乱れ撃ちディスク・レヴュー"Classic Edition 5"

<97年〜98年>

OASIS "Be Here Now"
 ジャケ裏にも「August 8 Thursday」と記されるほど、全世界が待ち望んでいたであろうサードアルバムだ。まず一回聴いた感想は、「なんて分厚い音だ」ということ。これはアメリカをかなり意識してのことだろうか。曲によってはエアロスミスを想起させるものすらある。リアムのヴォーカルも期待通り進歩しており、まさに盤石と言ってよい。ビルボード初登場一位も間違いなかろう。ただ、ともすればこれまでの英国ロックファンには複雑なものになる危険性も秘めている。「メジャー」を嫌う彼らにはもう手の届かない存在になっているのだ。しかし、だ。これでもう僕は三回目を聴いているが、やはりこれはいいのだ。何せ捨て曲が無い。どれも長い曲ばかりだが、だんだんその長さを感じなくなっている自分に気づいた。やはり彼らは凄いのだ。早くも「名曲」の呼声高い"stand by me" も良いが、個人的には"don't go away"が一番好きな曲だ。まあ賛否両論あろうが、日本でもかなりのセールスを記録するのではないか。レコ屋でもFmでもかなりプロモーションに力を注いでいるし。ちょっぴり寂しい気もするが、彼らの実力からすれば当然だろう。来日はいつかなあ。 (97.8.23)

→新作はどうやら2000年以降。しかもメンバーは今やギャラガー兄弟だけ。うーん。


OCEAN COLOUR SCENE "Marchin' Already"
 一曲目がボーナストラックかい?と言うほど彼らの「男気ロック」はウエットなものになった。おそらく誰でもそう思うだろうが、一曲目で「おお、来た来た!」と言う感じにさせておいて、それから先は殆ど「泣き」の世界が繰り広げられる。確かにクオリティは高いものがある。佳曲揃いだ。しかし、しかしだよ、これでいいのかなあ。やっぱりあの古くさい、そこが滅茶苦茶カッコよいリフが聴きたいのだよ。あと何回か聴けば良さが分かるとは思うけど、これではB面集と同じではないか。 (97.9.15)

→でも最新作はもっと地味。そこがいいと思うようになってきた。


スガシカオ「クローバー」
 ただのフォークロックと思うなかれ。「ドキドキしちゃう」に代表されるようにリズム感が物凄く良いのだ。日本人ぽい音作りの様で洋楽臭さが強いのはそのせいか。とにかく日本から凄い才能がまた一人現れたって感じ。確かにメロディも上手いが、いいのは繰り返し言うけれども「リズム」。体が自然と反応するのです。 (97.9.23)

→もう3作目を発表。すっかりポジションを確保した感じ。


THE VERVE "Urban Hymns"
 もう何回か聴いたんだけど、どんどん良くなっていくアルバムだ。やはりシングル二曲が特に素晴らしい。こんな地味な曲のはずなのに、体が自然と動いてしまうのだ。このストリングスを絡める、という最近のロックには珍しい味付けもなくてはならないもの、という感じがする。もう、単純に言ってしまえば「魂込めまくり」という作品なので、たくさんの人に聞いてほしいんだけど、この地味さがなあ。何回か聴いてくれればいいんだけど、そんな気の長い人あんまりいないしね。どうも即効性が求められる日本のポップ界では難しい存在ではあります。 (97.10.10)

→残念ながら解散…しかしこれだけ素晴らしい作品を作ったので、「ありがとう」と言いたい。


FOREST FOR THE TREES
 「ベックの片腕」との触れ込みで登場したわけだが、なるほど、「メロウ・ゴールド」は彼の作品と言ってもいいくらいだ。数年前の録音にも関わらず、見事にこの音は「今」である。また驚いたことに、一曲目がFMでヒットしているのだ。「ルーザー」が日本でウケたのにも驚いたが、快挙と言って良い。もっとこの手の音楽が日本でも受け入れられていくといいと思う。 (97.10.17)

→こういったサウンドはだいぶ受け入れられる土壌が出来てきましたな。


IAN BROWN "Unfinished Monkey Bousiness"
 待ってたぞ、イアン!シーホーセズが迷走してしまった今、やっぱり頼れるのはお前しかいないんだあ!俺は覚えているぞ、延期のために空席が目立ってしまったセンチュリーホールで懸命に唄ってくれていたお前を!あの不器用な唄いっぷりに、紛れもない「ロック」を感じていたんだ!シングルとなった「マイ・スター」はローゼスファーストを思い起こさせるし、三曲目なんかは「フールズ・ゴールド」の発展型ではないか!そしてライナーではあの増井修氏が!この人も復活が待たれる。きっともうすぐ新雑誌を引っ提げて登場するに違いない。 (98.1.18)

→早くセカンドを!イアン!


GOLDIE "Saturnzreturn"
 恰好良い!ノエルのギターが唸りまくる「テンパー・テンパー」を筆頭にこれでもかとばかりに鳴らされる「今の音」だ。ちょっと前に「ジャングル」と呼ばれていた音楽がいつの間にか「ドラムンベース」と名前を変えて世界中を席捲しているが、彼の音はその代表と言えよう。二枚組の大作で、一枚は60分で一曲というとんでもない代物である。しかし最近輸入盤が発売されたが、一枚分の値段である。どういうことだ。(98.3.29)

→ちょっと最近うわさを聞かない人になってしまっています。


GUY CHADWICK "Lazy,Soft & Slow"
 懐かしや、ハウス・オヴ・ラヴのガイが帰ってきた。やっぱり「シャイン・オン」は名曲だったよなー、などと言っていては現在の彼に失礼だろう。それにしても当時の彼の声や音は何か切迫感と言おうか、ひりひりとした肌触りを感じたものだ。が、このソロ第一作目を聴くと、別人のような落ち着いた佇まいを見せてくれることに驚く。バンド解散後、かなり色々なことがあったに違いないのだが、それらを昇華して作り上げたのがこのアルバムなんだろう。こんなにも優しい人だったんだ。(98.3.29)

→おそらくこの人は今後マイペースでたまーに新作出したりするんだろうな。


JAGUAR "A Vision"
最近いささか食傷気味のUK新人バンド勢の中ではきらりと目立つ存在。最初の曲ではよく言われているようにローゼスの影響が濃い印象を受けるが、疾走感溢れる2曲目など、突き抜ける予感を抱かせるには十分な存在だ。後はどこまで「アク」をつけることができるかだ。 (98.3.29)

→結局解散、主要メンバーが別の名前で活動しているそうな。


DRAGON ASH "Buzz Songs"
 驚いた。本当に驚いた。こんな凄いやつらがいたなんて、それを今まで知らなかったなんて、何ということだ。しかもこの日本にいたのだ。一体どうなっているのだ。今年はいいアルバムが無い…と思っていたのだったが、間違いなく98年のNo.1になるだろう。サウンドは基本的にはロックだが、ヒップホップ色もかなり強く、シングルとして出た2曲はジャパニーズ・ヒップホップ と言っていいだろう。この2曲が特に素晴らしい。特筆すべしは歌詞。かなりメッセージ色を前面に押し出しており、"Under Age's Song"などは涙ものである。コーラス部分の"Be stronger,fly higher,don't be afraid"が胸を打つ。「より強くなれ、より高く飛べ、恐れるな」。またさらに驚くべきはリーダーの降谷はまだ10代ということだ。音と歌詞の両面に於いて、天才が遂に日本に登場した。(98.9.21)

→もはや問答無用。超名作。