Caravan 登場!!!(2002.04.07)

 ども、サイト自体の更新もちょっと時間が空いてしまいました。
何せ、年度末/年度始めつーことで、仕事のほうがかなり忙しかったもので....
ちなみに、世の中では例の'M銀行'のシステム統合(と言っても、実際のところ勘定系のシステムのホントの統合はもっと後なのですが....)のおー騒ぎが色んなところで話題になってますが、まさか年度末/年度始めにやらなくても良いのにね???はっきしいってお偉いさんの面子だけでやっちまったら、ホントにやっちまったってところでしょうか??
こりゃ、色んな面でみーんな迷惑してるんじゃないでしょうか??(筆者もその一人??)
この辺の顛末も色々ホントの話を沢山聞いているんで書いても良いんですけど、ちょっとまだマズイかな???ってところで、今しばしお時間を。
さて、こちらのコーナは'The Musical Box'、今回は今年一月についに初来日を遂げたCaravanを取り上げて見ましょう。
と言っても、実は来日公演直後にライブレビューの形で行おうと思っていたのですけど、ライブのレビューのほうは先日クロスリンクさせて頂いたCaravanの日本公式サイトを含む'Captain Ahab's Long Distance Journey'で非常に細やかなレビューが載ってまして、こりゃ筆者の出番ではないな??と思うまして、方針変更。
今回は昨年から今年にかけて貴重なボーナストラックを含み、しかも日本では殆どが紙ジャケ仕様で再発されたDECCA時代のCaravanのアルバムをミニレビューとともに紹介しようかと思います。
ただ、この方針変更のせいで仕込みに非常に時間がかかりまして、ここまでずれ込んだ事をお詫びしながら、行ってみませう、'Caravan 登場!!!'。
(各ジャケットをクリックすると、詳細データのページへ飛ぶことが出来ます。

CARAVANCARAVAN
(Universal UICY 9208 2002 UK 8829522〜Original LP VERVE VLP or SVLP 6011 '68)
Caravanは'68年初頭に結成されました。
地元Canterburyでの活動の後、LONDONに進出、Verveとの契約を結び、'6810月にファーストアルバム'CARAVAN'を発表します。
残念ながら筆者は日本盤紙ジャケ仕様の発売前に購入してしまいまして、UK盤は普通のジュエルケース仕様です。
こちらは何と、当時のアナログ音源がモノ及びステレオ仕様の両方で発売されていたことから両音源が一枚のCDに収録、セカンド発売時のシングル音源がボーナスとして収録されています。
さすがにデビューアルバムと言うことで、未だこなれていない部分もありますし、PyeRichardのボーカルの棲み分けなんかは、未だ完成していない感もあります。
でも、既に'Where but for caravan woukd I?'のような長尺な演奏も収録されています。
せっかくファーストアルバムの発売にこぎ着けながらも、何と契約先のVerveが消滅、再びレコード会社を探さなければならなくなったCaravanは、ようやくDECCAと契約を結ぶことに成功、そして異常に長いタイトルで有名なセカンドアルバム'if i could do....'を'70年に発表します。
一般的にCaravanの音楽的な出発点は、このアルバムと言われていますが、確かに前作で未整理だった、PyeRichardのボーカルの棲み分けや、Canterburyサウンドと言えばこれ!!と言われるようになったDaveのファズやワウを使用したオルガンを中心としたインストゥルメンタルパートの充実等々、格段に進歩した演奏が収録されています。後々のライブでも演奏されていく事になるタイトルナンバー、そして後には'For Richard'と呼ばれるようになる'Can't Be Long Now/Francoise/For Richard/Warlock'等々、非常に興味深いアルバムと言えます。
ボーナストラックは、デモバージョンや未発表デモが収録されています。
if i could do it all over again i'd do it all over youif i could do it all over again i'd do it all over you
(Universal UICY 9065 2001〜Original LP DECCA SKL-R 5052 '70)
In the Land of Gray and Pink

In the Land of Gray and Pink
(Universal UICY 9056 2001〜Original LP DERAM SDL-R 1 '71)
多分、日本のファンも含めてCaravanの初期の代表作と言えば、本作'In the Land of Gray and Pink'を指摘される方が多いと思います。
筆者も初めて購入したCaravanのアルバムは本作でした。
DECCAからDECCAが興した新興レーベルDERAMに移籍、DERAM自体も、このアルバムからCaravanを強力にプッシュし始めたらしいことは、初の見開きジャケットから読みとる事が出来ます。
演奏のほうは、前作からさらに進化しており、曲のほうもA面に四曲の小品、B面には初期の代表作とも言える'Nine Feet Underground'が収録されています。
Daveのオルガンを中心とした演奏は、リズムは淡々としていながらも、かなり密度が濃く、特にRichardのベースラインの変幻自在なプレイは素晴らしい演奏。
ちなみに、このアルバムでは一部でメロトロンが使用されたり、Dave GrinstedによるSEの使用等々、実験的な部分も見事に消化された演奏を聴く事が出来ます。
このアルバムを初めて聴いた時にはDaveのオルガンとPyeのギターが殆ど同じに聞こえたのが懐かしく思えます。
ボーナストラックでは、'Golf Girl'の歌詞違いテイク'Group Girl'なんてのも収録されています。
Caravanは初のメンバーチェンジを経験します。
何と、これまでCaravanのサウンドキャラクターそのものとも言えたDaveの脱退です。
CaravanPhil Millerの兄、Steve Millerをキーボードとして加え、四作目のアルバムである本作'WATERLOO LILY'を発表します。
このアルバムは、これまでアルバムのレコーディングを手伝っていたPyeの兄、Jimmy Hastings以外にもゲストを招いて制作された点が、このアルバムの特徴とも言えます。
非常にポップでありながら、ストリングスを交えた美しい組曲形式の'The Love In Your Eye'がこのアルバムの顔とも言えますが、一番興味深いナンバーは、二曲目の何とセカンドギターにSteveの弟、Philを加えた'Nothing At All'でしょう。
後のHatfield & The Northを予感させるようなジャジーな演奏は、Steveのエレピの妙技とともに、このアルバムでも異色の演奏でしょう。
Steveは元々エレピやピアノが得意なプレイヤーですが、このアルバムではDaveの後任と言うことでオルガンを中心にプレイしていますが、'Nothing At All'のみは本当の顔を見せているというのも興味深いところです。
WATERLOO LILY

WATERLOO LILY
(Universal UICY 9059 2001〜Original LP DERAM SDL-R 8 '72)
For Girls Who Grow Plump In The Night

For Girls Who Grow Plump In The Night
(Universal UICY 9060 2001〜Original LP DERAM SKL-R 12 '73)
前作で初のメンバーチェンジを経験したCaravanですが、何と本作'For Girls Who Grow Plump In The Night'で、Robert Wyattの基でプレイしていたDaveが再度Caravanに復帰しました。
しかし、その代わりにRichardが脱退、代わりのベースプレイヤーを探していたら、Geoffrey Richardsonを発掘、新しいViolaという武器がCaravanに加わります。
後任のベースプレイヤーは、John G. Perryが参加。
アルバムのほうは前作のゲストプレイヤーの使用をさらに押し進め、Jimmyを中心としたブラスセクションの使用や、A.R.PDevoliのシンセサイザーの導入、そしてMartyn FordとJohn Bellによるオーケストラの導入とバラエティ豊かなサウンドが展開されます。
ライブの定番となるナンバーも多いのですが、一番注目されるのは、やはり'L'Auberge Du Sanglier/A Hunting We Shall Go/Pengola/Backwards/
A Hunting We Shall Go(Reprise)'でのオーケストラの導入でしょう。
曲自体も非常に良く出来た曲です。
オーケストラの導入と言えば、Pink FloydMoody Bluseが思い出されますが、Floydの場合は結局途中で投げ出したのが逆に第三者によってうまく構成されたってのがホントですし、Moodyの場合はバンドとオーケストラの演奏は同じアルバムに同居しているだけに過ぎませんが、Caravanはバンド主導だった点が大きな違いでしょう。
前作の発売後、Caravanはライブでのオーケストラとの競演を企画します。
このアルバムは、その演奏を納めたものですがオリジナル盤はオーケストラとの競演部分のみが収録されて発売されました。
今回の一連のCaravanの再発の中で一番の目玉は、本作だと思います。
確かに曲順等、オリジナル盤を完全に踏襲していないとは言え(この点を元々のオリジナル盤の趣旨を変えているとの批判も一部にあるようですが)、このライブが行われた際の演奏の全てが収録されているというのは、凄い発掘では無いかと思うのです。
演奏は、オーケストラとの競演前のバンドのみでの演奏から始まり、オリジナル盤のオーケストラとの競演、そしてアンコールまで、多分完全収録と見て良いでしょう。
ちなみに、オーラスの'A Hunting We Shall Go'がオーケストラとの競演にも関わらずオリジナル盤に収録されなかったのは、やはり当時最新スタジオ盤であった前作の売り上げに影響を与えない配慮もあったのではないでしょうか??
(収録時間の関係もあるのでしょうが...)
CARAVAN & THE NEW SYMPHONIACARAVAN & THE NEW SYMPHONIA
(Universal UICY 9066 2001〜Original LP DECCA SKL-R 1110 '74)
Cunning StuntsCunning Stunts
(Universal UICY 9067 2001〜Original LP DECCA SKL-R 5210 '75)
さて、前作でライブでのオーケストラとの競演を果たし、まさにバンドとしても乗っていた時期だと思います。
そしてCaravanはその市場を英国や欧州だけでなく、本格的な米国進出に乗り出します。
残念ながら、このアルバムではJohn G. Perryは既に脱退、代わりにCurved Airにも参加していた米国人のMike Wedgwoodが参加しています。
収録されている曲は、A面に小品、B面に組曲形式と、'In the Land of Gray and Pink'以来のCaravanのアルバムスタイルを継承していますが、A面の楽曲を聴くとやはり米国進出を念頭においたようなアレンジの曲もあり、その辺が興味深い点です。
B面の'The Dabsong Conshirtoe'はそんななか、Caravanが創って来た長尺の曲の集大成とも言えるでしょう。
後のBBCライブでもテープSEを使用したこの曲の演奏は、非常にスリリングなものです。
ラストには、Geoffreyの独り舞台とも言える'The Fear & Loathing In Tollington Park Rag'で締めくくられています。
ちなみに、ボーナストラックには、アナログ時代には2枚組ベストアルバム'Canterbury Tales'(ちなみに日本では同じタイトルながら日本独自編集の一枚物が発売されました)に収録されて話題になったライブ音源の'For Richard'が収録されているのですが、次に紹介するライブ音源の発売が決まっていなかったからボーナストラックとして収録されたのでしょうね??
先にも書いたように、当初この音源の発売は予定されていなかったようです。
しかし、英国でも日本でも予想外に反応の良かった各アルバムの状況を見て、それまで幻のライブ音源であった本作が正式に発売されたという事のようです。
このアルバムの元の音源は、米国進出を念頭にして米国でのラジオ放送用に収録された音源だと、このアルバムのオリジナルライナーに書かれています。
確かに、前作で初めて米国チャートに入った事もあり、この当時、押せ押せの状態にバンドが居たのでしょう。
ただ、米国進出はあまり大きな成功には繋がらなかったようですし、前作でDECCAとの契約も切れ、BTMへ移籍していますが、それ以降は所謂長尺な曲やインスト系の演奏は段々影を潜め、Pyeを中心としたよりポップなサウンドに変化していきます。
この'74年の音源はそんなバンドの変化の直前を教えてくれる貴重なものと言えます。
ただ、このオリジナル盤は何と関係者が金目当てで勝手にフランスで発売したものとの話、当然メンバーはこのアルバムが発売された事も当時は知らなかった、当然印税は無しという状況が伝えられています。
演奏のほうは充実しており、リマスタにより音質も上がっているようです。
当時のMikeの隠し技のCongaプレイも聴く事が出来ます。
思うのですが、Caravanというのは格段に演奏のうまいバンドでは無いのですが、ライブでの演奏のまとめ方が非常にうまく、演奏に破綻が生じる事が非常に少ない、まれなバンドだと言うことが、このライブでも良く判ります。
live at the Fairfield Halls, 1974live at the Fairfield Halls, 1974
(Universal UICY 3517 2002 UK 8829022)
(Original released 'THE BEST OF CARAVAN LIVE' KINGDOM 426002〜Fr '80)

CLASSIC ROCK LEGENDS Caravan(DVD)CLASSIC ROCK LEGENDS Caravan(DVD)
(CLASSIC ROCK LEGENDS UK CRL0748/NTSC 2001)
さて、最後はおまけ。
'90年の所謂CODA 90音源のビデオがDVDで昨年発売になりました。
筆者、実は当初Caravanだけ買い損ねまして、今年に入ってようやく通信販売で入手したと思ったら、日本でもMSIが輸入/販売(但し、日本盤扱いでは無いようです)を始めるというオチが付いちゃいました。
オリジナルの四人にJimmyが参加と、まさにオリジナルCaravanの演奏を目にすることが出来る訳ですが、ただCDで発売された音源と違い、TV放送時のセレクションのみというのが、ちょっと残念です。
それと、あんまし良いエンコーダを使用していないようで、画質は正直誉められたモノではありません。
(圧縮が4M程度なんて、最近のDVDでは久しぶりです)
まあ、PAL画像をNTSCにダウンコンバートしている点も関係しているとは思いますが、も少し何とかならんかったのかな???
それでも、オリジナルメンバーでのNine Feet Underground'が見られるというのが貴重と言えば貴重か??
この再結成は、Richard主体で行われたもので、当然曲もオリジナル四人が演奏出来る'In the Land of Gray and Pink'までのものと、'80年代のRichard復帰時のものが納められていますが、この後、有名なRichardPyeCaravan本家争いに発展していくのでした。
(ちなみに、同期のHatfield & The Northのライブ映像もDVDで出ていますが、当然筆者は即買いでした)

さて、Caravanの再発アルバムミニレビュー、いかがでしたでしょうか??
先日の日本公演では、各時代の楽曲をちりばめ、加えて新曲も披露されました。
今回はPercussionを含む7人編成の大所帯での来日でしたが、Pyeのソロが聴けなかった(リフやDoug Bayleとのツインは聴けましたけど)のはちょっと残念でしたが、その分ボーカルに専念していたのでしょう。
神経質そうなDaveの演奏、淡々とリズムを刻むRichard Coughlan、スプーンソロ(??)まで出たGeoffrey等々、まだまだ現役ぶりを見せて頂きました。
でも一番驚いたのは'80年代に米国で再度ブレイクしたThe Kinksのリズムを支えていた名ベースプレイヤーJim Levertonの参加でしょう。
正直、どっかで聞いた名、どっかで見たようなと思っていたら、自宅でThe Kinksの名作DVD'ONE FOR THE ROAD'を見て気づいて、びっくりしました。
生活の基盤を築き、その上で好きなように音楽を出来るようにした現在のCaravan、そうは言ってもまだまだ現役バンドだったことは、うれしい驚きだった事を書き加えておきましょう。
(ホントは、Richardの日本公演も見たかったのですけど、時間が取れませんでした...残念無念...)

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