マジシャン別Very Best集

Nelson Downs

The Miser's Dream

 

pail

2001/1/26

最初に

たいていの人にとって、お金は最も関心のあるもののひとつでしょう。手を空中に伸ばすだけで指先にお金が出現するのを見せられたら、誰でも注目するはずです。「マイザーズ・ドリーム」というのはそのようなマジックです。「欲張りの夢」という意味です。

観客の年齢や国籍を問わず、誰に見せてもこれほどうけるマジックはありません。

このマジックは1800年代に、ロベール・ウーダンも演じています。当時は「コイン・キャッチング」「シャワー・オブ・マネー」「レイン・オブ・シルバー」などと呼ばれていました。ウーダンは「これ自体完璧である」と賞賛しています。確かに、現象のわかりやすさ、不思議さ、扱う素材など、総合的にみても、これほどよくできたマジックはないでしょう。昔なら、かぶっているシルクハットを脱いで容器の代わりにすればいつでも演じることができました。

現象

オペラハット燕尾服を着ているときは、かぶっているトップハットや折りたたみのできるオペラハットなどを左手に持ちます。右手を空中に差し出すと、指先に一枚の硬貨が出現しています。それを帽子の中に投げ入れます。また空中に手を伸ばすと、コインが一枚出現します。出現したコインは帽子の中に入れていき、何枚かたまったところで一度帽子からコインを全部取りだし、確認します。

観客がいる場合は観客の髪の毛や、襟の後ろなどからも取りだして見せます。とにかくありとあらゆるところからコインが無尽蔵に出現します。小さい子供に手伝ってもらうときは、くしゃみをしてもらうと、一度に数枚のコインが口から出てきたり、子供自身に空中からコインをつかみ取ってもらったりといった演出もあります。

出す枚数は決まっているわけではなく、数枚から数十枚まで、状況や準備でどのようにも変えることができます。容器も、昔はトップハットやオペラハットが一般的なものでしたが、いまではこのような帽子を見かけなくなりましたので、代わりに小さなバケツなどが使われています。シャンペンを冷やすペイルや、砕いた氷を入れる容器などが扱いにも手頃です。このような容器は金属製のため、コインを中に投げ入れたとき、音がはっきりと聞こえます。この音がイリュージョンに効果的に働くため、好都合です。

容器自体に特殊な仕掛けをほどこしたものも販売されていますが、何の仕掛けもないものでも演じることができます。

最後に

このマジック自体は昔からあったのですが、1895年にネルソン・ダウンズ(Nelson Downs)がステージで演じるようになってから、さらによく知られるようになりました。「マイザーズ・ドリーム」という名前もネルソン・ダウンズが付けたものです。

演出次第ではコメディにもなります。日本ではダーク大和氏が得意とされており、私も子供の頃から何度もテレビで見ましたが、不思議さと同時に、いつも大爆笑がおきていました。観客とのやり取りが絶妙なので、あれほどうけるのでしょう。 世界中をまわっている大道芸人も、これをレパートリーにしている人は少なくありません。

ネルソン・ダウンズは彼の考案したパームの技法「ダウンズ・パーム」がよく知られているため、テクニシャンと思われていますが、実際には指先の技術よりもショーマンシップの才能にたけていたマジシャンでした。いくらこのマジック自体にうける要素があるといっても、ただ出現させているだけでは同じ現象の繰り返しになり、飽きられてしまうはずです。

お金を空中から取り出すのであれば、お札のほうが高額のため、もっと効果的と思うかも知れませんが、これはあまり見かけません。手からトランプが次々と出現する「ミリオンカード」と同じように、お札を数枚扇形に広げたものを出現させることも可能なのに、実際にはほとんど見かけないのは、たいていの場合下品になってしまうからでしょう。

以前、どこかのオヤジが一万円札を200枚以上出現させる演技を見たことがありますが、やはりあまり感じのよいものではありませんでした。出現させたお札を全部客席にばらまくくらいのサービス精神があればまだしも、終わると同時に床に落ちたお札を拾い集め、カゴに入れて慌てて楽屋に駆け込む姿を見ていると、何とも貧乏くさくて見られたものではありません。

最後に一言

上の画像にあった帽子はテンヨーが今年(2001年)の初めに売り出したものです。専属ディーラーが常時いるところだけで販売されています。上から押すとぺしゃんこになるオペラハットですが、売り場では「トップハット」という名前で定価は6,000円になっています。

2、3ヶ月前、東京の帽子専門店で本物のオペラハットを見たら、8万円くらいで販売されていました。テンヨーのものはそれと比べると値段も十分の一以下ですから、作りはあまりよくありませんが、マジックの道具として使うにはこれで十分でしょう。ただスプリングのロックが少々あまいため、少し力を加えるだけで広がってしまいます。最初から写真のような状態で使うのであれば問題ありませんが、途中で広げたいときは少し注意が必要です。

追加:このマジックが解説されているもので、現在でも比較的入手しやすいものとしては『コインマジック事典』(高木重朗・二川滋夫編、東京堂出版 )があります。これは原理だけを解説したごく簡単なものです。また『コイン奇術入門』(二川滋夫著、東京堂出版)にもフレッド・カップスのルーティンを少し変えたものが紹介されています。


戻る 傑作選集 魔法都市入口へ

k-miwa@nisiq.net:Send Mail