
サービス開始前の時は、色んなフェアでかなり注目を集めていましたし、筆者も申込書を貰ってみたりしました。
(さすがに申し込みはしませんでしたけどね^^)
で、そのころのコンセプト(今も変わっていないのでしょうが)は'世界中のいたるところから電話を受け、電話をかける事が出来る'というものでしたね。
それはページャも同じコンセプトですね。
確かに、世界中が同じような通信サービスを行っているわけではないですし、通信なんか殆ど無理な地域もあります。
そんなところでいつでも通話や呼び出しが可能だというのは、確かに凄い事かもしれません。
まあ、端末の大きさは6〜7年前の携帯電話くらいの大きさになるのはある程度しかたの無い事かもしれませんが、携帯電話と合体させて衛星携帯電話として使用出来る端末なんかもあって、それはそれで評価出来る事でしょう。
そう言えば、10数年前に発刊されたトム・クランシーの'レッドストームダイジング'って小説(何と、西側諸国と旧ソビエトが通常兵器での第三次世界大戦に突入するという凄いお話)に、米国兵士が衛星通信装置を持ってアイスランド国内を逃亡する部分があるんだけど、その衛星通信装置ってのが、おっきなアンテナとバッテリー、そして通信機で構成されてて、とても衛星携帯電話みたいに片手で持てるものでなかったのを思い出すと、何となく笑ってしまいます。
まあ、考えてみればローンガンマンに会う前のXファイルのモルダー捜査官が使っていた携帯電話(よくあんなもんが背広の内ポケットに入っていたのがホント不思議)と差程大きさが変わらないんだから、それなりに端末の大きさは努力したのかも知れませんな。
でも、多分サービス開始前に申込書を貰った人も、その申込書は多分殆どゴミ箱に直行したんじゃないんでしょうか??
だって冷静に考えるとそんなに必要とする人がいるとは思えないものね、これって。


 確かに、いつでもどんなところにいても通話が可能ってのは既に書いたように凄い事なんだけど、結局それ以上のものでもないんですよね??
そりゃアマゾンの奥地やらヒマラヤやら南極から東京と連絡が出来るのは便利だけど、いったい何人の人にその必要があるんでしょう??
海外旅行や出張が多いったって、そんな電話が通じない場所に行く人が全体の何割を占めているでしょう??
逆に、そんなに外国に用がある人が、例えば日本の人口の何割を占めているでしょう??
そんなことを考えれば、普及率として現実的な数字がどれくらいかって何となくイメージ出来るんじゃーないでしょうか??
え、携帯やPHSが通じないところは??って??だから、有線電話も使えないところにどれぐらいの期間、どれぐらいの人が出かけます??
それに、ここ数年で携帯電話のいわゆるローミングサービスも日本を除いて、特に欧州や旧欧州宗主国では充実してきたわけです。
ある欧州の携帯電話関連の偉い人がアジアを訪れたとき、彼は誇らしげにGSM方式の携帯電話を掲げて、どこでも不自由は無いとのたまわっておりました。
来年にはcdmaOneもローミングサービスが始まりますよね???
まあ、海外行っても携帯電話なんざレンタルで用は足りるか。
そんなふうに考えると、別に衛星携帯電話が必要なユーザってすっごく限られてくる訳ですし、企業だったら別に個人じゃーなくて数台の契約さえして使い回せば用は足りるわけだし....
そりゃ、ついこの間北極横断だかなんかをした人は連絡用にイリジウムを使用して(実際イリジウムがスポンサーにもなってたみたいですね)たんですけど、そんな人そんな沢山いるかって???
つまり、いつでもどんなところでも通話が可能って言うコンセプトは凄いんだけど、別に皆が必要としている訳でもないわけで、まさにコンセプトは先行してるよーで、実は現実の方が先に進んでいたのが本当のところじゃーないですか??


 さて、イリジウムはこんな結果(っていうと、モトローラやら日本イリジウムやら京セラあたりに'まだ!!!!!'って怒られそうだけど)になったわけですけど、衛星携帯電話に進出してきた企業は、NTTやら日本衛星通信やらボーイング(だっけ??)やら実はまだまだ沢山出来来ているのです。
さすがに、ある会社の関係者のコメントは'こまったなー'って感じがにじみ出ていましたけど、じゃー衛星携帯電話には未来はあるのでしょうか??
考えてみれば、本来衛星携帯電話が一番活躍しそうな未開地(こうしか表現のしようが無いのでお許し下さい)では、何てったって、端末の価格やら通信費が高いから売れなかったんですよね、これ。
もっというと、そうゆうところで生活している人達には、別にいつでもどんなところでも通話出来るなんてーのも必要が無いのかも知れません。
イリジウムも通信費を半額程度まで下げるなんて事をやったんだけど、効果は無かった見たいです。
他にも、船舶電話の代わりとか使い道はありそうですけど、それだってどんだけ需要があるのでしょう????
で、筆者は、衛星携帯電話には未来は無いと思うのです。
でも、衛星通信というインフラには十分に未来があると思うのですよ。
まあ、正確に言えば衛星による音声/データ/画像通信サービスって意味ですけど。
何でかって言えば、現在の有線や地上波でカバー出来ない通信エリアをカバーするのには、低軌道衛星による衛星通信って、十二分に使える筈なわけです。
それに通信速度も随分出せる筈ですしね。
SkyPerfectPCやらDirecPCやら宇宙通信なんてところは、そんなデータ通信の世界をねらってますよね??
でも、考えてみるとイリジウムは何でデータ通信を全面に押し出さなかったのでしょう??
別に送受信機は携帯でなく常時給電可能なところで使用可能な小型の機器があれば、別にアーサー・C・クラークみたいにでっかいアンテナ立てなくても衛星を利用したデータ通信も音声通信も可能だったでしょうから、通信インフラが整っていないリゾート地なんかで金持ち相手に十分に需要があった思うんですけどね。
ねえ、衛星は打ち上げ済みでインフラはあるんだから、そんな大きな投資も必要もなく出来たと思うんですけどね??
これって、考えてみるとPHSと携帯電話の戦いでPHSが音声通話に固執してデータ通信や音声品質を全面に押し出さなかった事で負けちゃったのと同じじゃーない??
(ただイリジウムさん、さすがにPHSみたいに1円ピッチなんつー事はしませんでしたね、端末のコストが違うから)
結局、ページャや音声だけでなく他にもデータ通信やら何やらの別のおまけがついて、'いつでもどんなところでも通信が出来る'っていうコンセプトじゃーないと、みんなを振り向かせるのはつらいんじゃーないでしょうか??
有線や地上波の世界では、音声とデータの統合はこれからの通信の姿になってきてますし。
CATVはインターネットや音声通信を統合しようとしているのですよね。
だから筆者は衛星通信に未来はあるけど、衛星携帯電話だけなら未来は無いと思うんですよ、これが。

PS: 最近、IBMさんのCMで荒野のど真ん中で、土地代が安いここでインターネットを利用したオンラインショップを始めるなんてーCMやってるけど、土地代は安くても通信設備整えたら、その初期投資だけで大変でないかい??なんて思ってしまうのです。
あ、そうか、だから衛星通信か!!!!
でも、発電設備はどうするのでしょ????

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