巷はGWの最終日、そんななか皆様、いかがお過ごしでしょうか(^^)。
筆者はと言えば、三月から四月の仕事の忙しさからGWの予定なんか考える暇もありませんで、何とか休みにはなりましたんで、ひたすら寝てました(^^)。
さて、今回GWすぺしゃるでお贈りするのは(?)、'70年代にセッションに、その後作曲/アレンジにと大活躍した日本ロック黎明期の鍵盤奏者である柳田ヒロ特集です。
昨年末から今年の頭に旧作ソロ二枚と旧作企画物一枚が復刻、かなり注目を集めました。
筆者も当然のごとく旧作ソロ二枚を買い求めまして、春先まではよーく聴いていました。
ホントはもっと早く掲載するつもりだったのですけど、仕事の忙しくて仕込みの時間が取れませんでして、ここまで延びてしまった次第です。
まー、それの埋め合わせってわけではありませんが、それ以前にも再発された柳田ヒロ氏の関連アルバムも絡めて、ちょっと時期はずれではありますが、進めていきませう。
んでは(^^)/。
さて、こちらは今回再発されたものではなく、'98年に'ニューロックの夜明け'と題したシリーズ(曽我部恵一氏とサミー前田氏監修)で再発された柳田氏のファーストソロアルバムです。
この時には同時にこのアルバム制作前に制作されたセッションアルバム'晩餐/フードブレイン'も再発されました。
柳田ヒロ氏と言えば、'68年にモンキーズファンクラブの日本支部が公募して結成されたGSバンド/フローラルに参加、モンキーズ来日公演の前座を務めた後、バーンズの松本隆、細野晴臣の後のはっぴいえんどリズム隊とともにエイプリル・フールを結成、かなりサイケデリックな演奏を繰り広げていたそうです。
柳田氏はフローラル加入頃から楽器をギターから鍵盤(オルガン)にチェンジ、特にThe DoorsのRay
Manzarekの影響を強く受け、The Doorsのコピーを懸命に行っていたとか....
その後、エイプリル・フールははっぴいえんど組、それと小坂忠氏との音楽的な意見が合わず解散、柳田氏は必然的にソロ、セッション活動を始めていきます。
先のセッションアルバム'晩餐/フードブレイン'もその一つの成果でありました。
当時、鍵盤奏者、特にハモンド使いはかなり重宝されたようで、数々のセッションに柳田氏の名前は刻まれていく事になります。
そんなさなか、セッションアルバム'晩餐/フードブレイン'で一緒だったつのだひろ氏をドラムに、その後柳田氏とは非常に縁深い活動を続けていく水谷公生氏をギターに、当時珍しいエレクトリックバイオリンプレイヤーであった玉木宏樹氏らを迎えて、初のリーダアルバムを'70年に発表しました。
それがこの'Milk Time'と題されたアルバムです。
冒頭からチェンバロによる不可思議なメロディー、そしてハードというか、極めて米国的なオルガンサウンドからアルバムは展開していきます。
所謂プログレアルバムとして扱われる事が多い、この作品ですけど、確かに当時そのような空気を柳田氏も感じていたでしょうし、クラシックのような展開の曲もあるのですけど、本質的には当時のアートロック、ニューロックの範疇で語られるべきアルバムのように思えます。
多分録音自体も一日程度の通し録音、当時の録音機材等を考えれば、スタジオで'セーの'で録られたアルバムでしょう。
当時はまだ、海外のロック系アルバムのようなレコーディング方法が判らず、エンジニアもアンプから出てくる歪んだ音を録るすべを手探りで探していたような状況です。
正直、録音はあまり良くありません。
ただ、演奏自体はつのだ氏が太鼓を叩いてますんで、リズム的にはかなり安定しています。
柳田氏の演奏と言うと、何故か和製エマーソンみたいに語られますが、正直ソロのフレーズ的にはそれ程おもしろいフレーズは無いんです。
ただ、グリスやタブレット、ドローバー操作によるSE的な演奏はかなり衝撃的で、レズリーの使い方もかなりハードです。
それと後の作曲家/編曲家の素養というか、そんな感じは端々に感じられまして、ソロは?だけど、メロディーの作り方やハーモニーの付け方はかなり面白いですね。
やっぱ、プログレ的なとらわれ方は、バイオリンやフルートの多用、オルガンロックである点から、そう見られるんでしょうな。
さてお次に紹介するのが、今回再発された旧作二枚のうちの一枚。
このアルバム、諸処風説がありまして、アルバムのタイトルとしてよく'七才の老人天国'というのが使われていますけど、実はジャケットのどこにも、インナースリーブにもそんな言葉は出ていないのです。
ですんで、LPとして出た当時は多分レコードカタログにも'HIRO YANAGIDA'としか書かれていなかった筈なのです。
その辺の事情は良く判りませんね???
さて、演奏の方ですが、こちらのアルバムでは柳田氏と水谷氏のコンビに二組のリズム隊を使い分け、フルートやサックス等々をリード楽器の絡みとして配して制作されています。
やはり正直前作同様、ベースとドラム(特にバスドラ)がうまく録れていないのではありますが(最近、こうゆう音にあこがれる人が増えているとか....)、演奏自体は前作よりプログレ系のアルバムになったように思えます。
オルガンの方もギミックではなくバッキング、ソロともに随分安定していまして、ただこのオルガンを聴くとエマーソンというよりもEGGのDave
Stewart的な感じがしますよね??
それと、前作はまだセッション的な色彩もあった曲調もよりアレンジがしっかりしているように思えます。
個人的には'Fantasia (夢幻)'は非常に気に入っております。
こちらのアルバムも録音的には一日仕事だったのでしょうが、曲もロッカバラード的なJoey Smith(スピード・グルー&シンキ)をフィーチャーした'My
Dear Mary'なんかの遊びもありますし、自らのボーカルナンバー'Always'、'Good
Morning People'なんかは多分色んなところで劇伴に使われたような記憶もあります。
しかし、内ジャケといい、インナースリーブといい、なんで柳田氏のヌードのコラージュが配されているんでしょうかね??
'71年の作品、やはりサイケ的な色合いも濃いアルバムでした。
柳田氏はセカンドソロの後、'72年に今回再発された一枚、サンズ・オブ・サン名義の企画物'海賊キッドの冒険'、URCから柳田氏のボーカルをフューチャーした'HIRO'の二枚を発表します。
この頃から所謂フォーク系のミュージシャンとの親交も深くなり、URC系のアルバムに数々参加していました。
そんな中、突然インストもののアルバムとしてCBSソニーから発売されたのが、ここで紹介する'HIROCOSMOS'でした。
色々なところで、こちらのアルバムを当時登場してきたクロスオーバーミュージックとして捉えた表記が目に付きます。
確かに時代を考えれば、'72年のDEODATOの登場とCTIレーベルの動きなんかは、当然当時のミュージシャンの耳にも目にも届いていたでしょうから、そんな色合いを自分の音に取り入れようとしていたのかも知れません。
ただ、筆者にはどちらかというと、数少ない日本のジャズロックアルバムの一枚と認識すべきではないかな??と思うのです。
クロスオーバーとジャズロック、その区切りは一言では言えないんですけど、筆者にはやはりこのアルバムはジャズロックだと思えるんすよね.....
確かに、DEODATOの影響がもろに出ている曲もあります。
ただ、アレンジがきちんとしていてインタープレイだけに頼らない演奏なんかは、かなり好感が持てます。
リズム隊も後にミカバンドにも参加する後藤次利の参加で非常にタイトです。
ちなみにところどころにHatfield & The NorthやNational Helth的な雰囲気も感じられます。
(と言ってもこのグループが英国に登場するのは、このアルバムの数年後なのですが....)
また柳田氏はこれまでのオルガンからARPのシンセをメロディーやソロに多用、エレピの響きも良い出来です。
多分、ARPはOdysseyを使用しているのでしょう。
ベンディングとポルタメント、オシレータのデチューンユニゾン等、特徴が良く判ります。
それと、ピアノでソロを奏でる'BREAKING SOUND-BARRIER'なんかは、完全にジャズしてます。
'HAPPY CRUISE'では高中氏のギターと柳田氏のメロトロンフルートが活躍しておりまして、非常に聴き応えがありです。
ただ、このアルバム完成後、柳田氏は新六文銭への参加等の動きもありましたが、プレイヤーとしてではなく作/編曲家の道へと進んでいくことになります。
ある雑誌のインタビューでこのアルバムを'全然出来てない'と評していましたが、筆者にはこのアルバムで柳田氏がどこでプレイヤーとしての限界を感じたのか、よくわからないのです.....
最後に、柳田氏が、数々のセッションで活動をともにした水谷公生氏のアルバムを紹介しておきましょう。
当時、既にスタジオでも活躍していた水谷氏に柳田氏は譜面の読み方を教わったなんて話もあります。
こちら、柳田氏の'Milk Time'と同様、'ニューロックの夜明け'シリーズの一枚として'98年に初CD化されたものです。
海外では特に評価が高く、何とアナログのブートまで出回ったとか....
内容的には、'71年当時のJazzミュージシャンとRock系のミュージシャンがコラボレーションしたアルバムで、非常に濃い作品と言えます。
特にリズム隊に富樫氏、ピアノとMoogで佐藤氏が参加する事で、フリージャズ的な要素まで取り込んでおり、そこに水谷氏の近現代的なメロディー、そして玉木氏のバイオリンが絡むわけですから、そりゃ濃いアルバムとなるでしょう。
木管やストリングを配する等、なんかHenry Cowみたいなところもありまして、こんなアルバムが一日仕事で、しかも日本で制作されたっては、かなりの出来事だと思わざる負えません。
尚、柳田氏もオルガンで参加していますが、何故かジャケットのミュージシャンクレジットに記載がありません。
(内ジャケの写真で紹介されていますが....)
契約問題ですかね??これって??
このアルバムに参加したメンバーを含めて、この後Love Live
Lifeなんてブラスロックグループも出来ますが、そちらより音楽的にはこのアルバムの方が全然充実していますよ。
さて、今回は柳田ヒロ氏の三枚のアルバムと柳田氏と関連の深い水谷氏の唯一のソロアルバムを紹介しました。
時代が時代と言う部分をさっ引いても、この四枚のアルバム、非常に興味深い出来のアルバムです。
このような時代を経て、日本のロックも第二世代といえる四人囃子や安全バンド、クリエーション、マキ&OZが生まれたのだと考えると感慨深いものです。
ちなみに、柳田氏と水谷氏は昨年久々にお二人でアルバムを発表しました。
プレイヤーとして柳田氏もついに復帰した事になり、最近はライブをやりたくてしょうがないとか....
一度、柳田氏のプレイを目の前で見たいと思う今日この頃なのでした....