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The Dai Vernon Book of Magic

書 名:THE DAI VERNON BOOK OF MAGIC
著 者:LEWIS GANSON
初 版:1956年
発売元:Unique Magic Studio
ページ数:239ページ

現在の発売元:L&L PUBLISHING
価 格:$35.00
分 類:Close Up Magic


最初に

この本が1956年に出版されたとき、ヴァーノンはすでに60歳でした。
60歳にして初めて、まとまった作品集が出たのですね。これはヴァーノン自身が筆無精で、自分自身ではまとまったものを書かなかったのと、そのような本がビジネスになるとは思っていなかったからでしょう。
ところが、ルイス・ギャンソンというマジシャンであり、解説の名人と出会ったことで、この本が世に出ました。


内容を紹介しましょう

第1章: BACKGROUND TO A LEGEND

生きたまま伝説になってしまった男、ヴァーノンの半生です。

第2章:THE VERNON TOUCH

マジックを改良したり、新しい現象を作り出すときの考え方がコンパクトにまとめられた論文です。こっそりと秘密の動作を行うためには手先が器用であったり、素早く行ったりする必要はなく、観客の視線や注意を対象物からはずすための合理的な方法論をはじめ、含蓄のあるアドバイスが満載です。

第3章:A CHINESE CLASSIC

ハンピンチェンムーブを使った「コインスルーザテーブル」です。3枚のハーフダラーがテーブルを貫通します。
今ではハンピンチェンムーブはマジシャンの常識になっていますが、これが解説される以前は、マジシャンが見ても信じられないような現象であったのでしょう。

第4章:PENETRATION OF THOUGHT

観客の思ったトランプだけが、別のトランプの山に移動します。このマジックは、日本では不思議なくらいマニアでもやりません。しかし、ここで使われているトランスファーの技法は応用範囲の広いものです。

第5章:THREE BALL TRANSPOSITION

二人の観客にハンカチの4隅を持って拡げてもらいます。直径1.5センチ程度のボールを3個取りだし、ふたつを左手の中に、ひとつをポケットに入れるが、左手から3つのボールが出てきます。ボールをハンカチの上に落としながら見せます。
数段からなっており、最後はボールが一挙に全部消えてしまいます。

第6章:APLICATION OF THE TENKAI PALM

ヴァーノンは石田天海師とも親交があり、「天海パーム」とよばれる天海さんのオリジナル技法を使ったマジックを2題解説しています。この技法は、右手にトランプを隠したままで、右手の5本の指が自由に動かせるという便利なものです。
デックの表面をなでるだけで別のカードに変わるカラーチェンジ現象と、「ジャンピングジャック」という、エースとジャック2枚だけを使った移動現象を発表しています。
これほどダイレクトでクリアーな移動現象はちょっと他にはありません。

第7章:THE LINKING RINGS

直径30センチほどの金属製の輪をつないだりはずしたりする有名なマジックです。ここでは、彼のオリジナルルーティンの、「リングのシンフォニー」で使われているいくつかの技法だけを解説しています。("Symphony of the Rings"は、つい最近、最近、L&Lから再版されました)

★"SPINNING THE RING":キーリングとレギュラーリングかつながった状態で、それぞれを回転させることで、切れ目がないことを示す技法。

★"THE CRASH LINKING":一本のリングを他のリングに叩き付けて入れる技法。これは観客がいくらそばで見ていても、絶対キーは見えない画期的な技法。

★"THE PULL THROUGH METHOD OF UNLINKING":つながっているリングを抜くときの技法です。溶けるようにリングが抜けていきます。

★"THE FALLING RING":5,6本のリングが長くつながった状態で、一番上のリングが下まで、一段ずつ落ちて行くのを見せることができます。

第8章:SEVEN CARD MONTE

「モンテ」というのは、「当てもの」の一種です。
6枚の数字のカードと1枚の絵札を使い、裏向きで配った後、観客が絵札を当てたら勝ちというギャンブルです。絶対にあたりません。ギミックカードを大変巧妙に使っています。

第9章:QUICK TRICK

小品を集めた章です。小品とはいえ、どれも傑作が揃っています。

★"COIN ON THE KNEE"(ライプチィヒ):椅子に座った状態で、膝の上にコインを一枚置きます。右手で軽くこするとコインが消えています。

★"CIGAR VANISH"(マーティン・ガードナー):葉巻に火をつけて口にくわえます。ハンカチで顔の前面を一瞬覆ってからハンカチを取り除くと、葉巻が消えています。

★"FIVE COIN STAR":マジックではなく、5枚のコインを使ったフラリッシュです。5枚のコインが、5本の指先に、パッと星のように開きます。大変やさしくできる方法を解説しています。

★"PICK OFF PIP": クラブの3を見せます。真ん中のクラブを指先でつまむと、それが取れてしまい、実際にクラブの2になっています。
カラーチェンジの一種ですが、上手く演じると、強烈なイリュージョンになります。

★"CLIPPED" (ビル・バウマン):おさつの2カ所にクリップを止めます。それがつながってしまう、今ではマニアによく知られたトリックです。演出やセリフで、とても楽しい即席マジックになります。

★"MULTIPLE COLOUR CHANGE"(クリフ・グリーン):10回くらい連続してトランプの表面を変えることのできる方法です。いかにもグリーンがやりそうな技法です。

★"THREE COINS FROM ONE"(マックス・マリニ):観客の誰かがコインを持っていたら、1枚を借りて分裂させ、増やします。これはマリニが即席にやっていたマジックで、うまく演じればとても強烈な印象を残します。

第10章:EXPANSION OF TEXTURE

ハンカチで1枚の銀貨と1枚の銅貨を包みます。観客にハンカチの両端をしっかり持ってもらい、中にコインがあることを確かめさせた後、銀貨か銅貨のどちらかを選んでもらいます。マジシャンはハンカチの外からそのコインだけを一瞬に抜き出します。中を開けると、コインは一枚しか残っていません。最後は、逆にコインをハンカチの中に入れてしまいます。

第11章:THE CHALLENGE

2枚のトランプを見せて、どちらか一枚だけを心の中で思ってもらいます。それを何の質問もせずに、当てます。

第12章:DOUBLE LIFT

カードマジックの基本技法であり、必須技法のひとつであるD.L.を解説しています。 "Get Ready"を、ある理由付けを使って堂々と行い、その後、D.L.を行うので、やりやすくなっています。
 不思議なことに、マニアでこれを正確にやっている人はあまりいません。一般の人に見せる場合、うまくやればとても自然に見えます。

これを練習するとき、気をつけなければならないのは、鉄板をひっくり返しているようにしてはならないということです。実際、1枚だけで"Get Ready"から"Turn Over"までを何度もやってみてください。一枚だけなら何も難しくないはずです。ところが、2枚でやると、突然、鉄板かコンクリートの板をひっくり返しているようになってしまう人が大勢います。もしD.L.がばれるというのであれば、あなたのD.L.は「ドッコイショ」となっているはずです。"Be Natural"を忘れないでください。

第13章:THE CUPS AND BALLS

ヴァーノンの発表したトリックの中でも、おそらくこれがもっとよく知られているでしょう。
3個の金属製のカップと3つの玉を使った古典マジックのひとつです。昔はこれをやるためには、テーブルに仕掛けをしたり、だぶだぶの服を着て、ネタを仕込む必要がありました。ヴァーノンはそのようなものなしでできるようにしました。そして、手順もコンパクトにまとめ、各段の現象を分かり易く、普通の服装で、最後の大きなボールの出現までできるようにしたのです。これはヴァーノンの偉大な功績でしょう。
もし、マニアでこれを知らなかったら、モグリです。

第14章:CARD STAB(ライプチィヒ)

ライプチヒというのは、ヴァーノンより10数歳、先輩のマジシャンです。ナイトクラブでよくこれを演じていました。
二人の観客にそれぞれトランプを一枚ずつ選んでもらい、デックにもどしてからよくシャッフルします。それを紙で包んで、外からナイフで突き刺すと、ナイフの刺さったところに二人の観客のトランプがあります。大変ウケるカードマジックです。

このマジックは、ギャンソンが書いた"Dai Vernon's Tribute to Nate Leipzig"にさらに詳しい解説があります。これを読むと、ライプチッヒがいかに細かいところまで神経を使っていたかがよくわかります。たとえば、トランプを包む紙はテーブルの上に置く前から、少ししわを作っておき、テーブルから取り上げるとき、スムーズに取れるようにしているのです。ちょっとしたところにも神経を使っているのはさすがにプロです。このようなことの積み重ねが、そのマジシャンの全体的なイメージと大きく関係してきます。

第15章:TIPS ON KNOTS

シルクを使った3種類のフォールスノットを解説しています。

第16章:SIX CARDS REPEAT

6枚のトランプから3枚を捨てても、数えるとまた6枚になっています。これを何度繰り返しても6枚になります。古典的傑作。

第17章:FREE AND UNLIMITED COIN COINAGE OF SILVER

はじめて入った喫茶店やレストランで、灰皿の下から銀貨が出てきたら驚きますね。さらに、コーヒーカップの下や塩の瓶、砂糖のポット、テーブルクロスの下、ついにはパンの中からも銀貨が次々と出続けたらどうでしょう。最初の1枚か2枚が出てきたときは誰かの忘れ物かと思っても、十数枚も銀貨が出てきたら、笑ってしまうでしょう。

演者と観客が一緒になって笑える、即席マジック風、コインマジックです。

第18章:MENTAL SPELL

英語の"spell"という単語には「言葉を綴る」という意味の他に、「魔法をかける」という意味もあります。日本語でも、「言霊」(ことだま)という言葉がありますから、言葉には、それを口にしたら本当にそのことが起こる不思議な力があると信じられています。

外国ではよく演じられるのに、日本ではあまり演じられないというトリックがあります。。この「メンタルスペル」などのような、スペル(綴り)を利用したカードマジックもそのひとつです。

10枚ほどのトランプを見せて、観客に1枚だけ心の中で思ってもらいます。もしそれが「クラブの2」であれば、"T-W-O O-F C-L-U-B-S"というスペルに合わせて、トランプを上から下に一枚ずつ回して行ってもらいます。スペルが終わったとき、先ほど観客が思っただけのトランプが、意外なところから出てきます。

第19章:POTPOURRI(ポプリ)

ちょっとしたアイディアが詰め込まれています。

★ "CLIMAX FOR A DICE ROUTINE":さいころの手順のエンディングに使える洒落たクライマックスです。

★"ONE UNDER AND ONE DOWN":観客から10枚のトランプを受け取り、一枚を指定してもらいます。「アンダーダウン」、つまり、パケットのトップから一枚をパケットの下に回し、次の一枚はテーブルの上に捨てるということを繰り返します。最後に残ったトランプが客の指定したトランプです。

★"Cups and Balls Move"(チャーリー・ミラー):ヴァーノンの親友であるチャーリ・ミラーが考案した「カップアンドボール」で使う技法です。カップの底からボールが貫通するように見える、大変ビジュアルな現象です。 技術的には難しくありません。タイミングだけです。上手くやると、本当に通り抜けたように見えます。

★"CARDS AND MATCHES"(ウォルシュ・ミラー):3枚のトランプと3本のマッチ(頭の部分だけ)で行う、即席のカップアンドボールのようなものです。現象はマッチの頭がトランプの下で「消失」、「出現」、「分裂」します。

★"TIPS FOR EXPERTST":「パス」、「セカンドディール」、「ボトムディール」、「パーミング」、「スリービング」についてのちょっとしたアドバイスです。

第20章:BALL,CONE AND HANDKERCHIEF

直径5センチほどのボールと、高さが20センチ程度の円錐形のコーンを1つ、それとシルクのスカーフを使います。 カップアンドボールのカップを1個で演じるような感じですが、ボールが大きいので大勢の観客の前でも見せることができます。ボールの色変わりなどもあり、現象のはっきりした、一種独特の雰囲気のあるマジックです。

第21章:THE LAST TRICK OF DR.JACOB DALEY

ドクター・ダレーはアマチュアのマジシャンですが、大変な博識で、多くのマジシャンと親交がありました。彼が亡くなる少し前に発表したマジックです。

現象は4枚のエースだけで行う移動現象です。テーブルの上に2枚の黒いエースを置き、手には赤いエースを2枚持っています。それが、一瞬で、エースの位置が逆になります。

私が初対面の人にマジックを見せることになったとき、最初に見せるのはいつもこれです。現象のはっきりした、大変すばらしいトリックです。

第22章:IMPROMPTU THIMBLE ROUTINE(ポール・ロッシーニ)

「シンブル」というのは、アメリカやヨーロッパの人が裁縫のときに使う「指ぬき」です。金属で出来ており、指先につけて使います。

右手の人差し指の先についている1個のシンブルが、だんだん増え、5本の指全部に出現します。それが左手の指先にジャンプして行き、右手は空になります。

第23章:THE VERNON POKER DEMONSTRATION

ギャンブラーのテクニックを見せるという演出で、実際にポーカーの手を配りながら実演します。何度もよくシャッフルしてから配るのに、大変よい手を作ることができます。最後はロイヤルフラッシュを作って見せます。


最後に一言

普通、60歳で本を出したというとどうでしょう。遅いように感じるのが普通でしょう。でもどういうわけか、私にはまだ60歳だったのかという感じがしてしまうのです。 私がこの本を手に入れたのは1970年頃ですから、ヴァーノンはすでに74歳になっていました。

このVernon Bookには、私にも個人的に大変な思い出があります。

私自身、マジックは子供の頃から好きで、デパートのマジック用品売場に行ってはネタを買ってやっていました。また、日本の書店で売っている簡単な手品の本は、ほとんどすべて、中学生の頃には読んでいました。大学に入った頃に、一般の書店では販売されていないマジックの専門誌があることを知り、購入しました。それを通して、外国には、日本とは桁違い(ざっと千倍くらい)の専門書があることも知りました。

1970年頃には、この"Vernon Book”に解説されているマジックで、めぼしいものはほとんどすべて日本語に翻訳され、読めるようになっていました。しかし、まだ訳されていないものもあり、またオリジナルの本を手に入れたいと思っていました。

当時(1970年頃)は、外国から本を取り寄せるのは今ほど簡単ではなく、また大変高価なものでした。マジック関係の洋書は東京の神田にあるタトル商会が数多く扱っていることを知り、電話をしてみました。忘れもしません、大晦日の日です。イギリスの"Harry Stanley's Uniqu Magic studio"から出ていたこの本は、出版社が数年前に倒産したという話を聞き、もう入手不可能かもしれないと思いながら、タトル商会に問い合わせてみたのです。すると、奇跡的に、1冊だけ在庫があると言われ、その場で、新幹線に飛び乗り、それ一冊を買うために、大阪から東京まで行き、とんぼ返りでまた帰ってきました。帰りの新幹線の中では夢中で読みました。3時間半がアッという間でした。

魔法都市の住人 マジェイア

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