9.Do It Yourself!-2


 21.遂にオカルトに降参?(00.8.16)

 このコーナーも20章にもなって読みにくいと思ったので、パート2として装いも新たに(でもないか)オープンすることにした。やっぱりフレームとかにした方がいいかな。

 さて今回のチャレンジ(そういうコーナーでもないはずだが)は、CDクリーナーとして最近注目されている、「クーナル」である。主成分はズバリ「水」。そして「生体エネルギー」が注入されているとのことだ。こりゃまさにオカルト、つまり「気合い」みたいな物か。それなら自分も得意だぞ。などとバカなことを思いながら、使ってみることにした。「生体云々はともかく、確かに効く」という触れ込みだったからだ。本当かなあ〜と思いながら。まあ、クリーナーはクリーナーだし。あまり汚いCDは無いものの、中古などは少々汚いものもあるし。

 中古屋で買ったときかなり汚れていたのを普通のCDクリーナーで落としてまあまあの状態になっていた、ビルエヴァンスの「ポートレート・イン・ジャズ」を試聴盤に。まずそのままで「枯葉」などかけてみて、一旦取り出してクーナルをスプレー、ティッシュで拭く。おお、確かにさらに綺麗になったようだ。拭き取った後はかなりサラッとしている。こりゃ少なくともただの水ではないな。香りもするし。

 そして再び同じ曲をかける。すると…いや、正直驚いた見事、さっきよりかなりクリアな音が現れたのだ。好きなベーシストの一人であるスコット・ラファロが先程はちょっとブツブツ陰鬱に弾いていたのに、今度は躍動感を伴って弾いている。シンバルが前に出てくる。実際にはあまり前に出ても困るのかもしれないが。とにかく、新たにリマスタリングを施したような感じなのだ。さらに色々と試してみるが、どれも程度の差こそあれ音質向上が見受けられた。やはり古くなっていたCDや、中古などで擦り傷が少しあるような物の方が効果は当然かも知れないがあったのだ。

 今回は素直に降参。でも、本当に「生体エネルギー」なのかなあ。実際CDがぴかぴかのつるつるになるんだから、そういった成分の説明をした方が現実的には売れるんじゃないかな、と余計な心配をしつつ、音楽に聴き入る…




 22.どの靴がお好み?(00.8.20)

 前にも書いているように、現在我が愛機となった「X-1」の足下にはオーディオテクニカの「メタル・スピーカー・ベース」が挟まっている。こいつはロングセラーで値段も安く、しかもスピーカーだけでなく様々な機器の下に挟むことが出来る優れ物だ。音も確かに素材の金属音が「乗る」感じにはなるが、自分にとっては好ましいものだ。しかし、小さいため今一つ格好が良くない。そこで今回は色々試してみよう、と言うものだ。

 まずはホームセンターで購入した正方形の板キレで厚み1.2cm。「ホウ」という木らしいが、ちょっと軽いのが気にかかる。早速そのままX-1の間に挟んで試聴。「…」これは駄目だ。高音は汚れ、シンバルがぐちゃぐちゃになってしまった。低音は締まりが無くなり、ぼけた感じ。失敗だ。やはりもっと重い木の方が良いのかもしれない。

 今度は東急ハンズに向う。良い素材はないか。あった。真鍮である。この黄色く光った感じが、良いシンバルの音を聴かせてくれそうだ。「ガシャーン、ドシャーン」と。鉛で「沢村式」を作ろうかとも思ったが、イメージ的に真鍮の方が勝ったのだ。これだろう!って感じで。1つ¥440で、8つ買ったのでそれなりの出費である。これで失敗は許されない。

 さて、作り方は「沢村式」と同じ。鉛が真鍮に変わっただけだ。二つをブチルゴムで張り合わせる。そして底面と側面にコルクを巻く。一見軽いが実はズッシリ、というインシュレーターが完成した。

 またX-1に挟む。機器の足とちょうど同じくらいの大きさで、バランスは良好だ。そして流れてきた音楽は意外に癖の無い、聴きやすい音だった。CDX-10000に似た音だ。もっと真鍮らしいキラキラした音を想像していたのだが、そんなことは無かった。

 作る前に、真鍮板1枚だけの音も試してみればよかった。プチルを貼ることで落ち着いてしまったのだろうか。それとも外側に巻いたコルクが吸音しているのか。

 今の所そのまま真鍮は挟んだまま聴いている。しかしあのテクニカの音の方が自分の好みかなあ…と思いつつ。結論は出ないまま、決定打は出ないまま、夜は更けて行く…




 23.さらば、中抜けよ。(00.9.4)

 5月の連休に作った「F-168」、最近余り聴いていなかった。いや、時々は繋ぎ替えるのだがすぐに「D-105」に戻してしまうのだ。どうも気に入らない。低音は105より出ている。高音も綺麗な音で良い。しかし、一番肝心の中域が薄いのである。ヴォーカルは頼りないし、古いジャズなどは最悪だ。前に音が張り出してこないのだ。確かにウーファーでかなりの帯域を賄っているのだが、そいつは上を向いている。よく言われる「中抜け」というやつだ。やはりオーソドックスな形の方が良いのだろうか。しかしまた作り直すのは億劫だし、何とか今の形を生かしたいのだ。

 相談すると、「ディフューザーを付けてはどうか」「箱を上につけてウーファーを前に出すようにしてみては」「ネットワークを変更しては」と色々な意見があった。この中で最も簡単なのは「ネットワークの変更」になるだろう。コンデンサーの容量を上げ、コイルも入れて12dB/octのネットワークを作るのだ。意味の分からない人は本を調べて下さい。私も文系なのでうまく説明できないのだ。とにかくコンデンサーの容量を増やせばトゥイーターが低いほう、つまり中域のかなりの部分を受け持つことになり、さらにコイルを入れることで受け持った帯域から下を急激にカットすることになる。ウーファーとの「音がダブる」部分を少なくしよう、と言うわけだ。

 現在標準状態では6.8μFのコンデンサーが1つ入っているのだが、もう一つ同じやつを増やす。つまり13.6μFとなるわけだ。そしてコイルは1.0mHの物を購入。本当は1.5の方が良いらしいのだが、無かったのだ。まあ、この辺はアバウトに行こう

 「新たな箱を作る」よりは楽かもしれないが、何せユニットは取り外さなくてはならない。ウーファーは今回何も触る必要はないが、作業ができないのでやはり外さなくてはならない。立たせたままだと高すぎるので倒し、自分もうつ伏せに寝転がる形で作業することになった。これは結構しんどい。暑い。何せ暑いのだ。汗がどくどくどくと滴り落ちる。なるだけユニットには落とすまい…と思ったが、二度ばかりウーファーに落とした。まあ、おれの気合いをコーン紙に封じ込めたとでも思ってくれい、ウーファーよ。

 さてウーファーの穴から手を突っ込み、新たにコンデンサーとコイルをエポキシで箱の中に固定する。エポキシは臭いも嫌だが有害物質なので、手に付いてはいちいち「うわあああ」などと悲鳴を上げながら洗面所へ走ったりもしたが、何とかベスト(と思われる)位置に取り付けた。なるべく配線は短く済ませたい。

 もう前回のように長い時間を「うーん」と悩むこともないとはいうものの、少々の逡巡を交えながらも何とかハンダ鏝を操ってコンデンサー×2とコイルを配線することが出来た。そして元通りユニットを付け、片チャンネル完了。もう一本も同じような作業をした後終了。さあ、あとは音出しだ。

 「これだけ汗をかいたんだから、ちゃんと音が前から出てこなかったらタダじゃ済まないぞ」とスピーカーをキッと睨みつけながら、いかにも音が前に出て来て欲しいソフト、アート・ブレイキーの「モーニン」をかける。

 おお、サックスが、トランペットが、ちゃんと前から出てくるではないか。以前は上から拡散されるように出てきてしまったものだ。良かった良かった、どうやら成功だ。これで「D-105」と対等に土俵に上げることが出来るというものだ。それではまた次回…




 24.勝負!オレンジv.s.グリーン(00.9.10)

 見事に中抜けが解消して甦った「F-168」。満を持して「D-105」と勝負だ!

 まず、ジャズから行ってみよう。

 「アート・ブレイキー/モーニン」…言わずと知れた定番。「前へ前へ」音が張り出してくる50年代ジャズの代表だ。前回もこれをまずかけたのだが、じっくり聴いてみると、ちょっと張り出し方が小さい気もする。105に繋ぎ変えてみると、ガンガン張り出してきた。ドラムの「スパーン」と来る感じも105が上だ。

 「ワルツ・フォー・デビー/ビル・エヴァンス…これも定番。今度はちょっと上品めのジャズだ。ピアノの美しさは168に軍配が上がる。ベースの低音の量感も168か。しかし、同じベースの音でも105の方の締まり方が心地よい。168は量感はあるものの、切れがない。ちょっとズブズブした感じになってしまうのだ。

 ポップス系ではどうか。

 「ミスエデュケイション/ローリン・ヒル…女性ヴォーカルのリアリティはやはりユニットの特性か、105が素晴らしい。168の良さはトゥイーターが効いている高域に表われ、低域はやはり少しもたつきを感じる。かなり低いほうまで出てはいるのだが。

 「ターボ/UA…168はパーカッションの抜けが悪い。ちょっと寝ぼけ気味、と言っても良い。音がパーッと拡がる感じは良いのだが。

 「ベスト・オヴ/エリック・クラプトン…これはどちらも良い勝負。168の方はギターがトゥイーターの性能で良く聞こえるし、ヴォーカルは105の方がさすがに強い。ただ168は低音のもたつきのためか、アップテンポの曲は違和感を感じる。

 「ケミカル・ブラザース」…こういった「テクノ」モノは168が合う。トゥイーターはちりちりした高音を綺麗に出し、低音も「ボン、ボン」とブースト気味に出てくる。まあいわゆる「ドンシャリ」というやつだが。

 と、いうわけで幾つか試聴してみたが、「勝負」は「D-105」の勝利と言える。中抜けは克服した「F-168」だが、今度は低音の「鈍さ」が気になってきたのだ。バックロードの軽く、抜けの良い低音を聴いている所為もあろうが、市販品のバスレフを聴いて、このような「鈍さ」を感じたことはない。やはりまだまだ問題はあるのだ。ダクト調整が出来るようにしておくべきだったかもしれない。ダクトを短くすれば、良い感じになりそうなのだ。しかし、今のところ箱を分解までするのはちょっと…という心境だ。しかしユニットの良さは分かったので、箱さえ何とかすれば…作り直しの方が楽かなあ。




 25.「ワルツ・フォー・デビィ」3番勝負(00.9.25)

 たまたま知り合いの人に、ビルエヴァンスの名盤「ワルツ・フォー・デビィ」を借りることができた。もっとも私はこれを既に持っている。それなのに何故借りたのか?それは、そのCDが「対策」を施してあったからである。その人が購入したのは10年以上前、当時はCDの音を良くする様々なアクセサリーが流行していた。このCDは2つのアクセサリーによって強化されている。まず、外周部分と真ん中をグリーン色に塗ってあるのだが、そういうペンが発売されていたのだ。「レーザー光線の反射を抑える」という効果があるという触れ込みだった。私も持っていたはずだが、正直な話、当時は効果がわからず、どこかに無くしてしまった。もう一つは、「ディスクの振動を抑える」というシールと言うか、全体に貼る透明なシートである。ちなみにこの借りたCDは91年発売盤、私のは97年発売の「20bit K2 Remastering」というリマスター盤である。

 この2枚の聴き比べ、というわけだが、もう1枚サンプルがあった。「Now Jazz」というシリーズのオムニバス盤にタイトル曲が収録されていたのだ。というわけで3種類の「ワルツ・フォー・デビィ」を聴き比べることとなった。

 (1)私の20ビット盤 … 3枚の中ではハイ上がり気味で、「しゃー」というノイズが気になる。どちらかと言うと「はっきり、くっきり」といった感じの音で、明るく開放的なサウンドは自分好みと言えばそう言えなくもない。ただでさえエヴァンスは大人しすぎると思っているので。ちょっとベースの音が締まり過ぎだが、くっきりしているのでそれもまた良し。

 (2)「対策」CD … 最も大人しい音で、(1)とは対照的である。聴きやすさは1番だが、少々物足りなさも感じる。「響き」が足りないのだ。ベースの音は悪くない。ただ、ドラムのブラッシュがかなり抑え気味になってしまっているのが残念。「刺激的な音は聴きたくない」と言う人には良いと思う。

 (3)オムニバス … おそらくマスター自体は(2)と同じではないかと思う。(2)と比べるとふくよかな感じが出ているし、(1)程ではないにしても高い音も出ている。ベースは3枚の中で一番良かった。適度な締まりと適度な膨らみ。良く言えばバランスの取れた、万人向けの音。悪く言えばただただ中庸。

 そんなわけで、オムニバス盤に収録されていた音が一番良かった、という予想しない結果となった。まあ、特別音が良いわけではないが、ベースの鳴り方が最も好みに近かったのである。このアルバムの肝はスコット・ラファロのベース。やはりそれが気持ち良く鳴らす必要があるのだ。ノイズが無ければ、(1)も明るくて好きな音だ。

 しかし、また最近(1)のリマスタリングをさらに向上させた盤も出ているのだ。これを是非とも聴いてみたい。勝負はまだまだこれから、と言うことなのだ。





 26.熱い!ピンケーブル(00.10.1)

 スペース&タイムの「プリズム55」をアンプ〜CD間に使用しているが、こいつにしてから透明感が格段にアップ、汚れをぬぐい去ったようなその音に感動してずっと使い続けてきた。しかし、そろそろ「勝負」の虫が騒ぎだす。そう、今度こそピンケーブル自作である。

 最初は清貧な、コストパフォーマンス全開型にしようかとも思ったのだが、カルダスのスピーカーケーブルの音質が気に入ったので、同じグレードのオーディオケーブルを購入した。片ch50cmあればいいので、1m購入。30cmくらいオマケしてくれたが。あとはプラグである。これはパーツ屋でいくらでも転がってはいるが、せっかくカルダスにしたのだから…と、奮発することにした。とは言え、選択の余地は少なく、オーディオテクニカか、WBTくらいしかない。テクニカでも良いのだが、なんかイメージ的に今一つの感があり、また音の好みも違う気がしたのでWBTに決めた。通常このブランドは高級ターミナルのブランド、というイメージが強いのだが、自分が購入したのはミッドプライスラインで、実売は5千円台だった。まあ、それでも自作パーツとしては高いが。

 さて製作に取り掛かろう。このケーブルは幾層にも構造が複雑になっており、剥いても剥いても芯線が現れない。ようやく顔を見せた芯線は随分細い。こんなもんで大丈夫なのか、とも思ったが考えてみれば、市販のピンケーブルの構造なんて知らないわけなのだ。まあいいや。気にせずに、プラグに接続を試みる。

 これが一苦労。このプラグはハンダ付け仕様になっているので、当然また暑い思いをしなければならないのだ。涼しくなってきたとはいえ、まだまだちょっとしたことでをかきまくる私。ハンダ鏝に近づくだけで汗がじっとり。本番はさらに大変だ。二芯構造+シールドとなっているうち、片方の芯線をホット側にハンダ付けするのだが、ハンダがうまく乗らないのである。「付いた!」と思っても芯線だけがスルリと抜けてしまう。汗がたら〜り。ブチ切れそうになった私は、ハンダをたっぷり流し込んだところに素早く芯線を突っ込む、という荒技を使うに至った。さすがに抜けなくなったが、こんなにハンダを使って音に悪影響ではないか、とも思ったが、えいままよ。もう知らん。うっかりプラグを掴んだらもの凄く熱くなっていて、思わず手を引っ込めた。本当に大丈夫かな。

 そんなわけで、たかがケーブル一組作るのに2時間近くかかってしまったが、ようやく完成。見栄えはさすがに良い。早速接続だ。コレクトチャック構造になっており、端子に締めつける様に接続するのでプラグは安定する。引っ張っても抜けないのだ。

 さて音出しだ。ロックにポップスにジャズ、といろいろ聴いてみたが、傾向としては明るめだ。全体的に音が厚みを増し、大きく眼前に展開する、といった感じか。とにかく陽性の音が自分好みで本当に良かった。確実に音は変わった。プリズム55の透明感も良かったが、カルダスは音楽を楽しませてくれる音だ。熱い音なのだ。決してプラグがまだ熱を帯びているわけではない。しかし落とした汗がケーブルにを与えてくれたのかも。いやあ、良い汗をかいた。今回は大成功!であった。




 27.見えないところも…(00.10.10)

 誕生して1年と2ヶ月を迎えようとしている我が「D-105」だが、考えてみると内部配線は間に合わせだった。用意するのを忘れていたのだ。音にそれ程不満が無かったので結果オーライ的に過ごしていたが、最近の私は欲が深くなっている。「まともなケーブルを内部配線に使えば、もっと良くなるのではないか」と考えるに至ったわけだ。

 問題は何にするかである。当然余り太いものは使えない。適度な「細さ」でしかも音が良さ気なケーブル…候補は、スペース&タイム「ENTRA」、ベルデン「708Mk2」、同「716Mk2」、オーディオクラフト「QLX」、といった辺りか。何を求めるか、ということに重点を置く必要があろう。低音の充実を狙った私はベルデンの716に決めた。当然価格のバランス、CPも重要だ。

 さて当然のことながらユニットとターミナルを外す必要がある。吹く風も涼しい秋…のはずなのだが、この日は初夏を思わせる結構暑い日となってしまい、またしてもハンダ鏝を手に大汗を流す羽目になってしまったのだった。まあ世の中そんなもんである。今回は紙製のユニットに汗を落とすこともなく終わったので良しとしよう。

 はっきり言ってハンダ付けのヘタクソな私であるので、1年前のハンダ付けの状態たるやひどいもの。よって古い線を取り外すのが最も面倒くさいものだった。また熱いところを触って「あちちちちち」などと大騒ぎしながらユニットとターミナルを綺麗にした。そして新しいベルデンを付ける。ここで新兵器登場。…ってそんな大げさなものではないが、あのPAD製のハンダである。普通のハンダと違って、音に良い「らしい」のだ。ただ「普通のハンダを使った場合」「スペシャルなハンダを使った場合」なんていう風に比べられないので何とも言えないが。しかし光沢の良いハンダではある。

 とにかく、またしても汗を流しながら作業は終了。正直な話、「別に大して変わらないだろうなあ、たかが50cm程度のコードくらいで」などと思っていた。しかし!である。再生した音は激変していたのだ。「なにぃ」。次々とCDをかける。「こ、これは…」。間違いない。ベースが分厚いのだ。コッテリしたのだ。見事に中低域重視の音がそこから出ている。まさかこれほどとは…

 やはり汗をどんどん流すべきなのだ。などとおかしな感想を抱きつつ、今回も大成功。それにしても、見事にケーブルのキャラクターイメージ通りになったものだ。分厚い中低域のためか、高域のキレも欲しいなあ、と贅沢な悩みが出てきたのだ。もっと気軽に内部配線も替えられれば面白いのに、とさえ思った。これを今度はスペース&タイムなどに替えたらもの凄いハイスピードサウンドが期待できるではないか。そのかわり低域は物足りなくなるだろうけど。難しいものだが、この悩みがオーディオの醍醐味。面白いね。




 28.玉 v.s .石(00.10.22)

 コラムの欄で書いたように、手に入れた管球アンプ「VP-mini 88 Mark 2」。でっかい電球のような真空管(KT88)がナイスだ。しかし家に帰って問題が生じた。

 「どこに置いたら良いのだ」

 これは深刻だ。もはやラックにすき間はない。何か撤去するか。そういうわけにも行かない。悩んだ末、暫定的ではあるがCDプレーヤーの上に設置する。一緒に手に入れた大きなソルボセインのインシュレーターを敷き、スピーカー工作で余った板キレを2枚噛ませ、その上にアンプを載せる。これで放熱的には問題はないだろう。しかし、プレーヤーの上というのは決していいとは思えないので、また改めて考えたい。後ろの出窓とか。

 さて、いよいよ試聴である。やはりベタベタなジャズが良いだろう、と「サキ・コロ」だの、「ミーツ・ザ・リズム・セクション」だの、「ワルツ・フォー・デヴィ」を次から次へとターンテーブルへ。感想。

 「濃ゆい。」

 この一言が最も適当だろう。サックスのブロウ、ピアノのタッチ、ベースの力強い響き、ドラムのブラッシュ、どれもこれも濃厚で、それでいてスピード感があるのだ。こりゃいいわ。もっと現代のものもかけてみよう。クリスチャン・マクブライドや綾戸智絵といったところもとにかく濃い。こちらにガンガン迫ってくるのだ。

 ロックはどうか、とクラプトン、ブランキー、レディオヘッドと全くOKだ。今まで「真空管」というと、あまりロックには向かないんじゃないか、という先入観があった。「のろい音」というイメージを持っていたのだ。しかし、このアンプは濃厚でありながら、シャープさも持ち合わせている、という特長のようだ。何と言おうか、「音楽の美味しい部分を的確に出してくれる」という感じなのだ。

 もちろん欠点が無いわけではない。テクノ系の、シンセサイザーが繰り出す超低音はちょっと苦しそうになる。しかし、中低音の分厚さがそれを補ってくれている。実際に聴いて美味しいのは中低音なのだ。元々中域重視の音に仕上がっていた私のシステムは、このアンプによってさらに強固な中音を誇ることになったのだ。

 そして今までのオンキョーに切り替えて聴いてみる。これまでそんなに薄味なアンプではないと思っていたが、管球に比べれば薄い、と言うか「普通」に聞こえる。見事なかまぼこ・バランスがフラットになってしまった。なるほど、違うもんだ。ただ、音場感といったものはこちら(オンキョー)の方が上だろう。管球はちょっと平面的な音だったような。まあ、定価では10万の差があるアンプに全ての面で水を開けられては立つ瀬がない、というものだろう。

 今回たまたまオフ会があり、いつも御世話になっている「ha○家」にてこのトライオードを持参して聴いたところ、やはり一様に「濃い」という感想を戴いた。アンプのグレードアップを考えている「ha○氏」の食指を動かしたのは間違いない。また、自宅でユニゾンリサーチ「シンプリー2」や自作真空管アンプを数作聴き比べている「か○氏」からも、「シンプリーに似た傾向の音だ」「スピーカーを楽に鳴らしている」との感想を戴いた。結論、「良い買い物をした」ということであった。

 しばらくはこのアンプで色々なCDを試しまくり、聴きまくることだろう。…だろう、ってもう既に聴きまくっているけれど。




 29.バナナで滑るか?(00.11.5)

 「接点が多いと音は劣化する」というのは言わば定説に近いものだ。それに従えば、既に自作スピーカーセレクターをアンプとスピーカーの間に挟んでいる私などは劣化しまくりな訳だ。しかし、実際にはそれ程「劣化」した様な感触はなく、かえってシンバルの音がそれらしくなったような感触すら覚えたものだ。つまり、潔癖なまでの「ピュア志向」が全てではない、ということだ。

 昔はバナナプラグなどを介してアンプあるいはスピーカーにケーブルを接続するのはどうしてもマイナス、と言うイメージが強かった。故長岡鉄男先生は接点が多くなるのを嫌い、自作スピーカーは出来ればケーブル直出しが良い、とされていた。ここまですれば確かに接点は減るが、私のような「電線病患者」には物足りないことは明らかだ。また、バラ線を繋ぐ、ということはターミナル部分を見れば分かるが、随分すき間が多い。これで良いのか?

 そこで考えたのがYラグバナナプラグだ。Yラグは自分の持っているアンプ、スピーカーが対応していないのでどうしようもないが、バナナプラグならばアンプ側に使える。というわけで、さんざん長く前振りをしてきたが、2ヶ月ほど前にふと買っていたのだ、バナナプラグを。「ヴァンパイア・ワイア」とお馴染「PAD」の協力で誕生した「音質が向上する(らしい)バナナプラグ」である。少々オカルトじみているが。ようやく使うことにしたわけだ。

 さらに、真空管アンプの登場もある。2台のアンプを取っ換え引っ換え使うため、バラ線のままでは接続がもの凄く面倒くさいのだ。バナナを使えば作業効率はかなり向上するはず。さらに音質面でも低下どころか、向上するというのならばこんなに良いことはない。

 こいつはハンダを使う必要はないのだが、購入した店(福井にある「CORE」)では「結局経年劣化があるからハンダ付けしたほうが良いよ」ということで、一緒にハンダも買ったのだった。「PAD」の「アマス・ソルダー」と言うやつだ。内部配線の時に使ったのはこれである。

 ただ、いきなりハンダ付けするのもどうかと思い、1度繋げてみてからにしよう、とまずは本来の使い方で接続することにした。電線を突っ込んで、外から2本のねじでかしめる、という方法で、そう簡単には抜けそうにない。これならばハンダ付けの必要もないかもしれない。

 完成したケーブル(カルダス)を、トライオードのターミナルに差す。そして音出しだ。…音質が向上したかどうかははっきり言って分からないが、これまで平面的だった音に奥行きが出てきた。一つ一つの音がはっきり出ているようだ。つまり音場感と分解能が向上した、と言えるだろう。低音が、高音がどうの、と言うファクターは変化がないが、そういった微妙なところで確かに変わったのだ。接点はやはり重要である。これからは接点を無くすのではなく、積極的に音質コーントロールに利用するものだ、ということが分かった。

 もちろん作業効率もアップ。簡単にアンプを繋ぎ替えることが出来る。汗もかかなくなった。まさに一石二鳥、これでスピーカーのターミナル側にもバナナプラグが使えればいいのに…フォステクスのゴールドの方は使えないのですね。何故か安いシルバーの方は使えるけど。




 30.危険な選択(00.11.20)

 足りなくなってきた。何かというと、コンセントの数である。ずっとCSEの4口のタップ(P-22)を使っているが、アンプは直接とるとして、残りのCD、MD、カセット、チューナー、レコード、そして最近加わった真空管アンプがある。現在使わないものを抜いたりして対応しているのだが、色々聴きたくなってしまうため、結局面倒なのだ。

 6口のやつを買って今使っているのを売るか、4口のを買って両方使うか、である。P-22は実売¥10000前後で買えるが、せっかくだからもっと良いものが欲しくなるのが人情。しかしそれ以外は結構高いのだ。中古を狙ったが、タップは超人気商品で、「ハイファイ堂」でもあっという間に「売約済」となってしまうのが現状。これは「コラム」で書いた通りである。

 重複するが、そういうわけで「レヴィトン」のコンセントを2つ買ったのだ。ボックスはホームセンターで2つ手に入れた。プレートもようやく入手できたので、これで何とかしてみよう。
 とは言うものの、インレット部分をどうするか、だ。やはり素直に直出しに…とも思ったが、ここまで来たらやるのみだ。まず、2つのボックスを並べ、下から穴を開けて(ちょうど配線用の穴はあった)配線を通し、「どこか」にインレット差し込み口を設置する。問題はその、「どこか」を本当にどうするのか、ということだ。まあ、金属工作が出来れば良いのだが、私には出来ないし、場所もない。やはり「」か。本気か。やるのか。大丈夫なのか。迷った末、決断した。やってみよう。

 木を切るのすら面倒だった私は、工作の余りを入れた袋を探った。台に丁度いいもの、下から配線を通すためのゲタ用のもの、そしてインレット用のもの、を見つけた。これで完璧だ。早速作り始めた。ちなみに内部配線はオーディオクラフトのスピーカーケーブル「QLX」だ。

 作業は比較的順調に進んだが、やはり問題はインレット口である。穴を開けねばならず、まずキリで小さな穴を…と思ったら木が割れてしまった。これはいかん。とは言え、作業は進めやすくなった。割れたところを削ってインレット口を嵌め込み、接着剤で木をくっつければ良いのだ。割れたところからナイフでえぐるように削る…と、悲劇は起こった。力余ってえぐったナイフは支えていた左の人さし指目がけて攻撃したのだ。出血。さすがに小さいもののパックリと傷口が。「うわあああああああああ」慌てて傷口を洗い流し、マキロンつけて絆創膏を貼る。やれやれ。思い出すなあ、小さい頃ナイフ弄っていていつの間にか手を切ってしまったことを。まだその時の跡が残っているもんな。

 気を取り直して(結構テンションが下がったが)、作業の続きをする。ちょうど良さげな穴が空いたので、インレットをはめ込むと、割とうまくいった。あとはケーブルをハンダ付けし、思いっきりボンドでその板をくっつける。その両サイドを同じような板で挟み込み、補強する。2つのボックスを台にねじ留めし、コンセントを装着、当然その前に結線をするのだ。

 そんなこんなでとりあえず完成。なんとまあ、もの凄く不格好な。こんなもので音が良くなるはずが無い、と思わせるに十分な恐ろしい代物が出来上がってしまった。我ながら恥ずかしいほどである。

 しかし、恐る恐る今までP-22に接続していた真空管アンプのケーブルをこちらにつなぎ替えてみて鳴らしてみると、その音の鮮度の向上に驚いた。確かにそれは僅かなものかもしれないが、それでも全体的にくっきりし、解像度が上がったように感じたのだ。見た目は悪いが、なかなかやるじゃないか。意外な、しかし嬉しい結果に満足しつつまた電源ケーブルを付け替えようとインレットを引き抜いたら、見事にその部分が取れてしまった。ボロッと、情けなく。やっぱり音は良いかもしれないが、頼りないやつである。素人の工作とはこんなものなのだ。現在応急措置として、さらに補強の板をボンドでベタベタにしながら貼り付け、他の部分もボンドを流し込みまくった。まあ、いつかはきちんとしよう。…って、いつのことやら。 




 31.ロクハンの魅力を堪能!-前編(00.11.26)

 さてさてパイオニア「PM-16M」を入手したことはコラムでも書いたが、初めて設計をする、ということでなかなか製作に取り掛かれなかった。しかし、何かと忙しい年末を前に何とか済ましておきたかったのだ。それよりも何よりも、「音を聴きたい!」という情熱が私を設計に駆り立てた。

 何が重要かといえば、スペースである。作ったは良いが、置く場所が足りなければ話にならない。D-105の外側横、つまりガンキヤノンには失礼ながら退いてもらうことにした。その空いた位置、幅はどうやら25cmくらいが限界のようだ。そんなわけで横幅は決定。そして形状。ブックシェルフかフロア型か。やはり容積を稼ぎたいのでフロア型、結局はトールボーイ型にする。奥行きもあまり取れないので、同じ25cm、まあ前後左右全て25cm幅の板取りにしよう。すると奥行きは28cmということになる。高さはそのまま90cm、ということで良いだろう。

 そうしていくと、サブロク(1800×900)の板から7枚、900×250の板が取れることになる。残り1枚、そして上と下、補強材、といったものを合わせると半裁(900×900)で済む。最初はサブロク2枚になるか…と思ったが、切り詰めればかなり節約できることが分かった。補強は40×250を16枚、つまり側面の板に4枚ずつ貼り付けるわけだ。ユニットが当たる部分には横に寝かせて付ける。引っ掛かってしまうからだ。そして余った板で上下も補強しよう。本当はまだまだ補強したいくらいだが、まあこの位にしておこう。

 次はバスレフダクトだが、今回は板を四角に組んで作るのは止めた。調整しづらい、ということと、ガムテープの芯ファックス感熱紙の芯といった廃材を利用しようと思ったからである。ガムテープの芯だと口径76mm、長さ50mmのダクトが出来る。しかしもう大きさが必要な気もする。長岡鉄男先生設計の例だと、このユニットやダイヤトーン「P-610」の箱は、ダクトがかなり大きい。100×100という感じだ。例よりは容積の小さい箱とはいえ、もう少し何とかならないか…と考えた。

 そこでもう一つ感熱紙の芯を利用したダクトを作ることにした。しかし、たった24mmの穴、今一つ意味が無さそうだ。そこでここまで来たらやってしまえ、という感じでもう一つ穴を開けるという結論に至ったのだ。

 画期的ではないか!大小合わせて3つのバスレフダクトなのだ。つまり、それぞれのポートを塞いだりといったことで調整が容易に可能なのである。大きいほうのダクトからは豊かな中低音が、小さいほうからはさらに低い低音を出すのである。まあ実際には互いのダクトが干渉しあったりするだろうが、まあ気にしないことにする。何せあまりのナイスアイディアに、有頂天なのだ。

 そんな自画自賛モードに水を差す言葉として、「おまえ、そんな適当にやっていいのか?バスレフダクトや周波数の計算とか、ちゃんとしたのか?」というものがあるだろう。ふっふっふ、確かにそんなものはしていない。面倒臭いし、例えば周波数をきちんと合わせたからといって、結局どんな音楽が鳴るかは分からないのだ、私には。だったらまず鳴らしてみて、後で何とかすれば良いだろう。ガンキヤノンは結局、バスレフダクトがどうやら長すぎる、ポートが小さすぎることが「中抜け」の原因の一つであることは学んだ。それならば後で調整しやすい形にすればいいのだ。

 初めて図面を真っ白な紙に書き、それを東急ハンズへ持って行き、ちょっとドキドキしながら「これで切って下さい」と申し出る。板はやはりシナ合板。色々質問はされたが、問題もなく設計図は預かられた。一旦家に帰ってから夕方もう1度取りに行く。さあ、これでいよいよおれもこれでオリジナル1号だなあ…などと心の中でニヤニヤしつつ板を担いで家路へと。夕方の渋滞がかなり恨めしかった。

 さて梱包を解き、板を確認する。ふむふむ、自分の設計通りだな…などと悦に入っている私に、思いっきり冷や水をぶっ掛けるような自体が出来したのであった!




 
32.ロクハンの魅力を堪能!-中編(00.11.30)

 大小3つのバスレフポートをしげしげと眺めていた私は、ふとあることに気が付いた。

 「この大きいほうのポートは…????」

 そのポートに装着する予定の、ガムテープの芯を持ってきてそこに合わせようとするが、そんなことをしなくても芯を見ただけで結果は火を見るより明らかだった

 「でかい…

 そう、そのシナ合板に穿たれた穴は、ガムテープの芯などあざ笑うかのように、大きすぎたのである。血の気が引く音を聴いた。それもかなりチープな音だったが。ハンズめ、間違えやがったか、と設計図を確認する。しかし、ハンズ側に少しの間違いもなかった。そう、悪いのは全て私である。本来φ76であるべき部分はφ96となっていたのだ。ハンズ店員との会話が脳裡をリフレインする。

 「この数字は96だよね、76じゃないよね」
 「ええ、見にくいけど、9ですね」

 …完璧に私のミスである。何の言い訳もしようがない。早くも危機である。どうするか。いっそ、新品のガムテープごとくっつけてやろうか、それとも予定変更、このでかい穴をそのまま「ポート」として何の管もつけずにやってみようか…しばらく考えたが、ガムテープは一旦あきらめることにした。そして、このままポートというのもあまりも頼りないので、ユニットの貫板を使ってダクトを作ることにした。つまり、合計30mmのダクトということになる。当初の設計とはかなり違ってしまうが、何せ当初からダクトの計算などしていないのである。ということは、変更したって一向に構わないわけである。これが緻密な計算をし尽くした上での失敗ならば「うわあああ、共振周波数が狂ってしまった、こんなの最初からやり直しだあ」なんてことになるのだ。しかし、私は能天気なロックンローラー(?)なのだ。これくらいでへこむ私ではない。ひょっとして「災い転じて福となす」こともありうる。

 超・前向きに考えた私だが、既に夜遅くなっていたので側板と天板、底板に補強板を接着して眠りに就いた。さすがにちょっと疲れてしまったが。

 翌朝、早速ダクト製作に取り掛かる。何せこの日は日曜日。何としてでも音出しまでしてやる。その執念が私を作業に駆り立てる。ユニットの貫板にポートと同じφ96の穴を開けるのだが、とてもじゃないが糸鋸で綺麗に切る自信はない。クランプなどの道具もないし、固定できなければ何も出来やしない。というわけで、大きめのキリで穴をぼこぼこ開けていく策に出た。まあ当然ギザギザになってしまうが、まっすぐな穴は開くので、斜めになりがちな糸鋸よりも数段良いだろう。後はやすりでもかければよろしい。

 結構骨の折れる作業だったが、ターミナル穴のために持っていたφ12のキリが役立った。T字型で回しやすいのだ。小さな穴が一周し、コンペイトウ型の大きな穴がスポンと開くのはなかなか感動的ですらあった。そしてやすりをガリガリと掛け、といっても面倒だったので適当にだが、角を取った。かなり波形の円だが。

 さあ、問題はクリアした。組み立てだ。穴を開けたダクト板を接着し、小さなポートには感熱紙の芯を4つに切り、接着する。側板に天板と底板を接着、古雑誌やダンベルなど重いものを乗せて固定する。その前に自分の体重である程度押えておかないと結局浮いてきてしまったりもするが。

 ある程度乾燥させる時間が必要だ。その間にターミナルをリアに取り付け、配線もしておく。今回配線に使うのは「ねじねじくん」こと、ベルデン497である。これも外見がちょっと昔っぽい感じがしてナイスだ。ハンダは今回も「アマス・ソルダー」である。

 そして吸音材。まだグラスウールは余っているが、健康面を考えるとあまり使いたくない。ハンズに行ったときに物色していたのだが、値段ばかり高くて適当なものがない。どうしようか…とウロウロしていると目に留まったのがスウェードの端切れだ。¥1500と天然皮革にしては安い。これを使ってみよう…というわけで手に入れたスウェード。正確にはベロアといって、裏革をさらに起毛させたものである。買ったやつは青く染色されていた。はっきり言って、この素材が音にどう影響するのか、前例がない、あるいはあっても知らないのでさっぱり分からない。まあ、だから面白いではないか。

 と、いうわけでベタベタと適当に切ったスウェードを貼り付ける。側板、底板にも貼る必要がある。その前にそろそろフロントを貼り付けよう。接着剤を付けた上にフロントを載せる…あれ、浮いてしまうぞ。しまった、ダクトの板が補強と僅かではあるが重なってしまったのだ。これはまずい、ちょっとした計算違いだった…しかし、軽はずみにそれを直そうとしたのが運の尽き、史上最大の悲劇が襲いかかろうとしていたのである!(続く)




 33.ロクハンの魅力を堪能!-後編(00.12.3)

 重なってしまった部分はどちらか削るしかない。小型のノコギリを取りだした私は、補強板の方を切ろうと、左手に持ち替えて右手で支えるという形になった。それはその方がやりやすかったからだが、少々無理な切り方が悲劇を招いたのだ。補強板の重なる部分を斜めに切り落とそうとしたのは良いが、そのまま切り落とした勢いは、止まることもなく右手の人さし指を狙い撃ちした。

 「いてててててててててて」どくどくどくと流れる鮮血を見て、思わず吸い付いた。まず、汚れた血を除去しようとしたわけだ。そして水道まで走る。洗い流すが、血は当然だが止まらない。「またやっちまった…」という自責の念。「右手でやっていれば…」という後悔。「全く次から次へと…」という怒りとも焦りとも、はたまた諦めともつかぬ複雑な思いが、赤い赤い血を見ているうちに脳裏を駆け巡った。急いでいるんだぞ、おれは。これで両手の人さし指を負傷だ。やれやれ。今回はノコギリだから傷口はザクザクである。治りはナイフのものより遅いだろうな。

 しかし、ここで止めるわけには行かないのである。バンドエイドを二重に巻いて作業再開だ。補強板を二ヶ所削ると板はしっかり接合した。裏板も接着し、しばらくまた重しを載せて乾燥、さあユニットを取り出す。

 このユニット「PE-16M」は昔の仕様のためか、現在のものと比べるとフレームがかなり弱そうだ。昨年(99年)の「ステレオ」誌に於ける各評論家諸氏の作例を見ても、特に石田善之氏などは木材で挟み付けるように補強していた。これがかなり音に「効いた」ようなのだ。最初これを真似してみようかとも思ったが、ちょっと時間がない。とにかくフレームの共振を減少させよう、ということで、鉛テープをベタベタとフレームに貼り付けることにした。最初フレームを指ではじいて出た「ちーん」という音が「こん」くらいになった。効果はあるはずだ。

 さてコーヒーも飲み、いよいよ最終作業、ユニット装着である。ユニットへのハンダ付けは大変やりにくかった。仕様としては圧着端子によるネジ留めが基本なのだろうか。巻き付けて無理矢理のようにハンダを付け、上からネジを締めつける。ハンダ自体は結局撚り線を固めただけに過ぎないような状態だ。まあ、今度塗装したときにまた外すので良しとしておこう。

 やはりユニットを付け終わった後というのは格別な感動がある。時間は夜7時。「間に合った…」という、何ともホッとした気分も今回はしみじみ味わうことになった。バタバタだったので当然接着剤も生乾き状態だが、ええい、とにかく音出しである。

 「ガンキヤノン」のあった場所に設置する。やはり比べると大きい。本当にギリギリの幅であった。背の高さは「ブックエンド」より少し高いくらいだが、奥行きの長い「ブックエンド」に比べると幅のせいか、かなり大きく見える。当然ユニットの口径は倍であるので、これもそう見えさせるのに十分な要素だろう。

 手前味噌だが、この3つのポートがデザイン的に有効だと感じた。一つだとユニットからダクトまでかなり間延びして見え、淋しいものがあるが、大ポートの上に2つ小ポートがある、というだけでフロントが引き締まって見えるのだ。心配した大ポートの内側、つまりキリでぶすぶす開けて落としたギザギザの穴の方だが、これもデザイン的には悪くないんじゃなかろうか。ぽっかり開けた口に、歯が生えているように見える。近くで見るとかなり汚いので良くないが、遠目からはそんなに分かるものではない。これが音にどう影響するか?そんなことまで気にしていたら「おれの」スピーカーは出来やしないのだ。

 さてさて、音はどうか。やはり古いジャズで行こう。「アートペッパー・ミーツ・ザ・リズムセクション」をトレイに乗せる。これは当時(1957年)としては音質も良く、結構タイトな録音になっている。これがぶよーんとしてしまうのはちょっと良くないのだ。……うん、多少はぶよぶよしても仕方がないかな、と思ったが、意外に良く鳴っている。結構からっとした特長があるようで、それがこのソースには合っている。ペッパーのサックスも、16cmという口径からおいしく流れ出しているし、そして何よりも心配したバスレフダクト。ベースがふやけることなく出ている。これなら合格だろう。CDを替えて「ワルツ・フォー・デビイ」。ラファロのベースも申し分ない。当初の設計とは違ってしまったダクトだが、とりあえずは結果オーライということだ。

 古い録音はOKとして、現代のものはどうか。UAやローリン・ヒルといったリファレンスや、ブランキージェットシティといったロックを試す。結果は思ったよりも問題はなかった。確かに曲によってはトゥイーターが欲しくなったし、ローエンドがかなり苦しいものがあった。しかしそれはこういうユニットだから仕方がない部分もある。それにもともと低音や高音を欲張るつもりはなかったので、それ程問題にすることでもない、と判断したのだ。ただ、少し気になったのはいかにも箱の響きが出てくる場合があったことだ。吸音材の問題かもしれないし、ダクトも問題かもしれない。しかし、どちらもこれから調整が可能である。

 また、ヒョウタンから駒ではないが、間違えてポートを大きく開けたために、手を突っ込むことが可能なのだ。これは大きい。例えばここから吸音材を入れることも出来るのだ。ギザギザが触れてちょっと痛いが。また、このポートの貫板も残しているので、これにあらためてガムテープを装着して、嵌めることも出来るだろう。この大きさの板をたくさん用意して、色々なダクト(例えば塩ビパイプとか)を取り換えてみても面白いかもしれない。とにかく夢が拡がるポートだ。

 バックロードホーンであるD-105「ブックエンド」との音の違いは、やはりゆったりとした音、ということだろう。繊細でキレの良い「ブックエンド」に対して、おおらかに、まろやかに鳴るのだ。真空管との組み合わせはまさにうってつけ、といった趣だ。とは言え、決して「なるい」音ではない。中音がしっかり厚く、芯の詰まった張りのある音を聞かせてくれるので、自分の嫌いなフワフワな音には決してなっていないのだ。さすがに現代のものは「ブックエンド」に軍配が上がるが、昔のジャズにはしっかり「ハマる」スピーカーである。まさに狙い通り、一日で大慌てで作った疲れも一遍に吹き飛んだ。後は何色に塗装するか、名前をどうするか…


これが今の全景。随分トップと比べて変わったもんですな。




 34.久々の小ネタなど。(00.12.11)

 前から気になっていたのだが、真空管アンプ・トライオードはどうも音が左に寄っていることが多かった。いつもではないものの、時々ひどくなる。モノラル録音のものをかけたらそれは明白、どうしたものか…と思っていた。

 ある日、ふと真空管「KT88」を抜いて逆に差し込んでみた。しかし、何も変わらなかった。それで一旦は諦めてしばらくまたそのままにしていたのだが、「待てよ」。小さいほうもあるではないか。試しに「12AX7」を逆に差してみた。すると、見事に音が右に寄ったのだ。いや不覚、なぜ早くこっちも逆にしてみなかったのか。考えてみると馬鹿馬鹿しい話である。しかも、電源を切るときに起こっていたボツ音も、左から出ていたのが右に移動していた。もはや原因は白日の下にさらされたのだ。

 次の日、早速大須にある真空管の店へ。目指すは当然「12AX7」。運の良いことにセール中だったのだ。しかも、一本¥600という破格値だったのだ。メーカーはフィリップス、メイド・イン・USAで、軍用とのことだ。だから安いのか?よく分からないが、とにかく買ってみた。何せこの値段である。買ってみなければ。

 帰って早速交換してみる。そして試聴。まずかけたのはモノラルの名盤「サキソフォン・コロッサス」。今まで寄っていた音が見事センターにバッチリ定位した。OFF時のボツ音もなくなった。大成功だ。これでもう、安心して真空管にのめり込むことが出来るというわけで、めでたしめでたし。

 さてもう一つネタを。現在完成したばかりの「PE-16M」スピーカー、まだ名前は決まっていないものの、エージングに励んでいる最中である。このフルレンジ、昔のジャズなどを聴くには何の不満もないが、最新録音モノにはやはり物足りなさを感じる。特に高域方面は大人しい。もっとも、ガッツのある音なので慣れてしまえば気になるほどでもないが。しかし、色々試す価値はあるだろう。

 そう、トゥイーターである。以前から借りたまま(もうもらったも同然?)になっているフォステクス「FT66H」があったのだ。1度「ブックエンド」に付けたものの、やはりそれ程高域に不満を感じなかったので外していたのだ。それを再び試すときが来たのだ。

 コンデンサーも以前買っておいた0.47μFがあったのでこれで繋げてみる。天板にちょこんと載せて、音を鳴らす。試聴曲は新旧織り交ぜ、トゥイーターも接続したり外したりしながら聴いてみた。予想通りというか、50〜60年代のジャズはそれ程大きく変わらなかった。ほんの少しシンバル音が派手になった、という程度である。逆にノイズが目立つものもあり、一長一短であった。それに比べてUAやローリンヒル、ジャズでも最新録音のものは違った。外して聴くとかなりくぐもって聞こえるようになったのだ。繋げると輝きが加わり、それが空気の中に溶け込むような雰囲気を醸し出したのである。これは大きな違いだ。決めた。このトゥイーターをきちんと箱を作って載せよう。しかし、すぐに外せるようにもしよう。これは楽しみだ。ところで、その前に本体に早く色を塗らねばなあ、全くいつまで経っても…




 35.またしても小ネタなのだ。(00.12.29)

 仕方がないでしょ。大体そんな大きなネタばかりやっていたら金がいくらあったって…などという愚痴とも独り言ともつかぬことを言いつつ、またいろいろなアクセサリーを試してみたわけだ。

 まず、洗浄系のアクセサリー「スーパーウオーター」というやつ。これはその名の通り、凄い水らしい。成分は「電解還元性イオン水」とある。このイオンの力で汚れを落とすというものだ。どうやら音質向上というより汚れを落とすことに重点が置かれているようではあるが、それが結果として音質向上に繋がるというわけだろう。やはりまずCDで試してみる。気を付けて扱っているので自分のCDはさほど汚れてはいないが、古いものには効果があるだろう、とちょっと前のもので試す。当然その前に音は聴いておくのは言うまでもない。果たしてその効果、確かにすっきりと見通しの良い音になった。以前このコーナーで紹介した「クーナル」のような「変化」とはニュアンスは違うが、確実に元の音質に戻った、と言う感触だ。

 この水、用途はいくらでもあるようで、例えば食器の汚れなどにも良いようだ。ホームセンターで買ったパステルカラーのテーブル、こいつは本来の役目から外れ、ただ単にCDがうずたかく積まれる役目しか現在果たしていない。CDをどけると案の定ホコリが汚れとなってこびりついている。そこにこのスーパーウオーターをひと噴き。すると細かいが出てきて汚れを分解しているのが分かる。まるでコマーシャルのようである。そして拭き取るとアラ不思議。洗剤でもないのに見事に汚れは綺麗さっぱり無くなっているではないか。これは凄い。大掃除真っ盛りの今、自分が掃除しまくるかどうかは置いといて、そういった用途にも大変有益なものである。パソコンにも良いだろう。是非一家に一本、というものだ。

 と、何かオーディオとは逸れてしまった観があるが、今度は純粋にオーディオである。電源回りのアクセサリーで比較的安価に試すことの出来る「エナコム」の登場だ。これは乾電池のような大きさをした物体の先にプラグがついており、それをテーブルタップやコンセントの空いた部分に差し込んで使う、というものだ。これが特定帯域周波数のノイズを除去する仕掛けになっているらしい。早速テーブルタップにはめ込んで試聴してみた。

 確かに効果はある。激しいピアノやドラムのアタック音が鮮明になったのだ。さらに高域のシャリシャリした音のがさつきが無くなった。付けないよりも確実に効果はあるので付けたままにした状態でいるが、はっきり言ってその違いは微妙なものであることもまた、間違いないことだ。いつの間にか外していても気付かないだろう。この「エナコム」、他にもスピーカー端子、ライン端子に取り付けるものがある。それらを全て装着すれば目に見えて分かる効果があるのだろうか。そうするとかなり高い出費になってしまうが…誰か試してみませんか?



 36.ブルーな年明け(01.1.4)(写真01.1.6)

 別に年を一つ取るから憂鬱、ということではない。オーディオのコーナーなんだから。何の事かと言うと、急いで完成させた「PE-16M」使用スピーカーの話である。そういえば名前・型番すら決まっていないし。

 使っていてなかなか良い感じに鳴らしてくれるので「もうこのままでも良いかな」などと思ってしまい、一ヶ月以上未塗装のままだったのだ。ナチュラルなベージュというのも悪くはない気になってきていたので、塗るとしてもクリアにしておくかなあ…とぼんやり考えていたが、そこは冬休み。一気に塗ってしまおう、と思いたった私はホームセンターへ向った。

 ペンキ売り場には当然「とうめい」というのもある。それにさっさと決めて帰ろうかとも思ったが、「待てよ」の裡なる声。ここで透明にしてはあまりにもつまらないではないか。ではどうするか。これまでずっと続けてきた半透明の「ランバーカラー」を止めてニスを塗るか。しかし、部屋にあの匂いが立ちこめるのは、どうも嫌だ。冬であまり換気をしないし。やはりランバーカラーで行こう。今度こそオーソドックスに茶系で行くか。元々私は茶色は好きなのだ。靴だって茶色しか持っておらず、不幸があったとき大変困ったものだった。それはともかく、「茶色にすると、やはりそれらしく綺麗に仕上げないとみっともないだろう」という気がしてやはり別の色にしよう、と。

 オレンジ(D-105)、グリーン(F-168)と来たので残るは「赤、青、紫、黄色、黒」といったところか。黄色はちょっと変だし、黒は暗いし、紫は論外、赤は悪くないが、今回は青で行くことにした。

 何故青か。やはり青といえばJBL。あの古くなってちょっとくすんだ青を想起したのであった。と言うわけで今回選んだ色は「サファイア」。明るくなるのでは?とも思ったが、これが一番JBLに近いのだ。

 塗装だがユニットを外したりとそう簡単には行かない。まずやすり掛けをせねば。ユニットを外したエンクロージャーをベランダに持っていき、粗目と細目のペーパーを順番に掛けていく。今回ラウンドバッフルにしよう!などと欲を出し、角を削る道具を買ってきたのだが、試しに後ろの部分を削ってみたら、見事にガタガタ。合板なので仕方がないのかもしれないが(それともおれの腕のせい?)、あまり実用的ではないことが分かった。まあこのガタガタ感は粗削りな彫刻っぽくて味わいがあるが、塗装がこれでは大変そうだ。さっさと最新の道具はあきらめてペーパーだけでやることにした。

 それにしても風が強い。ベランダだから尚更だが。それでも一生懸命ペーパーを掛けていると体が暖かくなっていく。そうして丹精込めて磨いたエンクロージャー、いよいよ「サファイア」の登場だ。

 今回木目が横向きに走る形となっているので、横へ横へと塗っていく。塗っては拭き取り、また塗っていく。木目を残すのならば、と人に教えてもらったやり方である。本当はもっと何度もこの作業をするべきなのだろうが、疲れたし暗くなってきたし早くユニット付けたいし、で結局3度塗りで終了。それでも、結構木目は残ったし、何より塗りむらが出ないのが嬉しい。さらに普通に塗ったら少し鮮やかになりがちな「サファイア」色が、見事狙っていた少々くすんだ感じを醸し出してくれたのだ。

 さて、前回作ったとき吸音材をかなりいい加減に貼り付けていたので、今回まだ残っていたスエードを定在波が発生しそうな直角部分を中心にペタペタと張っておいた。ま、気休め程度だけど。

 ユニットをまた付ける、というのが結構面倒だ。電動ドライバーなど持っていないし、ハンダ付けもしなければならない。それでもどうにかこうにか付け終わり、トゥイーターも設置して元に位置にセッティング。するとどうだろう。この渋い青色。なかなかイケているじゃないの。以前の白木のままだと随分間延びして見えたのが、きりっと引き締まり、大きさを感じさせなくなった。これは素晴らしい。近寄ってじっくり見なければ良いだけのことだ。よくよく見ると接着剤のはみ出した部分だけがペンキが乗らなかった(拭き取りのため)り、バスレフダクトの雑な仕上げなど、相変わらず適当なのだが、それでも自分としては「合格!」と胸を張って自画自賛したい気分である。音もこのブルーのように澄み渡り、引き締まったように感じる。吸音材でそれ程変わったとも思えないので、気のせいとは思うが、それでいいのだ。気のせいでも何でも、気分が良いのだから。

 こうなると名前だ。やはりこの色と、ジャズ向けということから「ブルー・マイルス」「ブルー・モンク」「カインド・オヴ・ブルー」というのが気分だ。さて、どうしようか。




 37.ローエンドなホームシアターの誕生(01.1.15)

 前から計画はあった。例えばプレステ2登場時。そのためのスピーカーユニットも買ってあった。しか、結局2000年は終わり、21世紀を迎えて遂に、と言うかようやく、私もDVDを導入することに決めたのだった!

 機器選定。DVDは今やはっきり言って安い。2万円を割るものさえある。しかしオーディオマニアの私が、そのようなローエンドマシンに手を……出したのである。

 最初はマランツのやつを狙っていた。しかし、ハードオフで見つけたそいつは、買うことに決めて翌日行ってみたらもう無くなっていた。…残念。気を取り直し、某大型量販店へ。そこではパイオニア、ビクターが2万を少し出る程度で売られていた。それにするか。店員はしきりにビクターを薦めた。何かその態度が気にくわず、とりあえずその店を出たが、さらにその翌日、ライバル店へ赴き、見ていると、一番安いのは韓国が本社の「サムソン」だった。確かにローコストなイメージのあるメーカーだが、さりげなく安価で良質な商品を出しているのだ。韓国では超有名総合企業でもある。生産国は韓国であった。今や日本メーカーの方が東南アジア製が多い中、韓国ならば逆に良く作られているのではないか。多少迷った末、これに決めた。CDプレーヤーでもそうだが、¥5000〜¥10000の違いが大きくクオリティに影響を与えるとは思えなかったからだ。

 そして返す刀でAVアンプも購入した。それは前からハードオフで目をつけていた新品。ティアックの最近出た定価¥38000のやつである。ただ、これまた少し迷ったのは、マランツで¥54800のタイプだ。さすがにアンプの場合この価格差は多少は違うはず。機能は変わらないのだから、確実に音質分のコストだろう。どうするか…しかし、財布の中身が決心を促した。ティアックを持ってレジに向ったのだった。

 これでスピーカーはまだ未製作とはいうものの、余っていたタンノイ「CPA-5」を引っ張り出せばホームシアター(!)の完成である。テレビは21型。文句があるか

 2つの電気機器を抱えて自宅2階の部屋へ。梱包を解いて新品を取り出すのは大変気持ちが良いものだ。まずアンプを取り出す。分かってはいたが結構でかい。AVアンプというのは背面の入出力端子が数多く必要なこともあって、どうしても背丈が高くなってしまう。まあ、高級感を出すという意味もあるだろうが。日本製のアンプというのはとにかくどれも背の高いものが幅を利かしているのだ。さてその大きなアンプをテレビ台に…入らないではないか。恐れていたことが起こった。予想ではギリギリくらいとは思っていたが…やはり少し背丈の低かったマランツか、中古のデンオンにしておけばよかったか。しかし、ここで引き下がっては男がすたる。出陣じゃあ。

 たどり着いたのはホームセンター。テレビ台を探す。今度は巻き尺持参。抜かりはないのだ。テレビ台あるいはその代用品は意外と多いのだが、背丈が足りない。アンプとビデオとDVDが収まらないのだ。エレクタラックみたいな自由に組み合わせが利く、シルバーなやつが好ましかったのだが、残念ながら在庫では寸法の合うものが無かった。少しあきらめかけたところ、奥の売り場に事務用スチールラックのコーナーを発見した。そこで見つけたのだ。黒のスチールラック。テレビ台に使えるサイズである。寸法は…おお、大丈夫だ。収まるではないか。値段も安かったので、これに決定しよう。ちょっと棚板の薄いのが気になるところだが。

 随分買い物をしたなあ、と心地よい気分になって帰宅、バタンバタンと棚を組み立て、キャスターもつけて完成。うん、これで十分だよ。しかし、棚板は叩くと「カーン」と盛大に音を立てる。これは音に悪影響だ。いくらローエンドシステムとは言っても。そこで、取り出したのは防振ゴムとコルクの板。コルク板を敷き、さらにアンプの足下には防振ゴム。これでかなり鳴きは防げるはず。

 さて配置は、一番下にアンプ、そして真ん中にはビデオデッキとDVD、そして一番上の棚には当然テレビ、スピーカーは仕方ない、さらにテレビの上だ。お次は遂に来ました、結線だ。ビデオ系が絡むと結線は難しい。映像はSケーブルで、ということでDVDからアンプ、アンプからテレビというふうに。音声の方は、DVDからアンプはデジタルケーブル、ビデオデッキからは入出力をピンケーブルで。と、書くとそれ程難しくもないが、電線だらけでゴチャゴチャ、見ているとさすがに少しイライラしてくる状態である。

 まあ何とかセッティングは完成。あとは絵と音出しだ。買ってきていた椎名林檎のDVDディスクを挿入、早速見てみよう。……んん?音が出ないぞ




 38.ローエンドシアターの今日と明日(01.1.19)

 (前回の続き)おかしい。音声はデジタルケーブルでは駄目なのか。一応また後ろを見て確認し、念のためアナログ出力にピンケーブルを繋いでみたら、今度は音がちゃんと鳴る。ホッとしたが、納得はいかない。デジタルケーブルがなんの意味もないのだ、このままでは。リモコンの文字をじっと見る。すると「デジタルアウトプット」というボタンが。押してみるとアンプのディスプレイに「OPTICAL」の文字が。音はしなくなる、これだ。さらに二度押すと「COXIAL」となって再び音が鳴りだした。ケーブルは同軸だからである。やれやれ、こういうことか。面倒くさいな、繋げただけで鳴らないとは。しかし、さすがローエンドだからなのか、アナログとデジタルの音質の区別は出来なかった。全く同じというわけでもないが、という程度である。

 音質はまあ、恐れていたドンシャリでもなく、ロー落ちハイ落ちのかまぼこ型バランスで聴きやすい。この方が好ましい。下手にガシャガシャ言ってはたまらないのだ。AVアンプの、しかもこの価格帯の製品に対して音質を云々しても仕方がなかろう。

 しかし今までビデオしかソフトものは見たことがなかったので、DVDの画質の良さには感心した。このテレビでこの色が出るならば上出来だろう。林檎ちゃんの肌の艶がばっちり。画質が良いので音質の事はそんなに気にならなくなった。

 次なるソフトは「ウルトラセブン」だ。当時のフィルムをノイズリダクションし、さらに音声は疑似ステレオ化した、というなかなか気になるものだ。かけてみると、なるほど確かに音声がステレオ化して迫力が出ている。これは楽しい。画面もあの「毛」のようなノイズが無くなり、これがあの当時の映像か?と思わせるくらい鮮明だ。あまりに鮮明で飛行物体を吊った糸が丸見えなのは御愛嬌か。内容も面白いが映像と音も良いのでさらに楽しめた。

 これらを見るかぎりでは「ローエンドで十分」という感想を持った。まあ自分のメインはオーディオなので、重要度から言ってもAとVの価格バランスはこのくらいで良いのではないか。試しに普通のCDもかけてみる。まあ、取り立てて言うことのない音である。しかし普通ならばこれで十分なんだろうな、と思わせるもので、何よりミニコンのようにうるさくならないのが良い。下手にミニコンなど買うより、ラジオもアンプについているし、普通に音楽を聴くだけならばこの方が良いのではないか。お手持ちのテレビやビデオと接続すれば、手軽(とまでは言えないか)にミニ・シアターが完成するのだ。スピーカーが5本無くても、ヴァーチャルサラウンドでかなりのところまで再現できる。大体、古い映画館ではサラウンド感など殆ど味わえていないのが現状だし。

 あとは音楽系のソフトを集めることになるだろう。ディスク・レヴューでも積極的に取り上げていきたい。次なるステップはスピーカー製作だ。遂に在庫ユニットが登場することになる。そこでもし、音質的に、さらには画質的に不満になったら… 



 39.ピンケーブル三番勝負!(01.1.22)

 そもそもは、ローエンドシアター用にデジタルケーブルを作ろう、と思ってケーブルを買ったのだ。日立の「メルトーン105」という同軸ケーブル。とりあえず2m買ったので、半分はデジタルケーブルを作ったが、残りを50cm×2のピンケーブルにしよう、ということなのだ。

 今回は端子を奢らず、モガミの1個350円のやつにした。それでもゴールドで高級感はバッチリだ。しかし、完成したケーブルを眺めても高級感のかけらもない。何故か。ケーブルの被膜の色がピンクだからである。この安っぽいピンク色には何か重大な意味があるのだろうか。日立のカラーは「黄色」と言うイメージが柏レイソルから連想されるが、誰か訊いた人はいないのだろうか。

 まあ、見た目は悪くとも…と思い、試聴。最初は少しきつさがあったが、鳴らしているとそれも取れてきた。早速従来の2本、スペース&タイム「プリズム55(6N)」、自作カルダス「クロスリンク」との比較試聴を行った。

 スペース&タイム…透明感が高い、と言うことがやはり特長になる。汚れが少なく、音場感を描くのが得意だ。若干低域が薄口。ただ締まっており、悪くはない。

 カルダス…メリハリが利いて結構好きなタイプの音。明るく開放的な中高域、程よく張りのある中域、躍動感のある中低域、3本の中では最も低域が伸びている、と感じた。

 メルトーン…まろやかめの音。ただ「なるい」と言うわけではないので聴きやすさがある。上記2本の中間と言った感じか。低域の伸びもほどほどある。バランスは良いが逆に「これ」と言う特長もない。多少スピーカーに音が「張り付く」感じがする。

 というわけで、さすがに価格の差が出たのか、あるいは端子が原因なのかは分からないが、従来のケーブルを「超える」ことは出来なかった。しかし、「好み」の範疇で括ることも出来るレベルだし、バランスの良さはあるのでもう少し使って様子を見たいと思う。(ピンクケーブル、またまた写真は次回で…スンマセン)  




 40.焼き尽くせ!(01.1.28)

 急速にOA化が進行中のとある会社に、遂に「CD-RW」なるものが導入された。そうなると気になるのは当然「音楽CDも焼けるのか」ということだ。最近オーディオ界でもCDを焼くのがポピュラーな事になりつつあるが、そもそもはパソコンから来たものでもある。オーディオ用CD-RWが普及していなかったころはパソコンで焼くのが一時期流行った。さて、テーマとしてはパソコンで焼いたものがオーディオ的に通用するか、ということなのは言うまでもない。

 何せ仕事中なのだから自分のiBookにUSB接続して試す。ソフトは「アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション」。古いが高音質盤、しかもXRCDという、超高音質盤である。

 「MacCDR4.1」という焼き込みソフトを使うのだが、初めて使うこともあって使いづらい。読みたくないマニュアルを片手に、操作していくうちに分かった。どうやらマック側のCD-ROMドライブから、直接CD-Rドライブへデータを送れないようだ。ウィンドウズなら出来るのに。悔しいことだが仕方がない。ヴァージョンが古いせいもあるだろう。CDの音楽データをまずは「AIFF」という形式のファイルに変換する必要がある。まずその処理を。あ!しまった、読み込みを「4倍速」でやるつもりが「1倍速」にしてしまった。…つまりCDの収録時間まるまる、その処理に費やす羽目になった。やれやれ。まあ、仕事中でもあるのでしばらくそのままほったらかし、約1時間後見てみるとAIFFファイルは完成していた。今度こそ、書き込みは4倍速にして「焼き」ボタンをクリック。

 約20分後、見てみると見事に完成していた。とりあえずその場でiBookで聴いてみると、問題はなさそうだ。4倍速で焼いたのは決して急いでいるからではない。どれくらい劣化しているか、を確かめるためでもある。別の人が8倍速で焼いたのだが、音飛びが時々あるそうだ。それで4倍速にしたわけである。

 さて、家に帰ってそのCD-Rから1曲目を試聴。…うん、十分聴ける音じゃないか。と言うより良い音じゃん、これ

 実はXRCD盤のほかにも通常の輸入盤、1曲目の「You'd Be So …」ならばオムニバス「ジャズ・ミレニアム」に収録されており、こちらは「デジタルK2」盤だ。全て聴き比べてみる。

 (1)XRCD … 端正な音。しかしペッパーのサックスはリアルで、低い音から高い音までバランスよく出ている。端正さはピアノに良く出ており、ベースのピチカートもドラムのアタックやシンバルもまさに「高音質」。バランスの取れた、「高いオーディオシステムのため」の音かもしれない。

 (2)CD-R … (1)がオリジナルなので当然似た音になる。低音部がほんの僅かに薄くなるのと、シンバルがちょっと賑やかになるのを除けば大した違いはない。しかし、4倍速で焼いても、これほど違いが少ないのには驚きだ

 (3)通常盤 … ちょっと比較するのが気の毒だった。全体的に薄い音で、サックスも低い部分は出ず、ベースは倍音だけ、ドラムもシンバルだけが耳につき、アタックは弱い。最初に買った当時はこの音でも「悪くない」と思っていたのがウソのよう。

 (4)デジタルK2 … (3)とは逆に随分分厚い音。迫力満点で、低音もモリモリ。小型スピーカーとの相性が良いかもしれない。これぞジャズ!という感じになって、個人的には(1)よりも元気があって好きな音だ。


 いや、大変面白い比較だったが、返す返すも驚きなのがCD-R盤の実力。逆にXRCD盤の上品過ぎると感じていた部分を良い方向へ汚してくれて、好きな音とさえ言える出来だったのだ。4倍速でも全く不安はない、と感じた。もっとも、ソフトが古い録音だったので、最新録音のもので試したら別の結果になるかもしれない。それに、あくまで自分のシステムでの結果である。もっとクオリティの高い機器で聴けばアラが見えてくるかもしれない。しかしこれならば、オーディオ専用機の必要は今のところ無い、と感じさせるに十分な結果であった。