STRAIGHT LINES-NEW MUSIK (2001.01.19)

 ここのところ、昔欲しかったのに、何故か手元に無かった'70〜'80年代のアルバムの再発され、ショップで見つけるたびに買い込んでしまうという生活が続いています。
そんなこんなの中で、見つけた瞬間に顔がほころんでしまったのが、今日紹介するそんなアルバムです。
多分、日本、そしてUKのテクノポップ全盛期を知っている人なら、多分知っていると思いますが、今回紹介するのは、あのTony Mansfieldが率いたNEW MUSIKのファーストアルバム'FROM A TO B'なのです。


STRAIGHT LINES さて、本題に入る前に、一枚のコンパクトアルバムを紹介します。
このコンパクトアルバムも、勿論今回のお題でありますNEW MUSIKの作品ですが、内容は当時出ていたシングルを集めた四曲入りのものです。
盤はUS盤です。
これ、つまり米国でのプロモーション開始時にリリースされたものらしいです。
NEW MUSIKEPIC傘下のGTO Recordsというレーベルに所属していましたが、どうもそのレーベルのアーティストを米国市場に紹介する為に幾つかのグループが、このようなコンパクトアルバムを出したようです。
(このコンパクトアルバムの中にも、そんな米国進出の先兵たるアーティストを紹介したペラパンが入っています)
筆者は、NEW MUSIKの存在は、確かYMOの高橋幸宏氏の雑誌のインタビューを見て知りました。
ただ、その時はバンドの名称に惹かれた程度で、実際は日本でもアルバムは出ていたのですけど、当時筆者はアルバムを買い込むのを、ちとためらっておりましたらうまいこと、このコンパクトアルバムに出会ったというわけです。
収録曲は後で紹介する'FROM A TO B'からシングルカットされた曲とそのB面が収められているのですが、初めて針を落とした時には、そのポップさと、頭打ちのハンマービートスタイルに惹かれて、当時はかなりしょっちゅう聴いていた記憶があります。
しかし、気に入った癖にこのコンパクトアルバムに満足してしまったのか、結局アルバムは入手せずじまいになってしまったのでした。


FROM A TO B さて、そんなこんなで結局入手し損なったアルバムが、今回'洋楽秘宝館'というシリーズものの一枚として、ついに先日発売され、しかも発売日に筆者、入手してしまったのです。
と言っても、このアルバムが出るなんて事は全然知らなかったのですけど、ショップでたまたま見つけたなんてのが、ホント、何か運命的な出会いを感じてしまった(??)、今日この頃なのであります。
しかもうれしい事に基となったオリジナルアルバムにボーナストラック三曲が収められたUK(US??)仕様に、さらに日本版ではプラス四曲のボーナストラックが付くという超お買い得盤(??)で発売されたのです。
先のコンパクトアルバムに収められていた曲も、このボーナストラックのおかげ(??)で、全てCDで聴く事が出来るようになってしまったのです。
又、この盤に付いているライナーノーツが奮った出来となっていまして、何せ書いているのが、あの'電子音楽・イン・ジャパン’の田中雄二氏でありますから、何せ活字も小さくして思いっきり詳しくNEW MUSIK及びリーダのTony Mansfieldの事を書いてくれておりまして、これだけでも資料的価値の高いアルバムと言えましょう。
さて、音のほうはと言えば、こちらも田中雄二氏のライナーノーツを読めば一目瞭然というのでは面白くないので筆者なりの解説を....
先のコンパクトアルバムでも書いたように、この'FROM A TO B'は、基本的には非常にポップなテクノポップと言えると思います。
所謂ボキャブラリ的に見ても、曲の作りなんかは非常にUKポップの聞き易さを持ったものと言えましょう。
ただ、NEW MUSIKと言うかTonyの個性は、そんなポップな曲に非常に効果的な味付けでテクノポップに仕上げた点じゃーないでしょうか??
それは一つは頭打ちのハンマービートの多用ですし、そして有名なホワイトノイズでのリズムの構築部分でしょう。
又、アレンジ自体というか使用した楽器の数なんかを聞き取ると実はすごくシンプルな作りになっている事も特徴でしょうね??
で、ポップと言いながら、歌詞は非常に批評的かつちょっと英国的な皮肉も混じったものになっているのも特徴でしょう。
先の'電子音楽・イン・ジャパン'中でもTonyと高橋幸宏氏の絡みの話はかなり詳しく書かれていましたが、この当時のUKのテクノポップって、非常に手作り的な作品が多かったわけで、特に日本の民生機タイプのシンセサイザーがかなり多用された時期でもあり、いわゆるゴージャスな音づくりよりもシンプルな音づくりがはやっていました。
事実、John Foxxのファーストソロアルバムなんか、リズムはスカスカ、音もシンセサイザーの単音がその大部分を占めているなんてのもありましたし。
で、NEW MUSIKはどうかっていうと、機材的にはそんな高いものは使ってなかったみたいです。
このお話はライナーノーツにも書いてあるように高橋幸宏がロンドンに持ち込んだYMO関連の機材をレコーディングで目の当たりにしてTonyはかなりショックを受けたみたいですし。
でも、おもしろいのは逆に高橋幸宏氏はTonyProphet 5に入っていたTonyの創ったホワイトノイズだらけのバンクに驚きながらも、かなり影響を受けたそうです。
まあ、このTonyと高橋幸宏氏の絡みは'FROM A TO B'の後の話ですから、'FROM A TO B'には直接関係ある話ではありませんけど(但し、この'FROM A TO B'が日本発売されたのは、高橋幸宏氏の押しがあったからだそうですけど)、Tony自身がプレイヤーとしてより自分をプロデューサ的に自分を見つめていたのは事実のようです。
後にNEW MUSIKは三枚のアルバムを残し解散、TonyFairlight CMIをひっさげて売れっ子プロデューサになっていきます('80年代後半から'90年代は大変だったようですが...)。
この'FROM A TO B'以降のアルバムはよりエレクトロニクス色が強くなり実験的要素も濃くなったそうです。
でも、やっぱ筆者としては先のコンパクトアルバムが刷り込まれているせいもあるのかな??やっぱポップでちょっとチープなファーストアルバム'FROM A TO B'が好きですな。


 さて、今回はNEW MUSIKを紹介しました。
こんな事、書いていたら、'80年代のUKテクノポップ系のアルバムを何枚か紹介したくもなって来ました。
いずれおりをみて、そんな筆者が好きだったUKのちょっとひねくれたテクノポップ系のアーティストを紹介していきましょう。
では、今回はこんなところで(^^)/。

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