◆ 八ヶ岳・石尊稜 ◆


〜数年ぶりに登ってきました〜





八ヶ岳で初めて登ったバリエーションルートが石尊稜だった。当時はまだ連れ
て行ってもらうという状態で、ロープワークもリーダーに任せきり、稜線に出て
からルートに4時間も迷うという散々なものだった。もちろん、下山は20時近
くになり、しかも車のバッテリーがあがっていてJAFのお世話にもなった…

そんな思い出ぶかい石尊稜に、今回は自ら計画を立てて再び向かった。記憶
というものは曖昧なものである…と実感した山行となった。

美濃戸口に車を置いて、林道を歩くこと1時間弱で美濃戸山荘に着く。ひと息
いれて北沢沿いに赤岳鉱泉を目指す。雪はまだ多い。2ピッチで鉱泉に到着、
ハーネスやアイゼンを装着する。

そこから中山乗越へとトレースをたどり、途中から沢沿いのトレースを行く。
沢の幅が狭くなってくると、小さな雪崩の跡なども現れたため、右手の石尊稜
の末端に取り付く。



尾根に乗り、草付の細い尾根をたどって行くと、岩場に突き当たった。数年前
の記憶では、尾根に乗ってから登攀準備をしてこんな岩場を巻いたような気が
したので、これが下部岩壁だとは思わなかった。しかし、岩場のすぐ下まで来
てしまってから、どうもこれは直登するしかないと思われ、もう少し下だったら
安定していたのに、足場の悪いところでセルフビレイを取ってザックを下ろし、
ロープや登攀具を出すはめになった。

で、とりあえず自分からスタート。わりとホールドが細かくて登りにくい。一段
登ってからオーバーグローブをすぐに外す。両手を離せないので、口で片方
ずつ外す。一段登ってしまったが、うーん…残置支点もないし、カムをかませ
る溝もない。下りたいけど、下りれない。上に行くしかないのだが…。ランナ
ウトの恐怖に、「こえぇ〜〜〜」と思わず出る弱音。でも行くしかないのだ。
アイゼンよ、外れるな!と、祈るような思いで、岩にかけたアイゼンの前爪に
神経を集中して立ちこみ、上に上がっていく。ふくらはぎがつりそう…。やっ
と残置支点を見つけてランナーを取ってひと息。

その先も、多少バランスの微妙なところはあったものの、ランナーを取れるの
で、安心感がある。岩の出たところでピッチを切ってセカンドを迎える。登っ
てきたセカンドがそのまま2ピッチ目をリードしたが、こちらも残置のスリン
グに惑わされて、ハング気味の岩場を苦戦しながら越えていたが、上に出て
みると、左から巻いたトレースと合流した。



そこからは雪稜となる。最初は細い雪稜なので、ロープを出していったが、4ピッ
チくらいやったところで、効率が悪いことに気づき、一旦ロープを回収、雪稜を歩
いて上部岩壁へと向かう。



上部岩壁の出だし。以前きたとき、リードしたリーダーが、アイゼンが外れてガガガッ
と1mくらい落ちてきてびっくりした。セカンドで行った自分は、支点を回収し忘れて
1段上がってしまい、びんびんに張られたロープと悪戦苦闘しながら支点を回収した
記憶がある…。

今回は、自分がリード。慎重に登る。下部岩壁に比べれば登りやすかった。岩場を
越えてルンゼ状を上がったところでビレイ。セカンドが2ピッチ目を行き、岩をくぐっ
て抜けたところで終了。ロープを回収し、ひと登りで稜線に出た。快晴微風で八ヶ岳
の稜線とは思えないほど。南の富士山や、北に連なる中央アルプス〜北アルプスの
ラインナップを楽しみながらの大休止。

下りは、稜線を赤岳方向へと向かい、地蔵尾根を下る。前回の石尊稜、昼には稜
線に抜けたのに、なぜか地蔵尾根の下り口に付いたのが16時だったよな〜。なぜ
か稜線で懸垂下降したよな〜、そう、ここここ!など、どーでもいい記憶はしっかり
と残っている。

今回は、稜線に出た時点で既に15時だったので、そこから地蔵尾根を経て行者
小屋に下り、美濃戸山荘から美濃戸口の駐車場へと林道を歩いている途中で日
没。ヘッドライトを付けての下山となった。







トップに戻る
過去のお話に戻る