魔法都市日記
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2002年7月頃


ミッキーの「魔法使いの弟子」
「魔法使いの弟子」

7月下旬から学校は夏休みに入る。例年のこととはいえ、この時期は夏期講習の準備に忙しい。始まってしまうとそれほどでもないのだが、それまで細々とした雑用があり、時間を取られてしまう。それもやっと落ち着いた。


某月某日

昨年の暮れ頃から、テレビでマジックの番組があっても、ひとつふたつの例外を除いて、まったく見ていない。理由は言うまでもなく、ここ1、2年、マジックの番組には必ずといってよいほど種明かしが含まれているからである。私だけでなく、マジックを自分ではやらないが見るのは好きという友人や知人のなかにも、マジック関係のテレビ番組を見なくなった人が増えている。

私に限れば、年に1本か2本、良質のマジック番組があればそれで十分である。最近は種明かし番組の視聴率が落ちてきたのだろうか、番組自体も減ってきたようだ。種明かしに関してのメールも少なくなっている。種明かしのあるなしにかかわらず、マジック関係の番組はできるだけ少ない方が私はうれしい。マジックなんて、めったに見られないからおもしろいのに、毎週テレビでやっているような状況は、マジック本来の楽しみまでなくしてしまう。

某月某日

1997年7月11日に開設した「マジェイアのカフェ&魔法都市案内」が、この7月で丸5年過ぎた。

「10年ひと昔」という言葉がある。インターネットの世界では変化のスパンが短いため、2、3年前の出来事でもずいぶん昔のことのように思えてしまう。その中でよく5年も続けられたものだと自分でも驚いている。これはひとえに多くの方々のおかげである。励ましや感想、さまざまな情報を送っていただいている皆さんのおかげで続けられたようなものである。私一人の力では、とてもこれほど長くは続けられなかった。あらためて皆様にあつくお礼申し上げる次第である。

これまでにも何度も書いていることだが、当初私がこのサイトを開いた目的は、自分自身の備忘録としてのつもりであった。歳ともに記憶が薄れ、もう数年もすれば2、30年前よくやっていたマジックなど、きれいさっぱり頭の中から消えてしまいそうな予感があった。20数年前であればいつでもできるカードマジックだけでも数百はあったはずである。それが今ではせいぜい20くらいになっている。勿論数などどうでもよく、忘れてしまったものは忘れる程度のものであったに過ぎないからなのだが、せめて記録としてだけでも残しておきたかった。昔、実際にやっていたマジックに限れば、古いノートを引っ張り出せばわかる。しかしマジックの周辺に関することは、何らかの形で残しておかないと、時間と共に記憶から薄れていく。このようなものが消えたところで、困ることはなにもないのだが、若い人や、マジックを始めたばかりの方とお会いしたとき、アドバイスをするにしても、一人一人に同じことを伝えるのは、限られた時間の中では言い尽くせない。WEB SITEに公開しておくと、いつでも好きなときに読んでいただけるため、そのあたりの問題がひとつ解消できると思ったから、というのもある。

マジックについて私の好きなものを並べてあるだけなのに、いつの間にか量だけはかなりのものになっている。そのようなものでも、これだけ集まるとなにがしかの格好がついている。これからマジックを始めようとしている方で、私と好みや興味の対象が近い人には、ぜひ知っておいていただきたいと思っていたことは、だいたい伝えられたようが気がしている。

当初は売りネタも新旧織りまぜて頻繁に紹介していたが、最近、新しいマジックや売りネタはほとんど取りあげていない。これにはいくつかの理由がある。ひとつは「魔法都市案内」がマジック関係のサイトとしては予想外に多くの方に読んでいただけるようになり、少なからぬ影響力を持つようになってしまったことと関係している。私がおもしろいと書いただけで、その商品が突然品切れになるほど売れたり、問い合わせの電話がショップに何件も掛かってきたりするという話をうかがうと、気軽に書けなくなってしまった。

マジックにはいろいろな楽しみ方がある。趣味でやっているのであるから、その人が楽しいと思うものを好きなだけやればよい。私自身も、自分の好きなマジックや本、ビデオ、その他諸々、私の好みに合致したものを公開しているにすぎない。私が紹介しただけで、ある商品が突然売れたり、品切れになるという状況は、私のあずかり知らぬところでおこっていることとはいえ、私の望むところではない。そのようなことで多くの人を振り回すのは本意ではないのである。

今後は新ネタをまったく紹介しないというわけではなく、私がほんとに気に入ったものがあればこれからも取りあげるつもりである。

仕事のこともあり、これからは最初の2、3年のように、週に数回のペースで更新を続けていくのは無理だろう。今後はすこしゆっくりとしたペースで、趣味としてのマジックを楽しみながら「魔法都市案内」を続けて行きたいと思っている。書いている側からすると、読んでくださっている人がどのあたりに興味を持ってくださっているのか、実際のところわからない。それでも何か興味を持っていただけるものや、共感していただけるのものがあるのなら、それだけでうれしい。

これからマジック関係のサイトを作りたいと思っている人がいるなら、量や更新頻度のことなど気にせず、マジックに対する思いの丈を綴って欲しい。その人にしか書けない何かが含まれているのなら、量の多寡に関わらず、存在価値は十分あるものだ。

「魔法都市案内」全般の改良点としては、検索機能をつけたいと思っている。CROSS OVERのyuukiさんにはいろいろとアドバイスをいただき、簡単なものから本格的なもので、いつでも作れるようにはなっている。しかし実際に作るとなると、ある程度まとまった時間が取れるときでないと無理なので、いまだに手つかずになっている。これだけはぜひつけたいと思っている。



7月11日の朝、いつものようにコンピューターの電源を入れてメールをチェックしたあと、毎朝訪れている5、6カ所のサイトを順に廻っていた。突然「魔法都市案内」に戻ったのかと思うほど、よく似たサイトが現れた。私は一瞬、ハッカーにサイトを乗っ取られ、書き換えられたのかと思った。色づかいやデザインが「魔法都市案内」とそっくりである。少し読むと、「奇術バカ一代」のサイト、たなかさんが5周年のお祝いに凝ったことをしてくださっているとわかった。

タイトルの「マジェイアの魔法都市案内」が、田中さんのサイトでは「たなかまさのぶの魔法ドヤ案内」になっていた。いただくメールの中には、ときどき「魔界都市案内」や「魔術都市案内」となっているものがある。しかし「魔法ドヤ案内」は初めてであった。大変な労作なので、見損なった方はぜひ一度ご覧いただきたい。

「たなかまさのぶの魔法ドヤ案内」を見る。−−>Yes

私のサイトは一見整然としているように見えるらしい。そのせいか、実態を知らない人は私生活もさぞかしきちんとしていると思っているようだが、実際はとんでもない。私の部屋など、まさに「魔法ドヤ案内」がピッタリの状態になっている。最近は月に一度くらいの割で大掃除をするため、以前ほどひどくはないが、少しでも油断をすると1週間でドヤ状態になってしまう。掃除に関しては、私の部屋は家人もオフリミットなので自分でするしかない。たなかさんはうちのこんな状態を知って、「ドヤ案内」という名前にしたのかと汗をかいてしまった。

それはともかく、田中さんのサービス精神には以前から敬服している。今年の4月1日も、飛びきり笑える企画があった。エイプリルフールの日に、Yahooニュースとそっくりのデザインでウソの新聞記事を作り、みんなを引っかけていた。あれにひっかかった人は大勢いたはずである。私もいっしょになって遊ばせてもらい、ウソの「お知らせ」を作った。この「お知らせ」を読んで、本気にした人もだいぶいたようである。

エイプリルフールの記事も、今回の5周年記念の企画も、わずか数日で消えてしまうものなのに、労を惜しまず、本気で取り組むサービス精神には敬服するしかない。マジックに限らず、すぐに消えてしまう「一発ギャグ」のようなもののためにでも、周到な準備をするそのサービス精神は芸人の鑑であると思っている。

某月某日

神戸のJR三ノ宮駅から山側に歩いて5分ほどのところに、ちょっとかわったレストランができたと教えてもらった。「魔法」が見られるということなので、早速、興味津々で行ってみた。店の名前は「アラビアンロック」といい、創作料理と、全180席がすべて個室というのを売り物にしている。

アラビアンロック

店は毎日夕方の5時にオープンするため、会社帰りのOLやサラリーマン風の人が圧倒的に多い。個室になっているので、居酒屋よりくつろげる。数名で行って騒いだり、カップルで落ち着いて食事をしたりするにはよいかも知れない。料金は普通の居酒屋とたいして変わらない。

1階の入り口には、魔法のランプが置いてある。ランプを撫でて、「ひらけゴマ」と叫ぶと入り口が開いた。エレベーターで上がると、アラビア風の薄い衣装を身にまとった女性が迎えてくれる。室内は薄暗く、全体がアラビアンナイトの世界のような雰囲気になっている。靴は脱いで備え付けの袋に入れ、自分で座席まで持っていく。

係の女性からたずねられた。

「3日以内に、誕生日の方はいらっしゃいますか?」

何て答えようか、ちょっと戸惑った。しかしだれもいないので正直に「いない」と答えると、少し後ろに下がるように言われた。その瞬間、女性が手に持っているランプの先から火のかたまりが飛び出したように見えた。これで「魔法の精」が出現したそうである。不意をつかれて驚いたが、実際は、マジックではおなじみのフラッシュコットンを使っている。薄暗いところで火をつけると、予想外に大きな火に見えるため、フラッシュコットンを知らない一般の人は、大抵「オーッ!」と叫んで、うしろにのけぞっていた。これで召使いが現れて、今日一日、世話をしてくれるのだそうだ。とはいえ、どこにそんな召使いがいるのだろう。

もし誕生日の人がいれば、何か特別なサービスがあるのかも知れないが、詳細は不明である。ただし誕生日を証明できる何かを提示しないとならないようなので、嘘をついてもダメかも知れない。

席は人数に応じて、店の人が案内してくれる。掘りごたつのようになっている穴蔵タイプの部屋か、普通のテーブル席にするか、最初にたずねられる。テーブル席は薄い布で仕切ってあるだけなので、落ち着くのが目的なら、穴蔵のほうがよいだろう。

席まで案内してもらうと、座席の入り口のところに、男の人が顔を隠すように伏せたまま、しゃがみ込んでいた。どうやらこの人が先ほどランプから出現した魔法の精のようだ。簡単な自己紹介があったあと、注文を取ってくれる。

魔法のランプ

アラビアンロックは大阪の心斎橋にもチェーン店があり、そこではショータイムがあるらしい。神戸店にはそのサービスはないが、料理によってはテーブルでマジックのようなことをやってくれるものがある。このサービスが付いている料理には、メニューにもそれらしい名前が書いてある。もしこれが目当てなら、係の人に食事を注文するとき確かめてみたほうがよい。私は二つほど選んでみた。

確か、サイコロステーキには「炎のイリュージョン」という名前がついていた。もうひとつは名前は忘れたが、蛸のフライにもそれらしい名前が付いていた。

数点頼んだうちのひとつ、「蛸のフライ」が運ばれてきた。皿のとなりには直径4センチ、深さ3センチくらいの、金属製の容器がある。これには白い綿が詰まっている。

「アブラカダブラ」という呪文を唱えさせられ、それにあわせて係の人が火をつけると、綿は一瞬にして燃え上がり、跡形もなく消えてしまった。容器の底には塩とコショウが出現していた。揚げ物につける塩とコショウを出現させるだけなのだが、フラッシュコットンに馴染みがないと、これだけでマジックになるようだ。

数日前に行った知人の話では、空(から)の容器から、塩とコショウが出現したということであった。しかし実際は、最初に容器の中はあらためていない。マジシャンではない一般の人に、その人が見たマジックを後日言葉で説明してもらうと、大抵ものすごく不思議なものになっている。そんなことはとても不可能だと思うようものになっている。これはマジックをやっている人間とは見るポイントが違うため仕方がない。これもそうなのだろう。容器は最初、空であったと自分で思いこんでしまう。

このあとに出てきた「炎のイリュージョン」は、サイコロステーキである。係員が肉の上にブランデーのようなアルコールを掛け、「アラビアンロック」と呪文を唱えてから火をつけた。店に入ってからこれまで、わずかの間に2回もフラッシュコットンを使ったものを見せられているため、これもまた火が吹き出すのかと思った。その後サイコロステーキが一枚の大きなサーロインステーキに変われば、りっぱなイリュージョンになる。期待したが、そうはならなかった。サイコロステーキはただ薄青い炎を出して燃えているだけであった。この火は10秒程度で消えた。サイコロステーキを燃やすだけで「イリュージョン」はないだろ。

他にもまだこのような「イリュージョン」付きの料理が2、3あるようだが、シャレで注文するのならともかく、これを目当てに行くのはやめたほうがよい。間違いなく期待はずれに終わる。料理自体は無国籍料理といったもので、味は悪くはないのだが、この料理を食べるために、わざわざ行きたいと思うような店ではない。数名で行って、周りを気にせずに遊ぶにはよいかも知れない。

アラビアン・ロック神戸店
兵庫県神戸市中央区加納町4-5-2 ( 3F )
電話:078-327-7757

某月某日

しばらく阪神甲子園球場で夜のゲームを見ていない。昼間の試合なら、高校野球を見るため、何度か行っている。しかしこの前、甲子園球場でナイトゲームを見たのは、タイガースが優勝したとき、1985年のことかもしれない。もしそうなら17年も行っていないことになる。

私がはじめてナイトゲームを見たのは10歳の頃であった。そのときのことはいまもよく覚えている。父の仕事の都合であったのか、それともわざと暗くなってから連れて行きたかったのか、とにかく球場に着いたときには、外はだいぶ暗くなっていた。すぐに入り口をくぐり、薄暗い通路を進んで階段を上がって行くと、グランドが見えるところまで出た。このとき目に飛び込んできた光景は、今でも鮮烈な記憶として残っている。別世界に着いたのかと思うほど、視界に入るすべてのものが輝いていた。

甲子園球場の照明はカクテル光線と呼ばれている。このライトのせいなのだろう、普段見慣れているはずのものが、すべて初めて見るもののように思えた。選手のユニフォーム、ボール、グランドに引かれている白線は一層白く、芝生の緑はグリーンのペンキを流したかのように鮮やかに輝いていた。

私は座席に着くのも忘れ、しばらくその場で立ちつくしていた。それは今まで私が経験したどんな場面よりも強烈で、美しい世界であった。

こんなことを思い出していると、無性に球場に行きたくなってきた。時間を調べると、ナイターの開始時間は6時になっている。私が子供の頃は、開始時間は6時半か7時であったはずである。6時では早すぎる。とくに6月から8月くらいの間は、6時といえばまだ陽も高い。これではカクテル光線に照らされた球場の中に一歩入ったときの、あの感動は味わえないだろう。辺りは暗く、その中にグランドだけがスポットライトを浴びたように浮かび上がるから、いつもとは違う感動がある。

今回も時間を遅らせて、少し暗くなってから出かけるつもりにしていたのだが、チケットを買わなければならないことに気がついた。昔は父に手配をしてもらっていたので、チケットのことはすっかり忘れていた。

今年の4月、5月は、めずらしくタイガースが勝ちまくっていたので、その頃は前売り券はすべて売り切れ、当日券も相当早くから並ばないことには手に入らない状態であった。6月に入って日本中がサッカーのW杯に熱中しているとき、阪神はいつの間にか首位から転げ落ちていた。7月は3位、4位あたりをうろついていたので、もう球場は空いているのかと思っていたら、それでも連日3万人以上は入っている。特に一塁側、外野のライト側は今でもほぼ満席になっている。

インターネットでチケットの発売時間を確認すると、午後4時からであった。これは早すぎる。もう少し暗くなってから着くようにしたかったが、遅くから行って、当日券が売り切れていてもいやなので、3時半ごろには甲子園につくように家を出た。タクシーで行けばうちから20分くらいで着く。

行ったのは木曜日で、しかも雨が降りそうな空模様であった。天気が悪いので、混むこともないだろうと思いながら一塁側、イエローシートのチケットを売っている窓口に行ってみる。すでに列が出来ていたが、数十人程度のことなので、これなら間違いなく買える。

甲子園球場はキャッチャーの真後ろを中心にグリーンシートと呼ばれる席がある。ここは年間契約のため、通常は手に入らない。そこから少し一塁側に寄ったところが「一塁特別指定席」、通称イエローシートがあり、さらにアルプス席、外野席と続いている。屋根はグリーンシートとイエローシートの半分くらいまである。雨が降っても濡れない席に座るためにはイエローシートで、屋根のあるところであればよいのだが、そのような席が買えるのかどうかわからない。

発売開始まであと10分ほどになったとき、ダフ屋のおばちゃんが寄ってきた。

「にいちゃん、一塁側の特別指定で、グリーンのすぐ隣のええ席があるで。ここやったら雨が降っても濡れへんし、買うてーな。3500円でええから」

「にいちゃん」と呼びかけてくるのが向こうも商売なのだろう、気を使っている。

それはともかく、他にも並んでいる人たちがいるのに、なんでわざわざ私のところにこっそり寄ってきたのかよくわからない。料金も正規のものと同じで、席はグリーンシートのすぐそば、ここなら雨が降っても絶対濡れないというおばさんの文句に、どうしようかと迷った。これまで列に並んで正規のチケットを買ったこともないのだから、ダフ屋から買ったことも、これまで一度もない。思案していると、いっしょにいた友人がおばさんにたずねた。

「このチケット、本物?」
「あたりまえやがな、どないしてこんなもん、わてが作れんねん。そのほうがたこつくは!」

とは言っても、このチケットなら今のカラープリンターなら作れそうである。

入場券

声を掛けてきたのが、ガラの悪そうなおやじならすぐに断ったと思うのだが、人のよさそうなおばさん、というより60代後半の、おばあちゃんといってもよい人であったこともあり、買うことにした。

チケットが手に入ったので、列からはずれて久しぶりに球場の周りを散策していると、さきほどのおばさんとばったり会った。

「こんな天気やから、もし中止になったら払い戻すから、あそこの店の前に来てな」

そうか。本当ならダフ屋から買ったチケットは、企業が年間契約で買っているものなので、払い戻しはできない。しかしそれではあとでトラブルの元になるため、このあたりのアフターケアはダフ屋にも出来上がっているようだ。これくらいしないことには、長年、この種の商売はできないのだろう。ガードマンや警察官も、見て見ぬふりをしているのは、客との間にトラブルがないのを知っているからかもしれない。

結論からら言えば、今回に限れば、このおばさんから買ったのは大正解であった。試合前にも一雨あり、途中からでもずっと雨が降り続いていた。もしこれが正規に買ったチケットなら、屋根からはみ出した席になっていた可能性が高い。いくら暑い季節とはいえ、ずぶぬれのまま2時間以上も座ったままでゲームを見るのは勘弁して欲しい。

久しぶりに甲子園に来て驚いたのは、観客の行儀の良さである。雨が降り続いているのに、屋根のないアルプス席やライト側外野席は誰も傘をささず、しかも終盤、1対5で負けているのに、一人も帰らない。昔は7回が終わって3点差以上で負けていれば、ぞろぞろと帰る客が多かったのに、これはいったいどういうことなのだろう。雨にうたれながら整然と応援し続ける姿を見ていると、行儀がよいというより、タイガースファンは、みんな自虐的な人なのか、それとも何かの修業でもしているつもりなのかと思ってしまう。確かに多少マゾヒスティックな部分がないと、タイガースファンなんかやってられない。

ジェット風船

7回の表の途中から、観客がジェット風船をふくらませ始めた。この回が終わったらいっせいに飛ばすのが、今ではすっかり恒例になっている。これもここ十数年の間に始まったもので、昔はこんなものはなかった。1本50円の風船を大抵数本買うから、これが隣や前後、辺り一面でふくらむと、風船に囲まれてしまう。バルーンの芸で使うペンシル形のものよりだいぶ太いので、これが耳元で割れたらと思うと恐ろしい。私も6本入りの袋を買って、飛ばしてきた。

話が前後するが、今回、試合開始までに時間があったので食堂に行き、甲子園名物、「阪神カレー」を食べてきた。今ではレトルトパックにもなり、阪神百貨店やタイガースショップでも販売されているので、このカレーも家で手軽に食べられる。しかしこのようなものは現場で食べるのが一番うまい。私はカツカレーを注文した。子供の頃はこれがむちゃくちゃうまいと思っていたのに、久しぶりに食べると期待はずれであった。確かに昔の味ではあるのだが、小麦粉でとろみをつけたタイプのものなので、最近のインドカレーや、専門店のカレーを食べつけていると、このとろみが糊のようで、舌にまとわりついて、どうにも気になる。

昔は食堂はもっと狭く、カウンター席で立って食べていたように思うのだが、今ではずいぶん広くなり、メニューの数も増えている。

試合は負けてしまった。「六甲おろし」も歌えないため、不完全燃焼ではあったが、ひさしぶりのナイターは十分楽しめた。

某月某日

梅田のHEP HALLで、松尾貴史さんプロデュースの「マジック寄席」が開催された。

角田町大魔術團第9回HEP寄席 松尾貴史プロデュース
「角田町大魔術團」 しょのいち

日時:平成14年7月22日(月) 開演19:30
会場:大阪梅田・HEP FIVE 8階(HEP HALL)
料金:前売り 2000円、当日2500円

「角田町(かくたちょう)」というのは、HEP FIVEのある場所の地名である。

出演者は松尾貴史さんの他に、ナポレオンズのお二人とマギー審司さんであった。ナポレオンズのお二人は芸歴も古く、テレビや実際のステージを何度か見ているため、だいたい予想はつくのだが、マギー審司さんに関しては詳しいことは知らない。最近テレビや雑誌でときどきお見かけするようになっている。若い女性の間でも人気があると聞いているので、ぜひ一度生のステージを見たいと思っていた。

会場となったHEP HALLは収容人員約200名の比較的小さなホールとはいえ、ほぼ満席になっていた。7割くらいは若い女性客であり、あきらかにマジックのマニアと思われるは人は1割もいなかったはずである。観客は出演者の誰を目当てに来ているのかよくわからなかったのだが、反応を観察していると、松尾さんの追っかけという雰囲気の人が全体の半分、残りをマギー審司さんとナポレオンズで分け合っているくらいの割合かも知れない。

マギー審司さんをテレビで1、2度見た限りでは、師匠であるマギー司郎さんと芸風はよく似ている。私が以前から不思議でしかたがなかったのは、マギー司郎さんの弟子になりたいという人がいるということである。誤解のないよう最初に断っておくが、これはマギー司郎さんが芸人としてつまらないからというのではない。そうではなく、あのような芸は教えてもらってどうにかなるようなものではないと思うからである。実際、審司さんも言っていたことだが、師匠にマジックを教えて欲しいと頼むと、そのタネを売っているマジックショップの電話番号を教えてくれたそうである。確かにマジックに関してはそれで十分である。

芸の世界だけではなく、何かの職人が技術を磨くために、師匠のもとに弟子入りして、修業をするというのはよくある。しかしゴッホやピカソのところに絵を教えて欲しいと弟子入りを志願する者や、ベートーベンのところに作曲を習いに行く人はいないだろう。マギー司郎さんに弟子入り志願をするというのは、これと同じような意味で無謀なことのように思っていた。きっと側にいて、空気だけでもいっしょに吸えたらそれで満足なくらい、師匠のことが好きな人たちなのだろう。

芸の技術的な面に関してだけであれば、大学の奇術部が毎年秋に開いている発表会を見ればわかる。部員の大半は大学に入るまでマジックなどやったこともない人たちである。それが1、2年もすれば舞台に立ち、発表会では華麗な技を披露してくれる。マジックを20年、30年とやっている人が数多くいるアマチュアのマジッククラブよりも、ずっとレベルの高い技を見せてくれる。発表会用のマジックとはいえ、ごく短期間に、マジシャンとしてステージに立てるレベルになるのは驚嘆に値する。

しかし大学生が短期間にマジシャンとして舞台に立てるようになるのは、何かの職人が技術を磨き、言われたことができるようになるようなものだろう。テクニックだけは時間を掛けて練習すれば何とかなる。師匠からこれを作れといわれたら、商品として売れるだけのものは作れるくらいにはなる。しかし自分の力でオリジナル作品を作り出せるかどうかは才能に寄るところが大きい。努力だけではどうしても越えられないものがある。

音楽に合わせて、サイレントで演じるスライハンド中心のマジックや、大がかりな舞台装置を使って演じるマジックであれば、ある程度の練習をつめば何とか格好はつく。ところが、マギー司朗さんのような芸は、一人では練習さえできない。実際に観客の前に立ち、数限りない失敗や、観客のつめたい視線、「さっさと引っ込め」という罵声が飛ぶ中で、必死でなんとかその場を作っていくことでしか、自分を鍛える手だてはない。マイナスの極限状況を利用して、逆にそれをプラスに変えてしまえるようになるのは修羅場をくぐってきた者にしかできない。お稽古だけではどうにもならない。

とにかく、マギー司郎さんの芸は真似しようにもできないと思うのに、審司さんに限れば、師匠のよいところをうまく取っている。師匠と体質が近いのかも知れない。

1999年10月、小野坂東さんの主催による「世界マジック・フレンド・コンベンション」があった。私は行けなかったが、参加した友人の話では、この最終日のディナーショーに、マギー司郎さんがゲスト出演したそうである。これにはFISMで一位になった峯村健二氏やマックス・メイビン氏、マイケル・ウエバー氏他、国内外のトップマジシャンが出演していた。マギー司郎さんのマジックといえば、不思議さだけで評価するなら限りなくゼロに近い。しかしこのとき、すべての出演者の中で一番うけていたのがマギー司郎さんであったそうである。数百名いる観客の大半はマニアともいってもよい人ばかりである。マギー司朗さんの演じるマジックであれば、観客のほうがむしろうまいと思える人がそろっている。このような客の前で、例の調子でマジックをやって、それでも一番うけていたそうだから、これこそが芸の力なのだろう。小野坂さんとしてはマジック愛好家に、手先の技術だけではない何かを再認識してもらうために、マギー司郎さんに出演してもらったのかも知れない。

話をマギー審司さんに戻すと、見ていてホッとする芸である。普通のマジックは、観客にはできないことをやってみせるから芸になるのだが、このことが観客に対しての挑戦になってしまうこともある。ヘタをすると観客の反感を買うことも少なくない。マギー審司さんのような芸はそのような意味ではむしろ観客に優越感を持たせるため安全なのだが、ただこのタイプの芸は、一歩間違えると、救いようのないものになってしまう。そのあたりのバランスが大変難しい。幸いにも、マギー審司さんの芸は師匠同様、安心して見ていられる。まだ若いのに、このような雰囲気が出せるのは天性のものかも知れない。

今回のプロデュース役、松尾貴史さんといえば最近では超能力や宇宙人などの番組があれば、必ずと言ってよいくらい、反対派の代表としてお見かけする。デビュー当時は「まがい物」とか「安っぽいもの」という意味の「キッチュ」が芸名であった。このような名前からだけでも、ある種の毒と繊細さ、シャイな部分を併せ持った人であることがわかる。また「重箱の隅を楊枝でほじくる」という例えを地で行くような性格に加えて、それを理論的に展開できる能力もある人なので、超能力関係の番組などには重宝されるのはもっともなことだと思っている。

現在、松尾さんはマジックに関してもマニアといってよいほど詳しい。スプーン曲げに関しては、「清田君バージョン」「ユリ・ゲラーバージョン」「Mr.マリックバージョン」他、いくつも会場で実演していただいた。私が「オンラインマジック教室」で解説しているスプーン曲げは昔からあるものだが、あれを松尾さんがテレビで演じているのを見て、このマジックのおもしろさを再認識した次第であった。ほんとうにうまい。

全体で約1時間半のステージは、最初、松尾貴史さんの挨拶とマジックで始まり、そのあとマギー審司さん、もう一度松尾さんのスプーン曲げと即席マジックの解説があった。 さらにこのあと、ナポレオンズのマジックショーがあり、最後は主演者4人による対談があった。

松尾さんもナポレオンズのお二人も超能力関係の番組にはよく出演されているので、裏話などをまじえた話は大変興味いものであった。

パンフレットには小さな文字で"THE BIG MAGIC SHOW"とある。シャレかと思ったが、見終わったときには、十分マジックを堪能したという気分になっていた。数もそれほど多くはなく、タネがわからないほど不思議なマジックもほとんどないのに、マジックを見て、楽しめたという雰囲気になるのだからそのことのほうが不思議であった。腹八分目くらいが、見る側も余裕を持って楽しめるのかもしれない。

今回、「しょのいち」となっていたから、「しょのに」がまた開催されることを期待している。

某月某日

これまで使っていたWindows98を、やっとXPに換えた。とはいえ、XPを導入するのはこれがはじめてではない。昨年の11月頃、発売されるとすぐに購入して、一度インストールをしている。このとき事前のチェックで、普段使っているソフトのなかで、XPでは動かないものが5種類ほどあることがわかった。周辺機器もスキャナー他、動かないものがいくつかある。しかし大半のものはメーカーのバージョンアップを待つか、ドライバーの入れ替えで何とかなりそうであった。最後まで引っ掛かったのはTA(ターミナルアダプター)である。これが最大のネックであった。ISDNのTAはもう4、5年使っている。古いタイプのものなので、XPにするとこれの付属ソフトが動かない。TAも買い換えの時期かと思い、この機会にNTTから出ている最新のTAや、他のメーカーが出しているルーターも購入して接続してみた。するとインターネットは問題なくできるのだが、今度は家の電話がおかしくなる。

家の電話配線は、途中から分岐させた親子電話など、複雑な配線になっているようである。NTTのサポートに問い合わせてみると、最新のTAでは電気容量が不足するらしい。おかしな現象としては、電話が掛かってきたとき、2階にある電話機の呼び出し音は、ベルが風邪をひいているのかと思うようなかすれた音になり、1階の電話機は何かにせっつかれているかのように、「リンリンリンリン」の間隔が短い。最初は原因がわからず、設定をいろいろと変えてみたがどうしても以前のようにはならなかった。

容量の不足という話を聞いて思い出した。数年前、ISDNに変えて、はじめてTAをつけるとき、NTTに依頼した。工事に来てくれた人が2階の壁に付いている「増設電鈴」というベルを見て驚いていた。40代後半くらいの人なのに、このベルは若い頃、教科書の写真で見た記憶はあるが、現物を見るのはこれが初めてだと言っていた。うちの家は博物館並みか?

このベルは今のように、一般家庭に電話機が何台もなかった頃の産物である。電話機は1階にあるため、2階にいるときに下で鳴っても呼び出し音が聞こえない。2階でもわかるようにするために、ベルだけが壁に付いている。これで1階と2階、同時に呼び出し音だけは鳴る。今では子機もあるため、このベルはなくても困らないのだが、それでもまだ複雑な配線になっているようで、とにかく新しいTAではうまく作動しない。

新しいTAと古いTAを比べても、最近のものは昔の半分くらいの大きさしかないため、ずいぶんきゃしゃに見える。冷蔵庫でも洗濯機でも、初期のものはとにかく頑丈に出来ていた。TAも、今まで使っていた古いものでもまったく問題はないのに、XPを使うために、TAにまで影響が出るとは思ってもいなかった。このため、また98に戻し、そのまま使い続けていた。しかし新しいコンピューターを購入するにしても、これからはXPで動かないとやっかいである。電話工事を頼んで、「増設電鈴」は取り外すことにした。工事をしなくてもよい部分だけは自分で接続をはずして新しいTAをつないでみた。まだ少しおかしいが、実用上は問題ないため、しばらくこのまま使うことにする。

Windowsも3.1、95、98、XPと変わってきた。確かに安定し、使いやすくはなっているが、OSを変えるだけで、コンピューター本体や周辺機器まで変えないことには十分使えないことも多い。今回、XPにしただけで、電話配線まで触らなくてはならないのだから、マイクロソフトが新しいOSを売り出すたびに、余計な出費が出てしまい、頭が痛い。

某月某日

7月は仕事を兼ねて5日間ほど東京にいた。暑いこともあり、宿泊先のホテルの周辺、銀座界隈で買い物をしたくらいで、ほとんど外には出ていない。

それにしても昼間の銀座は暑い。木陰もなく、それにくわえて冷房用の熱気がまざり、とても歩いてなんかいられない。しかしどうしても欲しい鞄があったので、銀座6丁目まで、午後1時ごろの一番暑いときに出かけた。場所がわかってしまえば、宿泊先のホテルから3、4分で着く場所なのに、一筋まちがったため辺りをぐるぐると廻り、見つけるまで30分ほどかかってしまった。

行ったのはナイロン製の鞄専門店、「ビジー・ビーバー(Busy Beaver)」という店である。ナイロンのため、ビジネス用には向かないが、普段持ったり、旅行のときには大変重宝する。

ここの製品がすぐれているのは、ナイロン製なのに修理までしてもらえる点である。高価な革の鞄であれば、修理をしてくれるところもあるが、ナイロン製で、しかも値段が1万円台から2万円台くらいなのに、修理を引き受けるということは、自分のところの製品によほど自信があるからだろう。修理費も大変リーズナブルである。しばらく使っていると、古くなったからといって、すぐには捨てられないほど愛着がわいてくる。

使用されているナイロンは、今回私が購入した鞄のひとつは防弾チョッキに使われているものと同じ素材なのだそうである。縫製もしっかりしているので、これなら少々乱暴に扱ってもびくともしないくらいの安心感がある。

ひとつひとつの製品もよくできているのだが、私がこの店の鞄を気に入っている最大の理由は、鞄に対するコンセプトが理にかなっているからである。鞄には完成品はないということを店がよくわかっている。鞄はどんなに高価なものであっても、「帯に短し、たすきに長し」となるのは避けられない。誰にとってもこれでベストいうようなものは作れない。それがわかっているため、使う人の目的に応じてどうにでもなるよう、付属品が充実している。デジカメや携帯電話、ペットボトル、眼鏡、財布など、鞄に入れたい物に合わせて、あとからオプションで追加できる。夏場などペットボトルを持って行きたいこともある。鞄にそのまま入れると液体がもれて、他の物が濡れる心配があるが、外にぶらさげて、少しの間なら保温もできるケースがあるので、これなど夏場は重宝している。

今回、一番欲しかったのは、旅行のとき、現地で出歩くときに持っていく小さい鞄であった。私は1、2泊程度の短い旅行でも、先にスーツケースを送っておくが、このとき小さい鞄もいっしょに送り、旅行先ではこの鞄に財布や携帯電話、デジカメなど必要最小限度のものだけを入れて行き、途中で買い物をしたときでも、ある程度は入るくらいの大きさのものが欲しかった。これも希望どおりの鞄が見つかった。

Busy Beaver Inc.
ショップ:中央区銀座6-4-6 花の木ビル1F
TEL:03-3569-2401



某月某日

東京にいる間、一日だけ予定の入っていない日があったので、TDL(東京ディズニーランド)に行ってきた。

実のところ、私自身はTDLに行くのはこれが初めてである。以前はこのような場所で、乗り物に乗るために1時間以上待つなんて、とてもたえられなかった。しかし大阪のUSJや、ディズニー・シーに何度か行っているうちに、一時間くらいであれば待つことも苦にならなくなってしまった。

今回は夏休みに入っていることもあり、混んでいるのは覚悟していた。しかし思いの外、空いていて、午後2時頃に着いて、10時まで、ほとんど待ち時間もなく、次々と乗ることができた。これはいっしょに行った子供達がすでに何度も来ているため、どのような順番で、どこでファストパスを取ったら効率がよいのか、熟知していたからである。私だけなら、うろうろしているだけで日が暮れて、ひとつかふたつでギブアップしていたにちがいない。

昨年オープンした大阪のUSJは、最初の一年はこの種のテーマパークとしては史上最高の集客力があったそうだが、二年目から落ち込んでいる。理由は一部のレストランが賞味期限を大幅に切れた食材を使っていたり、パーク内の飲み水が工業用水とつなっていたという不祥事や、夜におこなっている花火の火薬が多すぎて中止になったりと、悪いことが重なってしまったことも大きい。またUSJとTDLを比べると、USJのアトラクションは映画がテーマになっているため、一度体験してしまうと、そこで完結してしまう。そのため、もう一度行ってみたいとは思わないのかも知れない。TDLはアトラクションの数自体もUSJより多いこともあるが、全体として、「魔法をかける」ことに徹している。ウォルト・ディズニーが描いていた理想の世界、夢の世界を実現するために作り上げた空間に足を踏み入れると、ゲートを出るまで、夢から覚めないように、細部に至るまで神経が行き届いている。また現実に引き戻さないために、外の景色が見えないように工夫されている。

観客は常に新しい刺激を求めるため、何度来てもそのつど新しい発見があるように、ディテイルにも手を抜かず、徹底して作り上げているのには、今回感心した。

ざっと、廻った順に記録しておく。

1.マジックショップ

マジックショップ3、4年前まで、いただくメールの中に、このマジックショップに対して不満をつづったものがよくあった。私自身は行ったことがないので実態がよくわからなかった。そのため、「魔法都市案内」の中でも、名前を出して取りあげることはしなかったのだが、今回行ってみて、ある程度事情がわかった。

このショップはテンヨーがやっている。ある程度マジックをやっている人が、デパートの中にあるマジックコーナーや一般的なマジックショップと同じようなつもりで行くと、応対が不親切と感じるのかも知れない。

ここは売り場面積も広く、デパートの数倍はある。そのため扱っている商品も多い。それに加えて店内にいる客は、これまでマジックなどやったことのない人が圧倒的である。大半の人が、TDL内にある、他のみやげ物を扱っているショップと同じようなつもりで入ってきたのだろう。そのため、このような場に少しマジックを始めたばかりの人が行ってたずねても、詳しく説明してもらえないのかも知れない。店員は常時2、3名いるが、いつも大勢の客でごった返しているため、この場で店員とマジックについて話し込むという雰囲気ではない。不特定多数の客が来ているTDLの中なので、あまり多くを望んでも無理なのだろう。とは言え、客をぞんざいに扱ってもよいということにはならないので、店員は出来る範囲で最大限の接客サービスを心がけて欲しい。

以前はここでしか買えない商品もあったようだが、今はデパートのマジックコーナーでも、大抵のものが買えるようになっている。ざっと見渡したところ、私が知らなかったのは『マジック入門』(1000円)という小冊子だけであった。これはマジックショップオフィシャルブックとなっているため、ここでしか買えないのかも知れない。日用品を使って、即席でできるマジックが12種類解説されている。ちょっと見ればどれも知っているものばかりであるが、細かい演出まで手抜きをせずに書いてあるため、マニアが読んでも参考になる。

私は気がつかなかったが、よく店内を見ると、ここでしか買えない商品が他にも数点あるようだ。

2.ビジョナリアム

タイムマシーンを作り上げた研究者タイムキーパーの実験室で、人類初めてのタイムマシーンの実験が始まる。部屋に入ると、360度すべてにスクリーンがある。一番見やすいのは部屋の中央辺りらしい。メインスクリーンのあるステージにはロボットのタイムキーパーがあるため、それをよく見ようと思えば前のほうがよい。また途中何度かスモークが吹き出される。私はスモークの中にすっぽり入る体験をしたかったため、吹き出し口の真正面、最前列で見ていた。

映像は過去や未来、海の底や宇宙など、タイムマシーンに乗っていろいろなところに連れて行ってくれる。私は気に入ったのだが、このアトラクションは今年の9月で閉鎖されるそうである。

3.スペースマウンテン(宇宙空間のジェットコースター)

真っ暗闇の宇宙空間を飛んでいる気分になるジェットコースター。普通ジェットコースターは屋外にあるが、これは室内で、しかも時間にして3分間、急上昇、急降下、急旋回をする。3分という時間は、意外なくらい長い。途中で気持ち悪くなってきた。終わったあと、医務室に担ぎ込まれる人の数も、これがTDLで一番多いそうである。年間1000人くらい、一日平均にすると約3名くらいが担ぎ込まれるらしい。もっといてもよさそうなのに、乗るまでに何度も警告があり、少しでも体調が悪い人は途中で抜け出せるようになっているので、事前にギブアップしている人が多いから、これくらいでおさまっているのかも知れない。私も降りたあと、悪酔いしたときのような気分になった。

TDLやUSJでは、乗り物に乗っている途中で実際に心不全などで亡くなる人もいるそうだが、それもこれが最も多いのだそうである。腰や背中、首などが調子の悪い人はやめておいたほうがよい。それと食事をした直後も避けたほうがよい。

4.カリブの海賊

小さな船に乗って、海賊が暗躍していた海を渡って行く。乗り物はどうってこともないのだが、実際に海賊船に襲われたら、逃げ場がないだけに恐ろしいだろうという気分にはなれる。

5.シューティングギャラリー

入り口でもらった案内に、ライフルが撃てる酒場が載っていた。ウインチェスターのライフルで、酒の瓶、額縁の絵、走るネズミなどを撃つ。実際に玉が発射されるのではなく、電気仕掛けのライフルであった。当たると瓶が倒れたり、絵の図柄変わったり、それぞれ何らかの反応がある。私は最初の一発だけハズしたが、あとは全部当たったので結果を楽しみにしていた。成績が記録されたカードでも出てくるのかと期待していたのに、何もなかった。これはちょっと拍子抜け。(15発で200円)

6.ブルーバイユレストラン(ルイジアナ州のクレオール料理)

TDLに着いてすぐに予約しに行くと、食事時の5時から7時はすでに満席になっていた。4時半があいていたので、少し早い夕食になるが、ここで食べることにする。

「カリブの海賊」の船に乗って進んでいく途中、このレストランの横を通る。ミシシッピー川の河口の夕暮れをイメージしているので、屋内なのに空には星がきらめき、ホタルも飛んでいる。そのため、時間帯にかかわらず、いつ行っても、店の人は「こんばんは」とあいさつするらしい。外はまだ明るくても、中にいると夕暮れの河口で食事をしているような雰囲気になる。

7.ホーンテッドマンション(お化け屋敷)

3人乗りの半球状の車で、お化け屋敷の中を進んでいく。時間が約7分半もあり、しかも他の乗り物からは見えないため、カップルにとってはお化けよりもべたべたとくっつくのによい乗り物として利用されているらしい。

西洋のお化けは日本のものと比べると、あまり恐ろしくない。むしろ陽気で、お化けというより妖怪といったほうがよいのだろう。何かの恨みで成仏できないで出てくる幽霊は恐ろしいが、化け物が飛んだり跳ねたりしてもあまり恐くはない。化け物なんかより、一番恐ろしいのは人の怨念かもしれない。

8.ビッグサンダーマウンテン(廃坑の中のジェットコースター)

ビッグサンダーマウンテン今回乗ったアトラクションのなかでは、私はこれが一番気に入った。最初に乗った「スペース・マウンテン」は予想外に気分が悪くなったので、これに乗るのも二の足を踏んだのだが、乗ってみると大変気分がよい。これは基本的には昔ながらのジェットコースターなのだが、全体の造りが廃坑という設定のため、土台や線路が壊れそうなくらい古く見える。この上を列車で爆進すると途中で脱線するのではないかという不安がある。たぶん、見えないところは頑丈に作ってあるのだろう。

最近のジェットコースターは宙返りなど、行きつくところまで行ってしまっているが、どれだけ過激になっても、途中で絶対脱線はしないという思いこみがあるのか、あまり恐くはないようだ。それにしても不思議なのは、なんでみんな両手を上げるの? バンザイをするような格好で乗っているのは何か意味があるのか?両手を離しても、「ちっとも恐くないよーっ」と、自慢しているのか?

私が過去に経験したジェットコースターで最も恐かったのは、小学生の頃、乗ったものである。どこかの山の上にあった遊園地なのだが、場所を覚えていない。山の上にあるため、上から急降下してきて急旋回するとき、もし脱線したら数百メートル下の谷底まで落ちてしまうという不安感があり、心理的な恐怖心が強かった。スピードを倍にしたところで、体感的には2倍の恐怖を感じることはないが、周りの環境などをうまく利用すると、もっと恐いものが作れるのではないかと思っている。谷底がはるか下に見えているだけで、もし落ちたら死ぬのは100%間違いないと思うと、本当に恐かった。もう一度行ってみたいのだが、関西のどこであったのか、まったく記憶にない。六甲山のどこかであったような気がするが、記憶が定かではない。

アメリカでは宙返りの途中、真っ逆さまになった状態で1時間近く停まった事故があった。年に一回くらい、ジェットコースターが脱線して、外に飛んでいくという事故でもあれば、乗る方も、もっとスリリングになると思うのだが、まあ、このような事故だけはないことを願っている。

ビッグサンダー・マウンテンは、昼間であればコースがしっかり見えるため、次にどちらに曲がるか、上昇下降も予測できるため、恐怖感があまりないのかも知れない。夜になると、これがわかりにくいので、スペースマウンテンに近い怖さがあるそうだ。

9.チュロス+夜のパレード

7時半から始まる夜のパレードのため、道にビニールシートを敷いて席を取る人が出始めた。私たちはパレードが通る道のすぐそばにある売店で、チュロスをかじりながら休んでいた。ここからでも十分見えるため、このまま待機することにした。

7時を過ぎた頃から、辺りがだいぶ暗くなってきた。今回、暗くなったらここでぜひやってみたいマジックがあった。家から持ってくるつもりであったのに、鞄に入れるのを忘れていた。さいわいにも、入り口のマジックショップにあったので、こっそり購入して準備していた。

使うのは「光る親指(フィンガーライト)」である。これを両手の親指にはめて、見せるタイミングを計っていた。実は先日行った、松尾貴史さんプロデュースのマジックショーの中で、松尾さん自身がこの「光る親指」を使って演じたギャグが気に入り、それ以来、やりたくって仕方がなかった。夜のエレクトリカルレードが始まる直前が絶好の機会なので、待ちかまえていたのである。

前に座っている同伴者に見せると、周りにいる人たちのほうが驚いて、みんな注目している。同じテーブルに着いている同伴者にだけ、こっそり見せているのに、周りが暗いため、あの赤い色はよく目立つのだろう。周囲の人にこんなにうけるとは思わなかった(笑)。

夜のパレード

7時半になり、パレードが始まった。テレビでは何度か見ているが、実際に目の前で見るとずいぶん綺麗なものだ。これだけ大きいものが次々と30分以上続くのだから、迫力がある。この時間帯はみんながパレードに集まるため、アトラクションは空いているそうなので、私は10分ほど見てから移動した。


10.ジャングルクルーズ(ジャングルを32人乗りの船で)

ジャングルの中を流れる川を32人乗りの船で進んでいく。辺りはすでに暗くなっていたから、周りの景色は夜のジャングル一色になっている。現実に引き戻されるような余分な物は一切見えない。途中、ちょっとひやりとするところといえば、象が鼻から吹き出す水にかかりそうになるのと、滝の中に突っ込みそうになるところくらいしかない。船を操縦する人、この人が妙に明るく、約10分間のクルーズの間に、数十回、ダジャレを飛ばしていた。最初は義理で反応していたが、あまりのくだらなさに、本当におかしくなってきて、最後は笑ってしまった。

11.スプラッシュマウンテン(急流滑り)

TDLでは1、2を競う人気アトラクション。急流から落ちる最後の一瞬だけが恐いと聞いていたが、USJの「ジュラシックパーク・ライド」を経験していると、それほどでもなかった。どうやら高さはUSJのほうがあるようだ。夏の暑いときなので、水をどっさりかぶって少しは涼しくなろうと思っていたのに、思いの外、水しぶきはかからなかった。

12.蒸気船マークトゥエイン号

1850年頃、開拓者を乗せてミシシッピー川を行き来していた4階建ての船。船から見える岸辺には、インディアンの人たちが暮らしている村、ひっそりと暮らしている野生動物、釣りを楽しむ老人と犬等、当時ののどかな生活を船の上からながめることが出来る。

13.グランドサーキットレースウエイ

電気仕掛けのゴーカート。他の車にガンガンぶつけられるものかと思っていたら、線路の上をひたすら走るだけのもの。カーブのとき、多少ハンドルを切ったほうがよいが、何もしなくても、とにかくアクセスさえ踏んでいたらゴールまで着く。前の車と近づきすぎると自動的にブレーキがかかるため、追い抜くのは勿論、追突もできない。

14.ワールドバザール

ミッキーが赤いマントにとんがり帽子をかぶった「魔法使いの弟子」になったときの置物を探すが、なかなか見つからなかった。ここでやっと高さが10センチくらいの「魔法使いの弟子」を見つけたので購入する。(ページのトップにあった画像)

15.ムービープレミアショーケース(ミッキーの短編映画)

古いミッキーの短編映画。ウォルト・ディズニーが自分でアイデアを出して、作品を作っていた時代のものである。これを見ると、やはりウォルト・ディズニーというのは天才であることがわかる。よくこれだけ自由で破天荒な発想が、次々と浮かんでくるものだ。

16.ボン・ボャージュ(ディズニーショップ)

ゲートを出て、舞浜の駅に向かう途中にあるショップ。私はもう買うものはなかったが、同伴者が数点、買い残していた最後のおみやげを買う。

パーク内の店で、ミッキーの耳の形をした帽子か、魔法使いの”とんがり帽子”を買いたくなったが、もし買っても、東京駅に着いた頃には魔法もとけているので、慌てて取るはめになると思い、我慢することにした。


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