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Book Test

 

Book Test

1999/1/17 (追加更新)

最初に

メンタルマジックの分野で、「ブック・テスト」と呼ばれるものがあります。様々な原理がありますが、観客から見た現象はほとんど同じです。一般的なものとしては、テーブルの上に数冊の本があり、その中の一冊を観客に選んでもらいます。マジシャンは観客の開いた本のページや、そのページに書かれている文章、単語、絵などを当てます。

現象を簡単に言えば上のようなものなのですが、ブック・テストは本当に数多くの方法が開発されています。相当面倒な準備を必要とするもの、助手が必要なもの、仕掛けのある本やネタを使うものなど、細かく分類すれば数十はあるでしょう。

これをマジックとして初めて演じたのはホーフツィンザー(Johann Hofzinser,1806-1875年)だと言われています。このホーフツィンザーの原案は効果的ではありますが、大変面倒な準備が必要でした。その後、1920年頃、メンタルマジックの天才、アンネマン(Theodore Annemann,1907-1942年)が助手のいらない「ブックテスト」を発表しました。

さらにこれをシンプルにしたものを紹介したのがデビッド・ホイです。1963年に出た彼の本に解説されています。私が現在演じているのもこのデビッド・ホイのブック・テストです。

これのよい点は、本当に何の準備もいらないところです。例えば、知人の家に遊びに行ったとき、何かマジックを見せて欲しいと言われたときでも、その家にある本を3冊ほど持ってきてもらえばすぐにできます。実際、これは今のような状況で演じるのがベストです。マジシャンが自分で持参した本ではなく、そこの家にある本や、喫茶店などで見せる場合でしたら、その辺りにある本を使ってできるので、一層効果的です。

現象

もう少し詳しく現象を説明しましょう。

知人の家に行ったとき、何かマジックを見せて欲しいと言われたとしましょう。そこの家にある本、本は何でもよいのですが、文庫本か新書本が大きさも手頃ですので、そのようなものがあれば3冊持ってきてもらいます。文庫本などがなければ、どんな本でもかまいません。

この3冊の本は、今、ここの家の人に持ってきてもらったものですから、マジシャンはどのような本が出てくるか、まったくわかりません。観客の一人に、この3冊のうち、1冊を取り上げてもらい、その本を持って部屋の隅に行ってもらいます。これはマジシャンが本の中身を見ないようにするためです。

もう一人の観客に残りの本の一冊を取り上げてもらいます。マジシャンはこの本を受け取り、本のページをパラパラとはじいて行きます。適当なところで「ストップ」と言ってもらい、ストップのかかったページを部屋の隅にいる観客に告げます。仮に78ページであったとしましょう。部屋の隅で本を持っている観客に、彼の本の78ページを開けてもらいます。このとき、他の人には絶対見えないようにしながら、こっそりと78ページを開いて見てもらいます。マジシャンと観客の間は数メートル離れています。マジシャンが彼の持っている本の中を見ることは絶対不可能です。

ここでマジシャンは、その観客に78ページの冒頭部分を黙読してもらいます。声には出さず、自分だけわかるように確認してもらいます。何度か、最初の部分だけを頭の中で反復してもらいます。

マジシャンはこの観客の「脳波」を感知し、その冒頭部分の単語、または一節を適当な紙に書きます。

観客に冒頭部分を読み上げてもらいます。マジシャンが書いたものを見せると、それは見事に一致しています。

コメント

どうです?不思議でしょう?これはいつどこで演じても、観客にうけます。私はこれを過去20年以上に渡って、数百回はやっていますが、いつも言われることは、「本当にそれもマジックなのですか?」ということです。まさに「超能力」か「読心術」でも使ったとしか思えないようです。

このマジックのタネ自体は大変簡単です。優秀なマジックは大抵そうなのですが、裏でやっていることはあきれるほど単純なことです。難しいテクニックや特殊なネタも使っていません。本は勿論観客から借りたものですから仕掛けのあるようなものではありません。

女子校に通っている高校生にこれを教え、教室でこれをやったらあまりにも凄い反応があり、やった本人が一番驚いていました。「エーッ!!」、「ウッソー!」という絶叫が教室中に響いたそうです。隣の教室からも何が起こったのかと、みんながのぞきに来るくらい、悲鳴に近い声があがったそうです。

これは特殊なことではなく、今までにも何人かの高校生に教えましたが、特に女子校の場合、大抵、今のような反応が返ってきます。本当にそれくらい驚くのです。(笑)

先も言いましたように、タネ自体は驚くほどシンプルなものですが、海外のプロマジシャンでもこれをレパートリーにしている人は何人もいるくらい優秀なマジックです。

私は20年以上、このデビッド・ホイのブック・テストをやっているので、アンネマンの原案をすっかり忘れていました。そのため、先日、三田皓司氏にアンネマンの原案を見せられたら、完璧に引っかかってしまいました。(汗)

アンネマンの原案は、安心して演じることができるという点では優秀で楽なのですが、ただし、即席ではできません。マジシャンが本を持参しなくてはならないのです。とは言え、これはこれで優れた演出があります。この辺りの演出や、デビッド・ホイの「ブック・テスト」を演じてみたいのでしたら松田道弘氏による解説が出ています。『超能力マジックの世界』(松田道弘著、筑摩書房、1993年発行、1,650円(税別))です。書店に見あたらなくても、頼めば取り寄せてもらえるはずです。

追加(99年1月17日)一昨日、これをアップロードしましたら、早速、『超能力マジックの世界』を買ったとおっしゃる方からメールをいただきました。松田さんの解説では、2冊使うことになっているのですね。私はこれを覚えたのは20数年前で、そのとき、自分なりの工夫をして変えたのかも知れません。私は三冊使っています。実際には「マジシャンズ・チョイス」を使用して、選ばせています。また、部屋の隅に行ってもらうのも、私が付け加えた演出です。

また、このタイプのマジックをやったことのない方にとっては、「ミスコール」の部分が、とてもこんなことでうまく行くとは思えないでしょう。しかし、これはまったく問題ありません。私はこの20年以上で数百回はやっていますが、ただの一度もその部分に関して突っ込まれたことはありません。どうか自信を持ってやってみてください。きっと観客以上に、あなたのほうが驚くと思います。(笑)

魔法都市の住人 マジェイア

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