産・婦人科医の健康アドバイス (平池秀和)

3.ピル(経口避妊薬)について

ピル(経口避妊薬)には卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が微量に含まれています。
前の「2.排卵と月経のメカニズム」で示したように、脳の下垂体前葉から卵胞刺激ホルモン(FSH)が出て、
その作用で卵巣の中の卵胞が刺激されて、卵胞が育ち卵胞ホルモンが出ます。
しかし、ピルで卵胞ホルモンが経口的に入ってくると、
血中の卵胞ホルモン濃度が上昇するために、
下垂体から卵胞刺激ホルモンを出す必要が無くなります(フィードバック作用)。
そのために、卵巣の中の卵胞は育たず、排卵が起こらないので避妊効果があります。

3週間ピルを服用すると薬に含まれた卵胞ホルモンの作用で、子宮内膜は増殖していきますが、
薬には黄体ホルモンも含まれているので、途中で子宮内膜が剥がれて出血することはありません。
その後、1週間の休薬で黄体ホルモンの作用(子宮内膜の維持作用)が無くなり、
休薬2〜3日目から剥がれて、性器出血が起こります。

3週間内服、1週間休薬のサイクルで避妊効果と共に、
低用量でホルモンコントロールするために、
ピルに含まれる卵胞ホルモン量が少ないので、子宮内膜の厚みが薄くなり、月経出血量の減少
月経出血量の減少のために、月経時の痛みなど、月経困難症や子宮内膜症の改善、
さらに、ホルモン変化の波が少なくなるので、月経前緊張症(PMS)の改善、なども期待できます。

妊娠・出産の希望と予定が無いのに、毎月無駄な排卵作業から卵巣を休憩させる効果もあると共に、
卵巣腫瘍、将来の子宮筋腫、子宮内膜症の予防に大きく作用します。


ピル(経口避妊薬)の注意点

血栓に対する注意が必要で、特に、
タバコを吸われる方、ピルを服用開始初期の方、高年で長期服用の方は、
予防的に脱水状態にならないように気をつけていただき、
足に痛みを感じたりした時は、すぐに服用を中止して医師を受診してください。