馬道の暗がりに彼が見えた。
「暴れてる!」
私は本当にほっとした。他の人が見たら久々のレースに 入れ込んでいるように見えるかもしれない。 それでも、これがブラックホークなのだ。 高松宮記念の時のような浮ついたしぐさではない。 いつもよりは少し足りないけれど、やる気満々の目つき。 絶好調には見えない。でも、これならきっと勝ち負けだ。 走るのが大好きな(本当はどうかしらないけれどそう見える) ブラックホークが帰ってきて、私はとにかく嬉しかった。
レースはいつもよりスタートに勢いがなく位置どりも後ろ目で 心配したけれど、彼は最後まであきらめずに走りとおした。 4コーナーをまわって、やっとエンジンのかかった所に 前をカットされる不利があったのに、そこから彼は 立て直して、気がつくと2番手でゴールしていた。 私があきらめて眼で追うのをやめてしまったのに・・・。
彼のような馬を応援できて私は幸せだと思う。 私の想像するハードルをいつも軽々とクリアするブラックホークも、 引退に向けて最後のシーズンを迎える。