皆様、新年明けましておめでとうございます。
本年も、当サイトをよろしくお願い致します。
さて、2003年最初の更新は、年末にどーっとリマスター/再発された四人囃子の9枚のオリジナルアルバムについてお話してみようと思います。
(あ、一枚は新作なんで、別扱いと言うことで^^)
既に過去、このサイトでアルバムレビューを行っていますんで、今回はリマスタリング作業はどんだけアナログのオリジナルアルバムに近づいたのか??、そして何が変わったのか??を中心に据えて行きます。
ただ、なにせ9枚ありますんで、数回に分けてオリジナルアルバムの発表順に進めて行こうという次第でして。
それでは、今回は初期三枚を取り上げてみませう。
まずは、有名なデビューアルバムを自由に創らせてもらうためのバーターとなった映画'二十歳の原点'のサントラ盤であります。
実際には、本当の意味でのサントラ盤と言うより映画のプロモーションを狙ったような企画レコードでありまして、四人囃子の演奏の他、映画のテーマトラック以外に、この映画の主演女優'角ゆり子'によるナレーションやら効果音も交えたものとなっています。
後に東宝レコードから発売された'TRIPLE MIRROR OF YONINBAYASHI'、'98年に発売された'四人囃子アーリーデイズ'に収録されたものは、それらの囃子音源以外を全て取り去り、加えて曲順を変えた形となりました。
今回の再発で、ようやくオリジナルフォーマットの作品をCDで楽しめるようになったわけです。
一部のファンの間でも、'四人囃子アーリーデイズ'の発売は歓迎されたのですが、その反面オリジナルフォーマットで無い点を気にするファンも多かったようです。
何せ、オリジナルLPなんざ、某中古屋で数万円で取引されていたのですから....
ただ、四人囃子のメンバー側としては、オリジナルフォーマットでの発売は、このアルバムの創られた経緯も含めてかなり抵抗があったようです。
(実際、大二さんから直接、そんな話を聞いています)
しかし、このアルバムは音源としての四人囃子の演奏を取り出すのでは無く、やはりオリジナルフォーマットの方がしっくり来るような気もします。
一応、四人囃子に対しても曲は発注自体は、このようなフォーマットである事を理解した上で曲が創られたのだと思いますし。
さてさて、今回のリマスタリングはどうだったかと言えば、ちょっとエコーがきつくなったような気もしますが、当時のオリジナルアルバムよりも音的には良くなっているのでは無いでしょうか??
どちらが良いかは一概には言えませんけど、アナログ時の音の膜が取れて、音の鮮度が高くなったように思えます。
それと、ご存じの方も多いと思いますが'四人囃子アーリーデイズ'や'TRIPLE MIRROR OF YONINBAYASHI'とマスター自体が異なります。
まあ、語りや効果音との兼ね合いがありますから、多分オリジナルアルバムのマスターが使用されるのは当然ですが.....
各曲の収録時間も'四人囃子アーリーデイズ'と比較すると短めにはなっています。
それと、今回のリマスタリングのせいかは判りませんが、'四人囃子アーリーデイズ'よりも音圧が高くなっているのも特徴です。
'四人囃子アーリーデイズ'の方は、ボーナストラックの'煙草'や'ライトハウス'のライブ音源が収録されているという事、それと'二十歳の原点'の各曲がフルコーラスで収録されているという点で、未だ貴重な音源と言えますが、アルバムとして完成したという一点では今回の再発盤に軍配が上がるってところでしょうか??
ただちょっと気にかかるのは、ヒスノイズがところどころ聞き取れるのですが、まさか盤起こしでは無いでしょうね??このマスター??って気にさせてしまう部分でしょうか??
ちなみにジャケの方は非常に丁寧に再現されています。
CDのレーベル面もオリジナルアルバムのもののようです。
(ちょっと印刷に滲みがあるのもネタでしょうか??)
さあお次は、まさに日本のロック史上、傑作といわれた'一触即発'であります。
今回の再発では、アナログ盤のオリジナルマスターではなく、元となったのは'空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ'、'ブエンディア'がボーナストラックとして収録されて再発された時のマスターではないかと思います。
ただ、ジャケットの方は完全にオリジナル仕様で再現されていますので、ジャケットにはボーナストラックの二曲の記述がありません。
また、'空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ'に関しては当時のシングル盤のジャケットが別に挿入されておりまして、かなりうれしい作りです。
さて音の方を良く聴くと、オリジナルプレスのLPと比較すると、かなり高域が強調されたCDフォーマット用の音に変わっているのに気づきます。
例えば、二曲目の'空と雲'を聴くと、かなり高域が綺麗にはなっているのですけど、逆にオリジナルアルバムと比較するとアナログが持つ陰鬱な感じが曲に与えていた部分が無くなっている感じがしまして、'二十歳の原点'とはまったく逆の評価になってしまうのですけど....
'二十歳の原点'の場合、当時数日で録音/ミックスを行ったため、多分メンバーの望むようなマスタリングにはなっていなかったと思うので、今回のリマスタリングでその鬱憤を晴らせて良かった、良かったと思うのですが、逆に'一触即発'の方はやっぱアナログ盤に限りなく近づけて欲しかったと筆者は思ってしまいます。
何せ、このアルバムを創るのに当時のメンバー、スタッフがどれだけ苦労したかを知っているファンにとっては、やはりアナログ盤の音を求めてしまうのですよ、やはり。
ちょっと所謂CD臭い音になっちゃったのかな??
それと、音に歪みが感じられるのも残念なところなのです....
アナログ盤のS/Nは非常に良かったんですよね....
ただ、今回のリマスタリングで良くなっている部分もあります。
まず、先にも書いたようにアナログ特有の陰鬱な部分が無くなった事で、音の分離が非常に良くなった事。
特にベースとドラムの細かいフレーズがアナログと違って、完全に聞き分けられます。
また、アナログ盤では埋もれていた音も綺麗に聞き取る事が出来ます。
それと、ラストの'ピンポン玉の嘆き'のメロトロンが非常に綺麗な音になった事でしょうか??
まあ、メロトロンマニアはオリジナルアルバムに軍配を上げるかも知れませんけど。
(メロトロンはやはり暗ーくないと許さない人、沢山いるものなー^^)
で、面白いのは'空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ'。
こっちはオリジナルがシングル盤だったんで、今回のリマスタリングで音の鮮度が上がった事が良い方向に行っています。
特にシンバルの刻みが非常に綺麗に聞こえまして、ベースが前に出た事と相まって、シングル盤よりも全然良くなっているんじゃないでしょうかね??
'ブエンディア'も同じ傾向です。
さて、今回紹介する最後の再発盤は、初期四人囃子の集大成と言えた'ゴールデンピクニックス'です。
こちらの方は、ボーナストラックに'レディ・バイオレッタ'のシングルバージョンが入っておりまして、と言うことはラスト二曲は'レディ・バイオレッタ'二連発と言うことになります。
こちらのジャケ等は、既にご存じのとおりCD袋代わりのインナースリーブのメンバー写真が逆焼きになっているなんてトラブルもありましたが、アートワークとしては一番、良く出来ているんじゃないでしょうか??
特に、帯。
今回、Disk Unionさんが購入特典としてオリジナルLPの頃の帯を再現しておまけに付けてくれたのですけど、このCDに付いている帯も、これに負けていない出来なのです(^^)。
さて、音の方ですが、筆者は四人囃子の音源は事情があってオリジナルLP以外に'ゴールデンピクニックス'だけはCD選書版も保有しているんですが、それと比較しても今回のリマスタリングで音圧はかなり上がっています。
それと、やはりオリジナルLPよりも音の分離もかなり上がっています。
当時、このアルバムに詰め込まれた音は、残念ながらアナログだと団子になってしまう部分もあったのですが、それが綺麗に分離してしまいました。
ただ、それが良かったか悪かったかの判断とは別でして、逆にアナログ時代には耳の邪魔をしなかった音が前に出てきて、バランスを崩しているような気もします。
この傾向は特に'カーニバルがやってくるぞ'のギターパートで顕著です。
ただ、アナログ時代に引っ込み気味だったベースの音がかなり前に出てくるようになってまして、分離の良くなったドラムと共に曲の迫力を上げているのは、良くなったと評価出来ますね、ホント。
それと、'空と海の間'がホントに良くなりました。
アナログの時の膜が取れた事が、曲の鮮度を断然上げています。
この傾向は'泳ぐなネッシー'にも言えるのではないでしょうか??
多分、当時のアナログ時代では、ダビングの繰り返しで下がってしまう音の鮮度をマスタリング作業で取り戻すのは、かなりきつかったと思うのです。
それだけ、音とアイディアを詰め込んだアルバムだったんですよね??'ゴールデンピクニックス'って。
さて、今回のリマスタリングがアナログの良さを崩していないかチェックするには、LPバージョンの'レディ・バイオレッタ'の中間部の力強いアコースティックギターのカッティングがどれだけ綺麗に響いているかです。
ちなみにCD選書版では、この部分が全然出ていないのですが、今回のリマスタリング版ではちょっと残念な事にアナログ盤の響きには、今一歩でした。
まあ、CD選書版なんか足下にも及ばないぐらいきちんとした音になっているのですけど、アナログ盤では、この部分の美しさが'レディ・バイオレッタ'という曲のアレンジを完全にしたと思うのです。
ホント、この部分だけはアナログ盤に敵いませんでした....
とは言え、今回紹介した三枚の中では、一番リマスタリングが成功したのは、この作品と言えましょう。
ただ、残念ながらライナーノーツは誤りが何カ所かありますが(^^)。
さて、今回は初期四人囃子の再発三枚のリマスタリング状況をレポしました。
以前、大二さんが某雑誌で語っていたように、既にオリジナルのマルチテープやマスターは存在していないのです。
殆どがDATコピーがマスターとなっているのです。
ハードディスクレコーディングによるデジタル録音の今と違い、デジタルレコーディングとは言えテープを使用していた音源についても、2001年に'ロングバケーション'のリマスタ盤を発表した大滝詠一氏が雑誌で語っていたようにテープの劣化が激しいそうです。
実際、'70年代のマスターやマルチがあったとしてもそのテープが無事であろうかも疑問ではあります。
(欧州や米国と違い、日本人は水の中で暮らしていますから....)
そんななか、それでもCD化に際して、何とかオリジナルLPと対等か、もしくは違う良さを引き出そうとする努力が、近年行われている事には頭が下がります。
まあ、それだけの事が出来るテクノロジーの発達があってこそだとも思います。
本日は、ここまでとしまして、次回はモリさん脱退後、佐藤満氏加入後の音源のリマスタリング状況を検証するとしましょう。
それでは、それまで、しばしのお時間を。