産・婦人科医の健康アドバイス (平池秀和)

2.排卵と月経のメカニズム



上図は医学書院の母子看護より

@月経後に頭の中心部にある脳の下垂体から
FSH (Folicule Stimulating Hormone:卵胞刺激ホルモン)が分泌され卵巣に働き、
それによって卵巣の中の卵胞が育つ。
A育っていく卵胞から卵胞ホルモン(Estrogen)が分泌され、
この作用で、前の月経で剥がれた子宮内膜が厚くなる。
なお、このエストロゲン分泌量に応じて卵胞刺激ホルモンの分泌量も調整されるので、
通常、卵巣内の卵胞内は1つだけ育てられる。これを フィードバック機構という。
B卵胞内で卵子が成熟すると、
脳下垂体からLH (Luteinizing Hormone:黄体化ホルモン)が大量に分泌され、
それが卵胞に働き卵巣の外へ卵子を排卵させる。
C排卵後の卵胞は黄体となり、
その黄体から黄体ホルモン(Progesterone)が分泌される。
このホルモンの作用は、排卵までに厚くなっている子宮内膜を厚いまま維持し、
加えて体温を上昇させる働きがあるので、
排卵後の基礎体温(BBT: Basal Body Temperature)は約36.7℃よりも高温になる。
D卵子が受精することなく、妊娠しなかった場合は、
排卵後約2週間で黄体は働きが低下して白体となり、黄体ホルモンの分泌が低下するので、
子宮内膜を厚いままに維持できなくなり剥がれて、月経が始まる。
その後は、再び@に戻り、排卵・月経を繰り返す。

上記のDで妊娠の場合、
卵管に入った卵子が精子と会うと受精卵となり妊娠する。
妊娠により黄体は妊娠黄体に変化し、2週間を過ぎても衰えて白体になることなく、
数週間にわたって黄体ホルモンを長期間分泌するので、
高温相が3週間以上持続する場合は妊娠の可能性が高いことが判る。
受精卵が根を生やし、着床すると、胎盤が出来る。
この胎盤から出るホルモンのヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は、
尿中に排泄されるので、尿検査でも妊娠を診断することができる。



脳の下垂体と卵巣と子宮の関係は下図




この様に、排卵のメカニズムでは脳の中心部にある下垂体前葉から分泌される、
FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)が大きな役割をしています。
下垂体の上位には視床下部という重要な生命コントロール部位があり、
視床下部からの放出ホルモンの影響を下垂体は受けています。

下垂体前葉からは他に、
ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、TSH(甲状腺刺激ホルモン)、
GH(成長ホルモン)、プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)
など、計6種類のホルモンが分泌されます。
しかし、これら6種類のホルモンが同時に分泌されることはなく、
いずれかに集中して分泌することになります。

例えば、授乳中に出るプロラクチンを分泌している時期には、
排卵を起こさせる、FSHやLHの分泌は休憩して排卵や月経が起こりません(例外はあります)。

別の例として、ストレスを感じると視床下部に影響を与え、
ACTHやTSHが下垂体前葉から分泌されるので、FSHやLHの分泌リズムが変調をきたし、
排卵や月経が不順になります。
事実、5〜6月の新学期や新入社員の頃に、月経不順を訴える患者さんが増えます。

月経不順の方は、日々規則正しく、また楽しく生活をしてみることも大切です。