おいしい生活(4)


塩のおいしい食べ方

塩

1999年4月5日
 

最近、私は塩をなめて暮らしています。いえ、別に失業したわけではありません。

血圧はこの30年くらい、上が120から130程度で、下が80から90くらいですから高血圧の心配はありません。それでも連日塩ばかりなめていると、そのうち血圧が上がってきそうで、最近はちょっと控えています。しかし、本当にここ一ヶ月ほど、何かにつけて塩をなめていました(汗)。

話はちょっと逸れますが、シャツやコートからボタンが取れたとき、大抵の人は、「ボタンが取れた」と言うでしょう。しかし、ボタン屋の主人は、ボタンがシャツから取れたとき、「あっ、シャツがはずれた」と叫んだそうです。

ふたつものがあるとき、その人がふたつのうち、どちらにウエイトをおいているかでこのような差が出てきます。ボタン屋の主人にとってはボタンが「主」であり、シャツが「従」なのです。

こんなジョークもありました。

「塩のおいしい食べ方を知っているか?」

「塩なんかどうするとおいしくなるんだ?」

「焼きたてのステーキにふりかけるんだ」

ローストビーフの専門店で、「鎌倉山」という店があります。直営のレストランもありますが、デパートによっては食品売場に入っているところもありますので、知っている人もいるでしょう。ここのローストビーフも大変おいしいのですが、それ以上に感激したのが、ここが出している「塩」「塩こしょう」です。上の写真がそれです。塩は沖縄で、昔ながらの製法で作り、それを食卓塩として使いやすいように、パラパラになるよう、乾燥させてあります。 (商品名「鎌倉山のシェフの塩」(350円)、「鎌倉山シェフの粗挽き塩こしょう」(550円))

この「塩」が無茶苦茶おいしいのです。塩だけなめても、はっきり味が違います。複数のミネラルが溶け出し、何とも微妙で複雑な味わいがあります。しょっぱいというのもその中にありますが、ただしょっぱいだけではありません。

「塩ってこんなにおいしかったの?」と叫んでしまうくらい、驚きました。

「塩こしょう」も同じです。先の塩と、胡椒を混ぜたものですが、これがまた絶妙なバランスで混ざっています。思いもしなかったほど、この「塩」や「塩こしょう」がおいしいのです。色々なものにふりかけて試していたら、先のジョークを思い出しました。気がついたら、私自身があれと同じことをやっていたのです。

この「塩」や「塩こしょう」を引き立てるのに、一番よい料理は何だろうと探していたら、確かに焼きたてのステーキにふりかけるのがベストです(笑)。

「塩」だけなら、おにぎりに使っても最高です。ここ十数年、おにぎりといえばコンビニのおにぎりが主流になり、すっかりあれに馴染んでしまっていました。いつの間にかあれがおにぎりの「定番の味」のようになっていますが、あれをおいしいと思ったことがなかったのです。

私が小学生の頃、祖母がよく作ってくれたおにぎりは、塩味のごはんに、ただ海苔を巻いただけであったり、梅干しが入っているだけのものでしたが、食べたとき、口の中でごはんと塩がまざった、複雑で繊細な味がしていました。

最近のコンビニで売っているおにぎりは、入っている具こそ何種類もありますが、大本の、「ごはんと塩」に関しては何の味もしないのです。具があるからあれで誤魔化されていますが、あのおにぎりから具を抜いてしまったら、まずくて食べられないような代物です。

昔のおにぎりは、炊き立てのご飯に、塩を手に付けて握ってくれただけのものでも十分おいしかったです。なぜこんなものでもおいしかったのか、長い間、疑問に思っていたことが、ひょんなことから謎が解けました。

要するに、塩が違ったのです。昔の塩は海水を天日に干して作っていました。そこには各種のミネラルが溶け込んでいました。最近の塩は、塩化ナトリウムに多少は何かを混ぜてあるのでしょうが、全然違います。海水には、NaCl以外にも、驚くほど様々なものが溶け込んでいます。

またまた話は逸れますが、30年ほど前、「海水魚ブーム」というのがありました。海にいる、色のきれいな魚を家庭で飼うのが流行ったのですが、淡水の熱帯魚を飼うより何倍も難しかったのです。何かの病気で死んだり、弱ったりして、長期間飼うことは困難でした。様々な薬も出ていましたが、そのような薬を入れてもあまり効きません。

ところが、魚が弱っているとき、人工で作った海水が1,000リットルあるのなら、そこに本物の海水を1リットル程度混ぜるだけで、それまで弱っていた魚が突然元気になるのです。千分の一、本物の海水を混ぜるだけで劇的な効果がありました。このことからでも、海水には大変微量ではあるけれど、生命にとって必要不可欠な何かが含まれていることがわかります。細かく分析すれば、数十種類の元素が含まれています。決して単純にNaClだけでできているわけではありません。

工業的に作られた塩の場合、単にしょっぱさを感じるだけです。そのため、そのようにして作られた塩をなめても、ただしょっぱいだけです。そこには何の広がりもありません。

今回、「鎌倉山」でローストビーフを買うとき、たまたま一緒に買った「塩」と「塩こしょう」がおいしかったのですが、「天日干し」を売り物にした塩はここ以外にも色々と出回っています。それらをすべて試してみたわけではありませんので、他のメーカーとの比較はできないのですが、もし近所で「鎌倉山」の「塩」と「塩こしょう」が手にはいるのなら、ぜひ一度試してみてください。きっと満足すると思います。

私は元来凝り性ですが、いくらおいしくて、人間にとって必要なものとは言え、ひと月も塩ばかりなめていたら体にもよくないでしょうね(汗)。そのため、「塩」は一服して、最近はイタリア製のバルサミコに凝っています。これは「酢」の一種です。そのうち、「酢のおいしい食べ方」をレポートするかも知れません。

追加:関西方面では、梅田の阪急百貨店の地下1F食品売場に「ローストビーフの鎌倉山」が入っていますので、そこで購入できます。


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