最初に
このマジックは、ラスベガスでは高名なギャンブル研究家でもあり、マジシャンでもあったジョン・スカーニー(John Scarne:1903-1985)がよく演じていたものです。彼はこれで一般の人は勿論のこと、多くのギャンブラーやマジシャンを煙に巻いていました。このトリックのタイトルは、「1,000ドルのカードトリック」となっています。これにまつわるエピソードを紹介します。
ある夜、ラスベガスでは伝説にさえなっている有名なギャンブラー、ニック・ザ・グリーク（Nick "The Greek")と呼ばれる男が、取り巻きを連れてやってきました。スカーニーは彼らと同席したとき、ひとつ、トランプマジックを見せました。すると、ニック・ザ・グリークはこのマジックに大変驚いたのです。
スカーニーが彼らと別れて自分の部屋に戻ると、ニックから電話がありました。さっき見せてもらったトランプマジックのやり方を教えて欲しいと電話してきたのです。謝礼として、1,000ドル払うという条件でした。スカーニーはこれまでにも何度かこのような申し入れを受けていましたがすべて断ってきたのです。しかし、今回はニックの熱意に負けて教えることにしました。そして実際に彼から1,000ドル受け取り、教えたのです。
どうです？この話を聞くと、やってみたくなったでしょう。（笑）このトリック自体は、「セルフ・ワーキング・トリック」と呼ばれる範疇のもので、指先のテクニックは一切不要です。原理自体もスカーニーのオリジナルではありません。ちょっとした演出だけが彼のオリジナルなのですが、ラスベガスというギャンブルの場では、このようなものでも賭の対象になります。習えば、誰でも１５分ほど練習すれば即座に実演可能なトリックです。このようなものに1,000ドル払うなんて信じられないかもしれませんが、これは実話です。「タネの値段」というのはそういうものです。知りたい人にとっては、いくら出してでも知りたいのです。そしてこれを教えてもらったニック・ザ・グリークは、わずか数日で、これを使って1,000ドル以上稼いだそうです。（笑）
以下の「現象」を読むと、こんなものがおもしろいかなと思うかもしれませんが、一度実際にやってみてください。何百人というギャンブラーが、これで煙に巻かれていたのですから。
現象
トランプケースからトランプを取り出します。両手の間に広げてみると、誰かが使ったようです。しかも相当乱雑な人が使ったようで、トランプの表と裏がごちゃ混ぜになっています。
マジシャンはトランプを見ないで（または目をつぶったままで）、この裏と表が混ざっている一組のトランプを二つの山（「パケット」と言います）に分けて、それぞれの山に含まれている表向きのトランプの数を、二組とも一緒にすることができると宣言します。たとえば、二つに分けた山の一つには１１枚表向きのトランプが含まれているのであれば、もう一方の山にも１１枚表向きのトランプがあるということです。
必ずしも同じ枚数である必要はありません。一方の山にある表向きのトランプは、他方の山より２枚多いといった分け方もできます。
こう説明して、先ほどケースから取り出した表と裏が混ざっている一組を観客に手渡して、よく切り混ぜてもらいます。観客が満足するだけ切り混ぜたら、マジシャンは一組を受け取り、手をテーブルの下に入れます。観客もマジシャン自身もトランプが見えないようにします。マジシャンはバンダナかマフラーのようなもので、目隠しをしてもかまいません。
トランプを見ることなく、指先の感触だけで二組に分けて、テーブルの上に置きます。テーブルの下に手が入っているのは、２０秒から３０秒程度です。
今、テーブルの上には二組の山があります。そして、「右の山の表向きのトランプは、左の山の表向きのトランプより２枚多い」と宣言します。バーなどで見せているのなら、お酒を一杯賭けてもよいでしょう。
観客にそれぞれの山を取り上げ、表向きのトランプを数えてもらうと、宣言どおりになっています。
コメント
このマジックは、トランプが一組あればいつでも実演可能です。指先のテクニックは一切不要です。今までトランプマジックなどやったことがなくても大丈夫です。
最後に一言
このトリックは、1976年頃、スカーニーが出していた会員制の情報誌、"John Scarne's NEWSLETTER" に紹介されていたものです。当時、私はこれを定期購読していました。スカーニーが亡くなってもうだいぶたちますので、公開してもよいだろうと思い、紹介することにしました。このトリックで使われている原理そのものはずっと昔からあり、スカーニーのオリジナルではありません。
重要：このマジックをやってみたい方には教えます。「申し込み規定」をよくお読みいただいた上、私あてにメールを送ってください。
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