おもしろいマジック?

 

 

2000/1/31

「マジックはおもしろくなければならない」と言われます。これにはたいていの人は異存はないはずです。

しかしこれはそう簡単なことではありません。おもしろいマジックが少ないからではなく、何をおもしろいと思うかは、人それぞれだからです。

「おもしろい」という言葉自体、誤解を招きやすい言葉です。一般には、「おもしろい」という言葉から連想するイメージは「滑稽」ということでしょう。しかし、「おもしろい」という言葉は元来、もっと広義の言葉です。「おもむき、興趣がある」といったことも含みます。

どのような分野の芸事であっても、絶対的、客観的、普遍的に「おもしろいもの」などこの世にありません。ある人にとってはおもしろいこと、心をひかれることであっても、別の人にとってはまったく何の関心もなければ、全然おもしろくもないといったことはいくらでもあります。小説、映画、音楽、絵画、何でもそうです。しかし人はつい自分の好みを「絶対」と思ってしまいます。自分がおもしろいと思っているもの、自分の心を動かされるものに対しては価値を認めたくなりますが、自分以外の人がそれをどう評価するかはわかりません。

エンターテインメントとしてマジックを演じるのであれば、思いっきり不思議さを強調したものでも、デビッド・カッパーフィールドの"Snow"のように情感に訴えるものであっても、また徹底したナンセンスなものであっても、それが演者のキャラクターに合っているのなら、どれも立派に芸として成立します。

自分のキャラクターがどのようなもので、どのようなタイプの観客に見せるとき一番演じやすいのか、自分自身でわかっていることが重要です。

アマチュアの場合、金銭との引き替えで芸を見せる必要はありません。気の進まない相手の前や、気分の乗らない状況で、無理してマジックを見せなくてもよいのです。また観客にうけるために、自分の尊厳をおとしめてまで笑いをとる必要もありません。アマチュアとしてのプライドを持って、自分のキャラクターで普通に演じればよいのです。プロとしてやって行くのなら営業用のキャラクターも必要ですが、アマチュアの場合、自分のキャラクターをそのまま出せている人の演技のほうが安心して見ていられます。

魔法都市の住人 マジェイア


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