My Favorite Tricks

Imagination

 

imagination

1999/6/4

最初に

私たちは何かを見るとき、先入観やすでに持っている知識などにじゃまされ、物事をあるがままに見ることはできません。「客観的に見る」と言ったところで、実際は不可能です。

たとえば顕微鏡で何かの細胞を見て、それを見たとおりにスケッチしてもらったとしても、細胞についてまったく知識のない人が描くと、とてもそれが細胞をスケッチしたものとは思えないような絵ができあがります。逆に、授業で細胞のことを十分学んだ人がスケッチをすると、教科書で見た細胞の絵などを思い浮かべ、その知識を補足しながら描いてしまいます。知識があってもなくても、物事をありのままに見ることは至難の業です。

細胞に限らず、日常的にもよくあることです。同じ場面を見ても、関心の方向性が違うと、何を見たかは、後でチェックしてみるとまったく違っていることがあります。

上の写真は大変有名なものですから知っていると思いますが、何も知らないであれを見ると、大抵、「どくろ」に見えるはずです。特にある程度距離をおいて見ると、どくろにしか見えないはずです。しかし、あれはもう一つ別の見方もできます。女の人が鏡の前で化粧をしているところです。そう言われると、今まで知らなかった人も気がついたでしょう。近くで見るとわかると思います。

マジックが成立するためには、観客にイマジネーションの力があることが絶対条件です。マジシャンが手に握ったコインを消したとき、観客が驚くのも観客に想像力があるからです。犬や猫に「コインの消失」を見せても驚きません。

現象

マジシャンは封筒からどくろが写っている写真を取り出し、観客に見せます。見方によってはどくろにも、女の人が鏡台の前で化粧をしているところにも見えることを確認してもらいます。そして、この写真を表向きのまま、終始観客から見える場所に置いておきます。

今から、道具を一切使わないで、イマジネーションだけでマジックをやってみせると宣言します。道具は一切ありませんから、観客のイマジネーションだけが頼りです。

まず、机の上に火のついたローソクが燃えているところを想像してもらいます。次に、ふたのない箱をイメージしてもらいます。この箱は大変不思議な箱で、中に入れたものは二度と取り出すことできない箱です。3つめに一組のトランプを想像してもらいます。使うのはこの3つだけです。しかし実際はイメージだけで、何も品物はありません。

もうひとつ、フェニックスという鳥の話をします。フェニックスは数百年間生きた後、自分から火の中に身を投げ、燃えて灰になります。しかし、その灰の中からまた新しい生命がよみがえり、新たなフェニックスが生まれます。そして数百年間生き続けることを永遠に繰り返すので、フェニックスのことを「不死鳥」とも呼んでいます。

ここまで話しておいてから、観客にイメージの中で一組のトランプを持ってもらいます。それを消去法で、どんどん箱の中にトランプを捨てていってもらいます。

例えば、最初一組のトランプを絵札と字札に分けてもらい、どちらかを捨ててもらいます。もし絵札と言えば、絵札をすべて箱の中に捨ててしまいます。次に残りのトランプをダイヤハートのような赤いトランプと、スペード、クラブのような黒いトランプの二組に分けてもらい、どちらかを捨ててもらいます。どんどん、このようにして減らしてゆき、最後2,3枚になった時点で、残っているトランプの1枚を細かく手で破ってもらいます。勿論、これもイメージの中だけです。そしてその細かく破ったトランプをローソクの炎の上にもってきて燃やしてもらいます。小さく破った一枚のトランプはすっかり燃えてしまい、灰だけがローソクのまわりに残っています。後の51枚はすべて箱の中に捨ててしまい、2度と取り出すことはできません。

観客の燃やしたトランプは「XXXのXX」とします。52枚の中から、自由に観客がこれを選び、燃やしました。

先ほどからずっとテーブルの上に置いてあったどくろの写真を見てもらうと、なんと、そこには観客が燃やしたはずのトランプがどくろの顔の一部に写っています。それだけが復活して、写真の中に小さく写っています。

コメント

マジックをやっている人であれば、原理はだいたい想像はできると思います。フォーシングです。ただ、このマジックがマニアにとっても珍しいのは、52枚から1枚フォースすることができる点です。数枚の中からフォースすることはよくありますが、まさか52枚から1枚だけ強制できるとは思えないでしょう。

私自身は、原案を2カ所ほど変えています。それは最後、5枚になってからのフォースの方法と、紙にも「あなたは必ずXXXのXXを選ぶ」書いた予言を作っておき、写真と一緒に見せるところです。

最後に一言

これは2年ほど前、ミスター・マジシャンから購入したのですが、最近のカタログには載っていません。すでに品切れになっているのかも知れので、興味のある方は一度問い合わせてみてください。値段は1,200円程度であったと思います。

魔法都市の住人 マジェイア

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