怒涛のロードマップ、メーカの憂うつ(98.04.15)

 このタイトルとは、直接の関係は無いが、4月の第一週に幕張メッセで'COMDEX JAPAN'が開催されたので、筆者もいそいそと出かけてみた。
昨年も行ったのだけど、お題目の'世界最大のトレードショウ'は、今年も見かけ倒しで終わったようですね。
まあ、この不況の中だからしかたがないとはいえ、大手どころのメーカのかなりの数は出展を見送ったのも、'COMDEX'という名前を冠していながら、主催会社のソフトバンクも、やべーな??と内心思っているのではないかな??
トレードショウのお題目は良いとして、確かにアジア、オセアニア、ヨーロッパの中小ベンダーが出展していたのは良いのだけど、わざわざ幕張の一コマ、しかも通路を挟んだ端っこに置くなんざー、ソフトバンクの奢りが見えなくもないな。
トレードショウだってーのなら、海外の中小ベンダーと日本のベンダーの出会いを考えて、大手ベンダーより良い場所にブースを置いて各ブースに日本語通訳をタダで貸し出すくらいの事はして欲しいよね??
おかげで、7号館の寂しかった事....
来年も多分やるとは思うけど、結局ビジネスショウと変わんなくなっちゃうのかな??
一応、金曜日は開催せず、見学者の休前日の直行/直帰ワザを封じている(単に金曜日使えなかっただけだったりして^^)けど、この内容じゃ逆に見学者には余計な事だったとも思うのだけど....
 さて、今回のテーマなのですがここ4年くらいのコンピュータの新製品発売って凄いと思いません??
例えば、特に今回の'COMDEX'の直前にもモバイルPentiumIIの発表があって、各社がそれを使用した高機能ノートPCの発売を発表しているし、ちょっと前ならG3の発表とそれを使用したMACの発売発表もありましたね。
その前にも、CiryxやAMDのクロックアップは勿論、本家IntelもモバイルMMXもそれほど前の話ではないのに、この時代の動きの速さを考えるともう4〜5年前の話にも思えてきそうな程、目まぐるしい。
ちなみに、先日の'COMDEX'ではモバイルPentiumII搭載マシンは、結局日立くらいしか見受けられ無かったのだけど....
ちなみに、筆者の使っているノートPCも1年ちょっと前は最新のPentiumマシンだったのだけどな....(と言いつつ、1年落ちで安く買ったのだけど^^)
こんなCPUのパワーアップがちょくちょく行われ、CPU自身の価格も安くなっているこの状況、お陰で泣きをみているのは実はユーザじゃなくてハードウェアを供給するメーカじゃないだろうか??
確かに、ハードウェアメーカにはCPUメーカのIntelやCiryx、AMDなんかから当然ロードマップを提示され、サンプルを手に入れて新しいマシンを開発し、市場に送り出しているのだけど、そのマシンが今の不況のおりに売れているかというとそうでもない。
昨年末あたりは、かなりのメーカが販売台数の下方修正を行っているし、多くのハードメーカは自社で全てを開発/生産していたら間に合わないから、マザーボードや電源、ディスク、果てはケースまで外部から買い入れてアセンブリだけして出しているのが現状だろう。
へたすりゃOEM供給で製品そのものを外部調達しているメーカもある。
これは何より、一から開発していたらとても割りが合わないからだし、それとこうもCPUが入れ替わり立ち代わりすれば、とてもきちんとした製造/販売計画を立てる暇もないんじゃーないだろーか??
つまり、新製品の乱売状態になっているのである。
実際、PCの出荷台数と販売台数にはいつも差があるし、しかも新しいCPUを搭載したマシンが出ると一世代前のPCは殆ど捨て値で在庫処分が始まるわけで、出荷台数と販売台数の差なんざ、そこで埋まっているのが実状だ。
 こんな状況に嫌気がさしたのか、さじを投げたのか、一部のメーカでは受注生産に移行するところも出てきた。
これは、不況だからで済まされる事でも無く、PC市場自体がデフレ状態、つまり物が行き渡りすぎたんじゃーないかという指摘も米国あたりのマスコミでもささやかれ始めた。
そういえば、こいつを書いている今日(4/15)、何とIntelも減収になり数千人規模のリストラを行う事まで発表されてしまったよ。
CPUメーカも楽じゃないんだな。
日本では既に昨年からPCの販売台数は落ちていたのだけど、アジアの不況や日本の不況だけでなく、米国も含めた世界規模でPCのデフレ状態が起こっているように思える。
この状況って、何か'80年代中盤のデジタルシンセサイザーの乱立に良く似ているね??
ただ、この時は自社の製品にこだわったメーカばかりで、最終的には米国の大手どころは殆ど倒れてしまった。
'90年代にはいってこれはこれで落ち着いたのだけど....
この時も、次から次ぎに新製品が出たので、逆にユーザの買い控えがあったし、今のPCとよーく似た話だった(つーても市場規模が違うんだけど)。
そんなこんな今日(4/15)、又IntelさんがPentiumIIのクロックアップ版を出したし、新しいチップセットも発表しちゃいました。
多分、夏の商戦を睨んでの事だろうけど、さてそんなにうまくいきます事やら....
今、デスクトップの落ち込みは凄いものだし、ノートPCが好調とはいえ先にも言ったデフレ状態、しかも不況だから、高価な新製品に飛びつくユーザがどれだけいるだろう????
(秋葉原でいくら裸のCPUが沢山売れても、それはメーカにはあまり関係ない筈だよな。アンテナ的な意味はあるんだろーけど)
多分、その前に在庫調整で旧タイプマシン(多分モバイルMMXあたり??)が放出されざる負えないだろうから、そっちのほうが買いだな、こりゃ。
というような事をユーザが考えているんだから、結局新しいマシンやCPUはその次が出た時が買いになっちゃうかも知れない....
(まあ、3年くらい前の未だPC市場が不況なんか知らなかった頃にも、あるメーカには売れ残ったPCをどうやって市場に出して在庫処分をするかを決定する偉い人がいたくらいだけど...)
まあ、ユーザにはうれしい話だけど、こう次から次へと新製品をださなきゃならないメーカも憂うつな事でしょう。
SI屋さんも大変だ。
大体システムを受注したなら規模にもよるけど、何だかんだでシステムが出来るまで数ヶ月かかるけど、システムが出来上がったら、そのシステムを走らせる予定のハードが無くなったとか(単にCPUやチップセットが変わっただけじゃ済まないんですね、これ。へたすりゃ一から再テストをやらにゃーいかん時もある)、笑い話にもならない事って意外にあるんですよね。
しかも、米国では1000ドルPC、800ドルPCなんて話も出てきたんだから、極論するとPCなんか全然儲からない商品になってきたところに、もっと安く売らなきゃならないWindows Terminalなんかも出さなきゃならなくなった。
数少ない儲けの種のノートPCだって、2000ドルだ、1800ドルだって話が出てきたし.....
 そういう意味じゃ、CPU供給メーカのほうが上手なのかもしれない。
とにかく、CPU供給メーカは細かく手の内を小出しにしてくるんだから、これからもしばらくはハードメーカにとっては憂うつな日々が続いていくのであろう....

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