ダンスはうまく踊れない〜四人囃子/ボックスセット発売決定記念その3(99.05.16)

 5月も半ばを過ぎ、皆様いかがお過ごしでしょうか??
さて、昨年9月から'四人囃子/ボックスセット発売決定記念'の連動企画ということで3回シリーズ(プラスおまけが一回)でお届けしてしていたこの特集も、一応予定どうり今回で一旦終了と言うことで最終回をお届け致しませう。
今回は、'89年7月に突如復活した四人囃子についてのお話です。
では!!!


Dance 'NEO-N'で解散した四人囃子は、'89年7月にアルバム'Dance'とともに、日本のロックシーンに突然戻って来ました。
この当時と言えば、今のJ-POPが形になって来た時期とも言えますが、そんな今で言うところのJ-POPアーティスト(って書くのって何か抵抗あるな.....)の数々、例えばBOOWYSTREET SLIDERSBLUE HEARTSなんかのいわゆるドル箱をプロデュースしていたのが、プラスティックスを経て本格的にプロデュース業に携わっていた四人囃子の佐久間氏なのでありました。
プロデューサって言えば'90年代の小室哲哉がまあ有名どころだけど、あの男の場合、売れ線ワンパターンのプロデュースだし、いつも同じ音と同じメロディーをトリートメントの手法を変えてるだけだけど(それであんだけ稼げるんだからねー.....)、その点佐久間氏の場合、各ミュージシャンの個性の部分をどう扱うかに長けているし、プロデューサの能力としては遙かに上だとも思うんだけど。
さて、そんな売れっ子プロデューサの佐久間氏のもとを訪ねていったのが、元四人囃子の岡井氏なのであります。
あるインタビューで'何であんなに売れるのかを見に行った'というような趣旨の発言をしていたのだけど、岡井氏も一応プロデュースや企画の仕事を行いながら、そりゃ昔の仲間の成功の秘訣に触れたかったのかも知れない。
ところが、この訪問がきっかけとなり、坂下氏も交えた3人編成で四人囃子の再結成とニューアルバムのレコーディングが開始されてしまったのです。
ただ、佐久間氏は'自分にプロデュースさせてくれれば'との条件を出したので、このアルバム'
Dance'は初めてメンバー全員によるプロデュースではなく佐久間氏のみによるプロデュース作品となりました。
それと、四人囃子と言えば、ギター兼ボーカルがフロントマンというイメージがあると思うけど、このアルバムでは全てのギターは佐久間氏が弾く事になり、それもあってかこの再結成にギタープレイヤーである森園氏や佐藤氏が絡まなかったのも特徴の一つでありましょう。
さて出来上がったアルバム'
Dance'ですけど、一応マスコミの反応は悪くなかったと記憶している。
まあ、その当時と言えば欧米で'70年代のビッグネームが再結成、ツアーやアルバムをリリースする事がブームになっていたから、日本でもそうゆう動きがあっても商業的にも不思議じゃーないなっていう感じで受け入れられたのかも知れない。
でも、正直なところ、このアルバム、四人囃子のアルバムと手放しで誉められるアルバムじゃーないと思う。
はっきりと言っちゃうと、元四人囃子のメンバーが四人囃子の名前のもとに個々のソロアルバムを一枚のアルバムに詰め込んだっていう感じがするのです。
音も、プレイも悪くは無い。
曲も、コンパクトだし、まあこのアルバムの多分唯一の弱点とも言えるボーカルも、佐久間氏のボコーダや岡井氏のボーカルもサウンドトリートメントに助けられ、それなりにものになっていると思う。
個々の曲でもオープニングの'一千の夜(1000 Nights)'や蕩々とした'Luicifer'、凝った作りの'al-sala-di SCENE'、ダイナミックな'I'm In Action'、ラストの'眠い月(Nemui-Tsuki)'等、アルバムの流れも悪くない。
でも、筆者にはこれが四人囃子のアルバムである必然性が感じられないのである。
佐久間氏のねらいが過去の四人囃子のイメージを払拭すると言うことなら、多分それは成功している。
だけど、同時に四人囃子である必然性も奪ってしまったとも言えるのじゃーなかろーか??
これはあくまで筆者の私見だし、漠然とした感覚でしか無いのかも知れないけど、かすかな手掛かりと言えば、メンバーの共作が2曲('I'm In Action'と'A Spoon For The Boy')しか無い事、坂下氏の作品が一曲('Luicifer')のみであることなんかが挙げられる程度なのだけど、どうもしっくりこないのだ。


Full House Matinee Live LD さて、再結成された四人囃子は、'89年9月22日と同23日に今は亡きMZA有明にてライブを行う事になる。
このライブ、'Full House Matinee'と題され、そのお題のとうり元々は1日夜一公演だったのを'満員だったらマチネ(昼の公演)をやるよ'って事で、両日ともチケット発売直後に昼の部が追加されたように確かに前評判も上々だった。
一応、事前に森園氏と佐藤氏もこのライブに参加する事も発表されていたから、このライブに集まった人達も本音を言えば、先の'
Dance'のライブを聴くというよりも以前の四人囃子のナンバーの再演が聞ける事に注目していたのだと思う。
ただ、'
Dance'のナンバーをどうやって演奏するのかには、筆者も含めて興味もあった事だろう。
当然筆者も
いそいそと出かけて行きましたが、MZA有明って正直言って遠いんだよねー。
地下鉄有楽町線の豊洲の駅から連絡バスも出てたんだけどね。
さて、会場に入りステージを見るとの照明、PA共に外タレなみ、四人囃子のロゴマークをかたどった屋根側の照明なんか、かなり凝った出来。
でも、いくら計4回公演でも、MZA有明のキャパじゃーペイしないんじゃーない??と思ってしまう。
まあ、当然のごとくスポンサーも付き、後日
ライブCDLDも発売される等、商業的にもそれなりの手を打ってあったわけなのですが....


Full House Matinee CD さて、演奏については、後日発売されたライブCD'FULL HOUSE MATINEE'やLDで聞けるとうり、スモークによるオープニングから'Dance'のナンバーをサポートメンバー5人とともに演奏、佐久間、岡井、坂下のメンバー3名がステージフロントにズラリと並ぶ構成。
佐久間氏は終始ギターを手にし、岡井氏もドラムではなくエレクトリックドラムをパーカッション的に叩きながら、ボーカルを取るというステージ形態で進んだ。
そして、中盤からはオールドナンバー特集となり、まず佐藤氏が登場、サポートメンバーの数も減り'NOCTO-VISION FOR YOU'や'ハレソラ'などの佐藤囃子時代の曲を演奏、そしてサポートメンバーが全てステージを後にし、森園氏登場、'おまつり'や'空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ'、'ナスのちゃわんやき'等を佐藤氏を含めた5人編成で演奏したのでした。
そして佐藤、森園両名が退場し、サポートメンバーが戻って'
Dance'のナンバーを演奏、アンコールでは先の5人編成で'一触即発'を演奏、さすがにこのときはすごい拍手が起こった。
尚、
LDではエンディングクレジットに使用されているけど、再度のアンコールでは参加メンバー全員で'Dance'の'Good Good'を演奏して、ステージは終了したのでした。
ちなみに、筆者が見に行った23日の夜の部ではこの'Good Good'の最中にサポートメンバーで唯一の女性である西園マリ嬢がボディコン(死語だよ、死語、これ^^)にピンヒールで演奏していたのだけど、ステージ上段でこけまして、そしたら、四人囃子のメンバー、みーんなマリ嬢の下半身を見に走っていったのでした。
(ありゃ、怪我を心配して見に行ったんじゃーないよ。うーん、四人囃子のメンバーも歳を取ったっつー事かな????)
さて、
LDを見た人ならご存じだと思うけど、このライブ、演奏も良かったし、観客も満員でした。
でも、一つおもしろかったのは、殆どの観客(筆者も含めて)はみーんな席に座ったまんまなのです。
ちなみに、筆者の見た23日夜の部で踊っていたのは3名だけでした(^^)。
そう、このライブに集まった観客はニューアルバムの'
Dance'のタイトルに反して、みーんな'ダンスはうまく踊れない'のでした。


HISTORY さてさて、業界あげての四人囃子大プロモーションは、'89年にPONY CANYONから'ゴールデンピクニックス'を除く全てのアルバムがCD復刻('ゴールデンピクニックス'だけは、CBS SONYから'90年にCD復刻、但し廉価版のQ盤シリーズだった)が行われ、何と六本木のWAVEでは、店内チャートのトップに'一触即発'が立つなど、先の'Dance'、そして'FULL HOUSE MATINEE'ライブも含めて、かなりホットな話題となったわけです。
そして、そんな'
Dance'と'FULL HOUSE MATINEE'のライブCDLDの発売の合間に発売されたのが、ベストアルバム'HISTORY'なのであります。
(しかし、シルバーのジャケはスキャンしづらいわい....)
このベストアルバム、さすがに1枚もののCDなので、例えば'ネッシー'が収められていないなんかの不満もあれど、まあほぼ代表曲を網羅したアルバムと言って良いでしょう。
おもしろいのは、
'73年の俳優座ライブの'一触即発'にスタジオ盤の'ピンポン玉の嘆き'を繋ぐなんて事も行われているのだけど、一番の注目点はシングルバージョンの'レディ・バイオレッタ'でしょう。
このバージョンが唯一(シングル盤持っていなければ)聞けるのはこのベスト盤だけなのだけど、かなり貴重なものでしょう。
演奏は多分ベーシックトラックはLPバージョンのものをエディットし、ギターのソロパートを新録したものと思われるのだけど、このソロがかなり問題を含んでいるのだ。
この当時の森園氏の不調を思わせるように、例えばチョークが完全にフラットしていたり、フレーズが散漫だったりというところが随所に聞かれ、何となくあの美しい'レディ・バイオレッタ'の暗い一面が見えたような感じで....
正直、四人囃子森園氏も、そしてレコード会社のCBS SONYも何か投げ遣りな感じがしてしょうがない。


 そんな四人囃子大プロモーションも'90年を迎えると一段落と言ったところでしょうか??
実際、先の
ベスト盤ライブCD及びLDの発売後、四人囃子の活動は収束してしまったわけです。
そして、佐久間氏は最近のJUDY & MARYGLAYのプロデュースで大成功を収めていますし、他のメンバーもそれぞれ現在でも音楽に関わっているわけです。
(ちなみに、先日5月5日にNHKで放送されたGLAYのドキュメンタリーに佐久間氏がちらっとだけ写りました^^)
四人囃子公式サイトによれば、この特集のきっかけとなったボックスセットの他、森園、岡井、坂下のオリジナルメンバー3名による四人囃子の新録も予定されているそーな。
正直、期待と不安が入り交じる今日この頃であります。
さて、計3回(プラス、おまけが一回^^)でお送りしました'四人囃子/ボックスセット発売決定記念'特集、いかがだったでしょう??
一応今回はこれで終了しますが、多分、ボックスセット新録が発売されたなら、又四人囃子について書きたくなるでしょう。
その時まで、四人囃子とはしばしの別れといたしましょう。
では(^^)/。

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