完全ではない茂木由多加ディスコグラフィー(99.06.28 2003.05.14訂正)

 先日、四人囃子/ボックスセット発売決定記念特集も3回とおまけが1回で終了したわけですが、最近、四人囃子オフィシャルホームページで、何と四人囃子史上、もっとも在籍期間の短かったキーボードプレイヤーの茂木由多加氏の話題で盛り上がっております。
実は、茂木氏は四人囃子脱退後に2枚のソロアルバムを残しているのです。
正直、今まであまりメディアに取り上げられる事のなかったこの2枚のアルバムですが、なかなか良質な作品なのです。
そこで、今回は茂木由多加氏のソロアルバムを紹介しませう。
では。


DIGITAL MISTERY TOUR 茂木由多加氏は、'75年2月に四人囃子エレピとシンセサイザー担当として参加しました。
坂下氏と岡井氏のインタビュー等では、Procol Harumのようにオルガンとピアノの各々選任する事を目的としたツインキーボード編成が目的だったそうです。
ちなみに、四人囃子脱退後に森園氏が参加したプリズムがまさにそんな編成だったのはおもしろいお話(??)。
結局茂木氏はシングルの'空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ'を発表した直後に四人囃子を脱退、坂本龍一氏が脱退したリリイのバイバイセッションバンドに参加、その後はスタジオミュージシャン、アレンジャーとして活躍しています。
(ちなみに、坂本龍一'教授'の後ガマなんですが、'助教授'とは呼ばれませんでした。ちなみに関係ないけど'助教授'と呼ばれていたのは'あんぜんバンド'の中村哲氏でした)
当時、四人囃子では茂木氏参加直後にベースの中村真一氏が脱退、佐久間正英氏がベースとして臨時加入、茂木氏の脱退後に正式メンバーに昇格したのは有名なお話ですが、この茂木氏と佐久間氏はミスタッチ万華鏡といったバンドで活動を共にしていました。
この二つのバンドは結局音源は残っていない(ただ、万華鏡は中津川フォークジャンボリーに出演した筈なので、もしかすると、どこかに音源があるやもしれません)のですが、四人囃子参加前に茂木氏は万華鏡時代の曲をKINGレコードからソロシングルとしてリリースしています。
(四人囃子オフィシャルホームページ/ファンメールコーナにて佐久間氏が詳しい事を語っています)
ちなみに、茂木氏は昔ELPの曲をオルガンが無いんでピアノで演奏していたそーな。
なんか、Curved Airに参加する前のEddie Jobsonみたいなお話です。
さて、そんな茂木氏ですが、'78年に初のソロアルバム'DIGITAL MISTERY TOUR'を発表しました。
内容は、ビートルズナンバーやクラシック、そしてスタンダードナンバーをシンセサイザーをメインにして演奏したものです。
まあ、すんごいポップになったクラフトワークとウェンディ・カーロスが一緒になったような印象です。
収録曲の中には、四人囃子が'GOLDEN PICNICS'に収録したビートルズの'FLYING'も収められていますので、それと比較してみるのもおもしろいかもしれません。
ただ、このアルバム、使用しているシンセサイザーは殆ど当時販売されていたYAMAHA製品が総動員されてはいますが、殆ど手弾きで演奏されているようです。
(一応、YAMAHACS-30には10数ステップのアナログシーケンサーが内蔵されていたはずですが、同期の問題なんかから、そんなに利用出来なかったんじゃーないかな??)
このアルバムは、ある意味企画ものでもあったようで、当時の'ロッキングオン'関連人脈から、ライナーを渋谷陽一氏と映画監督の大林宣彦氏が書いているのですけども、渋谷氏のほうはさすがに茂木氏を持ち上げて、大林氏は収録曲に'星に願いを'が収められている事もあって、当時の映画'未知との遭遇'を絡めた文章になっていて、この辺の違いがなかなかおもしろいです。
ちなみに、四人囃子オフィシャルホームページ/ファンメールコーナの佐久間氏の発言によると、クレジットはされていないけど、ベースで参加しているそうです。
まあ、契約問題とか、販売方針上の問題でノークレジットになったのでしょう。
ただ、アスキー出版社から発売されている'電子音楽 イン・ジャパン'中の佐久間氏のインタビューによると、当時のスタジオの仕事では、キーボードには殆ど茂木氏を呼んだそうなので、その辺のツルミ具合からのお手伝いかもしれません。


FLIGHT INFORMATION さて、茂木氏と言えば、四人囃子の'79年のシングル'拳法混乱(カンフージョン)'、そしてやはり'79年の'NEO-N'に参加しています。
四人囃子は、'79年の'NEO-N'発表後、活動を停止しましたが、茂木氏は四人囃子の佐久間氏、岡井氏の協力の下、2枚目のソロアルバム'FLIGHT INFORMATION'を'80年に発表しました。
このアルバム、何といってもレコード帯に'空前のメタルエレガンス'なんつー凄いジャックが書かれていますが、内容は茂木氏のキーボードを中心にしたきちんとアレンジされたインストが収録されています。
まあ、編成がキーボードトリオですし茂木氏のソロアルバムだからキーボードが中心なのは当たり前ですけど、特にソロというわけではなくショートフレーズですが佐久間氏がなかなかかっこいいギターを弾いています。
(このアルバムで、ようやく佐久間氏のギターが好きになった筆者なのでした^^)
特にオープニングの'NEAR MISS'は茂木氏のシンセサイザー、佐久間氏のギター、そして岡井氏のダイナミックなタムワークといい、傑作です。
後半のSony Skysensorでキャッチした音を交えての演奏もなかなか(ホルガー・チューガイかね^^)。
B面の'TELSTAR'も後半の人声(ボコーダではなくてシンセサイザーで作った音でしょう)を交えたアレンジなんか、モー最高!!!!!!。
ユーモアがあって緊張感もあるという変な感じの'DIE DEUTSCHE IDEOLOGIE'は、とにかく変だけど、おもしろいったらありゃない。
とにかく、演奏面で佐久間氏と岡井氏のリズムセクションに支えられて、茂木氏の演奏はさえっぱなしである。
まあ、こりゃドラムだけ変わったミスタッチなのかもしれないねー。
さすがに、レコーディングだから演奏中にオルガン倒す事はなかったでしょーけど。
曲はA面ラストの'THE TWILIGHT ZONE'とB面トップの'TELSTAR'というチョー有名な曲のカバー以外は、全て茂木氏のオリジナル。
そして前作との一番の違いと言えば、プロデュース自体がやはり茂木氏自身のセルフプロデュースってところでしょう。
多分、前作は企画ものだったと思うのですけど、この2枚目はかなり好きに出来たんじゃーないでしょーか??
ちなみに、このアルバムの何曲かは、佐久間氏の七回目の誕生日ソロライブ(判る人には判る、このギャグ^^。ただ、ドラムは岡井氏ではなかったと記憶しているけど)で演奏されました。
(あるスジからの情報で、この日のドラムは大二さんだったことが判りました。あれ??会場に筆者も居たのに??ちなみに、'DIGITAL MISTERY TOUR'の中からも何曲か、'NEO-N'からの曲も演奏されていたのでした。この日のライブは日本の民生機シンセ大活躍の日だったのです。何せ島さんまで参加してたんですから!!! 2003.05.14訂正 あるスジの方に大感謝!!!)
この後、茂木氏もスタジオワークやらアレンジャーとして仕事をしているみたいです。
残念だったのは、四人囃子の'89年の再結成ライブに茂木氏が参加しなかった事でしょうか??
そうすりゃ、きっと茂木氏を含めたミスタッチ時代のオリジナル'カーニバルがやって来るぞ'が絶対に演奏されたでしょーに。


さて、最後にこの文中にも登場しましたが、アスキー出版社の'電子音楽 イン・ジャパン'は、日本の過去の音楽シーンを書いたムック類の中では、久々の出来の本です。
昨年出た本ですけど、まだ市場にはあるでしょう。
とにかく、ここのところ色々出ている日本の音楽シーンを書いた本は、どーも間違いというかひどい勘違いが多いんだけど、この本はかなりしっかりインタビュー、取材をして書かれています。
(うーん、あのアスキーが....)
中心は、タイトルどうり日本の電子音楽が段々ポピュラーミュージックに浸透していく歴史を書いているんだけど、大阪の万博当時やら旧NHKの電子音楽スタジオのお話、それにプラスチックス時代の佐久間氏やらYMOやら、P−モデルやら、ヒカシューやら、あのイノヤマランドやら、バッハレボリューションやら、とにかくてんこ盛り。
これは、買っても損はないっすよ。
ちなみに、アルバム紹介に茂木氏の'DIGITAL MISTERY TOUR'も出ております。

To Musical Box