前回はもうまもなくやって来るY2K問題を取り上げましたが、筆者も予想どおり年始はほぼ休み無しとなりました。
ただ笑っちゃうのが、当初は年末年始全員休み無し!!!!なんつー話が、ここに来てそんなに沢山いると人件費がかかりすぎるとの上層部からのストップが入りまして、結局年末年始全員出社はなくなっちゃいました。
さてさて、この上層部の判断が吉と出ますか、凶と出ますか.....
と、前置きはこの程度にして、今回は一部業界関係者の間では'もうひとつのY2K問題'と言われている'Y2-YEN'問題、つまり来年発行される新二千円札が巻き起こした、もしかしたらすんごいはた迷惑なお話について取り上げてみましょう。
先日(10月頃だったっけ??)、小渕首相が会見で来年の沖縄サミットを記念した新二千円札の発行を発表しました。
一応、政府や大蔵省のもくろみは、まあ沖縄サミット記念という表向きの理由の他に、新二千円札の発行による企業の設備投資を促そうという腹づもりなんでしょう。
ところが、この不況の時期にこんな事されて、色んな業界関係者は頭抱えちゃってるのです。
例えば、自販機関連の業界団体は早々と新二千円札の対応はしばらく見送ると発表しました。
そりゃ当然です。
新二千円札って、何か一億枚程度しか刷られないらしいんですね??
自販機も多分8割程度は1000円札が使用出来るようにしたのに、そこに今度は新二千円札なんてー話が出てきたわけですから、そりゃたまったものじゃーありません。
それに、自販機製造のメーカもそうですけど、自販機を設置している業者さんにとっては新二千円札の対応をしたとしても、それは単に余計な手を入れなきゃならないわけで、当然お金がかかるのです。
ところが、別に新二千円札の対応をしたって別にそれで自販機の売り上げが上がるかといったら、何せ元々発行枚数が少ない五千円よりもさらに少ない発行枚数しか流通しない二千円札ですから、そんなことはあり得ないというのが正直なところでしょう。
せっかく鉄道の券売機も全金種対応が出来て来たところに、新二千円札と言う鬼子が登場したというわけです。
ちなみに、自販機と言えるか判りませんが、パチンコのプリペイドカードは多分、対応せざる負えないんじゃーないでしょうか???
多分、二千円札が一番使われるのはパチンコ業界かも知れません(^^)。
他にも色んな問題が出てきています。
例えば一番影響を受けるのは銀行なんかの金融機関でしょう。
ATMやCD機は勿論、カウンターの中の入出金機、札勘機や札の鑑別器、札の帯付け機やらの、沢山の金銭出納機器やら鑑別器機や何かは、みーんな何らかの手を打たなければならない訳です。
(あ、多分カウンターの構成〜簡易金庫である引き出しとか、も影響ありますね??)
例えば、機械を通さないで処理する(これを'手払い'なんて呼びますが)としても、いずれの場合でもコンピュータのシステムは手を入れる必要が出てきます。
通常、金融機関ってのは一日の終わりに入出金の状況を全てとりまとめてそれをホストコンピュータに報告する必要があります。
これを精査と言いますが、この精査で金種と金額が合わないと銀行の支店なんかは、金種と金額を合わせる作業が発生しますが、銀行の支店なんかで良く夜遅くまで明かりがもれていたら、大概がその大騒ぎの最中です。
(ちなみに、銀行の支店なんかでカウンターの模様替え作業とか機械の入れ替えをすると、以外とお金が落ちていたりするんですねー、さていつ足りなかった時のお金なんでしょ???)
この精査ってやつは全ての金種毎に幾らの入出金があったかという現物(現金)やら手形とか振り込みとかの状況をとりまとめる必要があるのですけど、そうなると当然システム自体に手を加える必要があるのです。
多分、金融機関は五千円札と同様に二千円札を取り扱う、つまり両替での金種指定を除いては入金は受け付けるけど、出金は行わない体制を取ると思うのですけど、当然二千円の入金に対するシステム上の対策は最低限必要となってくるわけです。
又、機械のほうも、二千円札の入金時の対応は必要になるわけですけど、実はATMやCD、そして入出金機ってのは金種毎の金庫を持っているのだけど、金種が一つ増えるってことは金庫を一つ増やすか二千円札は機械に入れないようにハジく(リジェクトと言います)必要が出てくるわけで、と言うことは、何らかの改造か新しい機械の導入が必要となるわけです。
さて、そんな金融機関に機械を提供しているメーカさんも大変です。
当然、新機種の開発やら旧機種での二千円札対応が必要になるわけですね??
確かに、メーカさんにとっては新機種の売り込みのチャンスが出てきたようにも思えますが、何せ小渕君達の気まぐれの思いつきなわけですから、新二千円札が登場してくるまでに一年も無い上に、未だ大蔵省の提供しているのは図案と札の大きさだけで、未だサンプルも無いわけですから、新機種を設計/製造するのにはあまりにも時間が少なすぎるというわけです。
しかも、現行の機械でも新二千円札に対する何らかの対応が必要となるわけですけど、その対応にも時間が当然必要になります。
何せ、現在のお札への旧札からの移行もかなり時間をかけて準備した筈なのですけど、今回はそんな時間も無いと来たわけです。
実際、この年末(ただでさえY2Kで忙しいこの時期に....)、メーカさんもようやく方針を発表出来た次第ですから、当然
その方針を踏まえて、金融機関やらコンピュータメーカやらSIベンダーはシステムの変更を計画しなきゃならないのですけど、何せ時間が迫っていますから、多分年明け早々からは大騒ぎとなる事でしょう。
(事実、筆者のいる会社でも大騒ぎが始まろうとしています。)
それに、こうゆうメーカさんも、先の自販機業界のほうも、例の偽造500円玉への対応にも追われていますし、来年には新しい製法の新500円玉まで登場するんですからねー。
今回の新二千円札の何が困るかと言うと、結局沖縄サミット及び西暦2000年を記念した新札の発行と言っても、記念貨幣ではなく、一般に今後流通させる紙幣だという点でしょう。
これまでも、オリンピックやら天皇在位何年とか記念硬貨が発行されましたけど、結局それって一般に流通させるものではなくて、あくまで記念硬貨ですから、流通業界にしても金融機関にしても飲食産業にしても、特にそれに対応する必要って無かったわけです。
(ちなみに、知り合いがファミレスでの食事後にお代を払おうとしたら財布の中身が足りなくて、しょうがないからたまたま持っていた10万円硬貨で支払おうとしたら、かなり変な目で見られたそうです....)
つまり、初回の発行枚数が少ないとは言え、今後一般に流通するならば、それに関連する業界は皆、この新二千円札への対応を行わざる負えないという事になるのです。
さて、今回の新二千円札の発行、確かに記念としての側面も強いのですけど、多分一番の目的は新札発行による経済対策ってのがホントの意図なんでしょうね???
つまり、前述のように今後流通する新札が出てくれば、関連する業界は皆それに対する対策、つまり設備投資が必要となる訳です。
ところが、これってホント日本らしい発想じゃないでしょうか??
そう、つまり公共事業のばらまきと同じだと思うのです。
というのは、新札対応ってのは実は非常に一過性の作業であって、これによって何かの経済効果の波及があるわけじゃないというところです。
公共事業という発想は、殆ど全てがあのケインズの'需要が無ければ創れば良い'という考え(ちょっーと荒っぽい言い方ですが)がベースとなっています。
つまり、'とりあえず穴を掘る仕事を作りました。この仕事を皆さんに割り当てましょう。'で始まり、穴を掘り終わったら今度は'じゃー穴を埋めて下さい'として、別に何かの経済的な波及効果なんか期待せず、とりあえず仕事を作ってやりゃー良いだろうという発想です。
だから、特に近年の公共事業ってのは別にいらないものでも景気対策と称して事業が行われ、出来ても役に立たないものが沢山あります。
今回の新二千円札もそんな感じなんですよね??
ただ、公共事業のばらまきと違う点が一つだけあるんですね、新二千円札の発行って。
だって公共事業のばらまきは、はっきり言っちゃうとゼネコン業界が望むから行われているようなもので、そうゆう意味では、喜ぶ連中がいるんです。
ところが、新二千円札の発行については、関連する殆どの業界は'何でこんな時期にこんな事するんじゃい!!!'と困っているのが殆どかも知れません。
実際、そんな声がかなり聞こえてくるのです。
まあ、はっきり言って今回の新二千円札発行って、小渕君達政府及び官庁の方々が自己満足しているだけの事なんじゃーないでしょうか??
まあ、元々経済政策っていうと公共事業と輸出だのみ程度の知恵しかなくて、新しい産業を育てるのがとにかくヘタな日本らしい話と言えるんじゃーないでしょうか??
一部のジャーナリストやアナリストは、欧米には二の単位の紙幣が存在するんだから、日本でもそれが出来る事は
良い事だなんて話している連中もいますが、何せ、時期が悪いよなー、Y2Kが迫っているこのご時世にこんな事言い出すんだから....
せめて終わってからにしてくれよ、Y2Kが.....
(でも、それだと沖縄サミットに間に合わないからなんだろーな???)
さて、'The Age of Digital'も年内はこれが最後の更新となります。
一年間、ご愛読ありがとうございましたと、ちょっと早いですけど挨拶しちゃいます。
来年は、せっかくリクエストのあったオープンソースやフリーソフトの話を早い時期に書くつもりです。
では、Y2Kで世界が終わらない事を祈って、又次回お会いしましょう。
では(^^)/。